プラス的 異世界の過ごし方

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12章 人間模様、恋模様

第487話 仲違いしないための証

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「女王になれる素質がある人って、リーのことだったの?」

 尋ねたアラ兄に、狐は頷いた。

「女王になれる素質とは?」

「人族は聖なる血筋で、聖なる獣を遣わされた子って言ってた。聖女にはなれないが聖女と同等の力があると」

 勝手なこと言ってるな。依頼主を突き止めたいね。わたしとアラ兄はアイコンタクトを取る。

「でも、人族はわかってない。女王になるには、聖なる血筋だけなら何の意味もない」

「女王って、王はダメなの? 女性じゃないといけないの?」

 神聖国の王様は男性だった筈だけど。誘拐犯たちが言ってたことによればだけど。

「そうだよ。女性じゃないと聖霊王は降りてこないから。それなのに男が王になったりしたから、悪いものが入り込むようになったんだ」

 そういえば、神聖国絡みで誘拐された時、現地の女の子が、精霊王の末裔の魂がなんとかと言ってたな。
 神聖国、神ってつくのに、精霊信仰なの?
 思い出す。あの時もそんなことをチラッと思ったっけ。
 思い出せ。あとなんだっけ。聖女を必要としていて、聖女になれば女神の力が宿って、証を輝かせられるとか。確か証があれば聖女の力を使っても生命を削らずに済んで。……結局、証を輝かせて、それがなんのメリットになると思っていたんだろう?

「神聖国なのに、精霊信仰なんですか?」

「信仰? 両方だよ。神と聖なる方が、仲違いしないための証に創られたんだもの」

 え? 神と聖なる方。精霊ではなくて聖なるって方? 聖なる方っていったら、もふさまたち護り手が仕えている方、だよね。
 え、ええ?
 仲違いしないための証ってことは、仲違いしたことがあるの?
 神さまと聖なる方が?

『マスター、時間です。約束の時間が近づいています』

 タボさんのアラームが頭に響いた。
 あ、そうだった。もう、そんな時間か。
 ……狐には、また時間を取ればいいものね。
 わたしはアラ兄に次の約束があることを告げた。
 狐に聞こえないように、こそっといろいろ聞き出して欲しいこと、特に依頼主! アラ兄から後で全てを話すよう約束をさせられた。そうだった、昨日のことアラ兄に話してないんだっけ。
 わたしはうんうん、頷いた。そして身を翻し中庭に急いだ。



 聞いたことを整理して、考えたいことはあるが、今はこっちに集中。
 わたしに気づいてジェイお兄さんが手をあげた。隣にちゃんと連れてきてくれている。

「お呼びだてしてすみません、ジェイお兄さんも、ありがとうございます」

  頭を下げると、ジェイお兄さんは

「大したことじゃないよ」

 と笑ってくれた。
 ジェイお兄さんに、チャド・リームと話したいのだと伝達魔法を送ったのだ。
 ジェイお兄さんはすぐに段取りをつけて、伝達魔法を返してくれた。
 目があった。連れてきてもらったチャド・リームは機嫌よく笑う。

「今日はツンツンしてないね」

 わたしも愛想笑いを浮かべた。

「ええ、お尋ねしたいことがあるので」

「嫌いな私に、聞きたいこと?」

「ええ」

「何かな?」

「……魔法とは何ですか?」

 チャド・リームは微かに首を傾げる。

「魔法とは魔の法則を編むことだよ? そんな基本的なことを、嫌いな私を呼び出して、わざわざ聞きたかったの?」

「それは、誰から教わったんですか?」

「え?」

「魔の法則を編むものだと、誰から聞いたんですか?」

 編むとは古代魔法の名残だ。もしくは呪術から。
 いや、同じか。呪術は古代魔法から派生したものだと思う。
 
 聖樹さまは魔法陣とは術式を編んだものだと言った。
 オババさまは呪術とは瘴気を術式に編み込んだものと言った。
 魔法陣として術を編み込んでいくところが同じだった。
 それらのことからわたしは仮説を立てた。

 人は魔を生まれ持つ。魔には属性がある。
 魔は5歳の祝福の儀により器と馴染ませる。器に馴染めば、指を動かすのと同じように魔が使えるようになる。それが〝生活魔法〟だ。魔の発端だ。
 魔を法則により複雑に編み込んだのが〝魔法〟。もしくは〝魔法陣〟。
 そして派生したのが〝呪術〟。
 魔法をレベルダウンさせただろう300年前、生活魔法と魔具の設計図としての魔法陣だけを残し、後は禁止された。

 わたしはガネット先輩から、魔法とは魔の法則を編むとチャド・リームが言ったと聞いた時に、リーム領の近くに、呪術の何かが残っているのではないかと思った。

「誰にって……多分、家庭教師だと思う」

 家庭教師! さすがおぼっちゃま!

「なんて言う方ですか?」

「ホーキンス先生」

 ホーキンス先生……。

「リーム領の方ですか?」

「いや、違うけど」

「紹介状を書いていただけませんか?」

「え?」

「お願いします」

「なぜ?」

「それは……言えませんが、知りたいことがあります。わたしにとって大切なことなんです」

 シーンとする。
 掌を返したような態度だ。あんなに嫌な態度をとっていたのに、頼みがあるときだけ。でも、リーム領は西に位置するし、呪術の糸口を見つけたかもしれないのだ。
 チャド・リームは顎に手を置いて、考え込む。

「紹介状は書かない」

 あ。ダメか。

「私が同席する」

「え?」

「顔を合わせる時だけだ。話を聞いたりはしない」

 わたしは片手を胸に置き、感謝を示すカーテシーをした。

「ありがとうございます」

 日程などは後から詰めることになった。
 これで、呪術にまつわることに、一歩近づけたかもしれない。
 この時わたしは、自分の仮説に信頼を置いていた。
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