プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
548 / 799
13章 いざ尋常に勝負

第548話 魔法戦⑥助けてもらった

しおりを挟む
 アマディスはお父さんが狩人だそうだ。それで、骨をまとめて処分するなんてこともあるそうで、骨を小さく砕くのにベトラジアーゼを塗って使っていたのを見たことがあるそうだ。骨の成分の何かを溶かす働きがあるらしい。
 エトガルは家が鉱石を飾り細工にするような仕事をするらしく、鉱石中の成分を取り除く手法なんかでも使うらしく、そのことを思い出したんだって。
 薬草学では動物性の素材で飲み薬を作る時に、素材が変化しないように使用した気がする。

「で、リディア持ってるの?」

 みんなに期待の目で見られる。

「ベトラジアーゼは持ってないけど、貝とワラと布とメーゼ持ってる。あとチオノスも」

「なんでチオノス持ってるのって聞きたくなるけど、それってベトラジアードは作れるってことね?」

 ジョセフィンが言った。

「うん。飲むので使うんじゃないから、ベトラジアードでもいいよね?」

 ベトラジアードは液体だ。ベトラジアードから身体に悪いなんだっけ、何とかいう物質を反応させて抜くとベトラジアーゼとなる。

 誘拐された時、カタリの花の根の汁が、メーゼの代用品になると知って助かった。あれからわたしは、薬草学で、代用品や、その薬品はどうやって作ることができるのかを先生に聞いた。試験には関係ないんだけど、どこでどう役立つかわからないからだ。自分でそれを最初から調べるより、せっかくの専門家がいるわけだからと、聞きまくっている。面白かったようで、みんなもそれを真似した。
 ベトラジアードは貝を砕いたものと、ワラと布の燃えかすとメーゼとチオノスを混ぜれば代用品ができる。

「貝、持ってるの?」

 アダムが惚けた顔で言った。

「うん、砕いたやつあるよ」

 500年前の貝を砕いた残りがね。
 わたしは火魔法が使える人に藁と布の燃えかすを作ってもらった。
 3:1:1:2。
 薬草学のノートを出して一応確認すると、そんな物までいつも持ち歩いているのかと笑われた。っていうか、家に収納するもの以外、全て収納ポケットに入っている。
 でも、役に立ってるもん。

 器に全てを入れて、すりこぎ棒でゴリゴリやる。やがて粘り気が出てきたので、同量のチオノスを注いだ。このチオノスは代用品がないって聞いて、買っておいた物だ。けれどギリギリの量だった。
 少しかき混ぜて放っておけばベトラジアードの完成だ。

 

 アイデラが胸の前で手を組む。
 目を瞑り……ドラゴンが、ん? と首をもたげた。
 足の下に隠したはずのものを確認した。
 知能高い。あ、あるじゃんって理解して、他のには見向きせずダメかと思ったけど。
 ドラゴンはやはり、少し先にある白い物が気になったようで、体を伸ばした。
 起き上がり、口で引き寄せようとすると、遠くにコロコロと転がった。
 ドラゴンは一歩出て、今度は足で引き寄せようとしたが、それはさらに遠くへ行った。
 ドラゴンが近づくと、それは逃げる。


 さ、今のうちだ!
 骨の細いところに、ベトラジアードをベタっと塗った。
 あ、真っ白だったところが灰色がかったり、くすんだりした。
 色が変わったところで、アダムが短剣をあてると、ただ短剣を当てた時よりは手応えがあったみたい。けれど、それを折ることはできなかった。

 もう一度ベトラジアードを同じところに塗りつける。
 アダムが短剣を下ろすタイミングで風を込めた。
 あ。5センチくらいだけど、一部を落とすことができた。
 やった!

 みんなガッツポーズをしたり、小さな喜びのアクションをした。
 みんなが地上に戻るぞと移動しだす。
 わたしは大元の骨に水をかけて薬品を落とした。そしてそっと浄化する。
 これでよし。
 ごめんね、一部を切っちゃって。
 立ち上がるとアダムと目があった。

「ん?」

「君……」

「みんな早く上へ」

 ベンの低い声が焦りを帯びて聞こえる。
 みんな走って穴の下へと急いだ。
 幻影部隊に合図を送ると、アイデラはその白いのを逆方向へと転がらせていく。ドラゴンは追いかけて、本物の白い骨にたどり着く。
 よかった。


 ん? 白い骨にたどり着いたが、ドラゴンは穴の下、つまりわたしたちの方を見た。見ている。

「い、急げ」

 その様子に気づいたリキが声をあげた。
 リキのペアのダリアを風で上にあげようとして、下からの出た風と相まってダリアが高いところへほおられ、その勢いままに下に落ちてくる。
 もう一回、風!

 風を出す前に、横から来たドラゴンがパクリとダリアを咥えた。

「いやーーーーーーー」

 叫んだら口をアダムに押さえられた。
 ドラゴンはそのままぴょんと飛び上がって、地上に出る。


 ! 上に行けるの?
 下に残っていた子たちも、慌てて上にあがる。
 わたしもスケボーで上にあがった。

 ドラゴンがダリアをペッとした。
 キャシーがダリアに駆け寄る。
 ダリアが起き上がる。怪我とかしてなさそうだ。噛まれた感じもない。
 胸を撫で下ろす。
 けど、ドラゴン。目の前にドラゴンがいる!




 ドラゴンが息を吸い込んだ。

「風、来る!」

 D組だけじゃない人の気配、と言うかマップの点。わたしは大きい声で告げた。

 みんな地面に伏せた。ドラゴンが口から風を出すと、風の刃でいっぱい立ち並んでいた木が倒されていた。
 破壊力、ヤバイ。
 まさか地上にあがってくるとは思わなかった。
 その時

「D組、こっちに走れ!」

 あれはA組の男子だ。
 手を上にあげ、グルグル振っている。
 ドラゴンに追いかけられているわたしたちは、その声に従って素直に走った。
 わたしたちが通り抜けると、そこにA組の5人が出てきて、ドラゴンに向かって手を突き出す。

 魔法だ!
 ドラゴンの胸でそれは光った。
 多分、火と風を標的に合わせたんだ。
 ドラゴンが後ろ向きに倒れて、穴の中に落ちた。

 わたしたちはほっと地面に座り込んだ。

「ありがたかったが、なぜここにいて、僕たちを助けた?」

 みんなの疑問を代表したように、アダムが尋ねる。

「出遅れたようでね。それなら、君たちが手にしたものを、いただこうと思ったんだ」

「きったねーぞ!」

 イシュメルが叫んだのを皮切りに、みんな口々に侮蔑の言葉を投げかけた。

「そうなんだ。だから少し心苦しかったけど、今助けたから、これで貸し借りなしになると思ってね?」

「比重が合わねーだろ」

「でも、窮地だったろ?」

 確かに。そして学園側が奪い合いを禁止していないのだ。

「大将とペアは行けよ、ここは俺らが!」

「そうはさせないよ?」

 A組の子たちが次々と姿を現した。
 木がなぎ倒されたスペースは、対戦するのにちょうど良さそうだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

処理中です...