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13章 いざ尋常に勝負
第551話 魔法戦⑨君と僕とクラスのために
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後ろのアダムがピクッとする。
マップに赤い点が現れたと同時にだ。探知能力まで長けてるって、能力ありすぎでしょ。
「わたしがやる」
「君、疲れてるだろ?」
わたしの比どころじゃなく、アダムは動いているはずだ。
「動くのは辛いけど、魔法なら使える」
4つ足の獣だ。
風魔法で地面をえぐるように見せかけて、土魔法で落とし穴を作って閉じ込める。
「へー、魔法もずいぶん面白い使い方するんだね」
「魔力が少ないから、工夫するしかないのよ」
ごまかせたかな?
何度か魔物が出てきて、わたしが葬った。
シンプルな魔力を節約したやり方で。
いきなりスケボーが止まった。
「どうしたの?」
「君、手当てしてなかったの?」
アダムが短剣でわたしの運動着を破く。
傷口が風にさらされる。
「人の手当てはきちんとするくせに、なんで自分にはしないんだ?」
アダムはわたしの薬箱セットを使って、消毒して薬を塗ってくれた。
「血が止まらないな」
その血の滲んだ服でバレたようだ。
「もっときつく縛れば平気でしょ」
「傷口が深いんだ。これはダメだな」
アダムは薬箱とスケボーをわたしに仕舞わせ、そして白い像をださせた。
「歩いて戻るの?」
わたし、そんな歩けない気がするんですけど。
「君、能力高いの、いつも隠しているだろ?」
「なんの話?」
「試験では大盤振る舞いだね。少しも隠そうとしないで、みんなを助けて回った。その心根に少し感動してね。僕も君と僕とクラスのために魔力を使おうと思う」
そういってアダムはわたしを抱き上げた。
俵担ぎではない、いわゆるお姫様抱っこだ。白い像をわたしに持たせる。
「目を閉じた方がいい」
え。
魔法? え、走ってる? 高速? 景色が流れる、というか効果線にしか見えない。
何?
瞬きをしたら、目の前にもふさまや先生たちがいた。
え?
「D組、大将、ゴーシュ・エンター、戻りました」
アダムは気遣いながらわたしをおろす。
「ペアのリディア・シュタイン、戻りました」
アダムはわたしが持たされていた、真っ白のフクロウを先生に渡す。そして渡しましたからねと念を押して、メリヤス先生を呼んだ。
「先生、腕、診てください」
「おや、これは。痛かっただろう。よく我慢したね」
『リディア、大丈夫か?』
もふさまがトテトテ歩いてきた。頷いて見せる。
人って気を張ってる時はそうでもないのに、優しくされると急にダメになっていくのなんなんだろう……。
「一応、消毒と薬は塗ったんですけど」
先生はわたしを座らせ、傷口に小瓶に入った液体を振りかけた。多分聖水かな? それからその部分に手を当てるようにした。
じんわり温かい光が届く。神聖力ってやつか。
止まりそうで止まらなかった血が出てこなくなった。
「先生、傷は残らないですか? 大丈夫ですか?」
「傷口がよくない……けっこう深く大きいから、早いところ光魔法で治さないと、傷が残るかもしれない」
「ではすぐに王宮に」
「いいよ、平気」
わたしはアダムの服を引っ張った。
「平気じゃないだろ、こんな傷が残ったら」
「おじいさまに頼んで、母さまのところにいって治してもらうから。ありがとう」
多分、自分でも治せるし。
アダムは不満げな顔をしている。
先生が包帯をしてくれた。
「……それより、血を流しすぎたようですね……」
メリヤス先生は怖いことをサラッという。
「危険領域にはいってませんでしたが、あと5分血を流していたらまずかったでしょう」
おお、アダムの判断、ナイス!
