プラス的 異世界の過ごし方

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13章 いざ尋常に勝負

第546話 魔法戦④白い物

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 近づけば、その山の全貌が見えてきた。
 あの鱗、ドラゴンだろうなー。
 鳥みたいに丸まって、体に首を埋めるようにして眠っているのではないかと思う。
 眠っているうちにその守っているとかいう、白い像をいただきたいところだけど……。
 周りは特に何もない。だだっ広い草地でお眠りになっている感じだ。
 ってことは……。
 身振りでスケボーを貸してと言われ、スコットに貸すと、少し上にあがって上から様子を見ている。
 降りてきた。

 小声でアダムに報告。

「白い何かをお腹に敷くようにして眠ってる」

 マジか。
 その時腕輪が点滅して、2時間たったことを知らせた。
 移動に2時間かからないぐらいの位置ってことだ。帰りの時間を入れると次の点滅までに白い像をなんとか手に入れないと。

「どうする?」

「奴を起こすしかないだろうな」

「ね、待って。あれを浮かせて下の像を取ればいいんじゃない?」

 メランが言った。

「どうやって浮かせるんだよ?」

 眉を寄せたヒックに、メランは事も無げに答える。

「それこそ風魔法使える人たちで」

 わたしたちは顔を見合わせる。
 もしそれができればドラゴンを起こさないで済む。
 じゃあ風魔法を使える人でと集まり、早速魔法をかけようとしたところにアダムが待ったをかけた。
 もしそれで起こしてしまった場合の対策を練ろうと。

 そっか!
 起こしてしまった場合、人がわらわらいて、なんだこの小さいのは?と、首を傾げるだけってのは希望的観測すぎるよね。しかも守っている白い像をいただくのだから敵認定されそうだ。
 白い像とドラゴンを引き離すことが要だ。

 ということで、起こしたら、オトリ部隊がうるさく&攻撃してドラゴンを引き連れて遠くへ行く。
 その間に他の人たちが白い像をなんとかして……脱兎。
 さて、そこでどうやって上に出るんだ? という話になった。
 わたしたちは上にあがることを考えず、下に降りてしまった。
 わたしはうっかり上に上がらなくちゃいけないことを忘れていたんだけど、アダムも考えが至らなかったなんて、そんなことある?
 思わず横を見ると。

「僕は自力で上がれる」と言った。

 え。
 すると後何人かは、自力でいけると言った。
 マジか。
 3メートル飛び上がれるとか、おかしいでしょ。
 無駄に高い運動能力、少しはわたしに寄越しやがれ。

 その人たちは自力で上がってもらうとして。

「……ドラゴンを風魔法で浮かせられるなら、みんなのこともひとりずつ浮かせられるんじゃん?」

 それもそうか。

「あ、シュタイン、お前、靴の下敷き持ってない?」

「あ、数足分なら」

 アスレチックで遊んだ時に貸し出したヤツは収納ポケットに入っている。
 わたしたちは作戦を立てる。
 風魔法を使える子がドラゴンを浮かせる。
 浮かすことができたら、その間に下にある白い像を他の人たちがどうにかする。
 もしドラゴンを起こしてしまって、攻撃されそうになったら。
 オトリ部隊が連れて穴と反対方向へドラゴンを連れていく。
 その間に白い像をいただく。
 さて、それが持ち上げられないくらい大きかった場合だけど、どうする?と。

 ところで、このドラゴンは森に生息する物なのか先生が作り上げた物なのかと誰かが言った。
 今、それ考える必要がある?とこれまた声がした。

「でも、本当にいるドラゴンなのだとしたら、守っているぐらいだから大切な物なのに、それを全部持っていくのは可哀想」

 とダリアが言った。
 その優しい呟きに、みんな自分勝手な心根を反省した。

「そうだね、ドラゴンに悪いから、一部だけちょっともらおうか」

 レニータがまとめる。
 みんなそれに異論はなかった。
 ただ一部を取り壊す方法があるかも、見てみないとわからないところではある。
 でもまぁ、状態を見るまでは対策は立てられないので、なんとか一部を切り取ることにする。
 もし一部を取ることができたら、そのまま穴まで戻って上にいく。それを見届けたらオトリ部隊もドラゴンの隙をつき、上に逃げる。

 もし白い像を一部にすることができなかったら、丸ごと。
 上に運べればいいし、ドラゴンがそれを許さなかったら、総力あげてドラゴンを倒すしかない。
 ペアも離れてはいけないけれど、この草地の中なら離れたとまでは言われないだろうと、アダムはオトリ部隊で、わたしは風魔法の部隊だ。
 オトリ部隊の自力では上がれない子に、トランポリンの靴の下敷きを渡した。
 さ、作戦開始だ。

 近づくと、閉じているまぶたがわたしが丸くなったぐらいの大きさだから、やはり大きい。風魔法を使ってみんなでドラゴンを浮かそうと試みる。
 わたしたちは声を立てないようにして、身振りで息を合わせ、浮かす。
 う、尻尾が浮かない。水平に持ち上がるように調整をかける。
 先生が見ているわけではないので、ちょっとぐらいオーバーして魔法を使ってもわからないだろう。
 ドラゴンが浮き上がる。1メートルぐらい上がった。
 他の子たちがおっかなびっくり白い像に手をかけた。
 大人の人ほどの大きさのものだった。

 何人もでえっちらほっちら動かす。丸ごと運ぶのは大変そうだ。

「何の像なんだろう?」

「……これって、骨?」

 白い像に触れたドムが、怯えた声を出した。
 そう言われてみると、ものすごく大きなものの骨の一部という感じだ。骨だった場合、人間ではあり得ない。もっと大きな魔物……。
 密かに鑑定すると〝風のドラゴンの骨〟とでた。
 え。ドラゴンが守っている白い像は同じ風のドラゴンの骨。
 なんかそれは胸を突かれる思いがした。

「犬が骨隠してる、あれとは違った感じだよね?」

「うん、大きいってドラゴンの骨だったりして」

「え? そういえばこいつ一人でいるんだよな、こんな魔の森に」

 グラッとドラゴンが揺れた。
 誰かの魔法が弱くなったみたいだ。

「とりあえず、これもっとこっちに出そう」

 7人がかりで白いものを動かし、元の場所にドラゴンを下ろした。
 近くにドラゴンがいるのは精神衛生上大変よろしくないが、このまま白い物を丸ごと運びつづけるのは重たすぎるみたいだ。
 比較的真っ直ぐな太い骨に突起のように水平に伸びているいくつかの細目の骨。こちらを折っていただいて行こうということになった。
 細い方でも、短剣を当てたぐらいじゃなかなか折れない。
 わたしは肩を叩かれた。

「ん、何?」

 次に短剣を当てる時に、風で援護するか。

「ん、だから何、ダリア?」

 振り返るとダリアは涙目だった。

「どしたの?」

 びっくりして聞くと、ダリアは人差し指で横をさす。
 指の先にはドラゴンが首を丸まった体の中に置くようにしていて、何も変わりはない。

 いや、変わりなく、ない。子供が丸まった大きさはありそうなまぶたはなく、代わりに縦の瞳孔の目がこちらを見ていた。
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