プラス的 異世界の過ごし方

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14章 君の味方

第587話 ある意味モテ期⑨トカゲ出会う

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 茶色のトカゲについて行くと、ある部屋の天井に隙間があって、そこからさらに上にあがっていった。光の入らない天井裏は薄暗かったのに、下の方にいくつもの光があってビクッとする。
 近づいていくと、それはトカゲたちの目ということがわかった。

「ぴー」
「キュー」
「ピッ」

 ヤバイ、トカゲいっぱいいた!
 いっぱい鳴いている、けど、何を言っているかはわからない。
 トカゲたちの間ではわかっている感じだ。

 前の方にいたトカゲたちもどんどん振り返って、すっごい見られている気がする。
 みんなは茶色いトカゲだから、わたしだけ色違うしね。

 多分助けてくれた濃い目の茶色のトカゲと、細長の目のトカゲがわたしに近づいてくる。

「助けてくれて、ありがとうございました」

 わたしは大きな声で告げた。
 副音声のように少しズレて、ぴーってわたしの鳴き声が耳に届く。

「ピュッピュ」
「キュー」

「すみません、なんて言っているのかわかりません」

 そう告げると、顔を見合わせている。
 そしてなんか会議が始まった。
 言葉があるのかはわからないけれど、なんか鳴きあっている。

「あのぉ、わたし仲間のところに戻りますね。ありがとうございました!」

 そう振り返ると、濃い茶色がわたしの前にサッと来た。
 そしてみんなになんかを言うと、ついて来いとでも言うように、わたしの前を走った。濃い茶色は時々振り返って待っていてくれた。わたしは走るのがあまりうまくない。
 濃い茶色は、わたしが同じルートを辿れなくて戸惑っていると、戻ってきてくれて、わたしでも行けそうなルートに変更してくれる、親切なトカゲだった。
 ただついて行ってしまったけど、いくつかの部屋を通り過ぎると、そこはわたしたちが拠点としていた部屋の天井裏にたどり着いた。
 そこを降りれば着くだろと言いたげにひと鳴きすると、トカゲは去って行った。

「ありがとう」

 背中に呼びかける。
 すると下から

『リディアか?』

 ともふさまの声がした。
 わたしはもふさま目掛けてダイブした。
 壁を伝って降りるより、よっぽど早い。

『ボイラー室にいたんじゃないのか?』

 ここは3階だ。ボイラー室は1階なのに上から降りてきたから不思議に思ったんだろう。
 レオに聞かれて、わたしはあったことを話した。

『だから大掃除が始まったのか』

 アリの言葉に首を傾げる。

「大掃除?」

『農場全体で掃除が始まったよ。生き物がいたら、その巣穴を探せって息巻いてる』

 げっ。わたしが見つかったせいで、ここに住む生物に迷惑を掛けてる!
 そう嘆くとアオ が慰めてくれる。

「みんな素早いから大丈夫でちよ。見つかる鈍臭いのは、リディアぐらいでち」

 うっ。その通りだけど、容赦ない。

『アオ、真実は人を傷つけるらしいぞ』

 レオは突っ走りがちなところはあるけれど、心の機微には敏感だ。

「え? リディア、ごめんでち。傷ついたでちか?」

「いや、いいんだよ。本当のことだから」

『それはそうとして、そのジャックってのが魔力高かったやつだろうなー。ここの倉庫に仕事の何かが残っているんだな? それは手掛かりになるんじゃないか?』

 レオの言う通りだ。

『カザエルってのは恐れられているようだな。何か知っているか?』

 もふさまに尋ねられて、わたしは首を横に振った。
 国か地域の名前だと思うけどと推測を言う。
 とりあえず、その大掃除が終わってから、倉庫を探ってみようということになった。でも、その倉庫もどこにあるかはわからない。用途のはっきりしない部屋を、全部チェックすることにしたけれど、そうなるとすっごい時間がかかりそうだ。時間はいっぱいあるからいいんだけどね。
 ってな話をしている時だった。
 みんながピクッとして天井を見つめる。

「どうしたの?」

 もふさまにピタリとくっついたまま、わたしは尋ねる。
 ポトっと音がしたかと思うと、前に2匹のトカゲがいて、こちらに向かって頭を下げた。

「ピュー、キキキキキぃー」

「話がしたいって言ってるでち」

『アオはその者たちが言ってることがわかるのか?』

 レオが尋ねる。

「なんとなくでちけど、わかるでち」

 アオ、すごい!

『それじゃあ通訳してくれ』

「わかったでち。おいら通訳するでち」

 アオがトカゲたちに向かって言うと、彼らも頷いた。

「アオ、さっきはありがとうございましたって伝えてくれる? この方たちが、さっき危ないところを助けてくれたの」

 アオがトカゲたちに通訳してくれている間に、この者たちかと言って、みんなもお礼を次々に口にする。

 彼らは同じトカゲが人族に追いかけられていたので、わたしを助けてくれたようだ。
 話があるとは……彼らは怯えていた。
 あなたたちは少し前もここに来ていましたよね?、と。
 トカゲになってわたしもわかったから、獣は人よりも鋭く、相手の強さっていうのがわかるのだろう。
 だからレオたちもふもふ軍団がこの農場に来た時、何が目的?と怯えながら隠れていたようだ。
 しばらく住んでいたが、自分たちには何もすることなく、人族を探っているような印象を受けた。
 そして彼らは出て行った。胸を撫で下ろしていたが、今度は違うメンツでやってきた。さらにもっと強いのがいる。
 その中でひとりだけ、弱っちぃのがいた。わたしだ。
 それは変わった色の同種族。弱いだけでなく、動作もとろいし鈍臭い。
 ボイラー室でよく眠っているのを、チェックされていたようだ。
 絶対人に見つかるぞと思っていると、案の定見つかって捕まりそうになっていた……というのがあらまし。

 それで聞きたかったことは、ここにこのまま住むつもりなの?、前に来たときは様子見で、今度は本格的に引っ越してきたのか?と尋ねにきたのだという。

 仲間のわたしでも、もふもふ軍団の強さは怖く思えるから、敵対していなくてもいるだけで恐怖になるんだろう。

 それでわたしたちは、ここへは探りにきただけで、住むつもりはないと伝え安心させたのだった。
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