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10章 準備が大切、何事も
第425話 囚われのお姫さま③措置
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「アダムがもふさまに話したの?」
会話ができるって知ってるの?
『聖樹さまの遣い、リディアを護る者に〝話した〟ようだ』
「なんて?」
『何が起こったかの推測を』
え?
『それを聞いてもリディアはじっとしていられないだろうし、何もしないでいるのは辛いだろうから、眠っているのがいいと思ったのだと』
わたしは窓を見た。いや、窓を見なくても明るいもん、もう夜が開けてずいぶんたつだろう。わたし一晩は眠っていたってこと?
えーーーーー、授業をサボるだけでなく、勝手に外泊しちゃったよ。誰にも告げずいなくなり、わたしも行方不明と連絡がいって家族も心配しているはず。
わたしの心配したことがわかったのか、もふさまは言った。
『一晩、リディアは眠っていた。あやつから、領主や信じられる学園の教師にそのことを伝達魔法で知らせてある』
ありがたいんだか、そうじゃないんだか、もやもやする。
「アダムの推測は何だったの? 兄さまは無事?」
『フランツには危害が加えられることはない』
言い切り、断言できるの?
「〝には〟って、メロディー嬢は無事じゃないの?」
『そうならないよう措置をとったようだ』
???????
何なの?
何が起こってるの?
ノックがあって、さっきの女性が入ってきた。トレーにはお茶と冷たそうなお水が乗っている。
「お腹が空かれたのではありませんか?」
と言いながらトレーを寄せてきた。
「あの、結構です。着替えもひとりでできますので、すみませんがひとりにしてください」
ふふふと笑われて、子供っぽい怒っているアピールを見透かされたようで顔がカッと熱くなった。
「あ、すみません。坊ちゃんが言った通りだったので。お嬢さまは起きられたらとてもお怒りになって、飲み物も食事も着替えの手伝いも断るだろうって。それでも絶対に目を離さないよう言われております。この宿には魔法がふんだんに使われていて、お嬢さまが飛び出したらすぐにわかるようになっています。お嬢さまをお守りするためです。ご承知ください」
全部お見通しって感じのところがすっごい腹たつんだけど。
それに何よ、魔力がふんだんに使われているって、わたしが逃げられないようにってわけ? 話が逆転しているんだけど!
テーブルの上に飲み物を置いている。そしてどこからか手にした服を持ってくる。
「こちらにお着替えください。もし嫌がったら、坊ちゃんに夜着で会うのでもいいのか?と尋ねるように言われております」
くーーーー、ムカつく!
「わかりました。でもひとりで着替えられるので大丈夫です。逃げたり暴れたりしませんので、ひとりにしていただけませんか?」
もふさまから話をもっと聞きたい。
「食事を召し上がってからでしたら、ひとりにして差し上げます。着替えていてください。その間にお食事を用意しますから」
「食事は入りません」
アダムが用意する物はなるべく拒否したい。
すると女性はまたふふふと笑った。
「お嬢さまのほっぺが萎んだままだと、私が怒られてしまいます。私のためにお召し上がりくださいませ」
そう言い残して出ていった。
ほっぺのことでなんか言ってるのか、あいつは!
絶対一発殴ってやる。
きゅるるる。お腹が切ない音をたてた。そりゃそうだ。昨日の朝ごはんを最後に食事をとってないんだもの。
お腹をさすってから、ベッドから降りて、服を着替える。
紺を基調とした大人しめのワンピースだ。セーラーカラーの大きな白い襟はかわいい。
背中のボタンタイプだったので、ちょっと苦労したけど、どうにか自分で着替え、終わったところにまたノックの音がした。
「お嬢さま、食事をお持ちしました。入ってもよろしいですか?」
どうぞと促す。
トレーにのったお皿から湯気が立っている。
パンパンに膨れ上がったソーセージ。炒り卵。ふわふわパン。ポタージュ。サラダ。果物。それと色からしてオレンジジュースかな?
