プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
569 / 799
14章 君の味方

第569話 記念パーティー③楽しい時間

しおりを挟む
 お互いにお辞儀をして向き合って手を取る。
 ステップを踏み、強く引き戻され、兄さまの腕の中でくるっと回る。

「ダンスも上手になったね」

「本当?」

 と言ってるそばからステップを間違えたけれど、兄さまが抱き上げてくるっとわたしを回した。一回わからなくなると、取り戻せなくてグダグダになってしまったのに、ほぼ兄さまのリードでことなきを得た。
 主役だから注目されていて、踊り終えれば温かい拍手をもらった。

 それからロビ兄とアラ兄と、ノエルと、父さまと。それからおじいさまたちと。次々に踊った。皆、わたしに踊らせるのは最初のワンステップで、あとはほぼ抱えられていた状態だ。だからそんないっぱいの方と踊ってもまだ動けたんだけどね、あはは。ふーー。

 喉が渇いたのでドリンクをもらっていると、ロサに手を出される。

「リディア嬢、一曲、踊っていただけませんか?」

 わたしは声を潜めた。

「わかってると思うけど、わたしダンス下手だよ。足、踏むかもよ?」

 ロサはそんなことで激怒はしないと思うけど、念のため告げておく。

「踏まれないよう、気をつけよう」

 それじゃあ、とグラスをテーブルに置いて、ロサとホールの中央に向かう。
 ロサもやっぱりダンスはうまかった。下手なわたしを完全にカバーだ。というか、みんな相手を抱えた状態でよくダンスできるもんだ。やはりロサにもほぼ抱えてもらった状態でダンスを終える。

「ロサもダンス上手いのね」

 というと、ロサは笑った。

「君の前では一国の王子も形なしだな」

「え? あ、深い意味はなくて。一緒にいると王子ってこと忘れちゃうっていうか。あ、忘れてるわけではないんだけど」

 慌てて弁解すると、ロサは豪快に笑い出した。

 動いたらお腹が空いたので、みんなにオススメを言って、バイキング形式の物を食べてもらう。

「あ、これもおいしい!」

「この肉、スッゲー上手い! なんの肉?」

 ブライが目を輝かせている。

「魔物の肉、おいしいでしょ?」

「へー、こんな美味いのもあるんだな!」

 ブライは騎士の遠征に、荷物持ちとして行ったことがあるそうだ。
 そこで支給されるのは、魔物の干し肉。それから途中で倒した魔物の肉など食べたこともあるけど、硬いわ、臭いわで食べられたものではなかったという。
 世間一般で売ってる干し肉、あれ辛いもんね。定期的に干し肉を作っては、シヴァたちの砦に届けている。あれが保存食じゃ辛すぎるからね。保存食も時々入れ替えないとだから、古いものを遠征の時に配って食べることにしているそうだけど、ウチの保存食はこれなら普通に食べるのと変わらないと喜ばれていると聞いた。
 国を守る騎士さんたちの保存食が辛いのは可哀そうだな。流通ラインに乗せられるか見積もって、できることなら流通させてもいいかもね。でも今干し肉で生計を立てている人たちもを調べないとだから……、時間がかかりそうだ。

 ふと視線を落とし、もふさまのリュックがぺしゃんこなことに気づいた。
 わたしはそっとバイキングスペースから離れて、もふさまを撫でながら尋ねる。

「リュックがぺしゃんこに見えるんだけど?」

『我はやめろと言ったんだが……探検に行った』

 あーーー。

『大丈夫だろう、気配には敏感だ』

「魔力が多い方もいっぱい来てるんだけどっ」

『もしもの時はぬいぐるみになるから、問題ないと言ってたぞ』

 そういう問題ことでは……。
 こそこそともふもふ軍団を探していると、シヴァに声をかけられた。
 ダンスを申し込まれ、一緒に踊る。
 シヴァは最初から最後までわたしを地面に下さなかった。

「シヴァもダンス上手だね」

「お嬢は……、とてもきれいですよ」

 ダンスに関しては言葉を濁す気だね。

「何か、気にかかることが?」

 どうしても視線が下に行ってしまうからか、ドリンクスペースに戻る時シヴァに聞かれる。
 もふもふ軍団が行方不明なんだといえば、ぷっと吹き出す。
 けれど、彼らは賢いから大丈夫ですよと、なぜかわたしの頭を撫でた。


 ん?
 出入口が騒がしい。
 何かあった?と思ったら、フォンタナ家のジン、ガーシ、ティガがわたしの周りについた。そのほか、ロサの護衛の人たちがロサを守る。

 な、何事?

 ライラックのおじいさまが、出入口に移動している。
 門番をしていたフォンタナ家の人がおじいさまに耳打ちした。
 おじいさまの眉が上がる。
 何があったんだろう?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...