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12章 人間模様、恋模様
第497話 禍根⑧色男のエスコート
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「なんでついてくるんだ?」
後ろでホーキンスさんが問いただす声がした。
「団長がジェインズに任せたしか言わねー。お前、団長にスキル使ったんじゃねーか?」
「違う」
「信用ならねー。見張らせてもらうまで」
あー、なるほど。恐らくホーキンスさんは、魅了で団長さんを一時的に邪魔できないようにしたんだね。
そしてわたしを逃がしながら、一緒に逃げるつもりだった。
ところが、団長の仲間がおかしいと思って、わたしたちを見張っているってことか。
!
心臓がどきんと跳ねる。
前にいるのはブライとルシオだ。
なんだってあんたたち、授業中、こんなところに?
わたしは少し下を向いて、歩みを進める。
正面から見られなければ、すぐにはバレないはずだ。
イザークがいなくてよかった。
イザークには魔力のオーラでバレそうだ。
………………………………。
でも、ロサがいて、ブライとルシオがいる。ってことは近くにイザークもいるのでは? そして、もしや兄さまも。
いやーーーーーーーーーっ。
わたしは思っていた。危険な目にあってもいいと。
変装して危険だと言われているのに、外にフラフラ出ているのは、誰かに罰して欲しかったからだとさえ思った。
でも、でもね。今更だけど、それはちょっとした罰の叱られごとで、こんなところで遊んでサボっていたのかとか、ひとりでフラフラして危険な!とかそれぐらいを想像していたのであって。
こんな、よくわからない犯罪に首を突っ込んで、魅了されて教会の鐘つき塔からダイブするフリをしているところをみつかりたいわけじゃないのよ!
でも今バレたら、そういうことになるよね?
「エイウッドさま!」
アイリス嬢の声? いやー、また知っている人が増えた。3年生、みんな何やってるの?
アイリス嬢に呼ばれて、ブライとルシオがアイリス嬢の方を見た。
今のうちだ。わたしは少しだけ歩みを早める。
3人で何かを話している。
うわ、あっちにある豪華な馬車、あれにロサが乗ってそう。
横を歩く気にはなれない。
遠回りになるけど、こっちの道を。
「レディー、こっちだよ」
ホーキンスさんがわたしの手を取る。
うわーん、ロサの馬車の横を通ることになる。
背中に視線が集まっているような気がするけど、気のせいだよね、きっと。
でもホーキンスさんと手を繋いでいれば、わたしと思う要素は減るはずだ。
「あ、すみません」
ブライの声。
バレた?? なんで?
「はい?」
ホーキンスさんが答える。
ど、ど、ど、どーしよーーーーー。
わたしは顔を上げられない。
「役者のジェインズ・ホーキンスさんではありませんか?」
へ?
「あ、はい、そうですが。君は……?」
「あなたの大ファンなんです!」
嘘、ブライが? ダニエルに、芝居が始まって3分で寝た馬鹿者とは、一生一緒に観に行かないと言われていたブライが、ホーキンスさんのファン?
「それは光栄だな」
ホーキンスさんとブライが握手を交わす。
わたしとは手が離れたので、わたしは鐘つき塔に向かい歩き出す。
速やかにこの場を離れたい。
「あ、お嬢さんが」
「大丈夫だよ、行き先はわかっているから」
「いえ、ひとりは危険ですよ。カートライト嬢、そちらのお嬢さんを……」
ブライが要らん気遣いを見せ、アイリス嬢にわたしの面倒をみろとけしかけている。
嘘でしょ?
気を失っていいデスカ?
