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13章 いざ尋常に勝負

第533話 狐福⑫長老の悪巧み

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 家に帰って、すぐにルームへと移動した。狐の長老を目指して。
 日の当たるところで、狐たちがのんびり寝転んでいた。
 半分ぐらいかな。もふもふ軍団もいないから半数と彼らはミラーダンジョンに行っているんだろう。

「長老!」

「これはリディア殿」

 おじいちゃん 狐はそっと顔をもたげた。

「お、教えて欲しいことがあります」

 ここでの暮らしで足りないものがないか、困っていることはないかを気遣うより前に言っていた。

「なんでしょう?」

 おじいちゃんは起きあがり、おすわりをした。

「子……マヌカーニ先生が言ってました。もう何もかも手遅れって。神や聖なる方は地上に降りてはこられないからって。そうなんですか? 聖なる方は女王が立ったとしても降りてこられないんですか? それは聖域を作れないということなのですか?」

 わたしは早口に詰め寄っていたようで、もふさまから落ち着くように言われた。
 あ。わたしは急ぎすぎたと頭を下げた。

 長老狐は目を大きくしていた。

「いえ、いいのですよ。あの子は、そこまでリディア殿に話したのですね」

 え、いや。慌てていて、口が滑った感じだったけど。口を滑らせたことにさえ気づいていない感じだったけど。

「神や聖なる方が地上に降りることは2度とないでしょう。創造主とそう約束したそうですから」

 え、創造主? 

「創造主って封印された神さまですか?」

「あ、いえ。……創世記をご存知かな?」

「はい」

「創造神は本当のところ封印された弟子の神さまですが、私たちが創造主と呼ぶのはその師匠であるラテアスさまのことです」

 ラテアスさま。神さまのトップね。

「ラテアスさま、封印された弟子の神さま、それ以外の神さまは箱庭から生まれた神さまです」

「はい?」

 思わず聞き返す。箱庭から生まれた神さまって聞こえた。
 神さまって箱庭から生まれるの??

「ピンとこないでしょうね。なんと申し上げればいいのか。神にも2通りあるのです。世界を創造する力のある神と、この世界を創るためだけに生まれた神が」

 この世界を創るためだけに生まれた神……。

「聖霊王もそうです。この世界を創るためだけに生まれた聖なる方」

 な、なんか複雑なことを言ってる。
 わたしの顔を見て察したようだ。

「要するに、ラテアスさまが一番偉くて、他の神さまや聖なる方たちも、ラテアスさまには逆らえないってことです」

 あ、それはスッキリする。よくわかる。

「つまり、誰も逆らえないラテアスさまが、地上に降りたらダメって他の神さまと聖なる方に言ったんですね?」

「簡単にいうとそうなりますな」

 狐の長老は物知りだ!

「自分たちがお創りになった世界です。心配で仕方がなかった。でもあまりに過干渉だとラテアスさまから干渉することを禁じられました。それで神さまは神獣を、聖霊王は聖獣を地上に遣わして、今も護っているのです」

 そうか、もふさまはそのひとり、なんだね。

「今も見守っていてくださっていて……そうですか。干渉しすぎて……」

 過保護すぎて、ラテアスさまに怒られたのかなとわたしは思った。

「神は人族がことのほか思い通りに育たないことをお怒りになり、消してしまおうと思ったのです」

 え?

「聖霊王が神を嗜めました。人族は寿命が短い。種族として育っていくのだって時間がかかるだろうし、思った通りじゃないからと命あるものを消し去るのは、堪えしょうがないと。それで大喧嘩になりまして、ひとつだった大地が6つに割れてしまったのです」

 え。次元が違う、ダイナミックだ。喧嘩で大地割れかい。
 そりゃ、干渉するな言われても仕方ないね。っていうか、ラテアスさま、ありがとう。と思ってハッとする。

「神さまや聖なる方とお会いできなくて、寂しいですね?」

 だってすっごく慕っているんだもの。

「……いつでも胸に御坐《おわしま》す」

 確か長老は250といくつかだったと思う。もうその頃は大地が割れているもの、聖なる方はいらしてないはず。お会いしたことはないのだろう。でもまるでお会いしたことがあるように慕っている。

「我らは獣であり、人型にもなる半端者と呼ばれていました。それをシュシュ族と名を付けてくださったのが聖なる方です。特に秀でている力がない私たちに、女王を立てる機会をくださった。それで私たちは〝役目〟をいただいたのです」

 ああ、そうだったのか。そこに恩を感じて、子孫たちもずっと慕っているんだ、聖なる方を。

「神聖国は神と聖なる方が、仲違いしないための証に創られたんですよね? その仲直りをするのに、創られたんですか?」

「あの子はそのことも話したんですか?」

 あ、小狐、ごめん。言っちゃいけないことだったのかな?
 一拍置いてから、長老は小狐のことを話してくれた。
 小狐はシュシュ族の長の家系らしい。次の長になるべく修行中。
 今回の任務を任されたのを、若くて元気だから(人選ミスだと思うけど)選ばれたのかなと思ったけど、そうじゃなくて、ちゃんと長になるべくって理由があったんだ。でも、悪いけど、あの子が長になるのはめちゃくちゃ不安だわ、シュシュ族!

 長老は神聖国を作ったきっかけとなった出来事はそのもっと前にあったことだと瞳を伏せた。それは人族に知らせてはいけないことだという。そう言われるともっと気になるけど、話してはいけないことなら仕方ない。

 それにしても困った。
 わたしは、その神さまたちが地上に降りてこられないことを、証明というか知らしめる方法はありまんか?と尋ねてみた。
 不思議顔なので、わたしは、聖域を作りたい人から狙われるのが嫌なので、神聖国を復興させても聖域は作れないということをはっきり知らしめたいんだと言った。
 長老がなぜ人族は神聖国を復興させようと?と思案顔になったので、わたしの仮説を話してみた。

「なんと、確かに、人族は行きすぎるところがありますゆえ、リディア殿が心配です。神聖国のことは代々伝えられてきたのでしょうが、女王の素質は我らシュシュ族に任されたもの。他の種族がわかることではないのです。リディア嬢を推してきた者も曖昧な言い方をしておりました。それがそもそもおかしなことなのですよね……」

 尻尾が長老の身を包む。そしてパタンと地を打った。

「リディア殿、私たちはバンデス山には戻らないことを決めました」

『なんと、思い切ったな』

 それまで口を挟まなかったもふさまが感嘆する。
 なんて言えばいいか迷っていると、長老は尻尾を微かに振る。

「ワーウィッツ国は我らの仲間を狩りすぎました。長とその嫁も20年前に狩られました。あの子が大きくなるまで長は不在です。
 私たちはバンデス山にしがみついていないで、新しい生きていく地を求めればよかった。そう、どこにいても、神と聖なる方を思うことはできるのだから。でも裏切るような気がするのと、外へと踏み出すのが怖くてバンデス山を捨てることができなかった。……しがみついていたから、仲間を多く失った」

 首が下を向き、しょげている。
 失礼かと思ったけど、わたしは狐の背中を撫でた。

「バンデス山から出たら、勇気が湧いてきました。我らを害したワーウィッツに一泡吹かせてやりたい気持ちです。そこで、いかがでしょう? シュシュ族がいないと神聖国は興せないと広めてやるのは?」

「え? それじゃあ、やっぱりシュシュ族の人たちが、今度は狙われるかもしれませんよ?」

 狐の長老は、お茶目にウインクをした。

「ふふふ。ワーウィッツに攻められて、シュシュ族は絶滅したんです、ということにするのはいかがでしょう?」

 な、なんと!
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