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11章 学園祭
第447話 夜が明けてみる夢
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イシュメルがどうしたらいい?と勇者さまたちに答えを委ねる。
シンキングタイムは短く、答えはすぐに出た。王族少年がいるからってところが大きいと思うんだけど、昨日の2回目と同じ流れ。王さまに全てを任せようというもの。
話が進んでほっとしたところだった。
銀髪の少年が不思議そうに首を傾げた。
「学園祭でこの劇の流れは凄いな。だって、これ領主が平民の反乱を防げなかったって話だよね? 過去にそんなことがあってそれを真似た劇? それを参加させた客に判断を委ねるの? ユオブリアは面白い国だね。こうすればよかったのにって劇で国に訴えるの? それが狙い?」
どこの国の子だか知らないけど、いろんな方面から考えられる子だね。
絶対に外国出身で、身分は高い。ユオブリア語、流暢だし、完璧だけど。
「お前、ユオブリアをバカにする気か?」
王族少年が銀髪少年につかみ掛かる。
「俺の言ったことを正しく聞いてくれ。外部が見にくる学園祭で、堂々とこのテーマを扱う平民のクラスに尋ねているだけだ。……そういえばD組は平民の中に貴族も混じっていると聞いた。シュタイン領であったことなのかな?」
それが言いたかったのか? ターゲットはわたしだね。
さっき助けてくれたのかと思ったけど、あれが弾みだったに違いない。
王族の子は幼いからか、王族としてあろうという気持ちはあるけれど、まだ素直だ。強い調子で言われると、言葉が繋げなくなるみたい。黙ってしまった。
「あら、勇者さまたちって無粋なのね。物事ってのは途中で口を挟んだら、真相まで行きつけないわよ?」
わたしは煽る。
「真相? この流れで何でこのテーマを選んだのかまで本当にわかるのか? それに我々がとんでもないことを言い出したらどうするんだ? 劇を無事終えられる自信があるのか?」
こいつはただ本当に不思議と思っていて、それを口にしているだけなのかもしれない。ふと、そう思った。
ターゲットがあって、潰してやろうと思っていたなら、そんなセリフにはならないだろう。煙に巻くつもりか?とか言って話を聞きたくないってスタンスに持っていくなどして、劇の進行を滅茶苦茶にするはずだ。
でも、銀髪少年はちょっと違うのかもしれない。シュタインがターゲットなのはそうなのだろうけど、この劇の流れで、どう転んだとしても自分の知りたい結末はわからないだろうと思ったから、途中で尋ねたのだ。
実はわたしたちの間でも、物語の筋が学園祭に相応しくないんじゃないかという意見は出ていた。
ダンジョンで魔物を倒すシーンは絶対に入れたかった。みんなが楽しそうと確信し、入れたがったから。それでダンジョンに一緒に行ってもらうシチュエーションを考えて、アダムが持ってきてくれた史実を参考にしたのだ。ただ村人のやったことは犯罪が含まれている。それでモラルというか、学園祭、まさにあの少年が言ったように、外部の方が見にくる学園祭で。王族やお偉方の貴族もくるだろう学園祭で、発表する劇にはよろしくないのではないかと思いもした。
けれどわたしたちは、そこに裏のテーマをみつけた。あくまでも〝裏〟だから気付いてもらう必要はない。表の内容で楽しんでもらえたらなと思う。
でも、犯罪を含んでいて、それをどう捉えるかの判断を委ねることに首を傾げる人がいたら、わたしたちはわたしたちの思いを、裏のテーマを伝えたいと思っていた。
今までの上演で突っ込まれなかったので、そちらのシナリオは使わないだろうと思っていたんだけど。
「とんでもないことなんて言わない。俺たちは騎士の勇者さまたちを信じてる」
イシュメルが力強くいうと、子供たちみんなが頷く。
そう、あなたたちは騎士の勇者に立候補してくれたのだから。
劇ではあるけれど、魔物から子供を助けると思ってくれた心根を信じるよ。
だから劇は暴走しないし、ちゃんと終えることができる。
「そういうなら、こちらも求めてる答えがもらえるんだと信じてみよう。王さまに判断を委ねよう」
進んだ。物語が動き出す。この展開は2回目なのでスムーズだ。場面転換をして王さま登場。イシュメルはタジオ領に返し、村人たちには罰金の刑が言い渡される。さて、今回の勇者たちはわたしのお助けアイテムをどんな使い方するかな? そう思いながら問いかける。
「では、わたしからの宝を。どんな願い事もひとつだけ叶えて差し上げます」
守りの木かな?と思いながら言うと、銀髪少年が進み出た。
「どんな願い事も?」
「はい」
「妖精のあんたが欲しい」
あーーーーーー、ねぇーーーーーーーーーー。
いるよね。1回だけ魔法が使えるとしたら、どんな魔法を使う?って言うと、魔法使いになるっていう奴……わたしだ。
未来の猫型ロボットのアイテムがひとつだけもらえるとしたら何が欲しい?って言うと、四次元ポケットっていう奴……わたしだ!
