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15章 あなたとわたし
第641話 協力者と思惑②隠れ蓑
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「あからさまに、目が大きくなりましたね」
「確かに、シュタイン嬢と同じ瞳の色」
「(離してーーーー)ぎゅーーーーーーっ」
「ということは、婚約者が変化したというのは、トチ狂った言い訳ではないのですね」
赤い長髪がわたしを覗きこむ。
「どういうことだよ?」
青髪が赤髪に尋ねる。
「議会は大荒れでしたよ。いくら呪われたといっても、猫の婚約者など前代未聞だと」
議会が大荒れ? なんで外国人がそんなこと知ってるのよ。
あ、諜報部隊が潜んでいるわけ? ユオブリアにも?
「第1王子がそんな戯けた話を出すなんて、理由があるとは思ったが、呪われて変化したのは本当なんだろう。だから療養中としていたんだ……」
わたしを捕まえているガインが、わたしを覗き込む。
「そうだろ? リディア嬢。けれど、猫としているのは嘘だ。本当はトカゲだった」
早くもバレた。なんでこんなに勘がいいわけ?
王宮の草むらにトカゲがいたって、それをわたしが変化した姿って思わないでしょ、普通。
「なるほど。猫とは隠れ蓑でもあるのか」
赤髪が頷いている。隠れ蓑? どういうこと?
「どういうことだよ?」
青髪はブライ属性だな。そしてわたしも同レベルだ。ガインと赤髪の言っている意味がわからない。
「呪われたということは狙われているということです。本当の姿を知らせて、また命を狙われたらどうします? だから猫ということにしたんですよ。万一狙われてもそれは猫、トカゲは狙われないようにね」
え? ソックスを身代わりにしてるって言いたいわけ?
……結果的にそういうことかもしれないけど、そんなこと考えてなかったのに!
『リディア!』
「(もふさま!)きゅっ!」
もふさまはトンと飛んでガインに向かって威嚇をし、怯んだガインの手からわたしを奪った。
……助けてもらった立場で、言うべきではないことを言うが、トカゲの姿でもふさまに口で咥えられるのは結構怖い。
「お遣いさま……か。我らはリディア嬢を傷つけませんよ」
ガインが言ったけど、もふさまは背をむけた。
「第1王子に伝えてください。陛下との謁見の後、話しましょうと。猫じゃなくてトカゲと俺は知っている、とね」
もふさまはわたしを背中に乗せた。
「もふさま、ありがとう! ソックスは?」
『小童に預けた。リディアがいなくて肝が冷えた』
「廊下を曲がった時に飛ばされちゃったの」
『なぜ、あやつが?』
「わからない。葉の裏に張りついて隠れていたんだけど、第1王子と一緒にいたものの匂いがするとか言って、見つけられた」
『とりあえず結界内に戻るぞ』
戻れば兄さまに迎えられ、さらにその後にソックスを抱えたアダムも戻ってきた。わたしを見て、アダムが脱力している。しばらくソファーから起き上がれなかった。
わたしのせいなわけで。不可抗力だったけど、申し訳なく感じる。
人型に戻った方がいいのかな?
兄さまは夕ご飯の用意をすることにしたようだ。
アダムがお疲れのようだったので、見えているところにいるのは忍びなく。
わたしももふさまに乗せてもらって、キッチンに移動する。
お肉たっぷりの丼にするみたい。
慣れた手つきだ。
「お嬢さまは、ガゴチ将軍の孫と殿下が会う時に、ついて行くつもりですか?」
「(うん)きゅぴ」
「トカゲの姿で?」
「(……うん)」
「危険ではありませんか?」
「(この姿だと余計に、危険なこともあるかもしれないし、みんなに心配と迷惑をかけるけど。ちゃんと行って聞いてこようと思う。ガインにバレているしね。それに絶対無茶はしないから)きゅきゅきゅきゅきゅっ、ぴーぴきゅっぴ、きゅぴきゅーぴぴぃー。ぴっぴ。きゅっきゅ。きゅぴっぴっぴ」
兄さまがわたしが昼食を抜いていることを思い出して、別に何か作りましょうか?と言ってくれたけど、わたしはベリーをもらうことにした。これなら、ひとりで食べられるから。
兄さまの作業を見つつ、ベリーを舐めるようにして考える。
敵のことだ。
一連の事実だけを挙げると。
・兄さまが罪人であるクラウス・バイエルンではないかと言いがかりをつけられる
・シュタイン家と兄さまに強烈なバッシングが始まる
・兄さまが婚約破棄をする
・わたしが呪術を受ける
・わたしの死亡説、そしてメロディー嬢を陥れ、第1王子と婚約したいがためだと噂が出る
わたしにアプローチをした主に外国からの問い合わせが殺到し、陛下から釈明しろと言われ、ウチも権力者からの保護が必要だったので、懐に飛び込んだ。
敵の目的は何なんだろう?
