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14章 君の味方
第603話 聖なる闇夜の祝い唄②聖霊石
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「魔石の扱い方って題名で、魔石について書かれているみたい。まだ最初しか見てないけど、目次がそそられるんだよ」
『ほぉー』
「だってね、聖霊石を作るのに適した魔石、とか、神を宿す魔石とか。どういう意味なんだろう?」
ドワーフが書いたってあるから、真面目なものだと思うんだけど。
ドワーフって種族は、真面目で、目的に向かって一直線って紹介されていたんだ、教科書に。人族と友好的な種族をあげたページでね。ま、種族的にといってもいろんなドワーフがいるだろうけどさ。人族と同じで。
『リディア、読んでくれないか。その本の定義する聖霊石というものを』
もふさまの声が深刻そうに聞こえた。
「……うん?」
ええと、第2章 魔石の種類 11 聖霊石を作るのに適した魔石は135ページ。
135ページを開く。
「11 聖霊石を作るのに適した魔石
1章の5で書いたことと重複するが、聖なる方に連なる者たちは、神に連なる者たちと同じぐらい魔力がある。彼らの力を封じ込めるとしたら、聖霊石でしか封じ込めることはできない」
そこまで読んで驚く。
え?
『そこには作り方が書いてあるのか?』
もふさまに尋ねられて、わたしは斜め読みしていく。
「……一応書いてある。
500年以上生きたドラゴンの魔石を基盤にするみたい。
それを聖水に130年以上浸し、神属性の攻撃を加える……。瘴木の大きめの葉5枚。瘴木から魔を得た魔石5つ。世界樹の葉1枚。火ドラゴンの鱗(額に近いもの)1つ。……」
もふさまの喉がごくんと鳴った。
『我ら聖なる獣の聖力は、聖霊石により封じ込めることが可能だ』
ええ? もふさまには聖霊石が、魔力遮断の魔具のような働きをするんだね。
『それは神王と聖霊王がぶつかり合った時に、神王が創り出したものだと聞いていたのだが……神以外にも作れるものだったのか……』
「ああ、だから神属性の攻撃なんて作り方にあるんだね。これはドワーフが書いたものみたいだけど、例えばドラゴンの魔石を都合よく手に入れて、さらに代々引き継いで130年以上聖水に浸すなんてことができたとしても、神属性の攻撃を加えるってことで無理なんじゃない?」
だって神さまは地上に降りて来られないんだものね。
『神属性の攻撃とは……クイやアリがそうだ。雷。雹。天を司るスキルは神属性なんだ。人族がそう呼ばないだけで』
え。天を司る……アイリス嬢がそうだ。アイリス嬢は天を司るスキル……、神属性なんだ……。無意識に口を押さえていた。
……ルチアさまもそうだった。彼女は大量の水を出すことができた。水魔法が得意なのだと思ったけれど、よく聞いたら自分のスキルは雨だと言った。
ふたりは聖女候補。
聖女さまについて詳しく書かれた本はなかったのだけど、歴史に登場した聖女さまを書き留めて、神殿で見知っていることも同じかルシオに聞いた。ルシオは自分が神殿で知ったことと同じだと太鼓判を押してくれた。
初代の聖女さまは、天の雷を持って、魔王を倒したとされた。本当は瘴気を閉じ込めたらしいけど。
次は地を揺する力で火を封じ込めた。
次は大地の芽吹く力で、川の氾濫を堰き止めた……。
もしかして、聖女というのは神属性の力も持つ、聖なる力を持つ人のことなのでは?
