プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
513 / 885
12章 人間模様、恋模様

第513話 攻撃⑨可能性

しおりを挟む
 次に気がついたのは夜だった。
 王都の家の自分の部屋で眠っていた。
 もふさまにも、もふもふ軍団にも、毎度のことながら心配をかけた。
 目を開けた突端、顔に飛びついてきて喜びを表現されるが、息ができなくて、もふさまに剥がされるところまでセットになっている。

 わたしが目を覚ましたと、アオが家族に伝えに行く。
 部屋の中が人でいっぱいになった。
 親戚の皆さまも揃っていたので、家族にも親戚の方々にも心配をかけてしまった。



 思い出したくないような気もするけど、あの後どうなったかを聞くと。
 父さまには明日話すからもうこのまま休むように言われた。けど、悪いものを取り込んだというより、リバースのダメージが大きかっただけなので、大丈夫だと言い切った。アズが膨らんではいなかったと思う。うん、ただ、吐き出すということにひたすらダメージを受けた気がする。

 わたしへの状況説明は父さまが残ってしてくれた。
 
 ロサはすぐに、屋敷の中であったことに箝口令を敷いた。
 もちろん胃洗浄をするような出来事は公にして調べたいところだけど、その被害者がロサの婚約者候補でないことが問題だった。婚約者候補でもない男女が一室で何をしていたと、揚げ足を取られる方がまずいと思ったのだろう。ロサにとっても、わたしにとっても。

 わたしを医院に移し、わたしに似せた子を兄さまと一緒に家へと帰らせた。
 屋敷で何かあったとバレたとしても、それがわたしではなかったとするためだと思われる。
 ちなみに、ロサの手際がよかったのとシールドのおかげで、ドレスは少しも汚れることなく新品同様だった!

 それから調査をし、シュタイン家へ説明に来た。お忍びで、バレた時には兄さまに話があったと装うことにして。

 わたしは砂糖漬けのアズ、そしてその前にお酒入りのお菓子を食べていたことから、食べたアズを吐き出させ、胃を洗浄したと説明があった。兄さまを馬車に乗せる時に報告されたことと同じだったという。で、わたしは無事だが眠っていると。
 医院で眠っているわたしは明日送り届けると言ったそうだけど、クジャクのおじいさまが転移でわたしを引き取りに行き、家へと運んでくれたそうだ。


 ロサと令嬢たちとの言葉を交わす儀式は、お茶菓子や飲み物は用意されなかったそうだ。別室にて、腰掛けて淡々と2、3言話す。それが繰り返された。
 そこには、有力候補と言われている、アイボリーさまとアイリス嬢も含まれる。
 そして、別部屋にて最後にわたしと話すために、お茶とお茶菓子が用意された。

 珍しい外国のお土産が採用された。
 それがアズの砂糖漬けと琥珀湯だった。
 殿下の口にされるものはそれだけだったけれど、お茶会で出す食べ物はそれだけではない。数が多いから、鑑定はいく人もの宮廷鑑定士がしていた。ロサが食べるものとして限定すると、そこに何を含む人が現れるかわからないので、お茶会で誰かが口にするものは鑑定士を選ばず割り振られ、チェックをし、それは個々に記録が残っている。

 琥珀湯にお酒が入っていたが、そうやって飲むと体がポカポカしていいのだというオススメの飲み方だった。セイン国では実際そうやって琥珀湯を飲むことが多いそうだ。
 またアビの砂糖漬けも不審な点はなかった。
 ただ、この2つを一緒に食べることによって、アビがお腹の中で膨れ上がる危険があっただけだ。

 博識なロサだったら、そのことを知っていて万が一口に含んでしまっても食べ続けはしないだろうし、ことは大きくならなかったと推測される。
 菓子と飲み物を運んだメイドも調べられたが、不審なところはなかった。
 ただ、メイドは琥珀湯にお酒が少し入っていることに気づいたようだ。アビとお酒の関係を知らなかったそうだけど。
 今まで食べ物を取らなかった殿下が、お茶会の最後で一人の少女を、珍しい飲み物と食べ物でもてなし過ごすひとときを持つことが微笑ましいと思っていたそうだ。

 またアズと一緒に琥珀湯が用意されたものも、外国の珍しいものという理由で、そこに悪意はなかった。
 かくいうわたしも、用意された琥珀湯とアビでことが起きたわけではない。その前に食べた菓子にお酒が入っていたのが原因だ。それで兄さまがうなだれているそうだ。そのお菓子をとってくれたのが兄さまだと気づいたんだろう。

 ロサは自分のお茶会にて、わたしを危険な目に合わせたことを父さまに謝った。父さまはロサに何もなかったことが幸いだといい、その危険性に気づき、わたしに出来る限りのことをしてくれたことで、恐ろしいことにならなかったとお礼を言ったという。