何がしたいの?
兄さまを犯人に仕立て上げる。
それにはランディラカ、シュタインの保護下にいるのが邪魔なのだと思った。だから兄さまが孤立するよう仕向けた。
でも婚約を破棄したし、兄さまは一旦行方をくらませた。兄さまの孤立だけが理由なら、わたしを呪い殺す必要はない。
だけど、わたしは狙われ、篭っていれば、死んだとみなされ死亡説が出た。
そしてわたしが第1王子の婚約者におさまりたかったのだと噂が出た。
やっぱり、わたしを亡き者にするも理由な気がする。
でも……それでお終いなのかな?
兄さまを罪人にするのは、クラウスさまだと思わせると説得力があるのは、少しわかる。理解はできないけど。
けど、わたしが死んで何だっていうのさ。
12歳の伯爵令嬢だぞ? 光属性もないし、魔力も少なく設定している。後ろ盾は分厚く高いものではあるけれど。それぐらいだ。
お遣いさまだって、学園にいる間だけ、遣わされる。
お店を繁盛させてはいるが、世の中にはもっと売れているところがごまんとある。
「ねぇ、兄さま、お芝居にあったような噂が事実だった場合、得をするのは誰? あの噂が真実に近いと、どんなことが起こり得る?」
もふさまが兄さまに訳してくれた。
「確かに、シュタイン嬢と同じ瞳の色」
「(離してーーーー)ぎゅーーーーーーっ」
「ということは、婚約者が変化したというのは、トチ狂った言い訳ではないのですね」
赤い長髪がわたしを覗きこむ。
「どういうことだよ?」
青髪が赤髪に尋ねる。
「議会は大荒れでしたよ。いくら呪われたといっても、猫の婚約者など前代未聞だと」
議会が大荒れ? なんで外国人がそんなこと知ってるのよ。
あ、諜報部隊が潜んでいるわけ? ユオブリアにも?
「第1王子がそんな戯けた話を出すなんて、理由があるとは思ったが、呪われて変化したのは本当なんだろう。だから療養中としていたんだ……」
わたしを捕まえているガインが、わたしを覗き込む。
「そうだろ? リディア嬢。けれど、猫としているのは嘘だ。本当はトカゲだった」
早くもバレた。なんでこんなに勘がいいわけ?
王宮の草むらにトカゲがいたって、それをわたしが変化した姿って思わないでしょ、普通。
「なるほど。猫とは隠れ蓑でもあるのか」
赤髪が頷いている。隠れ蓑? どういうこと?
「どういうことだよ?」
青髪はブライ属性だな。そしてわたしも同レベルだ。ガインと赤髪の言っている意味がわからない。
「呪われたということは狙われているということです。本当の姿を知らせて、また命を狙われたらどうします? だから猫ということにしたんですよ。万一狙われてもそれは猫、トカゲは狙われないようにね」
え? ソックスを身代わりにしてるって言いたいわけ?
……結果的にそういうことかもしれないけど、そんなこと考えてなかったのに!
