プラス的 異世界の過ごし方

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14章 君の味方

第588話 ある意味モテ期⑩尻尾のサイン

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 何を探っているのか聞かれて、今は少し前までここにいた人たちが残して行った荷物を探そうと思っていると言うと、協力してくれると言う。早いとこわたしたちに出て行ってもらいたいみたいだね。気持ちはわかる。
 その倉庫というのに心当たりがあるそうで、大掃除が終わったら案内してくれると言った。

 夜に動こうかと思ったけど、見えないと困るので、明け方にまた集合することにした。
 早くに食事を取って眠り、朝早い時間にトカゲから起こされる。
 明け方は気温が下がっているので、うまく身体が動かない。
 わたしはもふさまに運んでもらう。

 アオがトカゲたちと何か話していたので、何を話していたのかと聞いたら、わたしがもふさまに運んでもらっているのを見て、なんであいつは運ばれているんだ?と聞かれていたらしい。
 アオはわたしが寒いと動けなくなるし、鈍臭いと言ったそうだ。……その通りだけど。トカゲになってまでも種族的にレベルが下って悲しすぎる。もっとスーパーなトカゲとかになれたなら、カッコがつくってもんだけど。魔力も減って魔法も使えないし。身体能力は低いし。すぐ眠くなっちゃうし。


 いくつかの部屋を、倉庫として使っているみたいだ。
 わたしたちは案内してくれたトカゲたちにお礼を言った。
 中のものをつぶさに見ていく。
 古い魔具だったり、道具だったり、そういったものが多かったけど、ある区画だけ、書類の山だった。数字がいっぱいで、帳簿っぽい。
 帳簿とは違うか? でも変な書類だ。
 わたしがそう言うと、レオとアリとアオとの共同作業が始まった。
 書類を映像の魔具でおさめる。わたしはこの姿だと、細やかなボタン操作ができないので、レオにお願いした。

 一瞬これを全部、収納袋に入れて父さまのところに持って行こうかと思ったんだけど、もし証拠になるようなものだった場合、〝盗まれた物〟になってしまい、改竄かいざんされたって言い逃れができちゃうもんね。
 でも悪事の証拠になるようなものだったら後生大事に取っておいたりしないか……。
 その新しい仕事場へ行きたいもんだね。物証はなくても、誰と繋がっているかわかったら、そこからまた調べることができるから。

 ん? わたし邪魔?
 さっきから行き来しているトカゲたちと、やたら尻尾があたるんだけど。
 レオは撮影が面白くなったみたいで、魔具なんかも撮っていた。
 そのうち、部屋の外を人が歩いて行く音が聞こえてきたので、わたしたちはトカゲにお礼を言って、引き上げることにした。
 最後まで尻尾をあてられたよ。ひょっとして嫌がらせかな。
 濃い茶色いトカゲは親切にしてくれて情が湧いていたので、ショックだ。
 だってあたるような場所でないところでもあたっていたもんね。
 役立たずなことを感じ取って、意地悪されてたのかな?
 でも、そっか。わたしが見つかったせいで、人にトカゲがいるってバレちゃったわけだし……。
 みんな親切で、わたし人に見つかって迷惑かけてるのに、そこを突いてきたりしないし、なんだかとってもトカゲさんたちがかっこよく見えてきていたので、悲しくなってくる。
 ハッ。トカゲがかっこよく見えてくるって……この先、人に戻れてもトカゲしか、かっこよく見えなかったらどうしよう!

 部屋に戻って、朝ごはんタイムだ。
 アオがサンドイッチをわたしに差し出してくれる。持ってもらったままアムアムと頬張る。卵サンドだ、おいしい。
 母さまとハンナがいっぱいご飯を作って持たせてくれたやつだ。

「もう、いいんでちか?」

「お腹、いっぱい、ごちそうさまです。ありがとう、アオ」

 わたしはぽこりと膨らんだお腹を叩いた。
 もふもふ軍団は小さくなっても大きい時と同じように食べられるけど、わたしはトカゲ化したら、量としてはちょっぴりだ。体が小さいからね。すぐに食べ終えるからか、アオはわたしの世話を先に焼いてくれる。

『トカゲたちのおかげで、すぐに場所がわかり、早く終わったな』

『親切だし、ここのことよく知ってるみたいだから、なんだっけカザなんとかのことも聞いてみれば?』

 アリが自分の口の周りをペロリと舐める。
 あ。

『どうした、リディア?』

 もふさまが食後の顔のお手入れをしながら聞いてくる。

「うん、あんまりお世話になるのもよくないかなって……。わたし嫌われているみたいだし」

『嫌われてる?』

 わたしは尻尾をぶつけられたことを言った。
 すると大慌てをしたのはレオだ。

『リディア、それは違う! 尻尾をあててくるのは求愛だよ』

 きゅ、求愛?

『断るなら早いとこ断っておかないと! 向こうは巣作りを始めるぞ』

「え、って言うか、5匹ぐらい違うトカゲだったと思うんだけど……」

『えーーー、リディア、それはないだろう。みんなに気を持たせたままにしておくなんて』

「えーーーーーー」

 断らないと、それは気があるサイン。オッケーは尻尾をくっつけるそうだ。
 何、わたし、告られたのにどうしよっかなーってキープしたことになってんの? しかも複数!

「レオ、断る時の作法ってあるの?」

『そんなの決まってる。尻尾で顔を叩くんだ』

 え。
 す、好いてくれた相手の顔を尻尾で叩く……。なんてバイオレンス!
 断るって振られたってことになるわけでしょ。断られるうえに、攻撃まで加わるって、なんて獣の世界は力強いの?
 そっか……それは強くないと生きていけないね。

「……他の伝え方はないの?」

『お前と巣作りしないって、言っとけばいいんじゃないか?』

 なるほど、そうなのか。

「アオ、悪いんだけど、通訳で一緒にトカゲたちのところへ行ってもらえる?」

「いいでちよ」

 アオが快諾してくれた。




 んーー、ここさっきも通ったような。

「リディア、迷ってるでちか?」

「あの時も先導してもらっていたから」

 アオとふたりでトカゲたちのいた天井裏に向かおうとしたのだが、マズい、場所把握してなかった。

「ごめん、アオ。天井に続く隙間があって、そこから天井裏に行くはずなんだけど、わからないや。戻ろう」

「戻るって、……リディア、戻り方わかるでちか? おいら、ここがどこかわからないでち」

 わたしたちは顔を見合わせる。

「下に降りよう。1階のボイラー室からなら、戻り方わかるから」

 アオと一緒に1階まで降りたのはいいけれど、ボイラー室らしきものが見当たらない。
 あれ。なんかもうちょっと、廊下が狭いところだった気がする。

「きゃーーー、トカゲと太ったネズミよ!」

「な、太ったネズミ……」

「アオ、逃げるよ!」

 アオは呆然としている。
 わたしは引っ張った。

「酷いでち。オイラバードでち。マウスじゃないでち!」

「……目が悪かったんだよ」

 アオはマウス嫌いだから、マウスとだけは言わないであげて欲しい。

 やば、人が増えた。
 嘘、網みたいの持ってる。
 と思った時には、わたしたちは網を上からひっ被されていた。
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