 お茶会にて何かがあったとすると、そこを突いてくる人は必ずいる。だから表向きは何もなかったことになるらしい。
 ただ、偶然という可能性を残しながら、琥珀湯やお茶会のお菓子にお酒が入ったものがあったのは〝悪意〟とロサは認識しているようだ。
 表向きにはしないが、それを徹底追跡するそうだ。

 わたしに扮した子が兄さまと帰宅したので、わたしとバレないとは思うが、バレた場合のために文書が残されることになった。
 というのは、まぁ、お茶会の時に婚約者でもない男女が同じ部屋にいたからだ。バレても、もふさまがいたことが、なんとか言い訳にはなるそうだけど。
 で、箝口令は敷いたけれど、バレた場合。実際、医師などが目にしたことは、わたしが下着姿だったこと。もちろんリバースさせるために衣服を緩めた結果なんだけどっ。で、ロサも上着を犠牲にしていたので、その後お色直ししたのはお茶会参加者のほとんどが知っている……。
 そこを突っ込まれた時のロサの何もしていない証明であり、同時にわたしが〝誘惑〟していない証明をするために、ユニコーンの角の検査をされた。
 こうやって二重にというか、何通りも考えて対処が必要なんて、王族は本当に厄介だ。王族のお茶会に参加しただけでこんなことに……。

 わたしが思いついた悪意は、ロサに嫌がらせをするつもりだった。お茶を振るまうような婚約者候補に嫌がらせをするつもりだったの2回答だったけど、ロサは瞬時にいくつもの可能性を思いついていた。

・ロサをあわよくば害そうと思った。←他王位継承者たちの確率が上がる。
・ロサの婚約者第一候補だと思って、相手の女性を害そうと思った。←他に婚約者になってほしい人がいる。
・ロサの婚約者第一候補だと思って相手の女性を害し、女性がロサと一緒に命を絶ったと見せかけたかった。←ロサを害せれば御の字、第一候補の家も潰せる。
・ロサの婚約者第一候補だと思って相手の女性を害し、ロサが害したと見せかけたかった。←ロサを社会的に抹殺できる。
・ロサの婚約者第一候補だと思って相手の女性を害し、ロサがお茶会も満足に開けないのだと貶める。←他王位継承者たちの確率が上がる。
 王位継承者、それから推しの王位継承者を継がせるための目論見かとも思えるが、それも王位継承者同士を争わせ、ユオブリアが揺れている時に国をのっとる外国の思惑かもしれない。
 目的を細分化して考えれば、それを目的とする人たちも微妙に違ってくる。……とにかく、無数に無限に生まれてくるのだ、疑惑は。
 そんな考えをいつも持たなくてはいけないのなら、ものすごくしんどくて気の毒だと思えた。思惑が違えば疑わなければいけない人も違くなり、その数は増えるわけだもの。
 わたしは巻き込まれただけだけど、ロサはいつもこんなことに耐えているわけで。そして自分の近くにいる人も巻き込む危険性があるわけで。そんな立場にいるのは、やっぱりしんどいだろうなとは思わずにいられなかった。

 思いつく全ての方向に関わる人を、つぶさにクロかシロかを見極めていくそうだ。
 ただ父さまはロサの話し方から、外国からのあわよくば攻撃だったと考えているんじゃないかと思ったそうだ。

 わたしはお茶会の閉会の少し前に、兄さまと会場を出たことになっている。
 何かあったと思われないように、明日、普通に学園へと登園するのが望ましい。だから今日はもう休むように言われた。

 わたしは皆さまに打ち明けるタイミングでこんなことになってと謝ると、わたしはへばっていたものの、眠っていただけなので、皆さまに秘密にしていたあれこれを話してくれたそうだ。
 よかった。わたしのことは言ってないそうなので、次の機会にわたしがテンジモノなのだとお話ししようと思う。
 あ、肝心なお茶会参加の目的を果たしていない。
 それどころじゃなかったからな。
 そんなことを思っていると、もふさまが隣に滑り込んでくる。

『我をムギュッとしていいぞ。今日は許してやる』

 マジか?
 わたしはもふさまをムギュッとして、柔らかい毛並みに頬擦りもする。
 日向の匂いを堪能する。

 もふもふ軍団も今日だけはいいと布団の中に入り込んできたので、わたしはみんなをぎゅっとしながら眠りについた。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」  パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。  彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。  彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。  あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。  元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。  孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。 「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」  アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。  しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。  誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。  そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。  モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。  拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。  ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。  どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。  彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。 ※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。 ※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。 ※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...