プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
477 / 799
12章 人間模様、恋模様

第477話 収穫祭⑦外国の思惑

しおりを挟む
 大人たちの話があるというので、わたしたちは部屋を移った。

 みんな頬が上気していて、興奮状態だ。
 規格外のプレゼントに度肝を抜かれながらも、みんなもっとじっくり別荘を知りたくてたまらなくて、気持ちは別荘に向かっている。

「リー、頼みがある」

 ロビ兄が真面目な顔をした。

「おれの別荘にルームを作ってくれ!」

「オレもお願いしたい!」

「うん、父さまに相談してからになるけど、いいって言われたら、みんなのを繋げるよ」

「なぁに、ルームを作るって何?」

 エリンに聞かれて、昨日一気には教えられてないので、付け足すようにルームのことを話した。

「すごい、姉さま、やっぱり凄いのね」

「凄いのは魔使いさんだよ。わたしはその恩恵を受けてるだけ」

 本当にそうなんだよね。
 ハウスさんにしても、アオにしてもミラーダンジョンも、この恩恵がなかったら……こんなに好き勝手生きられてないだろう。




 しばらくして、父さまたちが部屋から出てきた。
 重たい雰囲気を纏っていたけれど、エリンがクジャクおじいさまに飛びつくと、一気に皆さまの表情が緩む。

 公爵さまの転移で、町の広場に向かった。
 収穫祭の始まりだ。



 広場にはもう人が詰めかけていた。

「領主さま!」

 誰かが父さまに気づいて声をかけると、父さまが広場に行けるように道ができた。

 あれ、貴族か?
 一見着ているものはきらびやかではないけれど、仕立てがいい。
 6年前、領地に人が流れ込んできたとき、貴族も住み着いた。でもそれは傍系の人たちだし、働きにきている貴族の人もいたけど、ここまで人数は多くなかったはずだ。集まっている中で、知らない人は全員貴族っぽくないか?
 シュタイン領の収穫祭になんでこんなに貴族が?

「リー」

 驚いて足を止めていると、ロビ兄に促される。

『どうした、リディア?』

 わたしはもふさまを抱き上げた。耳に口を寄せる。

「不安。あと、貴族多い」

 もふさまの耳がピクッと動く。

 マップを出してみたが、赤い点はない。とりあえず胸を撫で下ろす。

「お嬢ちゃん、あちらの赤い服をきたお嬢さまは、領主さまのご息女かね?」

 横にいたおじいちゃんに声をかけられた。

「そうですよ」

 答えると、おじいさんはニコッと笑う。貴族だね。エリンを見にきたのか?

「そういえば、こちらにはもうひとりお嬢さまがいらしたと思うが、王室に嫁ぐとは本当かね?」

 わたしはマジマジとおじいさんを見てしまった。

「それはあり得ませんね」

「なぜ、言い切れるんじゃ?」

「他の方と婚約しているからです」

「何を言っておる。王室だぞ。王族になれるんだぞ? そんなチャンスがあったら、誰でも飛びつくだろう?」

「……そうとも限らないのでは? その話はどこから聞いたんですか?」

 また奇怪な噂が出たのかとわたしは訝しんだ。

「何やら、王都でシュタイン領主と一族が王室に呼ばれたそうだ」

 あー、シンシアダンジョンの報告を、深読みした人がいるわけね。

「それは、ダンジョンの報告ですよ」

「ダンジョンの報告?」

「はい。魔物のことで、その時にダンジョンに入っていた人は、みんな呼ばれたんですよ」

「へぇー、そうなのかい? てっきり今度こそめでたく、王室に嫁がれるのが決まったのかと思ったよ」

 なんだそれは。

「王室に嫁ぐと、めでたいですか?」

「そしたらお姉さまは王妃さまだ。妹さまにも箔が付く。それで我が一族に嫁いでくれれば……」

 おじいさんはエリンを見たまま、にやりと笑う。
 はぁ?
 エリンへの縁談か。

「おじいさんは、どちらのお貴族さまなんですか?」

 名前を聞いておいて、その縁談は絶対阻止しなければ。

「わしかい? わしはハメール大国のドイト伯だ」

 外国人だったか。

「ユオブリア語、お上手ですね」

 まったく外国人だと思わなかったし、ましてや大陸違いなんて。

「孫の嫁にと目をつけてから、言葉を習ってな」

 手の内をこんなペラペラと話しちゃうことから、悪党にはなれなさそうだけど、一般的な貴族の結婚、つまり地位向上を目指す結婚に、エリンを行かせたくはない。

「お嬢ちゃんもどこぞのご令嬢に見えるぞ。所作も美しいな。シュタイン領は本当にいい領だ」

 収穫祭がスタートするようだ。
 父さまがスピーチに立つ。
 今更、みんなの近くに行くのも、始まってからの移動は迷惑かと、その場に居座ることにする。

「シュタイン家の血筋は素晴らしい。これで光属性をお持ちだったら、どちらのお嬢さまでも神聖国を復刻させられただろうに」

「神聖国?」

 聞いたことのある国名を聞き、わたしは見上げた。

「聖女さまの末裔がお作りになった聖なる国だよ。聖なる力が衰え、国は廃れてしまったが、力ある方をお迎えになれば、そこに集う者はどれだけいることか……。本当に上のお嬢さまは惜しい。光属性がなくても、聖なる方を遣わされたと聞く。やはり王家の、聖女さまの血が流れているのだ。そんな方が神聖国に立たれたら、エレイブ大陸の歴史は変わる。ユオブリアだけがいい思いをすることもない。これからはエレイブ大陸の時代になる!」

 見上げているわたしに気づいたみたいだ。熱く語ったことが恥ずかしかったのか頬を染めた。
 なんか恐ろしい話を聞いた気がする。アダムが言ってた血筋どうこうってそういうこと? 
 王家に属する公爵家の血が流れるってことは遡っていくと、聖女さまの血を引き継いでいるかもしれないって、本当に、一般的にもそう思われちゃうの?
 神聖国も縮小され、地図から消された国のはずなのに、エレイブ大陸ではまだ名が通っていて、熱く語れるほどの国ってこと? この方はおじいちゃんだから、年配の人はそう思ってるってとこかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

処理中です...