プラス的 異世界の過ごし方

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12章 人間模様、恋模様

第463話 火種②原因のアイツ

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 あの後、カラ先輩から聞き出した。
 ヤーガンさまとガネット先輩の衝突の原因を。

 ヤーガンさまは確かに、爵位だの序列にうるさい方だったけど、総寮長でもあるし学園の主旨もわかっていて、平民を目の敵にすることもなかったんだって。

 ところで、ヤーガンさまは公爵令嬢。おうち自体がとても厳しいらしい。おまけにヤーガンさまより、かなり上のお兄さまとお姉さまが、すっごく出来のいい方たちだそう。生徒会長もされたそうだし、在籍中に賞をいただいたり、活躍めざましかったそうだ。そんな兄妹たちに比べ、ヤーガンさまはパッとしなく映るようで……。

 カラ先輩は公爵さまから叱責されているヤーガンさまを見たことがあるそうだ。それも独唱で賞をとった日、校長先生が公爵さまにヤーガンさまの活躍を褒め称えた日、校長室から出てきた廊下で、歌を褒められたぐらいでいい気になるなと冷たく言い渡されていたのを聞いた。

 公爵さまが去ってからも、ヤーガンさまはしばらく動かずにいた。カラ先輩は悪気はなかったのだが聞いてしまったことが申し訳なく、聞かれたことがわかったらヤーガンさまは辛いだろうと思って、自分も身動きができなかった。
 まだ動かない?と首を伸ばした時に、無表情のヤーガンさまが頬を拭うのを見た。あまり表情の動かないヤーガンさまだけど、やっぱり辛かったんだとカラ先輩は思ったという。

 わたしも、そういえばと思い出した。クジャク公爵家で、ヤーガン家とセローリア家を招いての食事会をした時、公爵はヤーガンさまにそっけなかった。そのくせあの場にいないご兄妹のことを褒めたんだよね。何それ? と思ったのを覚えている。

 カラ先輩はヤーガンさまの見られたくないような場を見てしまう才能があるらしく、次に見たのは「国所有地の有効活用法」の作文の授与式であったという。
 これは4年生全員が書かされたものらしい。公募していたのは国の機関で、ヤーガン公爵さまが全体の顧問として名を連ねていた。
 その公募でガネット先輩の作文が優秀賞をとった。朝礼で賞状を授与した。ヤーガン公爵さま直々に。公爵さまは朝礼の後、先生方と話され職員室をでた。そして銀賞だった娘に、平民に負けおってと侮辱の言葉を投げつけた。

 それで逆恨みしちゃったの? と思うと、それも違った。
 そんなことがあってから、ヤーガンさまを見るとどうにも気になってしまったカラ先輩、ヤーガン嬢の頬が染まった瞬間を見てしまう。
 お相手は整った顔立ちではあるけれど、特に印象が残るわけではない伯爵令息。
 ヤーガンさまには物足りないのではと勝手なことを思ったという。

 そして次には決定的な場面に遭遇。
 その伯爵令息が親しげにガネット先輩に話しかけ、ふたりがいいムードでいるところに。それを見たヤーガンさまの瞳が空《うつろ》になるのを見た。
 それからのように感じた。ヤーガンさまがガネット先輩に辛く当たるようになったのは。

 それでも最初は、剥き出しの悪意ではなかった。
 ガネット先輩は優秀だけど、平民ゆえに貴族の決まり事を知らないところもあるし、お互い4年生だ、コンディションの悪い時もあり、ボーッとしてしまうこともある。
 そんな落ち度がでた時に、注意する。ま、それは当たり前のことだ。
 カラ先輩もガネット先輩が悪いと思った。
 カラ先輩は思い返せばその頃に、ガネット先輩に何かあったのじゃないかと思うと言った。ヤーガンさまのこととは関係なくね。
 それでぼーっとしてたり、やらなくちゃいけないことをやらなかったり、提出したものがミスばかりで、それでもっと気を引き締めなさいとヤーガンさまがお叱りになったらしい。
 他の寮長はそれらのミスの尻拭いもすることになったし、怒られて当然とみんな思った。
 それから少しして、ヤーガンさまは怒る時に、ガネット先輩が悪いというより、平民はなんでこうなんだというような怒り方に変わってきたそうだ……。


 尋ねなくてもわかる。そのヤーガンさまが頬を染め、ガネット先輩に親しげにしてたって、なんとかリーム、えっと、チャド・リーム、あいつでしょ?
 なんであんなのに、あのおふたりが傾倒するかなー。

 視線を感じて、我にかえると、隣にもふさま、正面にタルマ先輩。右からはユキ先輩、左からはエッジ先輩に見つめられていた。
 わたしの手は目の前にあるお皿に手を突っ込み、口の中では甘いものを咀嚼していた。
 ヤバイ! ストレスから、無意識に目の前にあるお菓子を貪り食べていたようだ。

「ご、ごめんなさい。無意識に!」

 みんなのおやつを無言で頬張っていたようだ。

「何かあったみたいだね、大丈夫?」

「あ、はい。ああ、すみません、お菓子追加で出します」

 お皿のお菓子は残り少ない。
 わたしはお皿にポップコーンもどきを出した。キャラメルソースと混ぜた甘いやつだ。

「おいしい!」

「うまい」

「それにしてもシュタインさんが、食べ物を味あわずに食べるなんて珍しいね。本当に何があったの?」

 バレとる。わたしはエッジ先輩に、せっかく作ってくれたお菓子を無心に食べたことを謝る。
 エッジ先輩は、ポップコーンがおいしいという理由むきで許してくれた。

「あったというか……。それは元々あったことなのですが。わたしには理由が分からなくて」

 重たい息になった。
 恋愛絡むとそれも厄介だし、その相手がチャド・リームというところで眉が寄る。なんでよりによってアレのことで悩まなくちゃいけないんだ!

 っていうか人によっては恋愛の嫉妬かってトーンダウンするかもしれないけど。
 渦中のドーン寮の先輩たちは、恋愛ごとに巻き込まれて退学になりかけてたと知ったら、どう思うだろう?
 それはそこはかとなく薄暗い何かが発生しそうに思えて、それ以上考えるのをやめた。
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