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14章 君の味方
第589話 ある意味モテ期⑪続・尻尾のサイン
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網に捕まったものの、わたしはスレンダーだった。網の目はわたしを拾わない。
アオだけ掬い上げられる。
「アオ、ぬいぐるみになって!」
わたしは叫んでから、壁のひび割れたところに逃げ込んだ。
「捕まえたぞ」
網を操っていた若い男性が、冷静に言う。
「って、……ふわふわの、もしかして、これ、ぬいぐるみじゃない?」
網の中を覗き込んだ女性が、人差し指で下の方をツンツンしている。
「さっき、動いてたよな?」
「トカゲが運んでたってこと?」
年若い女性と男性のふたりは、アオを凝視している。
あ、あ、どこに連れて行くの?
ついて行こうとすると、尻尾が重たく感じた。
ん? 振り向くと、わたしの尻尾を濃い茶色のトカゲが足で踏んでいる。
「何すんの? わたしアオを助けないと!」
わたしが行こうとすると、尻尾をかじられた。
えー、何?
! 尻尾をあてるのは求愛なんだっけ?
じゃあ、かじるのは何?
「わたし、今、忙しいの! 後にして」
わたしが振り切って出て行こうとすると、その前に茶色いのは出て行った。
あ、アオを連れた人がいない。
アオ、どこ行っちゃった?
「きゅ」
濃い茶色のトカゲが、2つ先のドアの前で短く鳴いた。
こっちに来いと言ってるみたいだ。
わたしは走った。
彼は壁を垂直に登り出した。わたしもついて行く。
隙間から部屋の中へと入って行く。
あ、アオを捕まえた男女と、アオだ!
テーブルの上にアオをポンと置いている。
「かわいい、ぬいぐるみね。どこから持ってきたのかしら、トカゲは」
「さぁな。カルビさんに報告するか?」
「なんて? トカゲは逃したけど、トカゲが持ってたぬいぐるみは捕らえましたって?」
ふたりは顔を見合わせている。
「ふざけてるのかって言われそうだな」
「ミランダが対策立てたそうだから、落ち着いていくとは思うけど……」
ふたりして、ため息をついている。
「でも、連れてくるつっても明日以降だろ? 急ぎの仕事のない奴はトカゲ狩りしろって言われているからな。ここにいたらサボってるって言われるだけだ、行くぞ」
「でもその網じゃ意味ないじゃない。あの薄い緑のは小ちゃくてその網じゃ捕まえられないわ」
「だからいいんじゃねーか」
男性がぼそっと言う。
「え?」
「あんな小さいの可哀想だろうが。こんな古い建物なんだから、生き物はそれなりに住んでるだろーよ。それにトカゲは寒がりだから、貯蔵庫には行かねーだろ。発酵中の樽はあったけーだろうけど、あんな人が行き交うとこなんか来ねーよ」
「あら、さっきも廊下に出たじゃない」
「あの緑のだけだろ。今までも出たことないし、あれだけ最近迷い込んできたんだよ。まだ小さいんだから、ほっとけば他のトカゲに人前に出ないよう教わるだろ」
なんかトカゲに優しい、いい人だ。
わたしも人に戻れたら、絶対トカゲに優しくすると心に決めた。
「あんた、見かけによらず優しいのね」
おお、なんかいい雰囲気になっているぞ。
「じゃあ、捕まえるフリをすればいいわけね」
女性は男性にかわいく問いかける。
「網持ってうろうろしてればいいんだから、楽だろ」
「それもそうね」
そんなふうに話しながらふたりは出て行った。
「アオ!」
「リディア!」
「アオ、また助けてもらった。お礼を伝えてくれる?」
アオは濃い茶色に向かって助かった、ありがとうとお礼をいい、わたしを助けてくれた感謝も伝えてくれた。
なんでこんなところに降りてきたんだ?と尋ねられたので、事情を話す。
実はわたしはトカゲではないんだと。
