596 / 823
14章 君の味方
第596話 君の中のロマンチック⑥危険なのは
しおりを挟む
「じゃあ、きっとジャックの上司っていうのがマンドリンね」
『リディア、我らにそのジャックのアジトに行った時のことを聞かせてくれ』
あ、そっか。兄さまには軽く話し、みんなにはまだ話してなかったね。
わたしは猫ちゃんと閉じ込められてしまった袋が空いて、光が差し込んできたところから話し始めた。
元々いたのはジャックとひょろんとした男の人。お客さんが来るから、猫ちゃんを返しにいけないと言っていた。
そのうちいかつい男が入ってきた。3人とも20代半ばってところで、ジャックがトップ、リーダー的存在だと思えた。
いかつい男が例のアレはユオブリアのシュタイン家が関わっていたらしいと報告をする。
そう話すと、みんなの表情が引き締まった。
「そしたらジャックがうかつに話すなと怒って、盗聴防止の魔具みたいのをかけたの。
農場でバレたって〝あっち〟の人に言われたみたい。でもジャックたちは〝あっち〟の誰かがもらしてユオブリアにバレたって思っていて……」
それでなんだっけかな?
『それで?』
もふさまから、もどかしいとばかりに促される。
「ジャックがシュタイン家がどう関わっていたのかを聞いて……」
ジャックが顎を触りながら、真剣な顔をしていたことを思い出す。
「訴えたキートン家のバック、ウッド家やらと繋がっているのが、全部ウチだってわかった、関わってるって言ってた。
それで、シュタイン家って聞いたことあるな、近頃なんかあっただろって話になって、シュタイン家の子の婚約者が前バイエルン侯の忘形見って話をして、それでそいうことかって」
『そういうことって、どういうこと?』
レオが身を乗り出す。ちゃんと焚火からは距離をとっている。
レオは火が苦手だものね。
「農場の前の持ち主は前バイエルン侯だったって。今の所有者は元王族とも言ってた。それでジャックは面白くなってきたって言って」
「何が面白いんでちか?」
アオに聞かれて、思い出そうとする。
トカゲの時の記憶は、スススって出てこないんだよね。なんかひとつ思い出して、そこから芋づる式に、関わりがあるところからじゃないと思い出せない。
「ええと。現オーナーは貴族だから人の命なんかなんとも思わない。バレたことで、全ての罪をおっ被せて逃げる気になってるって」
『メラノ公爵家がキートン家などの共和国で土地を買っていたあの件を企み、それがバレそうだから、その罪をおっ被せようとしているとジャックとやらは考えたのだな?』
もふさまがまとめたことを、頭の中で反芻する。
うん、合ってると思う。だから頷いた。
『メラノ公はジャックたちに罪を被せるの?』
「うーうん、ジャックたちの考えだけど、その罪を前バイエルン侯の忘形見、つまり兄さまに罪を被せようとしていると思ったみたい」
『そうか、前バイエルン侯の罪が見つかった場所でまた犯罪が起こる。証拠がなくて本当に罪があったのかと訝しんでいるんだもんな、そんなところで新たに犯罪が起こったら、前バイエルン侯に罪がないのがバレてしまうかもしれないって思ってるってことか。そこに前任者の忘形見が関わっていれば、覆せる。一気に前バイエルン候が罪深かったと、人の目には映るだろう』
レオも頭いいなぁ。
『それをフランツがしたことにするってこと? 無理があるだろ』
クイも賢い。
「でも、今、兄さまエレブ共和国にいるでち。ちょうどいいでち」
「だから、兄さまは絶対捕まっちゃだめ。奴らも言ってたけど、兄さまが忘形見か本当のところはどうでも良くて、そういう噂になったから、兄さまが使えるって、悪い奴は考えたみたい」
他に聞いたことはと問われたけど、わたしはそこでトカゲが潜んでいたとバレ、ひとりトカゲ嫌いがいたことから振り払われ、外に逃げることになったんだと事情を話した。
『バイエルン侯はフランツをクラウスと確信していたのだろうが、メラノ公の勢力が話を大きくしたんだろうな』
「なんででちか?」
『フランツをシュタイン家やらランディラカ家の保護下から出すのが目的だった……』
もふさまが唸り、続けた。
『フランツの持ち物の何かを、犯罪の証拠と一緒にしておけばいいな、フランツの行方がわからないとされている時に……』
ええっ?
