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12章 人間模様、恋模様
第514話 攻撃⑩心的外傷
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「王族のお茶会って、どんなお菓子が出るの?」
レニータに興味いっぱいの顔で尋ねられる。
「街で売られているお菓子と、そう変わりなかったよ」
わたしは今モーレツにお腹が空いている。けれど、朝ごはんが食べられなかった。喉が痛いとかそういう物理的な理由ではなく気持ちの問題だね。食べたいとは思うんだけど、口の前に持ってくると胃液が迫り上がってくるような感じがして、食べられなかった。
全て吐き出し胃の中はすっからかんで、1日以上食事をとっていないのと同じなので、お腹は遠慮なく鳴る。
「お腹空いたの? ご飯食べてこなかったの?」
「……うん、ちょっと寝坊しちゃって」
あはは、とやり過ごす。
「昨日、お茶会で何かあったの?」
席につけば、隣のアダムに尋ねられた。
「……すっごい絡まれた」
アダムは気の毒そうな顔を向けてきた。
「君、滅多に顔を出さないから、今この機会にって思われたんだろうね」
なんじゃ、そりゃ。
「それ以外、本当に何もなかった? 医院へ搬送された子がいたみたいなんだけど……。君のそのお腹の音と関係してる?」
こいつもまた、お見通しだな。
わたしは休み時間に部室横の屋上へとアダムを誘った。
アダムは顔バレしている人と合わないようにするためか、本校舎内は極力教室の外には出ない。それを知っていたから、意地悪かなーとも思ったけど。思いつくスペースがそこしかなかった。
池はこの頃、誰か来るしね。
アダムは屋上にやってきた。
結界を張ってもらって、盗聴防止魔具を発動させ、念を入れておく。
わたしは極秘事項なことを最初に告げた。
お茶会で、お酒入りのお菓子を食べた後に、砂糖漬けのアズを食べてしまったんだと。
やはりアズとお酒の関係を知っていたらしく、顔を真っ青にする。
「なんてことだ! それで?」
わたしは渋々、アズを吐き出し、胃洗浄されたことを話した。
「ごめん!」
「ごめん? って、あんたが何かやったの?」
「完全に潰しておくべきだった。酒も流通をストップさせれば……」
「何? どういうこと?」
なぜかは言わないけれど、アダムはセインという国とモッテリヤという国に目をつけていたらしい。
ロサのお茶会に来ることがわかっていたので、その勢力を削ぐようなことを仕掛けていたという。そちらに掛かりきりになり、他国ではそれどころではなく参加するだけとなるように。
アズを土産に持ってくることも考えていて、お酒を買い占め、価格をあげた。
年齢層のこともあり、高価格になればお茶会でお酒を使わないだろうと思ったそうだ。普通のお茶会だとお菓子の半分はお酒入りだし、飲み物もお酒が入るはずなので、その目論見通り高騰の余波をしっかり受けて、お茶会ではお酒入りの菓子は数えるほどだったし、飲み物では琥珀湯に足すのに用意されたそれだけだったみたいだ。
っていうか、その少ない確率に自ら当たりに行くって、それもやっぱりわたしに巣食う呪いのせいなのかな?
それにしてもアダムはなかなか弟想いだね。
ロサのお茶会が成功するように、情報を集め読み解いて、何も起こらないように調整までしていたなんて。
わたしが感動した旨を伝えると、アダムは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「僕が動いたのはブレド殿下のためじゃないよ」
ちょっとムッとしたようにアダムは言った。
照れちゃって。
血が繋がってなくても兄弟愛があってもいいと思うけどね。
でも言ったら余計に頑なになるだろうから、わたしもコメントは控えた。
「で、身体は大丈夫なのか?」
尋ねられ、身体は問題ないが、わたしは朝ごはんは食べられなかったことを話した。
「それにしても君、本当に巻き込まれやすいね。ニコラスも言ってたけど、本当に呪いでもかけられてるんじゃないの?」
グサっと胸に刺さる。
「何、その顔? 本当だったりして?」
アダムは顔を覗き込んでくる。
「え、本当に? 本当に、君、呪われているの?」
「これも極秘事項だけど、そう。わたしの中に微かにだけど、呪いのかけらがあるの。だから呪いネタは二度と持ち出さないで」
「だから……。あれらは本当は呪術について知りたいんだね?」
わたしはキッと顔をあげる。
「そうよ。だけど、呪術のことを調べたりしたらあなたも危ない。だからメモに書いたことでいいの。もし情報が届いたら教えて」
「その呪いはどんなものなんだ?」
「呪いの欠片としかわかってない。抜け殻みたいなものだから、長くわたしの中にあるけど、育ったりはしないだろうって。ただ悪い思いや、念や瘴気を引き寄せ、大きくしようとする性質があるみたい」
アダムが押し黙る。
「……君の家族は知ってるの?」
「母さまと下の子たち以外はね」
「わかった。情報が入った時は知らせるよ」
「ありがと」
「……君はコーデリア・メロディーがペネロペ商会と繋がっていると本気で考えてるの?」
「可能性はありそうと思っている」
「繋がっていたらどうするの?」
「……それを聞いてどうするの?」
尋ね返すと、アダムは口を噤んだ。