「わたしがいたって、宝物はひとつ、願い事はひとつしか叶えられませんよ?」
銀髪は頷いた。
「他の方は? この勇者さまの願い事でいいんですか?」
みんな一歩下がる。
えーーーー。勝手に言い出したのかと思ったけど、さっきのシンキングタイムで決まったことなのかもしれない。
「欲しいとは具体的に何を指しますか?」
アダムのアナウンスが入る。
「そうだな、劇の後から学園祭が終わるまでの、妖精の時間が欲しい」
客席からきゃあきゃあと声があがる。
なにこれ、わたしこの後、いたぶられる流れ?
「妖精さん、願いを叶えますか?」
アダム、助けろよ。全然そんな気ないよね?
「当番が入っているので無理です」
「当番か。いいぞ、手伝ってやる」
え。
「妖精といえど、女の子ですから、一切触れないでくださいね。妖精さん、ということですので、願いを叶えてくださいね」
アダムの奴。
でも怒りを収め、にっこり笑う。早くここは出ていかないとね。劇を終えるために、やることがあるから。
わたしは魔法の杖を振って、願い事が叶う魔法を振りかける。では後ほどお会いしましょうと勇者に微笑む。
勇者たちに助けてくれてありがとうと言って退場。
幕の中に入ると、アダムがわたしにノートを突き出した。
シナリオの草案を書いていたものだ。
もう赤字が少し入っていた。
わたしは受け取って、今回の勇者さまの選んだ結末を擦り合わせ、急いで言葉を足していく。
最後のナレーションを書き換えるためだ。
書きあげてアダムに見せると、一読して時にはペンを走らせ、頷いてくれた。
急いでジニーに渡す。間に合った!
舞台では子供たちが「ありがとうございました!」と大声で声を合わせた。
一呼吸置いてから、ジニーができたばかりの台本を読みあげる。
「そうして、イシュメルはタジオ領へと赴き、一生懸命、学び、働き、やがて領主となりました。彼は大きくなってから、かつて過ごした村を訪ねました。けれどお節介な妖精があげた守りの木があったため、イシュメルは〝村〟をみつけることができませんでした。〝領主〟の考えを持ったイシュメルと村人たちは、もう道が違ってしまったのです。
かつての村人たちも、罪を償い、それぞれに幸せをつかみ暮らしました。でも、時々考えるのです。もしあの嵐で守りの木に雷が落ちなかったら、と。
貴族と平民では役割が違います。でも役割をまっとうすることは同じです。罪を犯してはいけないことも同じです。ただその同じことと違うことが、こんがらがってしまったのかというようなことが時には起こります。
参考にした史実も実際は犯罪を起こしてしまった平民側、導けなかった領主側も処分を受け、そのまま地図から消えていきました。
領主が驚くほどの税をあげること。それに意見する領民。話を聞いてもらうために大切なものを盾にしようとする……その真相は、すんなり想像できたことではないでしょうか? 史実にも、振り返ってみれば、似たようなことはいっぱいあります。ですから想像に難くなかったのではないでしょうか?
