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14章 君の味方
第605話 聖なる闇夜の祝い唄④肩入れ
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「……わたしはノックスさまのことをよく知りません。ですから、友達になれるかはわかりません」
『! それはそうだな。よし、これから親しくなって見極めてくれればいい』
食いついてくるなー。
「それから、わたしはもふさまと仲良しなんです。ですから、もふさまと敵対されているようなら、わたしも友達にはなれません」
『なるほど、確かにそうだな。よし、わかった。聖なる森の守護者よ。我らは同じ守護者だ。仲良くしようぞ』
変わり身の早さに、もふさまは目をパチクリ。
っていうか、なんでそんな友達になりたいんだろう?
「あの……なぜ人族と友達になりたいんですか?」
疑問に思ったので尋ねてみる。
『我は大地の守護者。地に生きる者を守護する者。その守る中で、人族とは本当に不思議なもの』
人族が不思議?
首が傾いでしまう。
『人族はとても弱い生き物だ。力もない、魔力もそうあるわけではない。やわな身体。早く走ることも飛ぶことも、木に登ることも長く速く泳ぐことも、突き出たことは何ひとつない。それなのに、徒党を組み、どの生物よりも発展している』
まぁ、確かに。人族は身体能力は獣や魔物に負ける。魔力だって、ひとりひとりだったら、とても太刀打ちできない。だから集団となり立ち向かうことを選んできたのだろう。それだったら他の獣相手に勝機が見出せるから。生きていくことができるから。安心して暮らせる場所を作り、作業を分担する。どうしたらもっと暮らしやすくなるのか、生きやすくなるのか。幸い考えるのが得意だったんだろう。人々はそうやって発展してきた。種族を増やしてきた。同族で諍いを起こすことが可能なぐらいに。
『面白く不思議で知りたかったが、我は大地の守護者。人族にだけ肩入れしては良くないと思った。けれど聖なる森の守護者は人と友達だという。聖なる守護者が人族と友達なら、我が人族と友達となっても悪くはないはずだ』
自分の理論にウンウン頷いている。
人族に興味があった。けれど、〝人族寄り〟に見えるとまずいと思って近寄らないようにしていた。でも神獣ではないものの、同じ立場である聖なる護り手が人族と友達だった。それなら、自分も友達を持ってもいいはずだって思ったんだね。
『我はリディアと友達なだけで、人族と友達になったわけではない。それにだからといって人族に肩入れなどせぬ。我は平等な護り手だし、リディアはそれを知っている』
『人族に肩入れしているわけではないのか?』
『当たり前だ』
うっ。もふさま、わたしやウチにかなり肩入れしてくれてるけどね。気づいてないようだ。
『聖なる守護者は、リディアに何かあった場合、何もしないのか?』
『それはもちろん助ける』
『それは肩入れと違うのか?』
『リディアは助ける。だが、それが人族全体を肩入れしているのと同じではない。あり得ぬが、リディアが森に悪さをするのなら、我は助けられない。そういうことだ』
『……なるほど』
え、理解したの?
ノックスさまは考えを巡らせているように見えた。
そしてふと、わたしに視線を移す。
『ここは普通の域ではないな。なぜリディアはこの不思議な領域にいるのだ? 家族はいないのか?』
「今、こっちに隠れているんです」
『隠れる?』
ノックスさまは首を傾げた。
「呪術で命を狙われたみたいで。その首謀者を炙り出すのに、隠れてます」
初めて会う人、神獣?に事情をペラペラ話すのもどうかと思ったんだけど、どうして、なぜと連呼され、外枠をふんわり話す。
ひと段落ついたところで、わたしのお腹がくーと鳴った。
そろそろ母さまが朝ごはんを持ってきてくれるだろうし。ゆっくりお風呂にも入りたい。
「ノックスさま、今日はここまでにしていいでしょうか? わたしはお腹が空きました。ご飯を食べて、お風呂にも入ろうと思うので……」
『よし、我も共にしよう』
え。
『お、お前は食べる必要はなかろう?』
『食べる必要はないが、食べることはできる。そう言うお前もないであろう? 我は人族の食事というものに憧れていたのだ。リディアよ、我に馳走してくれんか?』
ああ、もう、この流れは断れないやつだね……。
「あー、はい。では、母にノックスさまの分も頼みます」
『母君か、挨拶しよう。友とはそういうものであろう?』
「……廊下は狭いのですが、入れますか?」
『聖なる守護者が入れるのだろう?』
『我はこの姿になるのだ』
もふさまが子犬サイズになった。わたしの腕に飛び乗る。
『な、なんと』
ノックスさまは黒い瞳でじっとわたしを見てから、シュシュシュと縮んだ。
子犬ぐらいの大きさだ。角が短くそして枝分かれは1回だけの小型版となり。やはり火を纏っているように見えるけれど、熱くはないのだろう。
『これで、どうだ?』
神獣さまも高スペック。
「どうぞ、お入りください」
わたしはドアを開けたけど、ソックスがこっちのドアから入れるんだよと教えてあげるように、振り返りながらもふもふ軍団専用の入り口から入ってみせる。
ソックスは怖いもの知らずだね。
『なんと! 頭で押して開けて入るのだな。わかったぞ、ソックスよ』
ノックスさま、楽しそう。馴染みつつある。
わたしはハウスさんに、母さまに伝えて欲しいと頼んだ。お客さまがいらしたので、朝の食事を一人分増やして、と。
『! それはそうだな。よし、これから親しくなって見極めてくれればいい』
食いついてくるなー。
「それから、わたしはもふさまと仲良しなんです。ですから、もふさまと敵対されているようなら、わたしも友達にはなれません」
『なるほど、確かにそうだな。よし、わかった。聖なる森の守護者よ。我らは同じ守護者だ。仲良くしようぞ』
変わり身の早さに、もふさまは目をパチクリ。
っていうか、なんでそんな友達になりたいんだろう?
