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15章 あなたとわたし
第620話 子供たちの計画⑦合流
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「リディア嬢!」
もふさまにロサたちが来たようだと聞いて、玄関でお出迎えすると、みんなに名前を呼ばれる。
「あらかた、殿下から聞いたよ。大変だったね」
とダニエル。
無言で頭を撫でてくれたのはイザーク。
「元気そうで安心した」
とニカっと笑ったのはブライ。
「祈ることしかできないのが、もどかしいです」
と、すまなそうにしたのはルシオだ。
みんなわたしの無事を喜んでくれる。
最後に兄さまが佇んでいた。
王宮のメイド服は、立ち襟の黒いロングワンピースに、真っ白のエプロンを纏ったもの。エプロンは肩のところだけひだをたっぷり施し、大きく膨らませているけれど、あとはシンプルだ。さすがに生地は良さそうだけどね。たった2色だけで構成された服を着ているのに、圧倒的な存在感。美しさが余計に引き立っているかも。髪は茶色のウィッグの毛を上でひとつにまとめ、白い布で包んでいた。
「しばらく……リディアさまの侍女を命じられました。よろしくお願いします」
と、兄さまの普通の声で言われる。
信頼できる侍女って兄さまのことだったのか。わたしにつけてくれるんだ。
そしたら実験もできるし、大変ありがたいけど……。兄さまはちょっと不機嫌だ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
アダムが後ろから現れると、みんな一斉に跪いた。
「ごきげんよう」
アダムが声を掛けると、ダニエルが代表して言葉を発する。
「第1王子殿下に、ご挨拶申し上げます」
「ここでは畏まらなくていいよ。ブレドのことだけでなく、私まで君たちを巻き込むことになったが、協力してもらえると助かるよ」
アダムがそういう体を取れば、みんなが胸に手を当てた。
兄さまもメイドのスカート姿で片膝をついている。なのに、どこか優雅に見えるからすごいね。わたしがやっても、そうはならないよ。
何を思ったのか、アダムはみんなに地下基地を案内した。
体育館ではみんな歓声を上げる。テンションが上がってる。なぜ?
アダムは部屋は有り余っているから、いつでも泊まってくれていいよと言った。
それからさりげなく、ガゴチが陛下に謁見を望んだこと、恐らくみんなも目をつけられて、行動を見張られている危険性があることをさらりと言った。
特にわたしと侍女は地下から出ないよう、もう一度諭される。
居間で作戦会議をすることにする。
お茶を入れようとすると、兄さまに止められた。
これは侍女の仕事だそうだ。
先にわたしたちの計画を話した。計画っていっても、まだ婚約発表をするってだけなんだけどね。
ロサから聞いていたんだろう、ダニエルに言われる。
「リディア嬢、変化することを本当に明かすのかい?」
「……うん」
「いいのか?」
ダニエルが、いや、ダニエルだけじゃなくて、みんな心配してくれてる。
「うん。呪術が効かないって思ってもらいたいし、後々、縁談の話もなくなるだろうから、ちょうどいいかと思って」
「そうか」
ひと段落したところで、アダムが促す。
「では、今度はブレドたちの話を聞かせてくれ」
ロサが口火を切った。何も知らないアダムのために外枠からだ。
兄さまはすっきりした顔をしているから、みんなには打ち明けたんだと思う。
けれど表向きは、こうしたようだ。
兄さまは罪人クラウス・バイエルンに間違えられ、一体、何者なんだと、前バイエルン侯を調べた。
候がエレブ共和国で所有しているブレーン農場にて、ユオブリアの機密を漏らしたとタレコミがあり、押しいるとそこだけ破れてしまったかのような地図の端っこがあった。その地図はユオブリアの王室でだけ観覧するのを許された、精巧な地図の一部に見えた。それで国家機密漏洩の疑いがかかり、ユオブリアにて取り調べを受ける。その取り調べている間に、前バイエルン侯は亡くなった。
その罪は子息であるクラウス・バイエルンに移る。けれど、後を追うように、後妻も子息も亡くなった……。それから11年の歳月が流れた今、前バイエルン候に似ているというだけで、迫害を受けた。
事情を聞くだけならともかく、地図の端っこがあっただけで、前バイエルン候が拘束されたのは腑に落ちなかった。不思議に思い、そして自分にも被害が及んでいるので、もう少しだけ調べてみることにした。
兄さまはエレブ共和国のブレーン農場に密偵を送った。といっても、年月が経ち過ぎている。所有者も変わっているのだ。ただそう確認するためだけのはずだった。ところが、決定的なことを聞いてしまう。罪人になったフランツなら、ちょうどいいと、何かの罪を被されようとしていることを。
折しも自分はランディラカの保護下から出て放浪中。今だったら簡単に罪人となってしまう。それを回避するため、そして本当の悪人を見過ごさないために、ロサ殿下の力を借り、阻止することに決めた。
それがきっかけ。
ロサたちはまず、兄さまを王宮に匿った。兄さまの所在不明が、一番利用されやすいからだ。
エレブ共和国のブレーン農場は、今はメラノ公爵家の持ち物。そこで話を聞いた。メラノ公は絶対に関与している。かといって物証がないうちにメラノ公やブレーン農場とワードを出すのは危険すぎる。
と、6人で考えていた時、ロサは思い出した。エレブ共和国といえば、ちょうど今、ユオブリア有権者の土地買いについて、ユオブリアが調べている国だと。
彼らはそれが使えると思った。
恩師がまた何かに巻き込まれているのではないかと不安になり、有志で「外国の土地活用」の論文を書くために調べていると装うことにした。エレブ共和国に前から土地を持ち、農場を経営しているメラノ公に話を聞きにいく算段も取り付けている。