言ってみると、茫然としていたもふさまが覚醒する。
『なんと! そうかもしれぬな』
もふさまは少し思案する。
『リディアよ、リディアは神属性のスキルを持っているのか?』
「わたしのスキルって変な名称で育っていくから、ちょっとわかりにくくて。
天というか空にちなむ名前は〝星読み〟ぐらいかな。星読みっていうと占星術みたいなものかと思ってた。それが統計から判断するのか星の力を借りているのかも分からなくて、星の力を借りているとして、それが天の力の属性なのかはわからないや」
もふさまは頷く。
『星読みは神属性ではないだろう。……そうか。リディアは神属性を持たないな。だから加護がないのだ! お前に神属性がないのなら……我は出かけてくる』
ちょっと嬉しそうに、もふさまはあっという間にいなくなってしまった。
早っ。
尻尾で遊んでもらっていたソックスも、急に目の前からなくなって驚いている。
「早技だったね」
とソックスに話しかけると
「なーご」
と鳴いた。
その晩、もふさまは帰ってこなかった。
魔石の扱い方の本はなかなか面白い。
でもどれも作り方が壮大すぎる。時間がかかりすぎるので、作ろうと思った人が作り終えることはないだろう。ドワーフって長寿って聞くから、ギリでできるのかな?
魔石を元として、違う魔石へと進化させるハウツー本だった。
神隠しの魔石の作り方も載っている。こちらの神隠しとは〝神〟を封印することだそうだ。でも、材料からかっ飛んでいるし、素材自体が世の中に存在するものなのかもわからない。っていうか、なんで神を封印するっていう発想が出てくるんだろう?
まさか冗談で書いたものではないだろうけど……。
魔石を作り替えられる知識があるなら、魔物を凶暴化させる魔石を作るなんて朝飯前だろうな、なんて思う。
ハタと気づく。本当にそうだな。
今までであの凶暴化させる魔石でわかったことは。
・目が赤くなる→魔物凶暴化
・凶暴化した魔物の魔石も赤い
・凶暴化した魔物はダンジョン内で死んでも消えない。魔石を破壊すれば消える
・赤い木が魔力をダンジョンに流していた→魔物凶暴化
・ユオブリアに赤い石と核が持ち込まれようとしていた
・赤い石に核を入れると赤い魔石になる
その赤い魔石が、どんなことを引き起こすのかは、わかっていないんだけどね。
なんかよくないことで、ユオブリアへの攻撃だと漠然と思っている。
赤い魔石の項目はない。
魔物を凶暴化させる魔石の項目もない。
あったらまずいか。
『ほぉー』
「だってね、聖霊石を作るのに適した魔石、とか、神を宿す魔石とか。どういう意味なんだろう?」
ドワーフが書いたってあるから、真面目なものだと思うんだけど。
ドワーフって種族は、真面目で、目的に向かって一直線って紹介されていたんだ、教科書に。人族と友好的な種族をあげたページでね。ま、種族的にといってもいろんなドワーフがいるだろうけどさ。人族と同じで。
『リディア、読んでくれないか。その本の定義する聖霊石というものを』
もふさまの声が深刻そうに聞こえた。
「……うん?」
ええと、第2章 魔石の種類 11 聖霊石を作るのに適した魔石は135ページ。
135ページを開く。
「11 聖霊石を作るのに適した魔石
1章の5で書いたことと重複するが、聖なる方に連なる者たちは、神に連なる者たちと同じぐらい魔力がある。彼らの力を封じ込めるとしたら、聖霊石でしか封じ込めることはできない」
そこまで読んで驚く。
え?
