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15章 あなたとわたし
第618話 子供たちの計画⑤日向の匂い
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「試験か……」
「君は気にすることないよ」
アダムはソファーから立ち上がる。
「ブレドが成人まで何も問題を起こさなければ、彼が時期国王だ」
「え? 決まったの?」
「第3王子も第5王子も思考が幼いからね。末端だけど公爵家の方は……野心がありすぎるし、貴族よりだから。平民を置き去りにした政治になる。だから陛下は望まれていないみたいだ」
「アダムは?」
アダムはため息をつく。
「考えてみてよ。僕を王になんかするわけないだろ? 血は繋がっていないんだから。……いつ狂うかわからないしね」
「絶対に狂わないじゃない」
ふふっとアダムは笑う。
「まあ、誰になるとしても絶対〝誰か〟は反対するんだ。その時に、こんな業績があるって示すための結果を作っとけってだけだから。君は気にしなくていい。君こそ命を狙われているんだから、この場所は安全ではあるけれど、気を抜かないようにね」
お風呂を譲り合い、結局わたしが先にもらうことにした。
広いお風呂で、お湯も出がいい。飾りのような遊びは一切ないのが徹底している。
もふさまとよくあったまり、お風呂を出た。
アダムから、もちろんもふさまもお風呂に入るオッケーはもらっている。
さて、お風呂が空いたよと伝えるのに、部屋の扉をノックする。
部屋を出てきたアダムは、伝えにきてくれてありがとうと言ってから、わたしを引き留めた。
そしてタオルで頭をガシガシ拭かれる。
「ちょっと、痛い」
「痛いじゃないだろ。こんな濡れてたら風邪ひくよ?」
部屋に戻ったら、ドライヤーで乾かすからいいのに。
もう髪の毛が長すぎて乾かすのも一苦労なんだけど、タオルだけでアダムはかなり水気を飛ばしてくれた。
「ありがとう。長くなり過ぎちゃって。切ろうかな」
「え? 自分で切るとか言わないよね?」
「後で誰かにちゃんと切ってもらうけど、今日は自分でざっくり切ろうかな」
「君ってなんで、自分に対してそんなにどうでもいいの? そういうのやめようよ。仮にも伯爵令嬢なんだから!」
それから本当に髪を切りたいのかと言われ頷くと、アダムが切ってくれると言った。
帰りが遅かったからか、もふさまが様子を見にきた。
「あ、もふさま」
「お遣いさま、リディア嬢が自分で髪を切るというので、せめて僕が切ることにしました」
『リディアより、お前の方が器用そうだ』
「もふさま?」
チロリともふさまを見ちゃる。いつも一番近くにいるだけに、そのもふさまに不器用だと思われているのは、合っているが素直に頷きたくない。
「お遣いさまはなんて?」
「わたしよりアダムの方が器用そうだって」
アダムは笑った。
「どうせ、わたしは不器用よ」
「違うよ。ああ、君が不器用なのは事実だと思うけど。時々お遣いさまが強く伝えたいと思った意思だけわかるんじゃなかったの? 食事の時も普通に話してたよ、君」
え。
あ、そうだったかも。
一瞬ヒヤリとしたけれど、言い繕う。
「お遣いさまが話そうとされていれば、わかるの。お遣いさまの能力よ。わたしは恩恵を受けているだけ」
「はいはい、そういうことにしておいてあげるよ」
アダムは背中の真ん中ぐらいの長さに、髪を切ってくれた。
「ありがとう、軽くなった」
「伸ばしていたわけじゃないのかい?」
「うん、切らずにいたら伸び過ぎちゃったの。アダムって本当に器用ね。なんでもできるし」
「そんなこともないけど、これも面白い経験だね。きっとどんなに生きても、女性の髪を切るなんて、今後ないと思うよ」
ま、確かにそうかもね。髪結いの仕事につかなきゃ、髪を切ったりしないもの。
アダムが自分は呪術に関してあまり知らないので、わたしの知っていることを教えてと言った。わたしは今まで呪術に関して知ったことをアダムに説明した。呪う時には媒体に被呪者が接触する必要があるというと、驚いていて、わたしが呪いをかけられた時に、媒体と接触した心当たりはないのかと問われた。
時期的に、記念パーティーの時か、犯罪者を匿っている騒動で、人ともいっぱい会ったし、汚された時に片付けをしたりなんだりして、いっぱいのものを触っていて、とても絞れないと話した。アダムは残念そうだった。
その時は聞き流していたけれど、片付けをしたってそれどういうこと?と尋ねられ、状況を伝えると、大まかには知っていたけれど、そんなひどいことになっていたとは驚いていた。
夜も更けてきたし、アダムはこれからお風呂なので、もう一度お礼を行って部屋へと戻った。
ウチで作っている布団がピカイチだと思うけど、王宮で用意されているものも、かなりいいものだ。
『リディア、貴族令嬢にとって婚約とは、大きな意味を持つことなのだろう? フランツ以外と交わしていいのか?』
「あくまで敵を炙り出すためだしね。それにわたし、兄さまには婚約破棄されちゃったから」
もふさまが自分から、わたしの腕の中に顔を突っ込む。
もふもふしていいってことかな。
そのまま抱きしめて、もふさまの匂いを吸い込む。
日向ぼっこしてるわけじゃないのに、なんで日向の匂いがするんだろう?
