プラス的 異世界の過ごし方

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15章 あなたとわたし

第622話 子供たちの計画⑨おさらい

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「話を遮って悪かった。土地買いのことも、フランツ君が罪を被されようとしていることも飲み込めた。それがメラノ公の持つ屋敷から発せられたことだともね」

 〝飲み込めた〟に留めている。話半分に聞いておくということだろう。

「それから、キートン夫人や土地を買ったことになっている人たちは、繋がりがあるような話だったね。どういうことだい?」

 アダムに促され、わたしたちは説明する。わたしたち自身もおさらいになる。
 7年前のキートン夫人が詐欺にあったあらましはこうだ。

 最愛の夫を亡くしてからも日々は過ぎ、苛まれるような喪失感からは立ち直っていたものの、寂しい心は埋められていなかった。

 そんな時、ドナモラ伯爵に紹介してもらった、ある夫人と仲良くなる。彼女はキートン夫人の哀しみを共有して、気持ちをほぐしてくれた。子供たちに対する愚痴を聞き一緒に怒り、時には〝ご子息はこう考えられたのでは?〟と気づきも与えてくれる人だった。そんなワンダ夫人に困りごとができた。
 夫人の参加している慈善事業が窮地に陥ったのだ。キートン夫人はワンダ夫人のために寄付をした。ところが、それは違法の投資話だったことが発覚する。知らなかった点を考慮されて収監されることはなかったが、多額の罰金を払うことになった。ワンダ夫人は行方知れずになる。紹介してくれたドナモラ伯爵も、実は何度かパーティで話したことがあるだけということもわかった。

 キートン夫人は多額の罰金を払うのに、家を売るしか方法がなかった。夫の残してくれた遺産を自分の過ちで失くす、キートン夫人は自分を責め、とにかくこの出来事を忘れたくて、口を閉ざした。彼女の教え子たちは恩師の窮地にせめて報いたかったけれど、キートン夫人が訴えないことから、何もできなかった。

 そんな時ロサから、わたしたち兄妹でお茶会を開催するように言われる。キートン夫人が処分するお屋敷を会場として。わたしたちは聞き上手で優しいキートン夫人が大好きになり、そんな夫人を苦しめたワンダ夫人を許せないと思い、処分するお屋敷の次の買い手である、コルヴィン夫人の振る舞いから嫌な奴だと思った。それで少しばかり挑発するような嫌がらせを仕掛けた。
 仕掛けに掛かったコルヴィン夫人がお茶会に乗り込んできた。自分がワンダ夫人の詐欺と、関わっているのを暴露するような行動だったが、コルヴィン夫人は気づいていなかった。子供でも、何かおかしいと気付くようなことなのに。

 さて、お茶会にはキートン夫人の教え子たちが幾人も来ていた。その騒動でキートン夫人が何やら辛い目にあったことを知る。そしてそのために、この大好きな屋敷を手放さなくてはならなくなっていることを。それもキートン夫人はひとつも悪くないのに。敢えて悪いとすることがあるなら、ワンダ夫人を深く調べることなく信じたことだろう。
 子供たちは純粋に望んだ。悪いことになんか負けないでと。わたしたちの大好きな先生がそんなことに負けるはずはないと。
 キートン夫人は騙されたと気づいてから、自分を責めてばかりいたが、子供たちに励まされ、もう一度顔をあげることを決意した。

 お茶会の後片付けをしている最中に、わたしの仕掛けた嫌がらせは過剰な反応を見せ、わたしが誘拐された。
 バイエルン家当主を守護するblackという団体に助けられ生き延びたのだけど、もちろんここでは運よく、誰かに助けられたことになっている。
 どうして誘拐されたかはわからないけれど、詐欺話の全容を知っているような物語を小道具に使ったことで、わたしが、ひいてはシュタイン家が何をどこまで掴んでいるのか知りたそうな印象だった。

 助け出された後、コルヴィン夫人とドナモラ伯爵が亡くなっているのが見つかり、伯爵令嬢誘拐を企み失敗し逃げられないと思ったので、自害したのだろうと事件は収束された。
 キートン夫人がワンダ夫人を訴えたので、かつての教え子たちが、大手を振って追及を始めた。詐欺にあったことはすぐに立証され、キートン夫人は罰金を払う必要はなくなった。
 詐欺師のワンダ夫人を探そうとしたが、とっかかりは、コルヴィン夫人、そしてワンダ夫人と顔見知りのドナモラ伯爵だったので、ふたりが亡くなったことから、ワンダ夫人を探すのは難しくなった。

 アダムはわたしたちにいくつか質問をして、〝そういうことか〟と考え込んだ。


「そういえば、おかしなことがわかったと言っていたね。それはどんなことだい?」

 アダムが促す。
 そっか、進展があったみたいだものね。陛下にもロサが言っていた。

「ドナモラ伯が生きているかもしれない」

「え? 亡くなったって……」

 なんじゃそりゃと思って、尋ねてしまう。
 だって、騎士が遺体をみつけて、亡くなったと判断されたことだ。

「それが仮面の内側に毒薬が塗ってあり、顔は識別できない状態だったようなんだ」

「え? では、ただ背丈や格好だけで、ドナモラ伯だということにしたの?」

 そんな適当な調べだったわけ?

「いや、ドナモラ伯はあの事件の1年ほど前に事故に遭い、声帯をやられてしまってね。それで喉に声を出す魔具を埋め込んでいた。その魔具がある遺体だったのでドナモラ伯だと決定づけたんだ」

 あ、ボイスチェンジャーで話すような声だった!
 そういえばあの時、仮面を被り顔をわからなくしていたし、声もわからないようにしていると思ったから、わたしを返す気なのだろうと思ったけど、とんでもない。まさにあの声でドナモラ伯と一発でわかることだった。ってことは、はなっからわたしを返す気なかったんじゃん!

「7年前の詐欺事件が今回のことに関係しているだろうから、調べ直したんだ。そこで、気になることを聞いた。その事故でドナモラ伯は人が変わったようになったそうなんだよ」

「人が変わった?」

「まあ、声帯が駄目になるような事故だ、辛い目にあって、変わるのも当たり前だとみんな受け止めたみたいだけれど。それまでのドナモラ伯は、その……気が弱くて自分から意見を言い出すようなことはない、そして穏やかな方だったらしい。
 それが事故に遭ってから、攻撃的な人になった。彼に人生を狂わされた人はたった1年の間で数多くいるそうだ。そして金づかいが荒くなり、投資話に目の色が変わったという。先代までの赤字だった経営を、彼が堅実にコツコツと積み上げて黒字にしたのに、それを1年で使い切り借金まで拵えた」

 大きい怪我をしたことが原因で、人が変わっちゃったってことかな?

「そんなドナモラ伯に似た人を、エレブ共和国で見たという情報があった」

 イザークが抑えた声で新情報を告げた。

「それから、もうひとつ。それらの買われた土地の使い道」

 土地を買う時は、簡単な使い道を申請するそうだ。家族で住む家を建てる、とか。夏の避暑するための別荘だとか。

「申請では、木を植えるって話していたそうなんだよ」

「木を植える?」

 樹木畑?
 ユオブリアの貴族が、エレブ共和国の土地を買い漁って木を植える?
 なんじゃそりゃと、思わず眉根が寄った。
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