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13章 いざ尋常に勝負
第561話 核の記憶
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年末の試験の前日は静けさが舞い降りた。
その前までは、どの教科がヤバイだの、騒ぎまくってバタバタと勉強していたけど、前日になり気持ちが落ち着いたのかもしれない。
静かに夜が更けていった。
まだ雪は降っていないけど物凄い寒さが続いたからか、わたしは風邪気味だった。昨日考え事をして長風呂をしたのが、決定的に良くなかったのかもしれない。考え事は各方面へ手紙を送りまくり、なんとか方法がみつかったんだけどね。
みんなからは、勉強しないでもう寝ろと言われた。
だからご飯の後、すぐにベッドに入った。
夢を見た。女神さまの夢だ。
人型をしているとなんとなく感じたけれど、光っていてその姿は見ることが叶わなかった。
でも不思議なことに、女神さまだとわたしは思った。
女神さまは、湖の畔に座り込んでいるようだった。湖を眺めている。
それにしてもBIGだ。サイズ感が桁違い。
あちらにしたら、わたしなんか〝蛍の光〟ぐらいしかないんじゃないかな。
それくらい光は巨大なのだ。
女神さまは、ふとこちらに気を留める。わたしに気づいたようだ。
《あら、珍しい。だめよ、こんなところに来ては。ああ、わからなかったのね? あなたの行く道はあっちよ》
ぼんやりと、何かを教えてくれようとしているんだと思った。
女神さまが手を伸ばしかけた時、わたしは突風に吹かれて飛ばされそうになり、誰かの手に摘まれた。
《なぜ、人族の核をお前が!》
わたしを摘み上げたのは神さまだ、わたしはそう思った。
《迷い込んできたのです》
《迷い込む? ……これは珍しい。初めての界で迷ったか。お前、手で触れたのか? 面妖なことになっておるぞ》
〝面妖〟って聞こえた?
《触れてはおりませぬ。面妖とは?》
覗き込まれている気がする。
《これはこんなに弱いなんて……》
《前の界ではこれが普通だったのだろう。全く干渉が見られない》
〝干渉〟? 聞いたことのある言葉だ。
女神さまと神さまはお話しているようだ。
所々、わかる単語がある。
《なんてことでしょう。干渉のない世界がありますの?》
《干渉のない……、そうか。この界が特殊というのは聞いたことがあるだろう? どうやらこの核は、箱庭の元の世界からきたようだ。ああ、それで、こんな干渉がなくなっているような作用が……》
飽きてきて、わたしは体を震わせている。
でも離してもらえない。
《箱庭の?》
《……つまり、創造神と同じ視点で〝理解〟できる者……》
《創造神を理解できる視点を持つ人族……》
あの光はなんだろう? あっちに行ってみたい。
神さま、離してくれないかな……。
《どうした?》
どうした? って言った?
《それなら聞いてみたいと思ったのです。なぜこんな理を組み込んでいるのか……。創造神を理解できるのなら、答えを導き出せるでしょうから……》
だんだん会話がわかるようになってきた。
創造神と聞こえた。
《残念ながら、俺たちはこの核とここで別れてそれっきりだ。核が世界の理に行き着く頃には、携わることはできない》
《生を受ける座標はいつですの?》
《ああ、これはまた入り組んでいるな。聖女が生まれたすぐ後だ。近しい道にいるが、聖女と出会う座標まで生きていられるかわからない》
聖女。聖女、えっとなんだっけ?
《そうか。神と同じ視点を持つことがわからずとも、本能で理解するのだろう。この者は多くの者に救いを求められる運命だ……。だが、自身はとても弱い核。何をすることも叶わぬだろう》
視点だとか本能だとか、何言っちゃってるんだろう?
なんの話?
《オルポリデさま、この核に加護を授けてもよろしいでしょうか? 聖女の……助けになって欲しいのです》
《聖女はお前の管轄……。だが加護はやりすぎだろう》
聖女管轄の女神さま、なんか、聞いたことあるなぁ。
《でも、こんなに弱々しい生き物です。風が吹いたら死んでしまいます》
なんか馬鹿にされている気がする。
神さまがわたしのどこかに指を当てる。
《どれ……確かに。……なんという悪意に晒されていくのだ、不憫な。理の余波を受ける存在なのだな》
《命運を司るオルポリデさま、どうか、この核を救ってくださいませ》
え。何もしなければ救われないって前提?
それにしてもなんだろう、ここは。聖域よりもっと澄んでいる気がする。
《この核にだけ目をかけるわけにはいかぬ。だが、あまりにも数奇で不憫。加護はできぬが、多くの干渉を受けられるよう、迷いながら輪廻の河にたどり着け》
やっぱり今までの主語はわたしを指している?
