プラス的 異世界の過ごし方

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12章 人間模様、恋模様

第474話 収穫祭④補償

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 できあがったばかりのコイタさまを持って、広場へ赴く。
 祭壇はもうできていて、周りに花やら草やらが敷きつめられていた。

「こんにちは。コイタさまはどちらに置けばいいですか?」

「あ、ミニーにお嬢さま、こちらにお願いします」

 今年の祭壇の係は、ヨムの家も担当みたいだ。

 ミニーがお皿に紙を敷いて、独特な積み上げ方をしていく。
 わたしも習って手伝う。

「おばさーん、お肉が届いたよ。これどこに置けばいい?」

 明るい、通る声がした。

「ペリー、ありがとう。祭壇の横に置いてくれる」

「はぁい!」

「ペリー、貸せ。持つよ」

「持つなら、もっと早く持ってよ!」

 カールと笑いあっている。

「あ、お嬢さま。学園じゃなかったのか? 今年は参加できないのかと思ったよ」

 カールがわたしに気づいて、ニカっと笑った。

「うん、お祭りの間だけ帰ってきたの」

「そうか。フランツさまたちも?」

 わたしは頷く。

 カールの肩に顎を置くようにして、こっちを覗き込んだ水色の瞳と目が合った。ストレートの髪は茶色い。

「はじめまして、領主さまのご息女さまですね? 私、ペリーっていいます」

 思慮深く、微笑んだ。
 エリンやアイリス嬢のようなかわいさではないが、騒がれたのはわかる気がする。愛嬌があり、仕草がかわいらしい。

 ただ幼なじみの気軽さなのか、マールという彼女がいるカールに対して親しげすぎる気がした。わたしがマールだったら嫌だろうなと思う。

「お嬢さまたちがいらっしゃる前に、この領に住んでいました。税が払えなくて夜逃げしたんです」

 みんな知っていると言っても、そんな事情だ。口にしなくてもいいのに。

「商会に就職して、北支部所属になりました。住んでいたシュタイン領を拠点にしようと思いまして、越してきました。これからどうぞよろしくお願いします」

 誰が聞いても気持ちのいい挨拶だ。
 でも、その時なぜか、メロディー嬢の顔が浮かんだ。
 だからか、わたしは彼女に向かい、カーテシーで応えていた。

「はじめまして。そして前領主が多大なるご迷惑をお掛けしたこと、心よりお詫び申し上げます。謝って済むことではございませんが、申し訳ありませんでした」

 わたしは深く長く頭を下げた。

「そ、そんなぁ、お嬢さまに謝っていただくことではありません!」

 ペリーが慌てている。

「そうですよ、ジュレミーさまやご家族みなさまが、どれだけこの領地をよくしてくださったか」

「感謝しかありません」

 祭壇の準備をしていた町の人たちが、次々に口にした。

「そうだよ、お嬢さま。あたしたち、本当にお嬢さま一家に感謝しているんだから!」

 ミニーにギュッと飛びつかれる。
 わたしはそろそろと体を起こした。一瞬だけ、冷めた目で見られていたのを、わたしの目は捉えた。
 やっぱり、彼女はウチを許していない。

「なんかすみません。ご挨拶したかっただけなのにぃ」

「いえ、とんでもない。謝罪するべきは、こちらなのですから」

 わたしは謝りながら、彼女を観察した。



「どうした?」

 ビリーの声だ。
 ミニーが顔を上げる。
 ミニーの頭に手を置いたのはビリーで、その後ろには兄さまがいた。
  雰囲気で何かあったと思ったのだろう。

「ペリーとお嬢さまが挨拶してて……」

 ミニーが、わたしとペリーを交互に見た。
 ペリーが兄さまに目を留めて、頬を染めている。
 兄さまはわたしの肩を持って、自分の方に引き寄せた。

「どうした、リディー?」

「兄さま。おじいさまの過ちをどうしたら償えるのか、考えていたところよ」

 兄さまは思い当たったように、眉根を寄せた。

「ビリーから聞いた。君がペリーかな? ご家族は今どちらに?」

「ど、どうしてです?」

「例の2年、シュタイン領で被害に遭われた方に、せめてもと補償金を出しているんだ。ほとんどの方はどちらにいらっしゃるかわからないけれど、居処がわかる方には少しでも何かしたくてね」

 一瞬、彼女は下を向いた。

「慈悲深いんですね、現シュタイン領主さまは」

 顔をあげ、にっこり微笑んだ。
 父さま、そんな対策立ててたんだ、知らなかった。

「シュタイン領が栄えているのは、領主さまのそんな采配があるからなんでしょうね」

「ペリー、領主さまだけじゃないよ。お子さまたちも素晴らしいからね、シュタイン領は安泰だよ」

 おばさんが景気良くいう。

「さあさ、話は終わりにして準備を終わらせないとね」

 コイタさま置きが一番数があるので大変だったけれど、ビリーも兄さまも手伝ってくれたので、お昼前に終えることができた。

 わたしと兄さまは、カトレアの宿に行くのに祭壇を離れることにした。
 ビリーがミニーの手をとって、どこかに行こうとしてたので、ほっとする。
 顔馴染みに、また夕方と手をあげて、兄さまとテクテク歩く。

 兄さまは走っていくつもりだったそうだ。
 わたしの歩調に合わせると遅刻になると、わたしを抱えて走ろうかというので、わたしはもふさまに乗らせてもらうことにした。

「昨日の……エリンとノエルの話はなんだったの?」

 もふさまと並走しているのに、息が上がっていない兄さまがわたしに尋ねる。
 あの子たちがわたしに何か話したいことがあるのは、わたしにもわかったぐらいだから、兄さまも気づくよね。
 
「……わたしからは言えないんだけど、まだ小さいのに、家族を守ろうとしてくれてた」

「そうか。私はまたとんでもない未来視でも観て、リディーに打ち明けたのかと思ったよ」

 ドンピシャ。
 わたしはもふさまに乗っていて良かったと思った。
 手を繋いでいるとかしてたら、絶対バレた。

 今は、少し前屈みになって、もふさまに乗っているのがやっとのていを装う。
 もふさまの魔力に守られているから危険はないんだけど、スピードに目がついていけないとき、わたしはよくこうしているから、きっとそれだと思うだろう。

「あの娘の、ペリーの勤めている商会の名前を聞いた?」

「いいえ。兄さま、聞いたの?」

「ああ、ビリーから」

「どこなの?」

 兄さまがわざわざ話題にするということは、何かしら意味があるんだろう。

「ペネロペだ」

 え?
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