『リディア!』
「(もふさま!)きゅっ!」
もふさまはトンと飛んでガインに向かって威嚇をし、怯んだガインの手からわたしを奪った。
……助けてもらった立場で、言うべきではないことを言うが、トカゲの姿でもふさまに口で咥えられるのは結構怖い。
「お遣いさま……か。我らはリディア嬢を傷つけませんよ」
ガインが言ったけど、もふさまは背をむけた。
「第1王子に伝えてください。陛下との謁見の後、話しましょうと。猫じゃなくてトカゲと俺は知っている、とね」
もふさまはわたしを背中に乗せた。
「もふさま、ありがとう! ソックスは?」
『小童に預けた。リディアがいなくて肝が冷えた』
「廊下を曲がった時に飛ばされちゃったの」
『なぜ、あやつが?』
「わからない。葉の裏に張りついて隠れていたんだけど、第1王子と一緒にいたものの匂いがするとか言って、見つけられた」
『とりあえず結界内に戻るぞ』
戻れば兄さまに迎えられ、さらにその後にソックスを抱えたアダムも戻ってきた。わたしを見て、アダムが脱力している。しばらくソファーから起き上がれなかった。
わたしのせいなわけで。不可抗力だったけど、申し訳なく感じる。
人型に戻った方がいいのかな?
兄さまは夕ご飯の用意をすることにしたようだ。
アダムがお疲れのようだったので、見えているところにいるのは忍びなく。
わたしももふさまに乗せてもらって、キッチンに移動する。
お肉たっぷりの丼にするみたい。
慣れた手つきだ。
「お嬢さまは、ガゴチ将軍の孫と殿下が会う時に、ついて行くつもりですか?」
「(うん)きゅぴ」
「トカゲの姿で?」
「(……うん)」
「危険ではありませんか?」
「(この姿だと余計に、危険なこともあるかもしれないし、みんなに心配と迷惑をかけるけど。ちゃんと行って聞いてこようと思う。ガインにバレているしね。それに絶対無茶はしないから)きゅきゅきゅきゅきゅっ、ぴーぴきゅっぴ、きゅぴきゅーぴぴぃー。ぴっぴ。きゅっきゅ。きゅぴっぴっぴ」
兄さまがわたしが昼食を抜いていることを思い出して、別に何か作りましょうか?と言ってくれたけど、わたしはベリーをもらうことにした。これなら、ひとりで食べられるから。
兄さまの作業を見つつ、ベリーを舐めるようにして考える。
敵のことだ。
一連の事実だけを挙げると。
・兄さまが罪人であるクラウス・バイエルンではないかと言いがかりをつけられる
・シュタイン家と兄さまに強烈なバッシングが始まる
・兄さまが婚約破棄をする
・わたしが呪術を受ける
・わたしの死亡説、そしてメロディー嬢を陥れ、第1王子と婚約したいがためだと噂が出る
わたしにアプローチをした主に外国からの問い合わせが殺到し、陛下から釈明しろと言われ、ウチも権力者からの保護が必要だったので、懐に飛び込んだ。
敵の目的は何なんだろう?
何がしたいの?
兄さまを犯人に仕立て上げる。
それにはランディラカ、シュタインの保護下にいるのが邪魔なのだと思った。だから兄さまが孤立するよう仕向けた。
でも婚約を破棄したし、兄さまは一旦行方をくらませた。兄さまの孤立だけが理由なら、わたしを呪い殺す必要はない。
だけど、わたしは狙われ、篭っていれば、死んだとみなされ死亡説が出た。
そしてわたしが第1王子の婚約者におさまりたかったのだと噂が出た。
やっぱり、わたしを亡き者にするも理由な気がする。
でも……それでお終いなのかな?
兄さまを罪人にするのは、クラウスさまだと思わせると説得力があるのは、少しわかる。理解はできないけど。
けど、わたしが死んで何だっていうのさ。
12歳の伯爵令嬢だぞ? 光属性もないし、魔力も少なく設定している。後ろ盾は分厚く高いものではあるけれど。それぐらいだ。
お遣いさまだって、学園にいる間だけ、遣わされる。
お店を繁盛させてはいるが、世の中にはもっと売れているところがごまんとある。
「ねぇ、兄さま、お芝居にあったような噂が事実だった場合、得をするのは誰? あの噂が真実に近いと、どんなことが起こり得る?」
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