勇者さまより、この物語の主旨はこの場に相応しくないのではないかとご指摘がありました。私たちもそこは悩んだところでした。でも、そこに私たちは、D組だからこそ意味を持つと思って演じてきました。
悪いことは悪いことです。罪は償うのが道理です。役割が違うこともわかっています。でもわたしたちはここで友を得ました。身分の壁をなくした友が。いずれ道が違えども、わたしたちは願います。守りの木にお互いが弾かれなくあるように。役割も何もかも違っても、友ということだけはいつまでも変わらないように。
勇者さまたちや、過去に同じ思いをした勇者さまたちに贈ってもらった〝夜明け〟をわたしたちも繋いでいけるように……」
余韻を残してから、ジニーの本当のラストナレーション。
「これにて『夜明けの勇者』は終了です。ご参加下さいました勇者さまには、一同御礼申し上げます。皆さま、ご観賞ありがとうございました。心より感謝いたします」
シーンとした。パチ、パチッとゆっくりした拍手が早くなっていき、重なり、講堂中に拍手が響いた。
わたしたちは学園にいることがとても楽しい。
でもいつか、この楽しい時は終わってしまう。卒業したらみんな道は違い、会えることも少なくなる。
道は違うし、暮らしている場所はバラバラだ。でも、わたしたちは〝友〟でいたい。いつかまた会えた時、同じことで一緒に笑い転げることができる友でありたい。
史実は、立場の違う人たちがある期間一緒に楽しく過ごしていたが、ある出来事により映し出されたシルエットに思い知らされる。立場がどこまでも違うのだと。……そう解釈している。
立場が違っても友でいられるか、それがわたしたちが投げかけてきた裏のテーマだ。なにをどう選ぶか、それは人それぞれに違って、それに正解も不正解もないと思っている。勇者さまたちがそれぞれ出した結論のように。
けれど、D組の総意は〝友〟でありたい、だ。どんな結論を出したり、道を選んだり、遠回りをしてもいい。でも、やっぱり友でありたい、と。
それは難しいかもしれない。幼いからわたしたちがそう思うだけで、大人になったら違う考えになるかもしれない。
でも、今、わたしたちが見つけた答えはそれだったのだ。
だから、みんなに問いかける。あなたはなにを大切にしますか?と。
あなたの望む夜明けは、どんな未来でしょう?と。
この楽しい学び舎で、わたしたちが最初に見つけ出した、心の琴線に触れたことだから。
シンキングタイムは短く、答えはすぐに出た。王族少年がいるからってところが大きいと思うんだけど、昨日の2回目と同じ流れ。王さまに全てを任せようというもの。
話が進んでほっとしたところだった。
銀髪の少年が不思議そうに首を傾げた。
「学園祭でこの劇の流れは凄いな。だって、これ領主が平民の反乱を防げなかったって話だよね? 過去にそんなことがあってそれを真似た劇? それを参加させた客に判断を委ねるの? ユオブリアは面白い国だね。こうすればよかったのにって劇で国に訴えるの? それが狙い?」
どこの国の子だか知らないけど、いろんな方面から考えられる子だね。
絶対に外国出身で、身分は高い。ユオブリア語、流暢だし、完璧だけど。
「お前、ユオブリアをバカにする気か?」
王族少年が銀髪少年につかみ掛かる。
「俺の言ったことを正しく聞いてくれ。外部が見にくる学園祭で、堂々とこのテーマを扱う平民のクラスに尋ねているだけだ。……そういえばD組は平民の中に貴族も混じっていると聞いた。シュタイン領であったことなのかな?」
それが言いたかったのか? ターゲットはわたしだね。
さっき助けてくれたのかと思ったけど、あれが弾みだったに違いない。
王族の子は幼いからか、王族としてあろうという気持ちはあるけれど、まだ素直だ。強い調子で言われると、言葉が繋げなくなるみたい。黙ってしまった。
「あら、勇者さまたちって無粋なのね。物事ってのは途中で口を挟んだら、真相まで行きつけないわよ?」