そういえばやっぱり地下でずっと暮らすって、人には適してないんじゃないかな? はめ殺しの窓。そりゃ生きるためのものはなんでも揃っているとしても、やっぱりお日さま必要だよ。ずっと閉じ込められていたら、それこそ気が狂いそうになるんじゃないかな。日の光を浴びないと。地下で暮らすのはどうにかならないのかなー。
「君は気にすることないよ」
アダムはソファーから立ち上がる。
「ブレドが成人まで何も問題を起こさなければ、彼が時期国王だ」
「え? 決まったの?」
「第3王子も第5王子も思考が幼いからね。末端だけど公爵家の方は……野心がありすぎるし、貴族よりだから。平民を置き去りにした政治になる。だから陛下は望まれていないみたいだ」
「アダムは?」
アダムはため息をつく。
「考えてみてよ。僕を王になんかするわけないだろ? 血は繋がっていないんだから。……いつ狂うかわからないしね」
「絶対に狂わないじゃない」
ふふっとアダムは笑う。
「まあ、誰になるとしても絶対〝誰か〟は反対するんだ。その時に、こんな業績があるって示すための結果を作っとけってだけだから。君は気にしなくていい。君こそ命を狙われているんだから、この場所は安全ではあるけれど、気を抜かないようにね」
お風呂を譲り合い、結局わたしが先にもらうことにした。
広いお風呂で、お湯も出がいい。飾りのような遊びは一切ないのが徹底している。
もふさまとよくあったまり、お風呂を出た。
アダムから、もちろんもふさまもお風呂に入るオッケーはもらっている。
さて、お風呂が空いたよと伝えるのに、部屋の扉をノックする。
部屋を出てきたアダムは、伝えにきてくれてありがとうと言ってから、わたしを引き留めた。
そしてタオルで頭をガシガシ拭かれる。
「ちょっと、痛い」
「痛いじゃないだろ。こんな濡れてたら風邪ひくよ?」
部屋に戻ったら、ドライヤーで乾かすからいいのに。
もう髪の毛が長すぎて乾かすのも一苦労なんだけど、タオルだけでアダムはかなり水気を飛ばしてくれた。
「ありがとう。長くなり過ぎちゃって。切ろうかな」
「え? 自分で切るとか言わないよね?」
「後で誰かにちゃんと切ってもらうけど、今日は自分でざっくり切ろうかな」
「君ってなんで、自分に対してそんなにどうでもいいの? そういうのやめようよ。仮にも伯爵令嬢なんだから!」
それから本当に髪を切りたいのかと言われ頷くと、アダムが切ってくれると言った。
帰りが遅かったからか、もふさまが様子を見にきた。
「あ、もふさま」
「お遣いさま、リディア嬢が自分で髪を切るというので、せめて僕が切ることにしました」
『リディアより、お前の方が器用そうだ』
「もふさま?」
チロリともふさまを見ちゃる。いつも一番近くにいるだけに、そのもふさまに不器用だと思われているのは、合っているが素直に頷きたくない。
「お遣いさまはなんて?」
「わたしよりアダムの方が器用そうだって」
アダムは笑った。
「どうせ、わたしは不器用よ」
「違うよ。ああ、君が不器用なのは事実だと思うけど。時々お遣いさまが強く伝えたいと思った意思だけわかるんじゃなかったの? 食事の時も普通に話してたよ、君」
え。
あ、そうだったかも。
一瞬ヒヤリとしたけれど、言い繕う。
「お遣いさまが話そうとされていれば、わかるの。お遣いさまの能力よ。わたしは恩恵を受けているだけ」
「はいはい、そういうことにしておいてあげるよ」
アダムは背中の真ん中ぐらいの長さに、髪を切ってくれた。
「ありがとう、軽くなった」
「伸ばしていたわけじゃないのかい?」
「うん、切らずにいたら伸び過ぎちゃったの。アダムって本当に器用ね。なんでもできるし」
「そんなこともないけど、これも面白い経験だね。きっとどんなに生きても、女性の髪を切るなんて、今後ないと思うよ」
ま、確かにそうかもね。髪結いの仕事につかなきゃ、髪を切ったりしないもの。
アダムが自分は呪術に関してあまり知らないので、わたしの知っていることを教えてと言った。わたしは今まで呪術に関して知ったことをアダムに説明した。呪う時には媒体に被呪者が接触する必要があるというと、驚いていて、わたしが呪いをかけられた時に、媒体と接触した心当たりはないのかと問われた。
時期的に、記念パーティーの時か、犯罪者を匿っている騒動で、人ともいっぱい会ったし、汚された時に片付けをしたりなんだりして、いっぱいのものを触っていて、とても絞れないと話した。アダムは残念そうだった。
その時は聞き流していたけれど、片付けをしたってそれどういうこと?と尋ねられ、状況を伝えると、大まかには知っていたけれど、そんなひどいことになっていたとは驚いていた。
夜も更けてきたし、アダムはこれからお風呂なので、もう一度お礼を行って部屋へと戻った。
ウチで作っている布団がピカイチだと思うけど、王宮で用意されているものも、かなりいいものだ。
『リディア、貴族令嬢にとって婚約とは、大きな意味を持つことなのだろう? フランツ以外と交わしていいのか?』
「あくまで敵を炙り出すためだしね。それにわたし、兄さまには婚約破棄されちゃったから」
もふさまが自分から、わたしの腕の中に顔を突っ込む。
もふもふしていいってことかな。
そのまま抱きしめて、もふさまの匂いを吸い込む。
日向ぼっこしてるわけじゃないのに、なんで日向の匂いがするんだろう?
そういえばやっぱり地下でずっと暮らすって、人には適してないんじゃないかな? はめ殺しの窓。そりゃ生きるためのものはなんでも揃っているとしても、やっぱりお日さま必要だよ。ずっと閉じ込められていたら、それこそ気が狂いそうになるんじゃないかな。日の光を浴びないと。地下で暮らすのはどうにかならないのかなー。
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