プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
618 / 906
15章 あなたとわたし

第618話 子供たちの計画⑤日向の匂い

しおりを挟む
「試験か……」

「君は気にすることないよ」

 アダムはソファーから立ち上がる。

「ブレドが成人まで何も問題を起こさなければ、彼が時期国王だ」

「え? 決まったの?」

「第3王子も第5王子も思考が幼いからね。末端だけど公爵家の方は……野心がありすぎるし、貴族よりだから。平民を置き去りにした政治になる。だから陛下は望まれていないみたいだ」

「アダムは?」

 アダムはため息をつく。

「考えてみてよ。僕を王になんかするわけないだろ? 血は繋がっていないんだから。……いつ狂うかわからないしね」

「絶対に狂わないじゃない」

 ふふっとアダムは笑う。

「まあ、誰になるとしても絶対〝誰か〟は反対するんだ。その時に、こんな業績があるって示すための結果を作っとけってだけだから。君は気にしなくていい。君こそ命を狙われているんだから、この場所は安全ではあるけれど、気を抜かないようにね」

 お風呂を譲り合い、結局わたしが先にもらうことにした。
 広いお風呂で、お湯も出がいい。飾りのような遊びは一切ないのが徹底している。
 もふさまとよくあったまり、お風呂を出た。
 アダムから、もちろんもふさまもお風呂に入るオッケーはもらっている。

 さて、お風呂が空いたよと伝えるのに、部屋の扉をノックする。
 部屋を出てきたアダムは、伝えにきてくれてありがとうと言ってから、わたしを引き留めた。
 そしてタオルで頭をガシガシ拭かれる。

「ちょっと、痛い」

「痛いじゃないだろ。こんな濡れてたら風邪ひくよ?」

 部屋に戻ったら、ドライヤーで乾かすからいいのに。
 もう髪の毛が長すぎて乾かすのも一苦労なんだけど、タオルだけでアダムはかなり水気を飛ばしてくれた。

「ありがとう。長くなり過ぎちゃって。切ろうかな」

「え? 自分で切るとか言わないよね?」

「後で誰かにちゃんと切ってもらうけど、今日は自分でざっくり切ろうかな」

「君ってなんで、自分に対してそんなにどうでもいいの? そういうのやめようよ。仮にも伯爵令嬢なんだから!」

 それから本当に髪を切りたいのかと言われ頷くと、アダムが切ってくれると言った。
 帰りが遅かったからか、もふさまが様子を見にきた。

「あ、もふさま」

「お遣いさま、リディア嬢が自分で髪を切るというので、せめて僕が切ることにしました」

『リディアより、お前の方が器用そうだ』

「もふさま?」

 チロリともふさまを見ちゃる。いつも一番近くにいるだけに、そのもふさまに不器用だと思われているのは、合っているが素直に頷きたくない。

「お遣いさまはなんて?」

「わたしよりアダムの方が器用そうだって」

 アダムは笑った。

「どうせ、わたしは不器用よ」

「違うよ。ああ、君が不器用なのは事実だと思うけど。時々お遣いさまが強く伝えたいと思った意思だけわかるんじゃなかったの? 食事の時も普通に話してたよ、君」

 え。
 あ、そうだったかも。
 一瞬ヒヤリとしたけれど、言い繕う。

「お遣いさまが話そうとされていれば、わかるの。お遣いさまの能力よ。わたしは恩恵を受けているだけ」

「はいはい、そういうことにしておいてあげるよ」

 アダムは背中の真ん中ぐらいの長さに、髪を切ってくれた。

「ありがとう、軽くなった」

「伸ばしていたわけじゃないのかい?」

「うん、切らずにいたら伸び過ぎちゃったの。アダムって本当に器用ね。なんでもできるし」

「そんなこともないけど、これも面白い経験だね。きっとどんなに生きても、女性の髪を切るなんて、今後ないと思うよ」

 ま、確かにそうかもね。髪結いの仕事につかなきゃ、髪を切ったりしないもの。

 アダムが自分は呪術に関してあまり知らないので、わたしの知っていることを教えてと言った。わたしは今まで呪術に関して知ったことをアダムに説明した。呪う時には媒体に被呪者が接触する必要があるというと、驚いていて、わたしが呪いをかけられた時に、媒体と接触した心当たりはないのかと問われた。

 時期的に、記念パーティーの時か、犯罪者を匿っている騒動で、人ともいっぱい会ったし、汚された時に片付けをしたりなんだりして、いっぱいのものを触っていて、とても絞れないと話した。アダムは残念そうだった。
 その時は聞き流していたけれど、片付けをしたってそれどういうこと?と尋ねられ、状況を伝えると、大まかには知っていたけれど、そんなひどいことになっていたとは驚いていた。
 夜も更けてきたし、アダムはこれからお風呂なので、もう一度お礼を行って部屋へと戻った。



 ウチで作っている布団がピカイチだと思うけど、王宮で用意されているものも、かなりいいものだ。

『リディア、貴族令嬢にとって婚約とは、大きな意味を持つことなのだろう? フランツ以外と交わしていいのか?』

「あくまで敵を炙り出すためだしね。それにわたし、兄さまには婚約破棄されちゃったから」

 もふさまが自分から、わたしの腕の中に顔を突っ込む。
 もふもふしていいってことかな。
 そのまま抱きしめて、もふさまの匂いを吸い込む。
 日向ぼっこしてるわけじゃないのに、なんで日向の匂いがするんだろう?
 そういえばやっぱり地下でずっと暮らすって、人には適してないんじゃないかな? はめ殺しの窓。そりゃ生きるためのものはなんでも揃っているとしても、やっぱりお日さま必要だよ。ずっと閉じ込められていたら、それこそ気が狂いそうになるんじゃないかな。日の光を浴びないと。地下で暮らすのはどうにかならないのかなー。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

転生した愛し子は幸せを知る

ひつ
ファンタジー
【連載再開】  長らくお待たせしました!休載状態でしたが今月より復帰できそうです(手術後でまだリハビリ中のため不定期になります)。これからもどうぞ宜しくお願いします(^^) ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢  宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。  次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!    転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。  結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。  第13回ファンタジー大賞 176位  第14回ファンタジー大賞 76位  第15回ファンタジー大賞 70位 ありがとうございます(●´ω`●)

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

処理中です...