『えっと、どういうこと?
フランツの居場所は今ここにいるものしか知らない。
けど、そのフランツの物が何か犯罪の証拠と一緒に出てきたら、フランツは行ったことのない場所でもそこにいたってされるってことか?』
レオがわたしと同じ疑問を口にし、また答えにしてくれた。
『ランディラカ家の姓をなくしたなら、平民なんてすぐに口封じされてしまうぞ』
もふさまが吠える。
やっぱり、トカゲでは全然頭が働いてなかった。
ジャックたちは兄さまを捕らえて、兄さまがやったとするように見せかけるまで時間があるとよんでいたけど、それは貴族だったらのこと。
貴族だったら、家族がもっとちゃんと調べろとごねれば調べることになる。共和国といっても国民でないのなら、属している国からなんやかんや言われるだろうからね。
でも平民なら。共和国の法に則って、死人に口無しとばかりに、ちゃんと調べることもなく……。
兄さまを捕まえる必要なんかない。兄さまがここにいた、みたいな物証があれば、凶悪犯ばりに指名手配できちゃうだろう。そうなったら……。
「兄さまが一番危ない」
思わず呟くと、みんなが兄さまを見た。
「覚悟の上だ」
「他の国で指名手配されたら、本当に逃げ道がなくなっちゃう」
「……大丈夫だ」
『全然大丈夫ではない気がしますねぇ』
場に合わないのんびりした口調でベアが言う。
『うん、フランツは過信気味だからな』
とクイに突っ込まれている。
ベアとクイが兄さまに遠慮なくなってる。密にいた時間が距離を縮めたんだろう。
「レオ、ランディラカのおじいさまに、養子の手続きはどうなっているか伝達魔法で聞いてみて」
『いいぞ』
頼むと、レオが快く引き受けてくれた。
『リディア、我らにそのジャックのアジトに行った時のことを聞かせてくれ』
あ、そっか。兄さまには軽く話し、みんなにはまだ話してなかったね。
わたしは猫ちゃんと閉じ込められてしまった袋が空いて、光が差し込んできたところから話し始めた。
元々いたのはジャックとひょろんとした男の人。お客さんが来るから、猫ちゃんを返しにいけないと言っていた。
そのうちいかつい男が入ってきた。3人とも20代半ばってところで、ジャックがトップ、リーダー的存在だと思えた。
いかつい男が例のアレはユオブリアのシュタイン家が関わっていたらしいと報告をする。
そう話すと、みんなの表情が引き締まった。
「そしたらジャックがうかつに話すなと怒って、盗聴防止の魔具みたいのをかけたの。
農場でバレたって〝あっち〟の人に言われたみたい。でもジャックたちは〝あっち〟の誰かがもらしてユオブリアにバレたって思っていて……」
それでなんだっけかな?
『それで?』
もふさまから、もどかしいとばかりに促される。
「ジャックがシュタイン家がどう関わっていたのかを聞いて……」
ジャックが顎を触りながら、真剣な顔をしていたことを思い出す。
「訴えたキートン家のバック、ウッド家やらと繋がっているのが、全部ウチだってわかった、関わってるって言ってた。
それで、シュタイン家って聞いたことあるな、近頃なんかあっただろって話になって、シュタイン家の子の婚約者が前バイエルン侯の忘形見って話をして、それでそいうことかって」
『そういうことって、どういうこと?』
レオが身を乗り出す。ちゃんと焚火からは距離をとっている。
レオは火が苦手だものね。
「農場の前の持ち主は前バイエルン侯だったって。今の所有者は元王族とも言ってた。それでジャックは面白くなってきたって言って」
「何が面白いんでちか?」
アオに聞かれて、思い出そうとする。
トカゲの時の記憶は、スススって出てこないんだよね。なんかひとつ思い出して、そこから芋づる式に、関わりがあるところからじゃないと思い出せない。
「ええと。現オーナーは貴族だから人の命なんかなんとも思わない。バレたことで、全ての罪をおっ被せて逃げる気になってるって」
『メラノ公爵家がキートン家などの共和国で土地を買っていたあの件を企み、それがバレそうだから、その罪をおっ被せようとしているとジャックとやらは考えたのだな?』
もふさまがまとめたことを、頭の中で反芻する。
うん、合ってると思う。だから頷いた。
『メラノ公はジャックたちに罪を被せるの?』
「うーうん、ジャックたちの考えだけど、その罪を前バイエルン侯の忘形見、つまり兄さまに罪を被せようとしていると思ったみたい」