「あの……なぜ人族と友達になりたいんですか?」
疑問に思ったので尋ねてみる。
『我は大地の守護者。地に生きる者を守護する者。その守る中で、人族とは本当に不思議なもの』
人族が不思議?
首が傾いでしまう。
『人族はとても弱い生き物だ。力もない、魔力もそうあるわけではない。やわな身体。早く走ることも飛ぶことも、木に登ることも長く速く泳ぐことも、突き出たことは何ひとつない。それなのに、徒党を組み、どの生物よりも発展している』
まぁ、確かに。人族は身体能力は獣や魔物に負ける。魔力だって、ひとりひとりだったら、とても太刀打ちできない。だから集団となり立ち向かうことを選んできたのだろう。それだったら他の獣相手に勝機が見出せるから。生きていくことができるから。安心して暮らせる場所を作り、作業を分担する。どうしたらもっと暮らしやすくなるのか、生きやすくなるのか。幸い考えるのが得意だったんだろう。人々はそうやって発展してきた。種族を増やしてきた。同族で諍いを起こすことが可能なぐらいに。
『面白く不思議で知りたかったが、我は大地の守護者。人族にだけ肩入れしては良くないと思った。けれど聖なる森の守護者は人と友達だという。聖なる守護者が人族と友達なら、我が人族と友達となっても悪くはないはずだ』
自分の理論にウンウン頷いている。
人族に興味があった。けれど、〝人族寄り〟に見えるとまずいと思って近寄らないようにしていた。でも神獣ではないものの、同じ立場である聖なる護り手が人族と友達だった。それなら、自分も友達を持ってもいいはずだって思ったんだね。
『我はリディアと友達なだけで、人族と友達になったわけではない。それにだからといって人族に肩入れなどせぬ。我は平等な護り手だし、リディアはそれを知っている』
『人族に肩入れしているわけではないのか?』
『当たり前だ』
うっ。もふさま、わたしやウチにかなり肩入れしてくれてるけどね。気づいてないようだ。
『聖なる守護者は、リディアに何かあった場合、何もしないのか?』
『それはもちろん助ける』
『それは肩入れと違うのか?』
『リディアは助ける。だが、それが人族全体を肩入れしているのと同じではない。あり得ぬが、リディアが森に悪さをするのなら、我は助けられない。そういうことだ』
『……なるほど』
え、理解したの?
ノックスさまは考えを巡らせているように見えた。
そしてふと、わたしに視線を移す。
『ここは普通の域ではないな。なぜリディアはこの不思議な領域にいるのだ? 家族はいないのか?』
「今、こっちに隠れているんです」
『隠れる?』
ノックスさまは首を傾げた。
「呪術で命を狙われたみたいで。その首謀者を炙り出すのに、隠れてます」
初めて会う人、神獣?に事情をペラペラ話すのもどうかと思ったんだけど、どうして、なぜと連呼され、外枠をふんわり話す。
ひと段落ついたところで、わたしのお腹がくーと鳴った。
そろそろ母さまが朝ごはんを持ってきてくれるだろうし。ゆっくりお風呂にも入りたい。
「ノックスさま、今日はここまでにしていいでしょうか? わたしはお腹が空きました。ご飯を食べて、お風呂にも入ろうと思うので……」
『よし、我も共にしよう』
え。
『お、お前は食べる必要はなかろう?』
『食べる必要はないが、食べることはできる。そう言うお前もないであろう? 我は人族の食事というものに憧れていたのだ。リディアよ、我に馳走してくれんか?』
ああ、もう、この流れは断れないやつだね……。
「あー、はい。では、母にノックスさまの分も頼みます」
『母君か、挨拶しよう。友とはそういうものであろう?』
「……廊下は狭いのですが、入れますか?」
『聖なる守護者が入れるのだろう?』
『我はこの姿になるのだ』
もふさまが子犬サイズになった。わたしの腕に飛び乗る。
『な、なんと』
ノックスさまは黒い瞳でじっとわたしを見てから、シュシュシュと縮んだ。
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『これで、どうだ?』
神獣さまも高スペック。
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『なんと! 頭で押して開けて入るのだな。わかったぞ、ソックスよ』
ノックスさま、楽しそう。馴染みつつある。
わたしはハウスさんに、母さまに伝えて欲しいと頼んだ。お客さまがいらしたので、朝の食事を一人分増やして、と。
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