プラス的 異世界の過ごし方

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14章 君の味方

第596話 君の中のロマンチック⑥危険なのは

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「じゃあ、きっとジャックの上司っていうのがマンドリンね」

『リディア、我らにそのジャックのアジトに行った時のことを聞かせてくれ』

 あ、そっか。兄さまには軽く話し、みんなにはまだ話してなかったね。

 わたしは猫ちゃんと閉じ込められてしまった袋が空いて、光が差し込んできたところから話し始めた。
 元々いたのはジャックとひょろんとした男の人。お客さんが来るから、猫ちゃんを返しにいけないと言っていた。
 そのうちいかつい男が入ってきた。3人とも20代半ばってところで、ジャックがトップ、リーダー的存在だと思えた。
 いかつい男が例のアレはユオブリアのシュタイン家が関わっていたらしいと報告をする。
 そう話すと、みんなの表情が引き締まった。

「そしたらジャックがうかつに話すなと怒って、盗聴防止の魔具みたいのをかけたの。
 農場でバレたって〝あっち〟の人に言われたみたい。でもジャックたちは〝あっち〟の誰かがもらしてユオブリアにバレたって思っていて……」

 それでなんだっけかな?

『それで?』

 もふさまから、もどかしいとばかりに促される。

「ジャックがシュタイン家がどう関わっていたのかを聞いて……」

 ジャックが顎を触りながら、真剣な顔をしていたことを思い出す。

「訴えたキートン家のバック、ウッド家やらと繋がっているのが、全部ウチだってわかった、関わってるって言ってた。
 それで、シュタイン家って聞いたことあるな、近頃なんかあっただろって話になって、シュタイン家の子の婚約者が前バイエルン侯の忘形見って話をして、それでそいうことかって」

『そういうことって、どういうこと?』

 レオが身を乗り出す。ちゃんと焚火からは距離をとっている。
 レオは火が苦手だものね。

「農場の前の持ち主は前バイエルン侯だったって。今の所有者は元王族とも言ってた。それでジャックは面白くなってきたって言って」

「何が面白いんでちか?」

 アオに聞かれて、思い出そうとする。
 トカゲの時の記憶は、スススって出てこないんだよね。なんかひとつ思い出して、そこから芋づる式に、関わりがあるところからじゃないと思い出せない。

「ええと。現オーナーは貴族だから人の命なんかなんとも思わない。バレたことで、全ての罪をおっ被せて逃げる気になってるって」

『メラノ公爵家がキートン家などの共和国で土地を買っていたあの件を企み、それがバレそうだから、その罪をおっ被せようとしているとジャックとやらは考えたのだな?』

 もふさまがまとめたことを、頭の中で反芻する。
 うん、合ってると思う。だから頷いた。

『メラノ公はジャックたちに罪を被せるの?』

「うーうん、ジャックたちの考えだけど、その罪を前バイエルン侯の忘形見、つまり兄さまに罪を被せようとしていると思ったみたい」

『そうか、前バイエルン侯の罪が見つかった場所でまた犯罪が起こる。証拠がなくて本当に罪があったのかと訝しんでいるんだもんな、そんなところで新たに犯罪が起こったら、前バイエルン侯に罪がないのがバレてしまうかもしれないって思ってるってことか。そこに前任者の忘形見が関わっていれば、覆せる。一気に前バイエルン候が罪深かったと、人の目には映るだろう』

 レオも頭いいなぁ。

『それをフランツがしたことにするってこと? 無理があるだろ』

 クイも賢い。

「でも、今、兄さまエレブ共和国にいるでち。ちょうどいいでち」

「だから、兄さまは絶対捕まっちゃだめ。奴らも言ってたけど、兄さまが忘形見か本当のところはどうでも良くて、そういう噂になったから、兄さまが使えるって、悪い奴は考えたみたい」

 他に聞いたことはと問われたけど、わたしはそこでトカゲが潜んでいたとバレ、ひとりトカゲ嫌いがいたことから振り払われ、外に逃げることになったんだと事情を話した。

『バイエルン侯はフランツをクラウスと確信していたのだろうが、メラノ公の勢力が話を大きくしたんだろうな』

「なんででちか?」

『フランツをシュタイン家やらランディラカ家の保護下から出すのが目的だった……』

 もふさまが唸り、続けた。

『フランツの持ち物の何かを、犯罪の証拠と一緒にしておけばいいな、フランツの行方がわからないとされている時に……』

 ええっ?

『えっと、どういうこと?
 フランツの居場所は今ここにいるものしか知らない。
 けど、そのフランツの物が何か犯罪の証拠と一緒に出てきたら、フランツは行ったことのない場所でもそこにいたってされるってことか?』

 レオがわたしと同じ疑問を口にし、また答えにしてくれた。

『ランディラカ家の姓をなくしたなら、平民なんてすぐに口封じされてしまうぞ』

 もふさまが吠える。

 やっぱり、トカゲでは全然頭が働いてなかった。

 ジャックたちは兄さまを捕らえて、兄さまがやったとするように見せかけるまで時間があるとよんでいたけど、それは貴族だったらのこと。
 貴族だったら、家族がもっとちゃんと調べろとごねれば調べることになる。共和国といっても国民でないのなら、属している国からなんやかんや言われるだろうからね。

 でも平民なら。共和国の法に則って、死人に口無しとばかりに、ちゃんと調べることもなく……。

 兄さまを捕まえる必要なんかない。兄さまがここにいた、みたいな物証があれば、凶悪犯ばりに指名手配できちゃうだろう。そうなったら……。

「兄さまが一番危ない」

 思わず呟くと、みんなが兄さまを見た。

「覚悟の上だ」

「他の国で指名手配されたら、本当に逃げ道がなくなっちゃう」

「……大丈夫だ」

『全然大丈夫ではない気がしますねぇ』

 場に合わないのんびりした口調でベアが言う。

『うん、フランツは過信気味だからな』

 とクイに突っ込まれている。
 ベアとクイが兄さまに遠慮なくなってる。密にいた時間が距離を縮めたんだろう。

「レオ、ランディラカのおじいさまに、養子の手続きはどうなっているか伝達魔法で聞いてみて」

『いいぞ』

 頼むと、レオが快く引き受けてくれた。
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