『そうか、前バイエルン侯の罪が見つかった場所でまた犯罪が起こる。証拠がなくて本当に罪があったのかと訝しんでいるんだもんな、そんなところで新たに犯罪が起こったら、前バイエルン侯に罪がないのがバレてしまうかもしれないって思ってるってことか。そこに前任者の忘形見が関わっていれば、覆せる。一気に前バイエルン候が罪深かったと、人の目には映るだろう』
レオも頭いいなぁ。
『それをフランツがしたことにするってこと? 無理があるだろ』
クイも賢い。
「でも、今、兄さまエレブ共和国にいるでち。ちょうどいいでち」
「だから、兄さまは絶対捕まっちゃだめ。奴らも言ってたけど、兄さまが忘形見か本当のところはどうでも良くて、そういう噂になったから、兄さまが使えるって、悪い奴は考えたみたい」
他に聞いたことはと問われたけど、わたしはそこでトカゲが潜んでいたとバレ、ひとりトカゲ嫌いがいたことから振り払われ、外に逃げることになったんだと事情を話した。
『バイエルン侯はフランツをクラウスと確信していたのだろうが、メラノ公の勢力が話を大きくしたんだろうな』
「なんででちか?」
『フランツをシュタイン家やらランディラカ家の保護下から出すのが目的だった……』
もふさまが唸り、続けた。
『フランツの持ち物の何かを、犯罪の証拠と一緒にしておけばいいな、フランツの行方がわからないとされている時に……』
ええっ?
『えっと、どういうこと?
フランツの居場所は今ここにいるものしか知らない。
けど、そのフランツの物が何か犯罪の証拠と一緒に出てきたら、フランツは行ったことのない場所でもそこにいたってされるってことか?』
レオがわたしと同じ疑問を口にし、また答えにしてくれた。
『ランディラカ家の姓をなくしたなら、平民なんてすぐに口封じされてしまうぞ』
もふさまが吠える。
やっぱり、トカゲでは全然頭が働いてなかった。
ジャックたちは兄さまを捕らえて、兄さまがやったとするように見せかけるまで時間があるとよんでいたけど、それは貴族だったらのこと。
貴族だったら、家族がもっとちゃんと調べろとごねれば調べることになる。共和国といっても国民でないのなら、属している国からなんやかんや言われるだろうからね。
でも平民なら。共和国の法に則って、死人に口無しとばかりに、ちゃんと調べることもなく……。
兄さまを捕まえる必要なんかない。兄さまがここにいた、みたいな物証があれば、凶悪犯ばりに指名手配できちゃうだろう。そうなったら……。
「兄さまが一番危ない」
思わず呟くと、みんなが兄さまを見た。
「覚悟の上だ」
「他の国で指名手配されたら、本当に逃げ道がなくなっちゃう」
「……大丈夫だ」
『全然大丈夫ではない気がしますねぇ』
場に合わないのんびりした口調でベアが言う。
『うん、フランツは過信気味だからな』
とクイに突っ込まれている。
ベアとクイが兄さまに遠慮なくなってる。密にいた時間が距離を縮めたんだろう。
「レオ、ランディラカのおじいさまに、養子の手続きはどうなっているか伝達魔法で聞いてみて」
『いいぞ』
頼むと、レオが快く引き受けてくれた。
90
お気に入りに追加
1,239
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?
狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?!
悪役令嬢だったらどうしよう〜!!
……あっ、ただのモブですか。
いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。
じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら
乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?
モブなので思いっきり場外で暴れてみました
雪那 由多
恋愛
やっと卒業だと言うのに婚約破棄だとかそう言うのはもっと人の目のないところでお三方だけでやってくださいませ。
そしてよろしければ私を巻き来ないようにご注意くださいませ。
一応自衛はさせていただきますが悪しからず?
そんなささやかな防衛をして何か問題ありましょうか?
※衝動的に書いたのであげてみました四話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる