プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
615 / 799
15章 あなたとわたし

第615話 子供たちの計画②焼肉

しおりを挟む
「これ、なんの肉だ?」

「多分、ジャンピングボウ」

 ジュージューと脂の焼け落ちる音がたまらない。

「二人とも野菜も食べなよ。葉っぱで包んでもいいし、大根おろしと一緒にでもいいから。お肉ばかりだと、もたれるよ」

 真っ白のご飯に、よく焼いたお肉にたっぷりタレをつけて、ご飯の上に。
 大きく口を開けて、ご飯とお肉を一緒にあむり。
 うう、おいしいーっ。

 次は大根おろしと一緒に。こっちもたまらん。
 野菜もね、タレをつけていっぱいいただくよ。
 熱を加えて甘くなった野菜。そこに甘じょっぱいタレと絡んで、美味しいが相乗効果を奏でだす。
 葉っぱ野菜にお肉を巻いて、タレをつけていただくのも、おいしいよね。

『リディア、おかわり』

 もふさまにニッコニコで、おかわりを促される。
 焦げる前の肉をとっておいたから、いっぱい溜まっている。

「はい、もふさま。タレと大根おろしどっちにする?」

『大根おろしにするかな』

「はーい、どうぞ」

 上にもっさり大根おろしをのせ、お醤油をかける。

「二人とも少食だね」

「今日はかなり食べているんだが」

「そうか? おいしくて食べすぎてしまったんだけど」

 もふもふ軍団と比べちゃ悪いか。
 わたしも久々に食べ過ぎた。肉を食べた!って感じがする。

 それにしても地下といってもさすが王宮! 
 焼肉といえば換気どうしようと思ったんだけど、ここは特別な空調管理がされているそうで、空気もいつもクリーンがかけられているように調整されていた。
 いいな、その技術欲しい!



 みんなで後片付けだ。
 王子でもこういうことできるんだね。見直した!
 ふたりはわたしの指示に従う。

 油のついたお皿やなんやかんやは、ざら紙と呼ばれる、不純物の入った質の悪い紙で汚れを拭き取る。それから水洗いだ。
 ロサに汚れを拭いてもらい、わたしが水洗いして、アダムに水気を拭き取ってもらった。3人でやるとすぐに終わった。
 鉄板も最後に焼いた時にゴミは取り除き、油を全体に行き渡しておいたから、冷めたらすぐしまえるし。

 お茶の用意をして、第一回目の作戦会議をすることにした。
 ロサが紅茶の茶葉を持ってきてくれたので、それでお茶をいれる。
 二人ともお腹がいっぱいなので、お菓子はいらないというけれど、クッキーだけ一応出しておいた。
 もふさまの分は専用のお皿に。



「そういえば、ふたりは初対面なのに、ずいぶん打ち解けてますね」

 アダムとわたしは目を合わせる。

「ブレド、言ってなかったが、私たちはクラスメイトなんだ」

「は? 義兄上は5年生ですよね?」

「学園長に勧められたんだ。学友の素晴らしさを知って欲しいと。第1王子と名乗ると学園を楽しめないだろうから、どこかの貴族ということにして、通ってみたらどうかとね」

 学園長ってまともなんだね。
 幽閉決定な第1王子だと明かしていたら、なかなか友達なんか出来そうにないもの。

「歳が近いと私の顔を知るものもいるからね、去年も1年生で通ったんだが、……体調を悪くしてほとんど通えなくなった。……今年の1年生はふたりも貴族がD組にいるから、今年は留年ということにしてD組にどうかと言われたんだ」

 アダムがD組に現れたのは、学園長の導きだったのか。

「南部貴族のゴーシュ・エンターさまが第1王子さまだったなんて、驚きました」

 ロサに訝しい目で見られた。
 よし、これからエンターさま呼びでいいね。ゴットさま呼びは、絶対いつかいい間違える気がしてたから助かる。
 もふさまがクッキーを食べ終わり、わたしの膝の上に乗ってきた。
 背中をゆっくりと撫でる。

「へぇー。ふたりはクラスメイトか……。リディア嬢、ほっぺをつつきたいと言ったのはもしかして義兄上かな?」

 あ、ああ、ロサよく覚えてるな。
 ゴホッとアダムが咳き込んだ。

「大丈夫?」

 アダムは片手を上げて、もう片方は口に手をやっている。

「そうそう、エンターさまは、すぐにからかうんだよ」

「……リディア嬢が着替えていて驚いたんだ。どうやって着替えたの?」

「え? どうやってって普通にだけど?」

 言ってから思い出した。ホックか……。

「ああ、エンターさまに後ろのホック外してもらった」

 ブフォッとアダムが紅茶を吹き出した。

「どしたの? 大丈夫?」

 変なとこに入ったのかな? さっき咳もしてたから、体調が悪い?

「寒いんじゃない?」

「大丈夫ですか? 義兄上?」

「……大丈夫だ」

「……リディア嬢には、信頼できる侍女をつけましょう」

「……それがいいだろう」

「え? 他の人に言っちゃいけないんじゃないの? 陛下から言われたでしょ?」

「そうだとしても、貴族令嬢に侍女をつけないなんてあり得ないだろ?」

「わたし、ひとりで大丈夫だよ?」

「「いや、侍女は大切だから」」

 声揃えて言わなくても。
 わたしは渋々頷いた。

「それから相手を油断させるために。義兄上が動いている目的を作った方がいいと思うんだ」

 アダムはそれに頷いた。

「私もそう思っていた」

 アダムが動く目的?

「それで、私が他国の土地活用の論文を書くのに調べていておかしなことを見つけ、義兄上に相談に乗ってもらっていると装うのはどうでしょう」

「お互いの目眩しになるってわけだな?」

 お互いの目眩し?
 ふたりは頷き合う。

「それならここに、ブレドの仲間も入れるようにしよう」

「お願いします。あ、リディア嬢、それでいいよね?」

「イザークたちも巻き込むってことね? みんながいいなら、わたしはありがたいけど……」

 ブレーンが増えるわけだからね。
 それに……兄さまと会えるなら、実験ができる。
 ロサは微かに首を傾げた。そして尋ねられる。

「……リディア嬢は、計画をわかっているんだよね?」

「計画ってこれから立てるのよね?」

「細かいところは……そうだけど、あれ、なんだかわかってない気がするな」

「リディア嬢、ここがどこか知ってるよね?」

 アダムに頷く。

「第1王子さまが、2年後から住むところなんですよね?」

「……あれ、わかってなかったのか?」

 え? 何が?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

処理中です...