だからさっき尻尾をあてられたんだけど、どんな意味があったのか知らず、そのまま無視してしまった。それに大変申し訳ないけれど、まだトカゲになったばかりで、見分けがついていなくて、どのトカゲさんと触れ合ったのかもわからない。
ただ、今、巣作りする気はないことと、無視した形で申し訳なかったことを伝えに行こうとして、いる場所がわからなくなってしまったんだと。
濃い茶色のトカゲはわかったと短く言ったそうだ。
皆にそのことを伝えておくから、特にわたしはあの部屋から出ないで、強いのと一緒にいたほうがいいと言われた。
トカゲにまで言われた。うわーん。
そしてわたしたちがベースにしている部屋へと案内してくれる。
別れる時に、トカゲを捕らえる対策を何か立てているようだから、気をつけてと声をかけた。
『お帰り、ゆっくりだったなー』
と言われて、また助けてもらったんだと話せば、わたしはこの部屋から出るなと禁止令が出てしまった。
でも魔法も使えないし、わたしは素早くないから、簡単に捕まってしまう可能性がある。だから素直に従うことにした。
ただトカゲを捕まえる対策ってのが気になるところだ。
その答えはすぐにわかった。
次の日、農場に猫が放たれた。
わたしが人型だったら、顔を埋めたいふわふわの猫ちゃんたちだ。でも今の姿だと、わたしは動くおもちゃになってしまう。
わたしは絶対に部屋から出ないように言われてしまった。
猫が放たれたのは絶対にわたしのせいなので、トカゲさんたちが捕まってないか、何度かみんなに見てきてもらった。彼らは逃げ道を知り尽くしているし素早いのでなんの問題もないらしい。
よかったと思いつつ、喜びきれないわたしが。
何、猫ちゃんを撒けないのはわたしだけなの?
ああ、そうね、そうでしょうとも!
ボイラー室の暖かさが恋しいけれど、自分で撒いた種だから仕方ない。
わたしは部屋にて、帳簿の解読をし、みんなは情報を集めたりして過ごした。
わたしたちがベースに選んだのは、偉いらしき人のプライベートルームだ。普段は仕事部屋、ベッドルームは他にあるらしく、ここにはほとんど来ない。
物がいっぱい置かれていたので、出入口からは見えないように少し物の角度を変えてスペースを作り、そこで過ごしている。壁に小さな穴が空いていて、わたしたちはそこから出入りしている。
みんながいないと寒いので、わたしは寝床に決めた袋の中に入る。温石と布団を入れ込んでいる。少しだけとうつらうつらしたようだ。
アオだけ掬い上げられる。
「アオ、ぬいぐるみになって!」
わたしは叫んでから、壁のひび割れたところに逃げ込んだ。
「捕まえたぞ」
網を操っていた若い男性が、冷静に言う。
「って、……ふわふわの、もしかして、これ、ぬいぐるみじゃない?」
網の中を覗き込んだ女性が、人差し指で下の方をツンツンしている。
「さっき、動いてたよな?」
「トカゲが運んでたってこと?」
年若い女性と男性のふたりは、アオを凝視している。
あ、あ、どこに連れて行くの?
ついて行こうとすると、尻尾が重たく感じた。
ん? 振り向くと、わたしの尻尾を濃い茶色のトカゲが足で踏んでいる。
「何すんの? わたしアオを助けないと!」
わたしが行こうとすると、尻尾をかじられた。
えー、何?
! 尻尾をあてるのは求愛なんだっけ?
じゃあ、かじるのは何?
「わたし、今、忙しいの! 後にして」
わたしが振り切って出て行こうとすると、その前に茶色いのは出て行った。
あ、アオを連れた人がいない。
アオ、どこ行っちゃった?
「きゅ」
濃い茶色のトカゲが、2つ先のドアの前で短く鳴いた。
こっちに来いと言ってるみたいだ。
わたしは走った。
彼は壁を垂直に登り出した。わたしもついて行く。
隙間から部屋の中へと入って行く。
あ、アオを捕まえた男女と、アオだ!