アダムへの説明、それから自分たちでも考えをまとめる意味でもあるのだろう、土地買いについてのあらましも、みんなで補い合いながら話してくれた。
もふさまにロサたちが来たようだと聞いて、玄関でお出迎えすると、みんなに名前を呼ばれる。
「あらかた、殿下から聞いたよ。大変だったね」
とダニエル。
無言で頭を撫でてくれたのはイザーク。
「元気そうで安心した」
とニカっと笑ったのはブライ。
「祈ることしかできないのが、もどかしいです」
と、すまなそうにしたのはルシオだ。
みんなわたしの無事を喜んでくれる。
最後に兄さまが佇んでいた。
王宮のメイド服は、立ち襟の黒いロングワンピースに、真っ白のエプロンを纏ったもの。エプロンは肩のところだけひだをたっぷり施し、大きく膨らませているけれど、あとはシンプルだ。さすがに生地は良さそうだけどね。たった2色だけで構成された服を着ているのに、圧倒的な存在感。美しさが余計に引き立っているかも。髪は茶色のウィッグの毛を上でひとつにまとめ、白い布で包んでいた。
「しばらく……リディアさまの侍女を命じられました。よろしくお願いします」
と、兄さまの普通の声で言われる。
信頼できる侍女って兄さまのことだったのか。わたしにつけてくれるんだ。
そしたら実験もできるし、大変ありがたいけど……。兄さまはちょっと不機嫌だ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
アダムが後ろから現れると、みんな一斉に跪いた。
「ごきげんよう」
アダムが声を掛けると、ダニエルが代表して言葉を発する。
「第1王子殿下に、ご挨拶申し上げます」
「ここでは畏まらなくていいよ。ブレドのことだけでなく、私まで君たちを巻き込むことになったが、協力してもらえると助かるよ」
アダムがそういう体を取れば、みんなが胸に手を当てた。
兄さまもメイドのスカート姿で片膝をついている。なのに、どこか優雅に見えるからすごいね。わたしがやっても、そうはならないよ。
何を思ったのか、アダムはみんなに地下基地を案内した。
体育館ではみんな歓声を上げる。テンションが上がってる。なぜ?
アダムは部屋は有り余っているから、いつでも泊まってくれていいよと言った。
それからさりげなく、ガゴチが陛下に謁見を望んだこと、恐らくみんなも目をつけられて、行動を見張られている危険性があることをさらりと言った。
特にわたしと侍女は地下から出ないよう、もう一度諭される。
居間で作戦会議をすることにする。
お茶を入れようとすると、兄さまに止められた。
これは侍女の仕事だそうだ。
先にわたしたちの計画を話した。計画っていっても、まだ婚約発表をするってだけなんだけどね。
ロサから聞いていたんだろう、ダニエルに言われる。
「リディア嬢、変化することを本当に明かすのかい?」
「……うん」
「いいのか?」
ダニエルが、いや、ダニエルだけじゃなくて、みんな心配してくれてる。
「うん。呪術が効かないって思ってもらいたいし、後々、縁談の話もなくなるだろうから、ちょうどいいかと思って」
「そうか」
ひと段落したところで、アダムが促す。
「では、今度はブレドたちの話を聞かせてくれ」
ロサが口火を切った。何も知らないアダムのために外枠からだ。
兄さまはすっきりした顔をしているから、みんなには打ち明けたんだと思う。
けれど表向きは、こうしたようだ。
兄さまは罪人クラウス・バイエルンに間違えられ、一体、何者なんだと、前バイエルン侯を調べた。
候がエレブ共和国で所有しているブレーン農場にて、ユオブリアの機密を漏らしたとタレコミがあり、押しいるとそこだけ破れてしまったかのような地図の端っこがあった。その地図はユオブリアの王室でだけ観覧するのを許された、精巧な地図の一部に見えた。それで国家機密漏洩の疑いがかかり、ユオブリアにて取り調べを受ける。その取り調べている間に、前バイエルン侯は亡くなった。
その罪は子息であるクラウス・バイエルンに移る。けれど、後を追うように、後妻も子息も亡くなった……。それから11年の歳月が流れた今、前バイエルン候に似ているというだけで、迫害を受けた。
事情を聞くだけならともかく、地図の端っこがあっただけで、前バイエルン候が拘束されたのは腑に落ちなかった。不思議に思い、そして自分にも被害が及んでいるので、もう少しだけ調べてみることにした。
兄さまはエレブ共和国のブレーン農場に密偵を送った。といっても、年月が経ち過ぎている。所有者も変わっているのだ。ただそう確認するためだけのはずだった。ところが、決定的なことを聞いてしまう。罪人になったフランツなら、ちょうどいいと、何かの罪を被されようとしていることを。
折しも自分はランディラカの保護下から出て放浪中。今だったら簡単に罪人となってしまう。それを回避するため、そして本当の悪人を見過ごさないために、ロサ殿下の力を借り、阻止することに決めた。
それがきっかけ。
ロサたちはまず、兄さまを王宮に匿った。兄さまの所在不明が、一番利用されやすいからだ。
エレブ共和国のブレーン農場は、今はメラノ公爵家の持ち物。そこで話を聞いた。メラノ公は絶対に関与している。かといって物証がないうちにメラノ公やブレーン農場とワードを出すのは危険すぎる。
と、6人で考えていた時、ロサは思い出した。エレブ共和国といえば、ちょうど今、ユオブリア有権者の土地買いについて、ユオブリアが調べている国だと。
彼らはそれが使えると思った。
恩師がまた何かに巻き込まれているのではないかと不安になり、有志で「外国の土地活用」の論文を書くために調べていると装うことにした。エレブ共和国に前から土地を持ち、農場を経営しているメラノ公に話を聞きにいく算段も取り付けている。
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