わたしは煽る。
「真相? この流れで何でこのテーマを選んだのかまで本当にわかるのか? それに我々がとんでもないことを言い出したらどうするんだ? 劇を無事終えられる自信があるのか?」
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ターゲットがあって、潰してやろうと思っていたなら、そんなセリフにはならないだろう。煙に巻くつもりか?とか言って話を聞きたくないってスタンスに持っていくなどして、劇の進行を滅茶苦茶にするはずだ。
でも、銀髪少年はちょっと違うのかもしれない。シュタインがターゲットなのはそうなのだろうけど、この劇の流れで、どう転んだとしても自分の知りたい結末はわからないだろうと思ったから、途中で尋ねたのだ。
実はわたしたちの間でも、物語の筋が学園祭に相応しくないんじゃないかという意見は出ていた。
ダンジョンで魔物を倒すシーンは絶対に入れたかった。みんなが楽しそうと確信し、入れたがったから。それでダンジョンに一緒に行ってもらうシチュエーションを考えて、アダムが持ってきてくれた史実を参考にしたのだ。ただ村人のやったことは犯罪が含まれている。それでモラルというか、学園祭、まさにあの少年が言ったように、外部の方が見にくる学園祭で。王族やお偉方の貴族もくるだろう学園祭で、発表する劇にはよろしくないのではないかと思いもした。
けれどわたしたちは、そこに裏のテーマをみつけた。あくまでも〝裏〟だから気付いてもらう必要はない。表の内容で楽しんでもらえたらなと思う。
でも、犯罪を含んでいて、それをどう捉えるかの判断を委ねることに首を傾げる人がいたら、わたしたちはわたしたちの思いを、裏のテーマを伝えたいと思っていた。
今までの上演で突っ込まれなかったので、そちらのシナリオは使わないだろうと思っていたんだけど。
「とんでもないことなんて言わない。俺たちは騎士の勇者さまたちを信じてる」
イシュメルが力強くいうと、子供たちみんなが頷く。
そう、あなたたちは騎士の勇者に立候補してくれたのだから。
劇ではあるけれど、魔物から子供を助けると思ってくれた心根を信じるよ。
だから劇は暴走しないし、ちゃんと終えることができる。
「そういうなら、こちらも求めてる答えがもらえるんだと信じてみよう。王さまに判断を委ねよう」
進んだ。物語が動き出す。この展開は2回目なのでスムーズだ。場面転換をして王さま登場。イシュメルはタジオ領に返し、村人たちには罰金の刑が言い渡される。さて、今回の勇者たちはわたしのお助けアイテムをどんな使い方するかな? そう思いながら問いかける。
「では、わたしからの宝を。どんな願い事もひとつだけ叶えて差し上げます」
守りの木かな?と思いながら言うと、銀髪少年が進み出た。
「どんな願い事も?」
「はい」
「妖精のあんたが欲しい」
あーーーーーー、ねぇーーーーーーーーーー。
いるよね。1回だけ魔法が使えるとしたら、どんな魔法を使う?って言うと、魔法使いになるっていう奴……わたしだ。
未来の猫型ロボットのアイテムがひとつだけもらえるとしたら何が欲しい?って言うと、四次元ポケットっていう奴……わたしだ!
「わたしがいたって、宝物はひとつ、願い事はひとつしか叶えられませんよ?」
銀髪は頷いた。
「他の方は? この勇者さまの願い事でいいんですか?」
みんな一歩下がる。
えーーーー。勝手に言い出したのかと思ったけど、さっきのシンキングタイムで決まったことなのかもしれない。
「欲しいとは具体的に何を指しますか?」
アダムのアナウンスが入る。
「そうだな、劇の後から学園祭が終わるまでの、妖精の時間が欲しい」
客席からきゃあきゃあと声があがる。
なにこれ、わたしこの後、いたぶられる流れ?
「妖精さん、願いを叶えますか?」
アダム、助けろよ。全然そんな気ないよね?