わたしは先生とアダムに改めてお礼を言った。
「血を流しすぎたって、このままで大丈夫なんですか?」
「安静にして食事をとって体を整えるしか方法はありません」
「先生、シュタイン嬢はここにいなくても……」
わたしはアダムの服を引っ張る。
「ありがと、大丈夫だから」
「君、顔色、真っ白だよ?」
もふさまも言った。
『そやつの言うとおりだ。リディアよ、顔が白い』
「先生、ここで食べ物をとってもいいですか?」
森の中ならまだしも、まだ授業中なので、魔法戦の先生に確認をとる。
オッケーが出たので、わたしはこういう時のためにと作っておいたチョコトリュフを食べた。アダムともふさまにもお裾分けだ。
生クリームを温めるときに、光魔法を入れ込んだ聖水を数的垂らした。こういうやり方で物に光魔法を込めることができるのだ。石鹸の固め直しから始まり、スキンケアシリーズを作り出す過程で編み出してきた方法だ。
売るやつにはまだ光魔法を込めることはしてないけどね。素材を聖域産のものにすることで性能が上がった。ってことはと、サンプルで水の代わりに聖水を使うともっと跳ね上がる。もふもふ軍団と聖水入りのお風呂に入ってわかったことだけど、聖水には魔力がのりやすい。
そこで、売るものにはちょっとできないけど、こういう非常用グッズを作っておいたのだ。光魔法入りの薬や食べ物を。
「こ、これは」
「疲れが取れるでしょ?」
口の中で溶け出すチョコレート。光魔法が染み渡り。わたしの体を整えようと免疫が頑張りだす。
「保健室に行けば休めるのに、どうしてここでみんなを待つんだい?」
「そりゃ、勝利の余韻はみんなで味わいたいからよ」
A組はまだ戻ってきていない。
わたしの免疫が頑張っている。
わたしは失礼しておにぎりを食べた。これは普通のやつだ。
アダムともふさまにも勧めたけど、いらないというのでわたしだけ。
そして唐揚げと串焼きも食べた。
ひと心地ついた。
「すごいですね。普通、食べ物をとってもすぐに血になるわけではないから変わらないものですけど、光魔法でも使ったように、かなり回復している」
メリヤス先生に言われる。
「先生に神聖力で治療していただいたからですわ、ありがとうございます」
おほほと笑っておく。
いきなり子供たちの団体が現れた。
魔の森から出てくるとあんなふうなんだ。
「A組、大将、アルバート・ニヴァ、戻りました」
「大将のペアのイザベル・ライリュートンです」
ニヴァ公爵子息は、骨の欠片を先生に手渡した。
ふたりとも苦いものを噛み締めているような表情だったけど、中にいるわたしたちに目を留めた。
驚いて、痛いところを突かれたような顔になり、顔を背ける。
「な、なんでお前たちが先にいるんだ?」
マリンにひどいことをした、ビルダとかいう奴が大きな声をあげた。
マップに赤い点が現れたと同時にだ。探知能力まで長けてるって、能力ありすぎでしょ。
「わたしがやる」
「君、疲れてるだろ?」
わたしの比どころじゃなく、アダムは動いているはずだ。
「動くのは辛いけど、魔法なら使える」
4つ足の獣だ。
風魔法で地面をえぐるように見せかけて、土魔法で落とし穴を作って閉じ込める。
「へー、魔法もずいぶん面白い使い方するんだね」
「魔力が少ないから、工夫するしかないのよ」
ごまかせたかな?
何度か魔物が出てきて、わたしが葬った。
シンプルな魔力を節約したやり方で。
いきなりスケボーが止まった。
「どうしたの?」
「君、手当てしてなかったの?」
アダムが短剣でわたしの運動着を破く。
傷口が風にさらされる。
「人の手当てはきちんとするくせに、なんで自分にはしないんだ?」
アダムはわたしの薬箱セットを使って、消毒して薬を塗ってくれた。
「血が止まらないな」
その血の滲んだ服でバレたようだ。
「もっときつく縛れば平気でしょ」
「傷口が深いんだ。これはダメだな」
アダムは薬箱とスケボーをわたしに仕舞わせ、そして白い像をださせた。
「歩いて戻るの?」
わたし、そんな歩けない気がするんですけど。
「君、能力高いの、いつも隠しているだろ?」
「なんの話?」
「試験では大盤振る舞いだね。少しも隠そうとしないで、みんなを助けて回った。その心根に少し感動してね。僕も君と僕とクラスのために魔力を使おうと思う」
そういってアダムはわたしを抱き上げた。
俵担ぎではない、いわゆるお姫様抱っこだ。白い像をわたしに持たせる。
「目を閉じた方がいい」
え。
魔法? え、走ってる? 高速? 景色が流れる、というか効果線にしか見えない。
何?
瞬きをしたら、目の前にもふさまや先生たちがいた。
え?