輪廻の河? え、わたし死んじゃったの??
体が温かくなる。
《あなたの心が誠実でそして優しくあれば、あなたは魔物から同じように誠実さを返されることでしょう》
《お前が運命を切り開きたいと思い、そう行動した時、運命の扉はお前の力を受け入れることだろう》
体がどんどん熱くなる。
《道に迷い、干渉してもらえ》
《神の視点を理解できる核よ。どうか我らの箱庭の住人を救っておくれ。さすればお前も救われよう》
ふたりに同時にふっと息を吹きかけられ、わたしは転がる。漂う。暗い夜空に浮かぶ星々。
いつかどこかで見たことがある気がする……。
体が熱い。
《なんでこんなところに人族の核が?》
《オルポリデさまが干渉されてるぞ。おお、こいつは珍しい。界渡りだ!》
《界渡り? 見せてくれ。なんて弱々しい核なんだ! あれ、加護はできぬな、だから干渉なのか。よし、最弱な人族の核よ、我が干渉してやる》
なんかわらわら光の団体が集まってきた。覗き込まれている気がする。
好き放題に言われているし。
なんで一番役立つ干渉を授けた者が秘蔵のお酒もらえる選手権なんて開催されてんの?
意味がわからん。
わたしはあっちの光ってる方に行きたいんだってば。
《こらこら、あっちじゃないぞ。お前が行くのはこっちだ》
息を吹きかけられ、コロコロと転がる。
《なんだ、この核は?》
エンドレスだ。
また大きな光たちに囲まれる。
干渉、干渉、うるさい。
今度は賭けが始まった。
なんでネタにするかなー。
熱くて仕方ないから、違うところに行きたいのに……。
《お前が誰からも気づかれたくないと思う時、それが真の心に映ることであるならば、誰もお前に気づかないだろう》
《おい、それを喜ぶ人族はいないんじゃないか?》
《そうか?》
わたしは転がっては光に囲まれ、囲まれてよくわからないことを言われてはまた転がった。光からどんどん離れてしまう。
光っているのに、とても淋しい光。
わたしは慰めに行きたいのに……。
体が熱い。熱くて仕方ない……。
目を擦る。頭がぼーっとしている。
変な夢をみた気がする。
そう、大きな光だったのに、なぜか女神さまと思って……。
確か、そんな夢だった。
「リディア、顔赤いでち」
『ぼーっとしてる』
『ぼーっとしてる』
『レオは起きないですねぇ』
『リディア、今日は大切な試験とやらではないのか?』
え、あ、そうだった。
体が熱い。熱が出ているんだろう。
光魔法で治してしまおう。
寮も学園の隣だからか、少しばかりなら魔素が使えるかもしれない。
魔法は使うとバレるからな。
わたしは魔素で光魔法を使った。
けど。あれ? 体の熱いのがひかない。
あ、これ魔力酔い?
ボードを呼び出すと、魔力が増えてる。
なんで増えた?
あ、この頃魔法を使う時、魔素取り込んでたからか?
「風邪じゃない、魔力酔いだ」
『えーーーーーー』
「なんで試験のこのタイミングでなるかな?」
風邪じゃないから人にうつすことはないけど……。
ご飯を食べにいかずに、ベッドのなかでギリギリまで休んでいると、部屋のドアがガンガンノックされた。
「リディア? 起きてる? 大丈夫?」
「起きてる。大丈夫。学園にはギリギリに行く」
上品なノックがした。
「シュタインさん、大丈夫? 開けて中に入ってもいい?」
「……はい」
ローマンおばあちゃんが入ってきた。
制服に着替え、そのままベッドに横になっていたのを見て、驚いている。
わたしの顔が赤くなっているので熱があると確信したのだろう。
私に任せてとみんなを下に行かせる。
「大丈夫ですか?」
おばあちゃんがわたし額に手を置く。
冷たくて気持ちいい。
「辛そうね、今日は学園を休みましょう」
「いえ、大丈夫です、行きます」
「でも熱が高いわ。それに人に」
「風邪じゃありません、魔力酔いです」
「魔力酔い?」
「……多分そうです。前もいきなり魔力が増えた時、こうなりましたから」
「まぁ」
その後すぐにメリヤス先生が来てくれて、機械で魔力を測ろうとした。
慌てて、見せ魔力を300まで引き上げる。
先生が驚いている。
「本当だ、シュタインさん凄いよ150も増えている」
ん? 150? わたし50足したつもりだったのに……150+50は200だ。熱でぼーっとしていたからか300と間違えた! 大盤振る舞いだ。
ああ、熱い。もう、ぼんやりする。
「12歳で、急に150も増えるなんて、稀なことだよ」
わたしはそんなのいいから、切実に寝かせて欲しいと思った。
