プラス的 異世界の過ごし方

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15章 あなたとわたし

第616話 子供たちの計画③最強の組み合わせ

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 アダムとロサは顔を見合わせた。
 二人ともタイプは似ていないイケメンだと思ったけど、並んでそっくりな動作をすると、血筋を感じる。そう気がついてみれば、あれ、賢さとか、処理能力の速さ、閃き具合なんかも似ているかもしれない。

「シュタイン伯がわかっていらっしゃるようだから、君もてっきりわかっているものと……」

 アダムが困惑しているように言った。
 父さまはわかっている?

「泣きそうになっていたものね」

 ロサが人差し指で頬を掻いている。

「あれは、家族を思って……」

 ん? 父さまが泣くような流れ? どういうこと?

「決まったことをはっきりと教えてくれる? よくわからないんだけど」

「君の生きているお披露目は、私との婚約発表だよ」

 は?
 声が出なかった。

「もちろん、敵を暴くためだから、終わってから炙り出すためですといえばいいし。お互い一度婚約破棄を経験しているから初めてじゃないし、まぁいいかと思って」

「いつの間にそんな話になったの?」

 愕然とする。わたし、陛下たちとの会談中に眠ったの?
 だってそんな話になった記憶が、全然ないんだけどっ!

「ここは私が2年後、結婚して暮らしていく場所だ」

 知ってると頷く。

「ここで暮らすんだ、そういうことだろう」

 え?
 ええ??

「隠れさせてもらうって、ことじゃなくて?」

「隠れるにもいいし、噂ではコーデリアに関わりを持たせているのだから、そこを突いた方が反応が見られるだろう? 君が秘密裏に私と婚約を結んでいて、その間に猫化したってことになれば、一石二鳥だと思って。この場に入るってことで、わかると思ったんだ。ちゃんと言葉にしないといけなかったね、ごめんね」

 アダムはにこりといい笑顔。ごめんとは少しも思ってない表情で言った。
 くーーーーーっ、悔しい!
 みんなわかってて、わたしだけ気づいてなかったってこと?

 ハッとロサを見る。だからロサは何度も、わたしにそれでいいのかと尋ねたんだ。
 ちゃんと言ってよ。
 と、思いつつ、頭のどこかで、それはベストな計画だと冷静なわたしが言っている。
 王宮の中でも隠れるのに最適な場所で安全。
 敵のことでわかっている情報は、残念ながらわずかだ。そこから敵を炙り出さなくてはならない。
 わかっていることは……
・呪術が使える人がいること
・わたしに悪意を持っていること
・メロディー嬢をよいしょしている
 呪術師を見つけ出すのは困難。わたしに悪意を持つ人も絞り込むのは難しい。
 とすると、わたしに罪をおっかぶせてきたところに、糸口を見つけるしかない。
 わたしが憎すぎて、最近あったことの中からクローズアップしただけって可能性もあるんだけど。
 だけど、殺すだけじゃ飽き足らず、罪までなすりつけるってのは、何かそこに目論見がありそうな気がしたんだよね。
 そしてそう思ったのは、わたしだけじゃなくて、国の現お偉いさま方、次代を担っていくブレーンたちもだ。

 向こうはわたしが唆し、計略に乗ってしまったメロディー嬢が罪を犯し、国外追放になったとしている。そして、わたしは自分の婚約破棄することも叶えた。それを裏付けするかのように、わたしと第1王子の婚約が成されたとなったら、やっぱり反応してきそうだ。
 ふむ。
 あの一瞬で、そこまで思いついたのね。
 なんて人たちだ。
 世間の関心も引けるだろう。
 元々、幽閉決定王子に嫁ぐのが嫌な人たちも、わたしが嫁になったらいいとか言ってきていた。それが叶うわけだ。
 見事な計画な気がする。……父さまもそう思ったから、第一王子の婚約者になるって嘘の設定にも目を瞑ったのだろう。あの泣きそうな顔も、そこまで覚悟を決めたかの顔だったのね。

 あれ、わたし、父さまになんて言った? 母さまのことをお願いした。
 呪術には光の使い手がネックになるから、狙われるかもしれない。だから、守ってって意味だったんだけど。
 敵を欺くためといっても、王族と婚約するわけだから、……母さまが一番怖がっている国とかかわるわけだから、精神的打撃を受ける母さまをよろしくって、そういう意味と思ったのかも。
 わかってなかったのは、わたしだけだったのね。

「驚いたけど、敵を捕らえるには、いい網だね」

 腕を組んで頷く。

「だろ? 即興にしては、かなりいい網だと、後から思ったよ」

 アダムは憂いなく笑った。

「君の猫に変化したままというのが、素晴らしい案だった」

「あ、そう? わたしも捨て身だけど、ちょっといい案かなって」

「ふたりは……なかなかいい組み合わせかもね」

 ふたりで称えあっていると、ロサがひきつった顔で控え目に言った。

「変化したままってのは思いつかなかったもんな。そしてそれなら、シュタイン家が大っぴらに王宮へ来れない理由も、頷けるものになるしね」

 え?
 ウチが王宮に行かないわけ?

 あ、そっか。婚約のお披露目だけど、それを知らせるだけで、集まりはしないってことね。母さまが王宮に来るのは無理だろうから助かる。
 普通だったらありえないけど。

 まぁいくら幽閉確定の王子だって、結婚っていう一大事にその扱いはないんじゃないかって捲し立てるだろうね。敵が便乗してさ。
 そこで仕方なく知らせるわけだ、わたしが猫になってしまったと。

 一般的には獣憑きのスキルが発現かって思うだろうし、敵は呪術がスキルの作用で、死にはしなかったって気づく。失敗したのがわかったら、わたしならもう一度呪おうとは思わないけど、そこから向こうの出方を待つ感じだ。

「それにしても潔いよ。化身は未だ〝獣憑き〟なんて呼ばれて軽視されるのに。伯爵令嬢が本当にそれでいいの?」

「婚約の申し込みがどれだけ減るか、見ものだと思っているわ。それより、アダ、んんっ、エンターさまこそいいの? 獣憑きと婚約するなんてそれこそ正気の沙汰でないって言われてしまうんじゃない?」

 陛下が考え込んでいたのは、その部分なんじゃないかな?

「いつか狂うかもしれない王子と、化身が解けない令嬢、最強の組み合わせな気がするよ」

「……確かに」

 苦笑してしまう。

「義兄上! 狂うなんて、そんなことはあり得ません!」

 ロサが立ち上がって、声をあげた。

 あ、やべ、普通に肯定しちゃった。
 けれど、激昂しているロサには、わたしがそのことを知っていたら変とは、気づかれなかったみたいだ。 
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