テーブルの上にアオをポンと置いている。
「かわいい、ぬいぐるみね。どこから持ってきたのかしら、トカゲは」
「さぁな。カルビさんに報告するか?」
「なんて? トカゲは逃したけど、トカゲが持ってたぬいぐるみは捕らえましたって?」
ふたりは顔を見合わせている。
「ふざけてるのかって言われそうだな」
「ミランダが対策立てたそうだから、落ち着いていくとは思うけど……」
ふたりして、ため息をついている。
「でも、連れてくるつっても明日以降だろ? 急ぎの仕事のない奴はトカゲ狩りしろって言われているからな。ここにいたらサボってるって言われるだけだ、行くぞ」
「でもその網じゃ意味ないじゃない。あの薄い緑のは小ちゃくてその網じゃ捕まえられないわ」
「だからいいんじゃねーか」
男性がぼそっと言う。
「え?」
「あんな小さいの可哀想だろうが。こんな古い建物なんだから、生き物はそれなりに住んでるだろーよ。それにトカゲは寒がりだから、貯蔵庫には行かねーだろ。発酵中の樽はあったけーだろうけど、あんな人が行き交うとこなんか来ねーよ」
「あら、さっきも廊下に出たじゃない」
「あの緑のだけだろ。今までも出たことないし、あれだけ最近迷い込んできたんだよ。まだ小さいんだから、ほっとけば他のトカゲに人前に出ないよう教わるだろ」
なんかトカゲに優しい、いい人だ。
わたしも人に戻れたら、絶対トカゲに優しくすると心に決めた。
「あんた、見かけによらず優しいのね」
おお、なんかいい雰囲気になっているぞ。
「じゃあ、捕まえるフリをすればいいわけね」
女性は男性にかわいく問いかける。
「網持ってうろうろしてればいいんだから、楽だろ」
「それもそうね」
そんなふうに話しながらふたりは出て行った。
「アオ!」
「リディア!」
「アオ、また助けてもらった。お礼を伝えてくれる?」
アオは濃い茶色に向かって助かった、ありがとうとお礼をいい、わたしを助けてくれた感謝も伝えてくれた。
なんでこんなところに降りてきたんだ?と尋ねられたので、事情を話す。
実はわたしはトカゲではないんだと。
だからさっき尻尾をあてられたんだけど、どんな意味があったのか知らず、そのまま無視してしまった。それに大変申し訳ないけれど、まだトカゲになったばかりで、見分けがついていなくて、どのトカゲさんと触れ合ったのかもわからない。
ただ、今、巣作りする気はないことと、無視した形で申し訳なかったことを伝えに行こうとして、いる場所がわからなくなってしまったんだと。
濃い茶色のトカゲはわかったと短く言ったそうだ。
皆にそのことを伝えておくから、特にわたしはあの部屋から出ないで、強いのと一緒にいたほうがいいと言われた。
トカゲにまで言われた。うわーん。
そしてわたしたちがベースにしている部屋へと案内してくれる。
別れる時に、トカゲを捕らえる対策を何か立てているようだから、気をつけてと声をかけた。
『お帰り、ゆっくりだったなー』
と言われて、また助けてもらったんだと話せば、わたしはこの部屋から出るなと禁止令が出てしまった。
でも魔法も使えないし、わたしは素早くないから、簡単に捕まってしまう可能性がある。だから素直に従うことにした。
ただトカゲを捕まえる対策ってのが気になるところだ。
その答えはすぐにわかった。
次の日、農場に猫が放たれた。
わたしが人型だったら、顔を埋めたいふわふわの猫ちゃんたちだ。でも今の姿だと、わたしは動くおもちゃになってしまう。
わたしは絶対に部屋から出ないように言われてしまった。
猫が放たれたのは絶対にわたしのせいなので、トカゲさんたちが捕まってないか、何度かみんなに見てきてもらった。彼らは逃げ道を知り尽くしているし素早いのでなんの問題もないらしい。
よかったと思いつつ、喜びきれないわたしが。
何、猫ちゃんを撒けないのはわたしだけなの?
ああ、そうね、そうでしょうとも!
ボイラー室の暖かさが恋しいけれど、自分で撒いた種だから仕方ない。
わたしは部屋にて、帳簿の解読をし、みんなは情報を集めたりして過ごした。
わたしたちがベースに選んだのは、偉いらしき人のプライベートルームだ。普段は仕事部屋、ベッドルームは他にあるらしく、ここにはほとんど来ない。
物がいっぱい置かれていたので、出入口からは見えないように少し物の角度を変えてスペースを作り、そこで過ごしている。壁に小さな穴が空いていて、わたしたちはそこから出入りしている。
みんながいないと寒いので、わたしは寝床に決めた袋の中に入る。温石と布団を入れ込んでいる。少しだけとうつらうつらしたようだ。
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