その前までは、どの教科がヤバイだの、騒ぎまくってバタバタと勉強していたけど、前日になり気持ちが落ち着いたのかもしれない。
静かに夜が更けていった。
まだ雪は降っていないけど物凄い寒さが続いたからか、わたしは風邪気味だった。昨日考え事をして長風呂をしたのが、決定的に良くなかったのかもしれない。考え事は各方面へ手紙を送りまくり、なんとか方法がみつかったんだけどね。
みんなからは、勉強しないでもう寝ろと言われた。
だからご飯の後、すぐにベッドに入った。
夢を見た。女神さまの夢だ。
人型をしているとなんとなく感じたけれど、光っていてその姿は見ることが叶わなかった。
でも不思議なことに、女神さまだとわたしは思った。
女神さまは、湖の畔に座り込んでいるようだった。湖を眺めている。
それにしてもBIGだ。サイズ感が桁違い。
あちらにしたら、わたしなんか〝蛍の光〟ぐらいしかないんじゃないかな。
それくらい光は巨大なのだ。
女神さまは、ふとこちらに気を留める。わたしに気づいたようだ。
《あら、珍しい。だめよ、こんなところに来ては。ああ、わからなかったのね? あなたの行く道はあっちよ》
ぼんやりと、何かを教えてくれようとしているんだと思った。
女神さまが手を伸ばしかけた時、わたしは突風に吹かれて飛ばされそうになり、誰かの手に摘まれた。
《なぜ、人族の核をお前が!》
わたしを摘み上げたのは神さまだ、わたしはそう思った。
《迷い込んできたのです》
《迷い込む? ……これは珍しい。初めての界で迷ったか。お前、手で触れたのか? 面妖なことになっておるぞ》
〝面妖〟って聞こえた?
《触れてはおりませぬ。面妖とは?》
覗き込まれている気がする。
《これはこんなに弱いなんて……》
《前の界ではこれが普通だったのだろう。全く干渉が見られない》
〝干渉〟? 聞いたことのある言葉だ。
女神さまと神さまはお話しているようだ。
所々、わかる単語がある。
《なんてことでしょう。干渉のない世界がありますの?》
《干渉のない……、そうか。この界が特殊というのは聞いたことがあるだろう? どうやらこの核は、箱庭の元の世界からきたようだ。ああ、それで、こんな干渉がなくなっているような作用が……》
飽きてきて、わたしは体を震わせている。
でも離してもらえない。
《箱庭の?》
《……つまり、創造神と同じ視点で〝理解〟できる者……》
《創造神を理解できる視点を持つ人族……》
あの光はなんだろう? あっちに行ってみたい。
神さま、離してくれないかな……。
《どうした?》
どうした? って言った?
《それなら聞いてみたいと思ったのです。なぜこんな理を組み込んでいるのか……。創造神を理解できるのなら、答えを導き出せるでしょうから……》
だんだん会話がわかるようになってきた。
創造神と聞こえた。
《残念ながら、俺たちはこの核とここで別れてそれっきりだ。核が世界の理に行き着く頃には、携わることはできない》
《生を受ける座標はいつですの?》
《ああ、これはまた入り組んでいるな。聖女が生まれたすぐ後だ。近しい道にいるが、聖女と出会う座標まで生きていられるかわからない》
聖女。聖女、えっとなんだっけ?
《そうか。神と同じ視点を持つことがわからずとも、本能で理解するのだろう。この者は多くの者に救いを求められる運命だ……。だが、自身はとても弱い核。何をすることも叶わぬだろう》
視点だとか本能だとか、何言っちゃってるんだろう?
なんの話?
《オルポリデさま、この核に加護を授けてもよろしいでしょうか? 聖女の……助けになって欲しいのです》
《聖女はお前の管轄……。だが加護はやりすぎだろう》
聖女管轄の女神さま、なんか、聞いたことあるなぁ。
《でも、こんなに弱々しい生き物です。風が吹いたら死んでしまいます》
なんか馬鹿にされている気がする。
神さまがわたしのどこかに指を当てる。
《どれ……確かに。……なんという悪意に晒されていくのだ、不憫な。理の余波を受ける存在なのだな》
《命運を司るオルポリデさま、どうか、この核を救ってくださいませ》
え。何もしなければ救われないって前提?
それにしてもなんだろう、ここは。聖域よりもっと澄んでいる気がする。
《この核にだけ目をかけるわけにはいかぬ。だが、あまりにも数奇で不憫。加護はできぬが、多くの干渉を受けられるよう、迷いながら輪廻の河にたどり着け》
やっぱり今までの主語はわたしを指している?
輪廻の河? え、わたし死んじゃったの??