「当番が入っているので無理です」
「当番か。いいぞ、手伝ってやる」
え。
「妖精といえど、女の子ですから、一切触れないでくださいね。妖精さん、ということですので、願いを叶えてくださいね」
アダムの奴。
でも怒りを収め、にっこり笑う。早くここは出ていかないとね。劇を終えるために、やることがあるから。
わたしは魔法の杖を振って、願い事が叶う魔法を振りかける。では後ほどお会いしましょうと勇者に微笑む。
勇者たちに助けてくれてありがとうと言って退場。
幕の中に入ると、アダムがわたしにノートを突き出した。
シナリオの草案を書いていたものだ。
もう赤字が少し入っていた。
わたしは受け取って、今回の勇者さまの選んだ結末を擦り合わせ、急いで言葉を足していく。
最後のナレーションを書き換えるためだ。
書きあげてアダムに見せると、一読して時にはペンを走らせ、頷いてくれた。
急いでジニーに渡す。間に合った!
舞台では子供たちが「ありがとうございました!」と大声で声を合わせた。
一呼吸置いてから、ジニーができたばかりの台本を読みあげる。
「そうして、イシュメルはタジオ領へと赴き、一生懸命、学び、働き、やがて領主となりました。彼は大きくなってから、かつて過ごした村を訪ねました。けれどお節介な妖精があげた守りの木があったため、イシュメルは〝村〟をみつけることができませんでした。〝領主〟の考えを持ったイシュメルと村人たちは、もう道が違ってしまったのです。
かつての村人たちも、罪を償い、それぞれに幸せをつかみ暮らしました。でも、時々考えるのです。もしあの嵐で守りの木に雷が落ちなかったら、と。
貴族と平民では役割が違います。でも役割をまっとうすることは同じです。罪を犯してはいけないことも同じです。ただその同じことと違うことが、こんがらがってしまったのかというようなことが時には起こります。
参考にした史実も実際は犯罪を起こしてしまった平民側、導けなかった領主側も処分を受け、そのまま地図から消えていきました。
領主が驚くほどの税をあげること。それに意見する領民。話を聞いてもらうために大切なものを盾にしようとする……その真相は、すんなり想像できたことではないでしょうか? 史実にも、振り返ってみれば、似たようなことはいっぱいあります。ですから想像に難くなかったのではないでしょうか?
勇者さまより、この物語の主旨はこの場に相応しくないのではないかとご指摘がありました。私たちもそこは悩んだところでした。でも、そこに私たちは、D組だからこそ意味を持つと思って演じてきました。
悪いことは悪いことです。罪は償うのが道理です。役割が違うこともわかっています。でもわたしたちはここで友を得ました。身分の壁をなくした友が。いずれ道が違えども、わたしたちは願います。守りの木にお互いが弾かれなくあるように。役割も何もかも違っても、友ということだけはいつまでも変わらないように。
勇者さまたちや、過去に同じ思いをした勇者さまたちに贈ってもらった〝夜明け〟をわたしたちも繋いでいけるように……」
余韻を残してから、ジニーの本当のラストナレーション。
「これにて『夜明けの勇者』は終了です。ご参加下さいました勇者さまには、一同御礼申し上げます。皆さま、ご観賞ありがとうございました。心より感謝いたします」
シーンとした。パチ、パチッとゆっくりした拍手が早くなっていき、重なり、講堂中に拍手が響いた。
わたしたちは学園にいることがとても楽しい。
でもいつか、この楽しい時は終わってしまう。卒業したらみんな道は違い、会えることも少なくなる。
道は違うし、暮らしている場所はバラバラだ。でも、わたしたちは〝友〟でいたい。いつかまた会えた時、同じことで一緒に笑い転げることができる友でありたい。
史実は、立場の違う人たちがある期間一緒に楽しく過ごしていたが、ある出来事により映し出されたシルエットに思い知らされる。立場がどこまでも違うのだと。……そう解釈している。
立場が違っても友でいられるか、それがわたしたちが投げかけてきた裏のテーマだ。なにをどう選ぶか、それは人それぞれに違って、それに正解も不正解もないと思っている。勇者さまたちがそれぞれ出した結論のように。
けれど、D組の総意は〝友〟でありたい、だ。どんな結論を出したり、道を選んだり、遠回りをしてもいい。でも、やっぱり友でありたい、と。
それは難しいかもしれない。幼いからわたしたちがそう思うだけで、大人になったら違う考えになるかもしれない。
でも、今、わたしたちが見つけた答えはそれだったのだ。
だから、みんなに問いかける。あなたはなにを大切にしますか?と。
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