プラス的 異世界の過ごし方

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11章 学園祭

第448話 〝友〟の願い

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 夕方からBグループの公演はあるけれど、Aグループはラストだった。
 みんなが感極まったのを見て、わたしも泣けてきた。
 Bグループからも見にきてくれていた子もいて、もらい泣きをしている。
 次の公演の邪魔になるので、舞台裏からグズグズ鼻を啜りながら出てきた。

「リー」

 アラ兄だ。父さまもいる!

「アラ兄、父さま!」

「結末がみんな違うんだね。いや、どの回も制覇するべきだった」

 父さまに頭を撫でられる。

「すっごくかわいかったし、よかったよ、リー」

「ありがと!」

 あれ、兄さまは? 一緒じゃなかったのかな? ロビ兄は忙しかったか? 劇は見にきてくれると言ってたんだけど。

 あ、ロビ兄と兄さまだ。ロビ兄の頬に赤い線が入っている。

「ロビ兄、顔、怪我したの?」

「かすり傷だ、なんでもない。リー、よかったぞ!」

 見てくれたみたいだ。えへ。

「素敵な劇だったね」

 えへへ、兄さまからも評価をもらう。

「あのー、リディアのお父さん」

「ちょっ、伯爵さまだよ」

 レニータが父さまに呼びかけて、ジョセフィンに嗜められている。

「あ」

「大丈夫だよ、私はリディアの父親だからね」

「レニータと言います」
「ジョセフィンです」
「キャシーです」
「ダリアです」

 その後ろに女子も男子もいて、みんなで父さまに挨拶してくれてる。

「ああ、娘と仲良くしてくれて、ありがとう」

 父さまは後ろの子も含めたD組の子たちみんなに、声をかける。

「リディアのお父さん、私、リディアが大好きです」

 おっと、レニータ。嬉しいけどなぜ父さまに?

「私もです!」

 キャシーが大きい声で言った。

「私たち、リディアが大好きだから、これからも一緒に遊んで、勉強して、もっともっと楽しい時間を過ごしたいんです」

 ダリア……。

「そうやって一緒に過ごして、一緒に2年生になって、3年生になって、一緒に卒業したいです」

 ……ジョセフィン 。

「リディアの力になりたいです」
「だから、リディアを辞めさせないでください」

 ライラ、ジニー……。

「「「「「「「「辞めさせないでください」」」」」」」」

 みんな…………。
 父さまがみんなを見て、ゆっくり振り返ってわたしを見た。

 アラ兄が、泣きべそをかいたわたしの顔に、ハンカチをあてる。

 父さまが胸に手をやり、みんなに礼を尽くした。みんな息を飲む。

「娘を愛してくれてありがとう。娘もとてもみんなのこと、そして学園が大好きなようだ。楽しいのはこの二日間でよーくわかった。伝わってきた。ただ、私も娘が大事だから、危険が迫るようなことがあれば、通わせ続けることはできない。が、なるべく娘の意思を尊重したいと思っているし、心強い仲間がいることを覚えておこう。だから約束はできないが、……それでいいかな?」

 みんながそれぞれに頷く。

「ありがとー」

 わたしはレニータたちみんなに突進した。手を広げて、みんなでぎゅうぎゅうに抱きつく。

「お前ら、団子になってると通る人の邪魔になるぞ」

 イシュメルに怒られた。
 でも、そうだよなと顔をあげると、みんな鼻の頭が真っ赤だった。いつもクールに決めようとしているジョセフィンも、いじっぱりなマリンも。
 レニータがパンパンと手を叩いた。

「さ、みんな解散。当番の子行くよ」

 わたしはダリアに劇を頑張ってねと言い、着替えてからクレープの屋台に行くというと、当番表を記憶しているのか、ジョセフィンにリディアは当番じゃないでしょと言われた。

 あ、だからね。変なのと一緒にいなくちゃいけないみたいなので、当番ってことで行こうかなと思ってさ。
 ってこそこそ囁くと、そっかと頷く。
 困ったらおいでと言われ、みんな父さまたちに挨拶をしながら散って行った。

「リーはあの偉そうな銀髪と知り合いなのか?」

 尋ねてきたロビ兄に首を横に振る。会ったことはあるけど。

「妖精、その格好でずっといるのか?」

 後ろからやってきたのは銀髪の少年だ。瞳はダークブラウン。

「ほ、本当に、わたしと過ごすつもりですか?」

 劇の宝を現実に持ち込むなよと、突っ込みたい。

「そうだよ。ジジイからの命令で仲良くなれって言われた聖女候補も、第一王子の婚約者からも断られたからさ。そんならお前みたいな面白いやつとの方が楽しそうだ。利用価値のない平民と一緒にいたって報告行って、ジジイ怒髪天つくだろーな、愉快だ」

 ええ? 聖女候補ってアイリス嬢だよね。
 第一王子の婚約者ってメロディー嬢。おじいさんから仲良くなれって言われた?
 外国の王族か?
 この人、わたしがシュタインってわかってないの? 利用価値のない平民とか、その考えでもう失礼だけど。
 あれ、じゃあ、劇の時、わたしを貴族ってわかってなかったの?

「リー、着替えてこい」

 ロビ兄が低い声で言った。

「あ、リーっていうのか? 俺はガインだ。ガイン・キャンベル・ガゴチ」

 ガゴチ?

「来年度、学園に留学するんだ。ちょうどよく学園祭があったから下見にきた」

「……リディー着替えておいで」

 兄さまに言われる。

「リディー?」

 ガゴチ将軍の孫が聞き覚えがあるというように、首を捻った。

「わたしはシュタイン伯第三子、リディア・シュタインです」

 カーテシーをして、わたしは将軍孫を真っ直ぐに見た。

「リディア・シュタイン? お前が?」

 将軍孫は驚いた顔をした。それからすぐに無表情になり、わたしの家族を次々と見る。わたしが名乗ったことで、みんなのプロフィールは知っているだろうから、擦りあったって感じだ。

「シュタイン伯でしたか。ご挨拶が遅れ失礼しました。ガイン・キャベル・ガゴチです。お見知り置きを」

「ジュレミー・シュタインです」

 父さまは簡素な礼を尽くす。

「誰だかわかったのなら、リーに付き纏わないでくれます?」

 アラ兄が静かに言った。

「それとこれは別でしょう。妖精の宝だ、そうだよね、妖精さん」

「とにかく、リーは着替えて、〝当番〟に行って」

 父さまにも頷かれてしまったので、アラ兄の護衛でわたしは更衣室に行った。
 ガゴチの将軍の孫が学園へ下見にきた。
 ジジイとは将軍のことだろう。将軍はアイリス嬢やメロディー嬢と孫を繋がりを持たせようとした……。そこにどんな思惑があるんだろう?
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