プラス的 異世界の過ごし方

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14章 君の味方

第606話 聖なる闇夜の祝い唄⑤満悦

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 少しすると、父さまと母さまが連れ立って、食事を持ってきてくれた。
 お客さまがきたと言ったので、父さまも様子を見に来たのだろう。

「り、リディア、こちらはどちらさまだい?」

 父さまに尋ねられる。

「あのね」

『リディアの父君であるか? お初にお目にかかる。我は神獣・ノックス。リディアの友になりたいと申し込んでいる者だ』

 もふさまに話せる魔具を借り、意気揚々と父さまに挨拶した。

「し、神獣さまでございましたか。はじめまして。リディアの父の、ジュレミー・シュタインと申します」

「リディアの母の、レギーナ・シュタインでございます」

 父さまと母さまは小さくなったシカの神獣に、順番に挨拶をした。

『人族の食事というものに興味があり、馳走して欲しいと頼んだのだ』

「お口に合うかわかりませんが、召し上がってくださいませ」

 母さまがくるくると動いて、テーブルをセッティングしてくれる。
 わたしも手伝う。

「リディー、そんなに動いて大丈夫?」

「あ、もふさまが聖酒を取ってきてくれて、それを飲んだら、魔力が満タンになったの!」

「まぁ!」

 母さまが抱きしめてくれる。
 わたしも胸に顔を埋めた。

「母さま、だから後でお風呂入っていい?」

「もちろんいいわ。主人さま、ありがとうございます! リディーがこんなに元気になって」

『大したことはしていない』

 もふさまはクールに言ったけど、尻尾がブンブン揺れている。

「主人さま、感謝します」

 父さまも、胸に手をあてて首を垂れ、もふさまに感謝を示した。

「にゃーーーご」

 空気を読まず、ソックスが朝ごはんを本気でねだり始める。

「ああ、ごめんね、ソックス」

 野菜の盛り合わせとお魚を焼いてほぐしたもの。アクセントに鰹節を振りかけている。うちの野菜ならどれも好きみたいだ。特に大根にハマっている。鰹節は大好物!
 おじやを冷ました物も好きみたいだ。グルメレポーターさながらに、ニャゴニャゴいいながら食べている。ただ炭水化物はあまり取っちゃいけない気がするので、おじやは時々だ。

 今日のわたしたちの朝食のメニューは洋食だった。
 パンに、目玉焼きとソーセージを熱々に焼いたもの。温野菜のサラダにマヨディップ。モロコシスープ。もふさまとノックスさまには角煮をつけている。それからフルーツの盛り合わせ。
 わたしは贅沢して、パンにバターとジャムをダブルで塗りつけアムっといただく。
 体が軽いと、食事ももっとおいしく感じる!

 父さまが後で説明してもらうぞという目をしている。勝手に来たんだよ。わたしが呼んだわけじゃないよ。

 ノックスさまはモリモリ食べた。美味と連発した。もふさまが食べるのと同じぐらいの量を最初出したけど、途中で足りなくなりそうに見え、母さまがメインハウスに戻って追加を持ってきてくれた。それをどんどん足していく。
 もふさまは呆れたように見ていた。

『とても美味であった。人族とは、本当に計り知れないものがある。馳走してくれて感謝する!』

 ノックスさまは満足したようだ。よかった。
 父さまと母さまも引き上げて行った。



 お腹もいっぱいになったので、久しぶりのお風呂を満喫したい。
 わたしはノックスさまに、さっぱりしたいからお風呂に入りたいんだけどと話を持ちかけた。申し訳ないが、ご飯も食べたし帰るよねという追いたてる気持ちもあった。

『そうか、良いぞ』

 相槌だけ。帰る気は、まだないみたいだ。
 珍しそうに部屋を見てるから、それも楽しいのかも。
 お風呂の用意をする。聖水も入れちゃう。ノックスさまにはソックスと待っているなり、してもらおう。
 一度居間に戻り、じゃあ、お風呂に行ってきますと言って部屋を出ると、ついてくる。
 お風呂も入ってみたいと言う。
 いや、聖水いれちゃったし、と言おうとしたときは遅かった。服を脱いだりする手間がない神獣さまは、浴槽に向かって一直線、ダイブをし、お湯の中に落ちた。
 と思ったら顔をだす。

『水ではなく、あったかい! これは不思議と気持ちいい』

「だ、大丈夫ですか? 聖水入りなんですけど?」

『なんと!』

 驚いたようだけど、首から上を出して泳ぎながら答えてくれる。

『聖なる者に聖なるチカラをこめ攻撃されなければ、聖水ぐらいなんでもない。だが、ピリッともしなかったぞ? 本当に入っているのか?』

「ええ」

『お前、風呂の入り方を知らん奴だな。飛び込むのは禁止だ』

『そうなのか? 初めてのことゆえ、知らなかった。悪かった』

 謝りつつ、にっこにこだ。
 わからないけど、大丈夫そうだね。
 ほっとしながら服を脱いだ。
 洗い場で、もふさまを洗ってあげる。
 ふるっと身体を震わせれば、汚れなんかなくなるんだけどね、もふさまは。

『何をしているのだ?』

「湯船に入る前に、身体をきれいに洗っています」

 ノックスさまは淵まで泳いできて、浴槽から出てきた。
 そして泡だらけのもふさまの隣にちょんと座る。
 鹿のお座り、初めて見た。犬みたいに後ろ足だけ器用に座ることもできるんだね。シカじゃなくて神獣だからかもしれないけど。
 洗って欲しいのかな?

「洗いますか?」

『やってくれ』

 石鹸を手で泡だてて、毛のところを揉み込むようにして洗う。次は地肌だ。強弱をつけて、汚れを落とすというよりマッサージ寄り。
 もふさまと同じで、きっと身体を震わせれば、きれいになるんだろうけどね。
 顔の周りも泡だらけにしているのに、大人しくしていて、目を瞑っている。
 角は洗うものなのかわからなかったので、何もしなかった。

「流しますね」

 声をかけて、泡を流す。

『洗うのも、気持ちの良いものだな』

『そうだろう? でも、もっとすごいぞ。リディアよ、あれをやってくれ』

 はいはい、リンスですね。
 わたしはふたりに、リンスを溶いたお湯をかけた。
 湯船に入るだろうから、馴染ませて、軽くゆすぐ。

『な、なんだこれは、毛が!』

『わかるか?』

『この香りもいいな!』

 聖獣と神獣が意気投合した。
 あなたたち、身体を震わせれば、あっという間に艶やかな毛並みになるでしょうに。そんなふたりが気持ちいいと思うリンス、すごいかも!

 ふたりは湯船に浸かりに行った。
 会話が弾んでいる。
 その間に、わたしも丁寧に身体を洗った。垢すりもしたいところだ。
 あとは頭を洗って。
 髪の毛が長くなりすぎてしまった。切ってもらいたいな。
 あー、やっとさっぱりした。温風で髪を乾かし、上にまとめ、湯船に!
 あーーーーーーー、たまらんねーーーーー。
 このお湯いっぱいの贅沢。
 全てが解けていくようだ。
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