プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
610 / 776
15章 あなたとわたし

第610話 秘密の謁見② ヘンテコスキル

しおりを挟む
「病み上がりであるそうだが、まずはこうして、生きている令嬢と会うことができて嬉しいぞ。秘密裏に来てもらったのは他でもない。なにゆえかはわからないが、令嬢が亡くなったと頑なに信じている輩がおってな。外国にも噂は届き、主に令嬢を嫁に迎えたいと思っている貴族たちが国に訴え、多くの国から問い合わせが相次いでいる」

 そう言って、小さく息を落とす。
 言葉通り、嫁にしたいんだけど、療養中としか言わないんだよね、本当?って問い合わせだったら、国も陛下も取り次いだりしないだろう。でもそれは相手が犯罪者だったというと趣は変わってくる。

 勝手に縁を結びたがってきて、こちらは断っているのに、しつこく求婚してきた。けれどその相手が罪を犯していた場合、何かしらの繋がりがあると、悪い噂が立ったりする。それを避けるためには、騙されていたとばかりに追求したり、攻撃するしか手立てはない。要するに保身だ。

 わたしが死んだとされ、メロディー嬢追放の立役者だったという噂が蔓延している今、事実を詳かにと各国から問い合わせが殺到しているのだろう。

「現在、令嬢にまつわる噂が飛び交っておる。亡くなった以外に、令嬢が罪を侵したとするものだ。耳にしているか? 発言を許す」

「はい、存じております。第一王子殿下の元婚約者であったコーデリア・メロディー嬢の資金の着服、それが彼女を失錯させるために、わたしが仕向けたことだと」

「単刀直入に聞こう。其方は、そう仕向けたのか?」

「いいえ、わたしはそんなことをしておりません」

 陛下は顎を触った。

「そなたが亡くなり、死人に口無しとばかりに、この噂が広がっている。療養中でそなたが亡くなっていると噂が出た時、どうして生きていると世間に公表しなかった?」

「それは、わたしが死んだと言い出した者たちを、炙り出すためでございます」

 陛下はまたニヤリと笑った。

「炙り出せたのか?」

「……実態は掴めておりません」

「ほう、コーデリア嬢だとは思っていないのか?」

「その答えを本日聞けると思い、参上いたしました」

「それはがっかりさせることになるな。コーデリアの行方は掴めていない」

 表に出てこないということは、やっぱりメロディー嬢ではないのかな?

「普通ならコーデリアだと思うところだろう。そう思わぬのはなぜだ?」

「メロディーさまかもしれません。首謀者は誰だかはわかりません。でも噂に紛れて名前が出され、その本人が黒幕と思うのは、早計だと思ったのです」

「黒幕だったら、自分の名前を使うわけがないと?」

「そうとは言い切れません……。ただ……メロディーさまをよく知っているわけではありませんが……メロディーさまが考える計画とは趣が違う気がしたのです」

 そうなんだよね。彼女は今まで、いろいろ計略を巡らしてきた。
 それはねちっこくまとわりつく感じで、執拗な嫌がらせだと感じた。今回みたいにスパーンと呪って殺しちゃって、全部罪被せちゃって、ほらまあるく収まった!とはストレートすぎて、彼女らしくないと思った。

「それにしても不思議だな。あちらは、どうしてシュタイン嬢が亡くなったと頑なに信じているのか、その心当たりはあるか?」

 まあ、そこだよね。
 わたしは父さまと顔を見合わせる。

「わたしは少し前まで、本当に伏せっておりました。起き上がることもままならない日もあったのです」

「そうであったか……。では奴らは、それを知っていたということか? どこからか、漏れたと?」

「いいえ。わたしは呪術で呪われました。それゆえに、あちらはわたしが死んだと確信しているのです」

 皆さまの目が開かれる。

「呪い?」

 ロサが声を上げる。

「母君が光魔法で呪術を浄化したのか?」

「いいえ」

 わたしは呪術の浄化に対しての誤解を解こうと思った。光の使い手に、呪いの欠片を残してほしくないから。

「シュタイン領の町外れの家は、魔使いの家でした。家族しか入れない部屋があり、そこには書籍が数多くあります。魔力本なども存在します」

 魔法士長さまたちが、身を乗り出した。

「それにより知ったことですが、呪術は呪術でしか浄化はできないそうです」

「なんだと?」

「光魔法で呪術を浄化すると、光の使い手に呪術の残滓が残るそうです。だから魔の規制される300年より前は、光の使い手は呪術も習ったそうです。呪術の解呪を学んでないと命をすり減らすだけだから」