「おい、すみませんが、役者に馴れ馴れしくしないでもらえますかね?」
用心棒だ。ホーキンスさんは早く行けと言われ、再びわたしの手を取る。
用心棒たちと対峙しているブライが心配だけど、それ以上に突っ掛からなければ何もしないだろうし、したとしてもブライもあれでいて強いし、近くにロサもいるのだから何とかするだろう。
「ホーキンスさん、これからどうするんですか?」
小さい声で尋ねる。
「その角を曲がったら走るよ。追手を撒く」
角を曲がり、多分わたしを抱き上げようとして、ホーキンスさんが止まった。
「よう、ジェインズ。舐めたまねしてくれたじゃねーか」
シルクハットの団長さんが目の前にいた。
「さて、嬢ちゃんひとりで塔から飛び降りるんじゃ寂しいだろうからな、稀代の色男ジェインズ・ホーキンスがエスコートしてやれよ、あの世にな」
用心棒たちに挟まれて、塔へと移動することになった。
さて。どうやって収拾をつけようか。
っていうか、この人たち、何気に頭が悪いのでは?と少々失礼なことを思う。
いや、決して頭を働かせて欲しいわけじゃないんだけど。
魅了が効いているわたしは、勝手に鳥になれたと思ってダイブするかもしれないけどさ。背が高くてしなやかな筋肉がついているホーキンスさんを、死にたくはないホーキンスさんを、塔から落とすのは骨が折れるんじゃないだろうか?
普通なら、ここで、〝片付ける〟方法を変えると思うんだけど?
他の方法にさ。
何でこの人たち素直に塔に向かっているんだろう?
疑問に思いながらも尋ねるわけにもいかず、促されるまま、歩いていくしかない。
教会自体は各地区にあるけど、鐘つき塔は3地区、6地区、9地区にしかない。
教会の隣に立てられた、細長い建物で、ぐるぐると螺旋階段があり、その1番上に、時を知らせる大きな鐘がついている。
現在では朝と夜の6時にしか、鐘は鳴らさない。あと、非常時や特別な何かある時は鳴らすらしいけど。
やっぱり、階段の柵は大人の腰ぐらいまであり、しゃがまなければ、外から丸見えだ。
ここで、ホーキンスさんを無理やり落とすのなら、その犯行は誰に見られてもおかしくない。用心棒たちで口裏を合わせても、見られてたらさすがにアウトだろう。
それ、考えてないの?
後ろでホーキンスさんが問いただす声がした。
「団長がジェインズに任せたしか言わねー。お前、団長にスキル使ったんじゃねーか?」
「違う」
「信用ならねー。見張らせてもらうまで」
あー、なるほど。恐らくホーキンスさんは、魅了で団長さんを一時的に邪魔できないようにしたんだね。
そしてわたしを逃がしながら、一緒に逃げるつもりだった。
ところが、団長の仲間がおかしいと思って、わたしたちを見張っているってことか。
!
心臓がどきんと跳ねる。
前にいるのはブライとルシオだ。
なんだってあんたたち、授業中、こんなところに?
わたしは少し下を向いて、歩みを進める。
正面から見られなければ、すぐにはバレないはずだ。
イザークがいなくてよかった。
イザークには魔力のオーラでバレそうだ。
………………………………。
でも、ロサがいて、ブライとルシオがいる。ってことは近くにイザークもいるのでは? そして、もしや兄さまも。
いやーーーーーーーーーっ。
わたしは思っていた。危険な目にあってもいいと。
変装して危険だと言われているのに、外にフラフラ出ているのは、誰かに罰して欲しかったからだとさえ思った。
でも、でもね。今更だけど、それはちょっとした罰の叱られごとで、こんなところで遊んでサボっていたのかとか、ひとりでフラフラして危険な!とかそれぐらいを想像していたのであって。
こんな、よくわからない犯罪に首を突っ込んで、魅了されて教会の鐘つき塔からダイブするフリをしているところをみつかりたいわけじゃないのよ!
でも今バレたら、そういうことになるよね?
「エイウッドさま!」
アイリス嬢の声? いやー、また知っている人が増えた。3年生、みんな何やってるの?