「D組、大将、ゴーシュ・エンター、戻りました」
アダムは気遣いながらわたしをおろす。
「ペアのリディア・シュタイン、戻りました」
アダムはわたしが持たされていた、真っ白のフクロウを先生に渡す。そして渡しましたからねと念を押して、メリヤス先生を呼んだ。
「先生、腕、診てください」
「おや、これは。痛かっただろう。よく我慢したね」
『リディア、大丈夫か?』
もふさまがトテトテ歩いてきた。頷いて見せる。
人って気を張ってる時はそうでもないのに、優しくされると急にダメになっていくのなんなんだろう……。
「一応、消毒と薬は塗ったんですけど」
先生はわたしを座らせ、傷口に小瓶に入った液体を振りかけた。多分聖水かな? それからその部分に手を当てるようにした。
じんわり温かい光が届く。神聖力ってやつか。
止まりそうで止まらなかった血が出てこなくなった。
「先生、傷は残らないですか? 大丈夫ですか?」
「傷口がよくない……けっこう深く大きいから、早いところ光魔法で治さないと、傷が残るかもしれない」
「ではすぐに王宮に」
「いいよ、平気」
わたしはアダムの服を引っ張った。
「平気じゃないだろ、こんな傷が残ったら」
「おじいさまに頼んで、母さまのところにいって治してもらうから。ありがとう」
多分、自分でも治せるし。
アダムは不満げな顔をしている。
先生が包帯をしてくれた。
「……それより、血を流しすぎたようですね……」
メリヤス先生は怖いことをサラッという。
「危険領域にはいってませんでしたが、あと5分血を流していたらまずかったでしょう」
おお、アダムの判断、ナイス!
わたしは先生とアダムに改めてお礼を言った。
「血を流しすぎたって、このままで大丈夫なんですか?」
「安静にして食事をとって体を整えるしか方法はありません」
「先生、シュタイン嬢はここにいなくても……」
わたしはアダムの服を引っ張る。
「ありがと、大丈夫だから」
「君、顔色、真っ白だよ?」
もふさまも言った。
『そやつの言うとおりだ。リディアよ、顔が白い』
「先生、ここで食べ物をとってもいいですか?」
森の中ならまだしも、まだ授業中なので、魔法戦の先生に確認をとる。
オッケーが出たので、わたしはこういう時のためにと作っておいたチョコトリュフを食べた。アダムともふさまにもお裾分けだ。
生クリームを温めるときに、光魔法を入れ込んだ聖水を数的垂らした。こういうやり方で物に光魔法を込めることができるのだ。石鹸の固め直しから始まり、スキンケアシリーズを作り出す過程で編み出してきた方法だ。
売るやつにはまだ光魔法を込めることはしてないけどね。素材を聖域産のものにすることで性能が上がった。ってことはと、サンプルで水の代わりに聖水を使うともっと跳ね上がる。もふもふ軍団と聖水入りのお風呂に入ってわかったことだけど、聖水には魔力がのりやすい。
そこで、売るものにはちょっとできないけど、こういう非常用グッズを作っておいたのだ。光魔法入りの薬や食べ物を。
「こ、これは」
「疲れが取れるでしょ?」
口の中で溶け出すチョコレート。光魔法が染み渡り。わたしの体を整えようと免疫が頑張りだす。
「保健室に行けば休めるのに、どうしてここでみんなを待つんだい?」
「そりゃ、勝利の余韻はみんなで味わいたいからよ」
A組はまだ戻ってきていない。
わたしの免疫が頑張っている。
わたしは失礼しておにぎりを食べた。これは普通のやつだ。
アダムともふさまにも勧めたけど、いらないというのでわたしだけ。
そして唐揚げと串焼きも食べた。
ひと心地ついた。
「すごいですね。普通、食べ物をとってもすぐに血になるわけではないから変わらないものですけど、光魔法でも使ったように、かなり回復している」
メリヤス先生に言われる。
「先生に神聖力で治療していただいたからですわ、ありがとうございます」
おほほと笑っておく。
いきなり子供たちの団体が現れた。
魔の森から出てくるとあんなふうなんだ。
「A組、大将、アルバート・ニヴァ、戻りました」
「大将のペアのイザベル・ライリュートンです」
ニヴァ公爵子息は、骨の欠片を先生に手渡した。
ふたりとも苦いものを噛み締めているような表情だったけど、中にいるわたしたちに目を留めた。
驚いて、痛いところを突かれたような顔になり、顔を背ける。
「な、なんでお前たちが先にいるんだ?」
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