プラス的 異世界の過ごし方

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13章 いざ尋常に勝負

第554話 魔法戦⑫捏造と証拠

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「だから過去の再現と言ってるだろう? 魔物たちは全て会場を作ったものの魔力で動かしている。だから助けてやったし、攻撃しても反撃してこなかっただろう?」

 助けてやった?
 先生はチラリとダリアを見た。
 ……ああ、ダリアが落下した時のドラゴンのパクっは助けてくれたんだ。それに、A組がドラゴンに魔法を当てた後、穴に落ちてそのままだった。ドラゴンを驚かせて穴に落とすぐらいの威力はあっただろうけど、それ以上では決してない。

「守りし像としたのは、注意を促すためだ。先に、お前たちが手にしようとしてるものは、魔物の中でもトップクラスのドラゴンが守っているものだ、それに手を出そうとしているんだぞ、というな。あの骨を目の前で取ろうとしたら風ドラゴンは攻撃してくる。もしお前たちがあの白い骨を丸ごと持ち帰って、ドラゴンがそれに気づいた場合、半分以上は負傷者が出たことだろう」

 みんなの顔から血の気がひく。
 指示書を読み解くって、持ち帰る物の場所を特定するって意味かと思ってた。何気なく書かれたことにも注意を向ける、それも含まれていたんだね。アダムは読み取っていたんだ……。アダムの端正な横顔は、他の子たちのように一喜一憂せず動かない彫刻のようだ。
 先生はこほんと喉を整える。

「守っているものに手を出すということは、それくらいの覚悟を持てということだ。魔物は強さが全てだ。その強さの証明。それを自分から奪うものには容赦しない制裁がくだされる」

 誰かの喉がなる。

「酷ではある。だから逃げ道も用意した。骨と言わず〝像〟とした。あれを像と呼ぶには違和感のあったものもいるはずだ。だから白い像とは違うものではと疑うものが現れるかと思った。D組は捻りなく受け取り、そのわりには全く違う方に流れたが、その言葉の意味を受け取ったような白い像を持ってきた」

「やっぱりD組の像は、捏造されたものなんじゃないですか!」

 ビルダが吠えた。

「そうだな。ただ捏造されたものなら、我々も承認できない。けれどD組は証拠も持ってきた。ドラゴンがこの白い像を抱いて眠っているように見える。まさに守っている像、骨よりもよっぽど指示書に忠実だ。
 魔法戦は生き残ることを優先している。D組は魔法戦の試験において、勝って生き残るために策を編み出した。証拠もあり、筋を通している。まぁそれも、最初は真っ当にやったがA組に取られ手立てがなくなったからだ。
 まったくこんなことを考え、それを実現できる1年生は末恐ろしいよ」

 先生は喉の奥でクックッと笑った。そして表情を引き締める。

「証拠と一緒に白い像を持ってきた、我々は承認するしかない。だからD組の勝利だ」

 ふう。

「D組への教師からの注意だ。いいか、戦いにおいて魔物に同情するな。魔物と人は相容れない。戦いになった時、感情は邪魔になる。命を落とすだけだ。
 そして覚えておけ。戦いにおいて、負けることは命を落とすこと。魔物に思い入れがある者が、魔物に負ける。これは自業自得だ。けどな、人ってのは感情があるから、自業自得とわかっていても、誰かが負けたら哀しむんだ。そして同情なんかしてない者が負けそうなやつを助けようとして、命を落とすことがよくある。弱い者ひとりの魔物への思い入れで、まったく同情なんて感情を持ってない奴が命を落とすことがな」

 わたしは爪をかじっていた。
 ダリアは静かに涙を流して、……マリンがダリアの手を上から包んだ。

「いいか、魔物に思い入れを持ってしまう奴。魔物に感傷的な思いはない。強さが全てだ。奴らは勝つか負けるか、生きるか死ぬかだけのところで生きている。それを頭に叩きこめ。
 そして魔物に思い入れが無い奴、お前たちも気を付けろ。お前たちは魔物に思い入れを持つ奴に惹かれる傾向がある。それはお前のせいでは無い。人族の魂にすり込まれているんだ。だからそこは悩まなくていい。
 お前のせいでは無いけれど、魔物と人とに線引きができ無い奴に憧れるんだ。羨むんだ。その思いを守りたいと思いがちなんだ。魂がな、線引きしようとする自分がいらないもので、線引きできないものの方が大切って思うんだ。だから救おうとする。救おうとすることが悪いとは思わない。でも自分を大切にしてほしい」

 先生は人のDNAは魔物と共存したがっているって言ってるのかな。そう思ってるのかな。

「どちらの組もよく作戦を練り、戦った。A組は個人の能力が安定して高く、D組はチームワークがよかった。そして骨を砕く際の案も素晴らしかったし、A組に奪われ、あの状況と時間との戦いの中で策を練り、証拠まで打ち出してきた機転も大したものだ。感服した。よって、D組には200点ポイント追加」

 200点をクラスの人数で割った5点が追加された。半端のポイントはどこに行くのかしら? 余計なことを考えてしまった。

「D組大将、ゴーシュ・エンター、戦い方も柔軟で隙がなかった。それから体力のないペアのシュタインを補填ほてんしながらでもあれだけのことをした。全てが見事だった。よって加点50点。
 ペアのリディア・シュタイン、お前、魔具持ちだな。予想外に多い魔具の使用だったが、最初に攻撃以外の魔具を自由としたからな。体力はなさすぎだが、それをカバーするほどの魔法の働きが見事だった。魔力も少ないのに、そのことがよくわかっている、少なくてすむ基本的な魔力の使い方で最大限に活かす工夫は唸るほどだ。クラスの攻撃力が上がったのも、お前のギフトで戦いの流れを変えた。その貢献度により、加点50点、と言いたいところだが、お前は過信しているのか、自分を大切にしないところがある。よって加点は30点。
 以上だ。これにて、魔法戦の授業を終える。解散!」

「リディア!」

 レニータに抱きつかれる。

「勝った! A組に勝っちゃったよ!」

 わたしはそのまま立ち上がる。
 ダリアが来て、キャシーが来て、ジョセフィンにも抱きつかれる。
 わたしもみんなの背中に手を伸ばした。
 みんな感無量の顔をしている。
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