体が温かくなる。
《あなたの心が誠実でそして優しくあれば、あなたは魔物から同じように誠実さを返されることでしょう》
《お前が運命を切り開きたいと思い、そう行動した時、運命の扉はお前の力を受け入れることだろう》
体がどんどん熱くなる。
《道に迷い、干渉してもらえ》
《神の視点を理解できる核よ。どうか我らの箱庭の住人を救っておくれ。さすればお前も救われよう》
ふたりに同時にふっと息を吹きかけられ、わたしは転がる。漂う。暗い夜空に浮かぶ星々。
いつかどこかで見たことがある気がする……。
体が熱い。
《なんでこんなところに人族の核が?》
《オルポリデさまが干渉されてるぞ。おお、こいつは珍しい。界渡りだ!》
《界渡り? 見せてくれ。なんて弱々しい核なんだ! あれ、加護はできぬな、だから干渉なのか。よし、最弱な人族の核よ、我が干渉してやる》
なんかわらわら光の団体が集まってきた。覗き込まれている気がする。
好き放題に言われているし。
なんで一番役立つ干渉を授けた者が秘蔵のお酒もらえる選手権なんて開催されてんの?
意味がわからん。
わたしはあっちの光ってる方に行きたいんだってば。
《こらこら、あっちじゃないぞ。お前が行くのはこっちだ》
息を吹きかけられ、コロコロと転がる。
《なんだ、この核は?》
エンドレスだ。
また大きな光たちに囲まれる。
干渉、干渉、うるさい。
今度は賭けが始まった。
なんでネタにするかなー。
熱くて仕方ないから、違うところに行きたいのに……。
《お前が誰からも気づかれたくないと思う時、それが真の心に映ることであるならば、誰もお前に気づかないだろう》
《おい、それを喜ぶ人族はいないんじゃないか?》
《そうか?》
わたしは転がっては光に囲まれ、囲まれてよくわからないことを言われてはまた転がった。光からどんどん離れてしまう。
光っているのに、とても淋しい光。
わたしは慰めに行きたいのに……。
体が熱い。熱くて仕方ない……。
目を擦る。頭がぼーっとしている。
変な夢をみた気がする。
そう、大きな光だったのに、なぜか女神さまと思って……。
確か、そんな夢だった。
「リディア、顔赤いでち」
『ぼーっとしてる』
『ぼーっとしてる』
『レオは起きないですねぇ』
『リディア、今日は大切な試験とやらではないのか?』
え、あ、そうだった。
体が熱い。熱が出ているんだろう。
光魔法で治してしまおう。
寮も学園の隣だからか、少しばかりなら魔素が使えるかもしれない。
魔法は使うとバレるからな。
わたしは魔素で光魔法を使った。
けど。あれ? 体の熱いのがひかない。
あ、これ魔力酔い?
ボードを呼び出すと、魔力が増えてる。
なんで増えた?
あ、この頃魔法を使う時、魔素取り込んでたからか?
「風邪じゃない、魔力酔いだ」
『えーーーーーー』
「なんで試験のこのタイミングでなるかな?」
風邪じゃないから人にうつすことはないけど……。
ご飯を食べにいかずに、ベッドのなかでギリギリまで休んでいると、部屋のドアがガンガンノックされた。
「リディア? 起きてる? 大丈夫?」
「起きてる。大丈夫。学園にはギリギリに行く」
上品なノックがした。
「シュタインさん、大丈夫? 開けて中に入ってもいい?」
「……はい」
ローマンおばあちゃんが入ってきた。
制服に着替え、そのままベッドに横になっていたのを見て、驚いている。
わたしの顔が赤くなっているので熱があると確信したのだろう。
私に任せてとみんなを下に行かせる。
「大丈夫ですか?」
おばあちゃんがわたし額に手を置く。
冷たくて気持ちいい。
「辛そうね、今日は学園を休みましょう」
「いえ、大丈夫です、行きます」
「でも熱が高いわ。それに人に」
「風邪じゃありません、魔力酔いです」
「魔力酔い?」
「……多分そうです。前もいきなり魔力が増えた時、こうなりましたから」
「まぁ」
その後すぐにメリヤス先生が来てくれて、機械で魔力を測ろうとした。
慌てて、見せ魔力を300まで引き上げる。
先生が驚いている。
「本当だ、シュタインさん凄いよ150も増えている」
ん? 150? わたし50足したつもりだったのに……150+50は200だ。熱でぼーっとしていたからか300と間違えた! 大盤振る舞いだ。
ああ、熱い。もう、ぼんやりする。
「12歳で、急に150も増えるなんて、稀なことだよ」
わたしはそんなのいいから、切実に寝かせて欲しいと思った。
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