 みんなうっすらと口を開けている。

「わたしは幼い頃、隷属の呪符を使われました。身体の中に元々瘴気が少なかったからでしょうか、わたしの中に未だその呪符の残滓が小さくあるそうです」

 みんな息を飲む。

「それによって、よくないものを引き寄せることがあると、教えてもらいました。わたしはその残滓をどうにかできないかと、家の書物を読み漁りました。そして、呪術は呪術師によってしか浄化できないことを知りました。知ってから、わたしは違法なことを知っておりますが、呪術師を探しています」

 陛下を見上げれば、苦いものを噛んだような顔をしている。

「そんな最中に、今回のことは突然起こりました。わたしは呪術をかけられました。……わたしのスキルが発動し、わたしは死を免れました」

「スキルで呪術を回避!」

 神官長さまは驚きながらも、称えるような声音だった。

「呪術師は媒体となるものを介して、呪術を施します。呪術が成功したかどうか、その媒体の状態で見極めるようです。成就すれば媒体が壊れます。媒体を壊したか壊されたかで、呪った人か、呪われた人か、どちらかの命が消えます。わたしは呪術を回避しましたが、恐らくその媒体は壊れ、呪った人も死んでいない、だから成功したと思える状態なのだと思います」

 皆さま、重たく頷いた。

「わたしのスキルはヘンテコ……少し特殊なようでして。呪詛回避が発動し、変化《へんげ》の尻尾切りが施行されたのです」

「……そんなスキルは聞いたことがないな。特殊だから令嬢が名付けたのか?」

 少し話疲れたのを感じていると、父さまが変わりに説明してくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

とんでもないモノを招いてしまった~聖女は召喚した世界で遊ぶ~

こもろう
ファンタジー
ストルト王国が国内に発生する瘴気を浄化させるために異世界から聖女を召喚した。 召喚されたのは二人の少女。一人は朗らかな美少女。もう一人は陰気な不細工少女。 美少女にのみ浄化の力があったため、不細工な方の少女は王宮から追い出してしまう。 そして美少女を懐柔しようとするが……

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳
ファンタジー
テオ・ローゼは、捨て子だった。しかし、イルムガルト率いる貴族パーティーが彼を拾い、大事に育ててくれた。 テオが十七歳になったその日、彼は鑑定士からユニークスキルが【前世の記憶】と言われ、それがどんな効果を齎すのかが分からなかったイルムガルトは、テオをパーティーから追放すると宣言する。 イルムガルトが捨て子のテオをここまで育てた理由、それは占い師の予言でテオは優秀な人間となるからと言われたからだ。 イルムガルトはテオのユニークスキルを無能だと烙印を押した。しかし、これまでの彼のユニークスキルは、助言と言う形で常に発動していたのだ。 それに気付かないイルムガルトは、テオの身包みを剥いで素っ裸で外に放り出す。 何も身に付けていないテオは町にいられないと思い、町を出て暗闇の中を彷徨う。そんな時、モンスターに襲われてテオは見知らぬ女性に助けられた。 捨てる神あれば拾う神あり。テオは助けてくれた女性、ルナとパーティーを組み、新たな人生を歩む。 一方、貴族パーティーはこれまであったテオの助言を失ったことで、効率良く動くことができずに失敗を繰り返し、没落の道を辿って行く。 これは、ユニークスキルが無能だと判断されたテオが新たな人生を歩み、前世の記憶を生かして幸せになって行く物語。

嫌われ者の【白豚令嬢】の巻き戻り。二度目の人生は失敗しませんわ!