アイリス嬢に呼ばれて、ブライとルシオがアイリス嬢の方を見た。
今のうちだ。わたしは少しだけ歩みを早める。
3人で何かを話している。
うわ、あっちにある豪華な馬車、あれにロサが乗ってそう。
横を歩く気にはなれない。
遠回りになるけど、こっちの道を。
「レディー、こっちだよ」
ホーキンスさんがわたしの手を取る。
うわーん、ロサの馬車の横を通ることになる。
背中に視線が集まっているような気がするけど、気のせいだよね、きっと。
でもホーキンスさんと手を繋いでいれば、わたしと思う要素は減るはずだ。
「あ、すみません」
ブライの声。
バレた?? なんで?
「はい?」
ホーキンスさんが答える。
ど、ど、ど、どーしよーーーーー。
わたしは顔を上げられない。
「役者のジェインズ・ホーキンスさんではありませんか?」
へ?
「あ、はい、そうですが。君は……?」
「あなたの大ファンなんです!」
嘘、ブライが? ダニエルに、芝居が始まって3分で寝た馬鹿者とは、一生一緒に観に行かないと言われていたブライが、ホーキンスさんのファン?
「それは光栄だな」
ホーキンスさんとブライが握手を交わす。
わたしとは手が離れたので、わたしは鐘つき塔に向かい歩き出す。
速やかにこの場を離れたい。
「あ、お嬢さんが」
「大丈夫だよ、行き先はわかっているから」
「いえ、ひとりは危険ですよ。カートライト嬢、そちらのお嬢さんを……」
ブライが要らん気遣いを見せ、アイリス嬢にわたしの面倒をみろとけしかけている。
嘘でしょ?
気を失っていいデスカ?
「おい、すみませんが、役者に馴れ馴れしくしないでもらえますかね?」
用心棒だ。ホーキンスさんは早く行けと言われ、再びわたしの手を取る。
用心棒たちと対峙しているブライが心配だけど、それ以上に突っ掛からなければ何もしないだろうし、したとしてもブライもあれでいて強いし、近くにロサもいるのだから何とかするだろう。
「ホーキンスさん、これからどうするんですか?」
小さい声で尋ねる。
「その角を曲がったら走るよ。追手を撒く」
角を曲がり、多分わたしを抱き上げようとして、ホーキンスさんが止まった。
「よう、ジェインズ。舐めたまねしてくれたじゃねーか」
シルクハットの団長さんが目の前にいた。
「さて、嬢ちゃんひとりで塔から飛び降りるんじゃ寂しいだろうからな、稀代の色男ジェインズ・ホーキンスがエスコートしてやれよ、あの世にな」
用心棒たちに挟まれて、塔へと移動することになった。
さて。どうやって収拾をつけようか。
っていうか、この人たち、何気に頭が悪いのでは?と少々失礼なことを思う。
いや、決して頭を働かせて欲しいわけじゃないんだけど。
魅了が効いているわたしは、勝手に鳥になれたと思ってダイブするかもしれないけどさ。背が高くてしなやかな筋肉がついているホーキンスさんを、死にたくはないホーキンスさんを、塔から落とすのは骨が折れるんじゃないだろうか?
普通なら、ここで、〝片付ける〟方法を変えると思うんだけど?
他の方法にさ。
何でこの人たち素直に塔に向かっているんだろう?
疑問に思いながらも尋ねるわけにもいかず、促されるまま、歩いていくしかない。
教会自体は各地区にあるけど、鐘つき塔は3地区、6地区、9地区にしかない。
教会の隣に立てられた、細長い建物で、ぐるぐると螺旋階段があり、その1番上に、時を知らせる大きな鐘がついている。
現在では朝と夜の6時にしか、鐘は鳴らさない。あと、非常時や特別な何かある時は鳴らすらしいけど。
やっぱり、階段の柵は大人の腰ぐらいまであり、しゃがまなければ、外から丸見えだ。
ここで、ホーキンスさんを無理やり落とすのなら、その犯行は誰に見られてもおかしくない。用心棒たちで口裏を合わせても、見られてたらさすがにアウトだろう。
それ、考えてないの?
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