お腹がすっごく空いている。ギュルギュルしているのに、どうしても食べられない。ちょっと不安だったからランチは用事があると一人になっておいてよかった。中庭で手持ちのお菓子を一つ食べようとして、食べられなかったのだ。やばい、トラウマになっているっぽい。水分はなんとか取れるので、蜜を溶かしたものを飲んだ。
午後の授業中もわたしのお腹は煩かった。
放課後になる。
お腹は空くし、なんとなくだるいのでクラブを休んでしまおうかなと思う。でも、それを言いに行く必要はあるんだけど。
廊下側のメルビンに先輩が呼んでるよと言われて廊下に出ると、風に吹かれたら倒れそうに華奢なメロディー嬢が微笑んでいた。
レニータに興味いっぱいの顔で尋ねられる。
「街で売られているお菓子と、そう変わりなかったよ」
わたしは今モーレツにお腹が空いている。けれど、朝ごはんが食べられなかった。喉が痛いとかそういう物理的な理由ではなく気持ちの問題だね。食べたいとは思うんだけど、口の前に持ってくると胃液が迫り上がってくるような感じがして、食べられなかった。
全て吐き出し胃の中はすっからかんで、1日以上食事をとっていないのと同じなので、お腹は遠慮なく鳴る。
「お腹空いたの? ご飯食べてこなかったの?」
「……うん、ちょっと寝坊しちゃって」
あはは、とやり過ごす。
「昨日、お茶会で何かあったの?」
席につけば、隣のアダムに尋ねられた。
「……すっごい絡まれた」
アダムは気の毒そうな顔を向けてきた。
「君、滅多に顔を出さないから、今この機会にって思われたんだろうね」
なんじゃ、そりゃ。
「それ以外、本当に何もなかった? 医院へ搬送された子がいたみたいなんだけど……。君のそのお腹の音と関係してる?」
こいつもまた、お見通しだな。
わたしは休み時間に部室横の屋上へとアダムを誘った。
アダムは顔バレしている人と合わないようにするためか、本校舎内は極力教室の外には出ない。それを知っていたから、意地悪かなーとも思ったけど。思いつくスペースがそこしかなかった。
池はこの頃、誰か来るしね。
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結界を張ってもらって、盗聴防止魔具を発動させ、念を入れておく。
わたしは極秘事項なことを最初に告げた。
お茶会で、お酒入りのお菓子を食べた後に、砂糖漬けのアズを食べてしまったんだと。
やはりアズとお酒の関係を知っていたらしく、顔を真っ青にする。
「なんてことだ! それで?」
わたしは渋々、アズを吐き出し、胃洗浄されたことを話した。
「ごめん!」
「ごめん? って、あんたが何かやったの?」
「完全に潰しておくべきだった。酒も流通をストップさせれば……」
「何? どういうこと?」
なぜかは言わないけれど、アダムはセインという国とモッテリヤという国に目をつけていたらしい。
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アズを土産に持ってくることも考えていて、お酒を買い占め、価格をあげた。
年齢層のこともあり、高価格になればお茶会でお酒を使わないだろうと思ったそうだ。普通のお茶会だとお菓子の半分はお酒入りだし、飲み物もお酒が入るはずなので、その目論見通り高騰の余波をしっかり受けて、お茶会ではお酒入りの菓子は数えるほどだったし、飲み物では琥珀湯に足すのに用意されたそれだけだったみたいだ。
っていうか、その少ない確率に自ら当たりに行くって、それもやっぱりわたしに巣食う呪いのせいなのかな?
それにしてもアダムはなかなか弟想いだね。
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わたしが感動した旨を伝えると、アダムは苦虫を噛み潰したような顔をした。
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ちょっとムッとしたようにアダムは言った。
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尋ねられ、身体は問題ないが、わたしは朝ごはんは食べられなかったことを話した。
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アダムは顔を覗き込んでくる。
「え、本当に? 本当に、君、呪われているの?」
「これも極秘事項だけど、そう。わたしの中に微かにだけど、呪いのかけらがあるの。だから呪いネタは二度と持ち出さないで」
「だから……。あれらは本当は呪術について知りたいんだね?」
わたしはキッと顔をあげる。
「そうよ。だけど、呪術のことを調べたりしたらあなたも危ない。だからメモに書いたことでいいの。もし情報が届いたら教えて」
「その呪いはどんなものなんだ?」
「呪いの欠片としかわかってない。抜け殻みたいなものだから、長くわたしの中にあるけど、育ったりはしないだろうって。ただ悪い思いや、念や瘴気を引き寄せ、大きくしようとする性質があるみたい」
アダムが押し黙る。
「……君の家族は知ってるの?」
「母さまと下の子たち以外はね」
「わかった。情報が入った時は知らせるよ」
「ありがと」
「……君はコーデリア・メロディーがペネロペ商会と繋がっていると本気で考えてるの?」
「可能性はありそうと思っている」
「繋がっていたらどうするの?」
「……それを聞いてどうするの?」
尋ね返すと、アダムは口を噤んだ。
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