大福金
ファンタジー
コミカライズスタートしました♡♡作画は甲羅まる先生です。 目が覚めると私は牢屋で寝ていた。意味が分からない……。 どうやら私は何故か、悪事を働き処刑される寸前の白豚令嬢【ソフィア・グレイドル】に生まれ変わっていた。 何で?そんな事が? 処刑台の上で首を切り落とされる寸前で神様がいきなり現れ、『魂を入れる体を間違えた』と言われた。 ちょっと待って?! 続いて神様は、追い打ちをかける様に絶望的な言葉を言った。 魂が体に定着し、私はソフィア・グレイドルとして生きるしかない と…… え? この先は首を切り落とされ死ぬだけですけど? 神様は五歳から人生をやり直して見ないかと提案してくれた。 お詫びとして色々なチート能力も付けてくれたし? このやり直し!絶対に成功させて幸せな老後を送るんだから! ソフィアに待ち受ける数々のフラグをへし折り時にはザマァしてみたり……幸せな未来の為に頑張ります。 そんな新たなソフィアが皆から知らない内に愛されて行くお話。 実はこの世界、主人公ソフィアは全く知らないが、乙女ゲームの世界なのである。 ヒロインも登場しイベントフラグが立ちますが、ソフィアは知らずにゲームのフラグをも力ずくでへし折ります。

本の虫令嬢は幼馴染に夢中な婚約者に愛想を尽かす

初瀬 叶
恋愛
『本の虫令嬢』 こんな通り名がつく様になったのは、いつの頃からだろうか?……もう随分前の事で忘れた。 私、マーガレット・ロビーには婚約者が居る。幼い頃に決められた婚約者、彼の名前はフェリックス・ハウエル侯爵令息。彼は私より二つ歳上の十九歳。いや、もうすぐ二十歳か。まだ新人だが、近衛騎士として王宮で働いている。 私は彼との初めての顔合せの時を思い出していた。あれはもう十年前だ。 『お前がマーガレットか。僕の名はフェリックスだ。僕は侯爵の息子、お前は伯爵の娘だから『フェリックス様』と呼ぶように」 十歳のフェリックス様から高圧的にそう言われた。まだ七つの私はなんだか威張った男の子だな……と思ったが『わかりました。フェリックス様』と素直に返事をした。 そして続けて、 『僕は将来立派な近衛騎士になって、ステファニーを守る。これは約束なんだ。だからお前よりステファニーを優先する事があっても文句を言うな』 挨拶もそこそこに彼の口から飛び出したのはこんな言葉だった。 ※中世ヨーロッパ風のお話ですが私の頭の中の異世界のお話です ※史実には則っておりませんのでご了承下さい ※相変わらずのゆるふわ設定です

何でも欲しがる妹が、私が愛している人を奪うと言い出しました。でもその方を愛しているのは、私ではなく怖い侯爵令嬢様ですよ?

柚木ゆず
ファンタジー
「ふ~ん。レナエルはオーガスティン様を愛していて、しかもわたくし達に内緒で交際をしていましたのね」  姉レナエルのものを何でも欲しがる、ニーザリア子爵家の次女ザラ。彼女はレナエルのとある寝言を聞いたことによりそう確信し、今まで興味がなかったテデファリゼ侯爵家の嫡男オーガスティンに好意を抱くようになりました。 「ふふ。貴方が好きな人は、もらいますわ」  そのためザラは自身を溺愛する両親に頼み、レナエルを自室に軟禁した上でアプローチを始めるのですが――。そういった事実はなく、それは大きな勘違いでした。  オーガスティンを愛しているのは姉レナエルではなく、恐ろしい性質を持った侯爵令嬢マリーで――。 ※全体で見た場合恋愛シーンよりもその他のシーンが多いため、2月11日に恋愛ジャンルからファンタジージャンルへの変更を行わせていただきました(内容に変更はございません)。

処理中です...