『そこには作り方が書いてあるのか?』
もふさまに尋ねられて、わたしは斜め読みしていく。
「……一応書いてある。
500年以上生きたドラゴンの魔石を基盤にするみたい。
それを聖水に130年以上浸し、神属性の攻撃を加える……。瘴木の大きめの葉5枚。瘴木から魔を得た魔石5つ。世界樹の葉1枚。火ドラゴンの鱗(額に近いもの)1つ。……」
もふさまの喉がごくんと鳴った。
『我ら聖なる獣の聖力は、聖霊石により封じ込めることが可能だ』
ええ? もふさまには聖霊石が、魔力遮断の魔具のような働きをするんだね。
『それは神王と聖霊王がぶつかり合った時に、神王が創り出したものだと聞いていたのだが……神以外にも作れるものだったのか……』
「ああ、だから神属性の攻撃なんて作り方にあるんだね。これはドワーフが書いたものみたいだけど、例えばドラゴンの魔石を都合よく手に入れて、さらに代々引き継いで130年以上聖水に浸すなんてことができたとしても、神属性の攻撃を加えるってことで無理なんじゃない?」
だって神さまは地上に降りて来られないんだものね。
『神属性の攻撃とは……クイやアリがそうだ。雷。雹。天を司るスキルは神属性なんだ。人族がそう呼ばないだけで』
え。天を司る……アイリス嬢がそうだ。アイリス嬢は天を司るスキル……、神属性なんだ……。無意識に口を押さえていた。
……ルチアさまもそうだった。彼女は大量の水を出すことができた。水魔法が得意なのだと思ったけれど、よく聞いたら自分のスキルは雨だと言った。
ふたりは聖女候補。
聖女さまについて詳しく書かれた本はなかったのだけど、歴史に登場した聖女さまを書き留めて、神殿で見知っていることも同じかルシオに聞いた。ルシオは自分が神殿で知ったことと同じだと太鼓判を押してくれた。
初代の聖女さまは、天の雷を持って、魔王を倒したとされた。本当は瘴気を閉じ込めたらしいけど。
次は地を揺する力で火を封じ込めた。
次は大地の芽吹く力で、川の氾濫を堰き止めた……。
もしかして、聖女というのは神属性の力も持つ、聖なる力を持つ人のことなのでは?
言ってみると、茫然としていたもふさまが覚醒する。
『なんと! そうかもしれぬな』
もふさまは少し思案する。
『リディアよ、リディアは神属性のスキルを持っているのか?』
「わたしのスキルって変な名称で育っていくから、ちょっとわかりにくくて。
天というか空にちなむ名前は〝星読み〟ぐらいかな。星読みっていうと占星術みたいなものかと思ってた。それが統計から判断するのか星の力を借りているのかも分からなくて、星の力を借りているとして、それが天の力の属性なのかはわからないや」
もふさまは頷く。
『星読みは神属性ではないだろう。……そうか。リディアは神属性を持たないな。だから加護がないのだ! お前に神属性がないのなら……我は出かけてくる』
ちょっと嬉しそうに、もふさまはあっという間にいなくなってしまった。
早っ。
尻尾で遊んでもらっていたソックスも、急に目の前からなくなって驚いている。
「早技だったね」
とソックスに話しかけると
「なーご」
と鳴いた。
その晩、もふさまは帰ってこなかった。
魔石の扱い方の本はなかなか面白い。
でもどれも作り方が壮大すぎる。時間がかかりすぎるので、作ろうと思った人が作り終えることはないだろう。ドワーフって長寿って聞くから、ギリでできるのかな?
魔石を元として、違う魔石へと進化させるハウツー本だった。
神隠しの魔石の作り方も載っている。こちらの神隠しとは〝神〟を封印することだそうだ。でも、材料からかっ飛んでいるし、素材自体が世の中に存在するものなのかもわからない。っていうか、なんで神を封印するっていう発想が出てくるんだろう?
まさか冗談で書いたものではないだろうけど……。
魔石を作り替えられる知識があるなら、魔物を凶暴化させる魔石を作るなんて朝飯前だろうな、なんて思う。
ハタと気づく。本当にそうだな。
今までであの凶暴化させる魔石でわかったことは。
・目が赤くなる→魔物凶暴化
・凶暴化した魔物の魔石も赤い
・凶暴化した魔物はダンジョン内で死んでも消えない。魔石を破壊すれば消える
・赤い木が魔力をダンジョンに流していた→魔物凶暴化
・ユオブリアに赤い石と核が持ち込まれようとしていた
・赤い石に核を入れると赤い魔石になる
その赤い魔石が、どんなことを引き起こすのかは、わかっていないんだけどね。
なんかよくないことで、ユオブリアへの攻撃だと漠然と思っている。
赤い魔石の項目はない。
魔物を凶暴化させる魔石の項目もない。
あったらまずいか。
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