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13章 いざ尋常に勝負

第530話 狐福⑨聖地・バンデス

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「おかえり」

「ただいまでち」

 もふもふ軍団がわたしの胸に飛び込んでくる。
 うう、癒される。

 顔を埋めてグリグリしちゃう。
 アリとクイのお腹の毛は柔らかいのでもってこいだ。

 さっきの兄さまも、これと同じかな?
 わたしは兄さまの癒し? もふもふしてないから触り心地は良くないはずだけど。

 もふもふを堪能してから、シュシュ族の様子を聞くと、戦いに興味のある子も結構いて、いきなり一緒にダンジョンへ行ったらしい。最初は戦い方もへなちょこだったそうだが、軍団の動きを見て学び、最後にはシュシュ族だけで魔物を狩れていたそうだ。魔物をいっぱい倒してご飯をゲットしたという。
 みんな力強く生きてるね、オッケー!

 
「リディア、また考え事でち?」

 小さく息を吐けば、アオがトテトテと寄ってくる。

「わかったことが、あるのよ」

 わたしはみんなに、今日あったことを話して聞かせた。
 話しているうちに、自分の中でも得た情報を整理することができた。

 地図を見たわけじゃないので確かではないけれど、大まかな位置として、ワーウィッツ国の南に倍以上の大きさのホッテリヤがあり、そのまた南は広範囲に砂漠があり、そのさらに南にセイン国があるみたいだ。その砂漠の一角は神聖国絡みで誘拐された場所だ。
 砂漠とホッテリヤ、ワーウィッツあたりまで元神聖国だったっぽい。ワーウィッツとホッテリヤは特に仲がいいわけでも悪いわけでもない隣国。ワーウィッツとホッテリヤの境目にバンデス山があるようだ。

 ワーウィッツは小さな国。毛皮産業が盛んで、それと砂糖より大きな結晶であるザラメンを作る製法を所有している。ザラメンは結晶が大きく溶けにくいのと純度の高さで菌を抑える働きもあるらしく、お菓子を作る時に好まれ、需要もあるらしい。セイン国が代表的な取引相手だった。

 ジュエル王子の話をまとめると。
 セイン国と婚姻話が持ち上がった第一王女、それから第二王子のジュエル、第四王女のミーアが第二夫人の姉弟だそうだ。
 お姉さんがセイン国から一方的な婚約破棄。素行不良ということだけど、仕組まれたことだとジュエル王子は言っていた。で、ワーウィッツとはザラメンの取り引きを今後はしないし、慰謝料として5年間毛皮の利益の半分をよこせと言ってきた。もしくはバンデス山でもいいと。
 これに大怒りしたのが王さまと第一夫人の王妃さま。
 第一王女のしでかしたことなのだから、第二夫人一派で慰謝料をなんとかしろと丸投げしてきた。
 仕組まれたことだけれど、証拠を掴まれているから、婚約破棄は覆らない。何より第一王女の心が病んでしまった。
 慰謝料を言われるままに払ったら、やっていけない。策を巡らせているときに、フォルガードの使者がやってきた。ミーア王女の友達であるユオブリアの令嬢が事情を聞いて、たいそうミーア姫を心配している、と。それを知ったフォルガードが、ワーウィッツの力になれるのではないかとやって来た、と言ったそうだ。

 バンデス山を持っている国にしかできないことがある。それをしてくれたら、ワーウィッツを守ります、と。
 怪しいとは思ったが、万策尽きていたこともあり、話を聞くことにした。

 使者は、神聖国を立ち上げるのです、と言った。
 ジュエル王子も〝神聖国〟という国名は聞いたことがあった。ワーウィッツの領土も元神聖国の一角であるからだ。エレイブ大陸の中央に広がった神聖国は、聖女の子孫が建てた国だった。
 聖女がいなくなり久しくても、聖女に対する信仰は深く、国が建つとどんどん人が集まってきて、自然と領土を広げていったという。でも栄枯盛衰は世の習い。栄える時があれば衰えていくのも世の常で、争いを嫌う神聖国は侵略され、どんどん端へと王都を移し縮小し、それさえもガゴチ国に滅ぼされた。

 それを今更国を建てることに何の意味があるのかと思うが、ガゴチに滅ぼされたものの、神聖国に対する思慕は根強いという。けれどそれは、聖女や国に対してというより、ユオブリアにだけいい思いをさせたくないって気持ちが強いのではないかと思われた。

 聖女は王族でさえ縛れない。聖女はどこで何をしようと自由だ。けれど、聖女は〝ユオブリア〟を選ぶ。使者はそれはそうせざるを得ない理由があるからだと言った。そしてそのことを、ユオブリアも神殿も秘匿しているのだと。
 バンデス山は聖なる力が満ちている。その理由をワーウィッツは知っているはずだ。ワーウィッツだけが神聖国を立ち上げることができると言ってきた。

 そう言われた時、夏に聖女候補が誘拐されたが無事救出されたという話を聞いた時に、父である王が何もわかっていない者が動くからだというようなことを言っていたのを思い出した。
 事件に対しての感想にしては、ズレている気がしたので記憶に残ったそうだ。
 使者は神聖国を立ち上げるには女王がいると知っていて、それがリディア・シュタインだと言った。
 ジュエル王子は自分一人では判断がつかない、陛下に相談してみると、話を預かることにした。

 陛下に相談してみると、王は思案顔になった。
 フォルガードにワーウィッツのことを知られすぎていると青くなった。
 ジュエル王子は、一国の王子に国を建てろというのは反逆でもあるし、なんていうことを言い出すんだ、こんな時でなければ、言った使者を手打ちにするところだと思った。
 同じことを聞いた王は、そう思わなかったところが不思議だった。
 王は神聖国を立ち上げるとしたら、我がワーウィッツの力が不可欠なのだと言った。王は神聖国の女王の見極め方を知っていた。
 そして使者のいうようにわたしが女王となる条件に当てはまるなら、神聖国を興そうといい、ジュエル王子にその手配をしてみよと王命を出した。

 ジュエル王子は多分そこで王さまから、バンデス山に住むシュシュ族の話を聞いたのではないかと思われる。そのことはロサたちに言わなかった。

 わたしは条件に当て嵌まった。ひとつだけあやふやだった純潔ということもわかり、バンデス山に連れて行くことにした。

 バンデス山は不思議な山だった。結界が張られたようにワーウィッツの者か、王族に許された者しかバンデス山に入れなかった。
 ロサは、女王候補をバンデス山に連れていくとどうなるのだと聞いたけれど、連れていけば国が建つとしか言わなかった。
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