プラス的 異世界の過ごし方

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13章 いざ尋常に勝負

第525話 狐福④ブレーン

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 いや、シュシュ族を知っていたら、みんなそうなると思うけどな。
 あれ、いや、依頼主のワーウィッツの王族はシュシュ族を知っていて、山で狩ってるんだ。うわー、人型を取れて、人と話せる種族にそんなことができちゃうってことだもんな。
 おー怖っ。

 この頃の休み時間は、みんな喋りまくっていてうるさいので、会話によって気を使わずとも、聞こえたりしないので都合がいい。

「ジョセフィン、この式わからない!」
「どこが?」
「なんで、こことここの長さが同じになるの?」
「え、だから」
「誰か、古代詩教えて!」
「魔法史得意な人?」

 休み時間もバリバリ質問攻めをしている。
 試験当日に体を壊したら洒落にならないので、睡眠時間を削ることは禁止している。とにかく授業中、それから学園にいる間に集中して勉強しようと言ったらこうなった。
 筆記系の試験は、男子の結果は関係ないんだけど、女子がこれだけ熱くなっていると感化されるのか、D組の試験に対する熱量がすごい。
 授業中も質問もバンバン出るし、理解がみんな深まっている感じ。

 わたしは……とにかく体を大事にしろと言われている。
 掃除も免除。やろうとするとすぐに変わってくれる。

 魔法戦の話も進めている。
 大将はアダムとする予定だ。A組はわたしになると思っていると思う。だから練習ではわたしがトップを装うし、わたしが指示を出したりする。でも本番ではアダムが大将だ。
 アダムのシンシアダンジョンでの指示は完璧だった。ダンジョンが初めて、魔物と戦うのも初めて。それなのに、初めて組んだ仲間への指示を完璧にこなした。そして見事倒した。やってのけたのだ。無駄に能力がありすぎる。そんなアダムに遺憾無く力を発揮して欲しいと思う。

 指示にクセが出るんだよね。わたしはさ、攻撃より守りに重きを置いてしまいがちなのだ。守りに寄りがちなのは、いつもその時の情勢を見極め指示を出しているのではなく、自分の見極めに自信がないから、決断する時に守りに入ることが多くなるのだと思う。
 アダムの場合はクセがない。自分だからこうするっていうのではなく、こちらが有利ならこの方法、みたいに瞬時に見分けられるんだと思う。統率者向きだ。
 それにアダムの情報はあまり出回っていないから、A組にとってやりにくい大将となるだろう。


 なんてことを思っている時にアルノルトから伝達魔法が届く。今、休み時間なんだけど……。
 緊急案件に違いない。そう思ったら、小鳥が封筒になり手に収まるが、焦ってうまく封が切れない。

「開けようか?」

 見かねたのか、隣のアダムが言う。
 封を開け、返してくれる。
 わたしは中の手紙を開いた。
 ワーウィッツの王子が、わたしに面会を求めていると。
 …………………………。
 ど、ど、ど、どうしよう。
 王都の家はマズい。
 王都全体には魔力が行き渡ってないし(当たり前)。王族にアルノルトは強く出られないし、あそこで何か仕掛けられたら避けられない。でも、王族からの誘いを断るなんてできないし。

「どうした?」

「万事休す」

「え?」

「ワーウィッツの王子が王都の家に来るって前触れが……。例の女王なんちゃらの依頼主はワーウィッツ王国だったの。そしてお茶会の時の、わたしのユニコーンの角の検査結果文書、秘密裏に王宮に保管されているはずなのに、あの国が見たのよ」

 動きが早い。
 どうしよう。回避するには……倒れるとかしかない?
 でも医院とかにお見舞いに来られたら?

「……ブレドはそれを知ってる?」

「文書を見たってことは、情報元は言えないけどって伝えた。王都の家は執事しかいない。なんか仕掛けてくるわ、絶対」

「それにしても、わからないな」

「え?」

「今更、神聖国を立ち上げて何をしたいのか」

「そうよね。国を立ち上げたからって信仰が戻ってくるものでもないし。それなのになぜこだわるのかしら?」

「赤い魔石のことといい、まるでユオブリアは外国から水面下で攻撃を受けているみたいだよね。……そして君たちはそのことに心当たりがある?……」

 わたしは息をのんだ。

「お遣いさまが教えてくれたの?」

 驚いて声が出なかった。

 わたしたちはアイリス嬢の未来視の話があったから、外からの攻撃があると知り、そのベースがあるから、攻撃だと気づいた。
 でもアダムはワーウィッツのおかしな動きだけで、外国からのユオブリアへの攻撃だと受け止めている。アダム、凄すぎ。っていうか、ブレーンになって欲しい。
 これはアイリス嬢主体の話だから、わたしが話すわけにはいかない。信頼している人がいる。その人に話してもいいかって彼女に聞いてみようかな?
 絶対、アダムのひらめきは、みんなの助けになる!



「それは置いておいて、まず君のことだな……」

 え?

 わたしが驚いたのがわかって、アダムは拗ねたような表情になる。

「クラスメイトがまずいことになっていたら、誰だってできること、するだろ?」

「アダム!」

 感動だ。

「王族に対応できるのは、やっぱり王族だ。僕は表に出られないから、ブレド……。そうだな……王女とコーデリアが仲がいいんだったね? あー、全く何をやっているんだか。コーデリアも少しわからせた方がいいだろう。利用されたままでいいのかを。ブレドとコーデリアを行かせるよ、君の家に」

「え? 第一王子の婚約者と第二王子が一緒にわたしの家に?」

 どんなシチュエーション?
 アダムは含み笑いだ。

「今、思いついたんだけど……。手配するから、君は調子を合わせればいい」

「え?」

 それ、不安しかないんだけど。
 でも王族相手だと、わたしには手立てがない。
 ここはアダムに頼るしか道はない。

「よろしくお願いします!」

 わたしは覚悟を決めて、頭を下げた。


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