お腹がまた鳴った。
「さぁ、こちらに」
テーブルにセッティングしてくれたので、そこに座る。バッグを呼び出してもふさま用のお皿を出して分けようとするともふさまが言った。
『我は朝いちばんにもらったから大丈夫だ。それはリディアがひとりで食べろ』
「お嬢さまがいつ起きられるかわからなかったので、もふさまには先に召し上がっていただきました」
わたしはお礼を言った。
そして朝ごはんをいただく。スープはお芋のポタージュだ。優しい甘さが体中に染み渡っていく。今にも弾けそうなソーセージを一口いただいて、ふわふわパンと炒り卵を一緒に頬張る。おいしい。シャキシャキのサラダは塩のみの味つけだけど、ソーセージがパンチのある味だけに、こっちが薄味でも、もぐもぐいける。
ああ、食べ終わっちゃった。果物をいただき、そして最後にオレンジジュースを味わう。
ひと心地ついた。
「ご馳走さまでした」
「食べられない物がなくてよかったですわ。それでは、坊ちゃんがいらっしゃるまで私は外におりますので、ご用がおありの時はお呼びください」
そう小さなベルを渡された。
わたしはお礼を言った。
「もふさま、詳しく!」
『気持ちも落ち着いたようだな。我はあやつから話を聞いた。あいつが推測したことをな。それで我もリディアが眠って一晩過ごすのが一番いいように思えたのだ。だから起こさなかった』
「推測って?」
『奴が来たときに、説明するだろう。その時に〝知って〟いていいのか? 我と話せるのがバレるぞ?』
「もふさまはお遣いさまとしてアダムと話したんでしょ?」
アダムは〝お遣いさま〟がその気になれば会話が可能と思っているんだと思った。
『いいや、一方的にあいつが話したのみ。我が納得いかないとなれば行動に出ると踏んでいたようだ』
ああ、上級生に絡まれた時、もふさまは追い立てまくってくれたもんね。もふさまが悪いことと感じればあのように制裁されると思っていたってことか。それで事情を話し、もふさまの出方を見た、と。
「わかった。もふさまから聞いたとわかっちゃうとまずいってことだね。飲み込めた。でも気になるから、教えて」
『あやつは犯人の目的がわかる気がすると言った』
「犯人の目的?」
『それはフランツを追い詰めること』
?
会話ができるって知ってるの?
『聖樹さまの遣い、リディアを護る者に〝話した〟ようだ』
「なんて?」
『何が起こったかの推測を』
え?
『それを聞いてもリディアはじっとしていられないだろうし、何もしないでいるのは辛いだろうから、眠っているのがいいと思ったのだと』
わたしは窓を見た。いや、窓を見なくても明るいもん、もう夜が開けてずいぶんたつだろう。わたし一晩は眠っていたってこと?
えーーーーー、授業をサボるだけでなく、勝手に外泊しちゃったよ。誰にも告げずいなくなり、わたしも行方不明と連絡がいって家族も心配しているはず。
わたしの心配したことがわかったのか、もふさまは言った。
『一晩、リディアは眠っていた。あやつから、領主や信じられる学園の教師にそのことを伝達魔法で知らせてある』
ありがたいんだか、そうじゃないんだか、もやもやする。
「アダムの推測は何だったの? 兄さまは無事?」
『フランツには危害が加えられることはない』
言い切り、断言できるの?
「〝には〟って、メロディー嬢は無事じゃないの?」
『そうならないよう措置をとったようだ』
???????
何なの?
何が起こってるの?
ノックがあって、さっきの女性が入ってきた。トレーにはお茶と冷たそうなお水が乗っている。
「お腹が空かれたのではありませんか?」
と言いながらトレーを寄せてきた。
「あの、結構です。着替えもひとりでできますので、すみませんがひとりにしてください」
ふふふと笑われて、子供っぽい怒っているアピールを見透かされたようで顔がカッと熱くなった。
「あ、すみません。坊ちゃんが言った通りだったので。お嬢さまは起きられたらとてもお怒りになって、飲み物も食事も着替えの手伝いも断るだろうって。それでも絶対に目を離さないよう言われております。この宿には魔法がふんだんに使われていて、お嬢さまが飛び出したらすぐにわかるようになっています。お嬢さまをお守りするためです。ご承知ください」
全部お見通しって感じのところがすっごい腹たつんだけど。
それに何よ、魔力がふんだんに使われているって、わたしが逃げられないようにってわけ? 話が逆転しているんだけど!
テーブルの上に飲み物を置いている。そしてどこからか手にした服を持ってくる。
「こちらにお着替えください。もし嫌がったら、坊ちゃんに夜着で会うのでもいいのか?と尋ねるように言われております」
くーーーー、ムカつく!
「わかりました。でもひとりで着替えられるので大丈夫です。逃げたり暴れたりしませんので、ひとりにしていただけませんか?」
もふさまから話をもっと聞きたい。
「食事を召し上がってからでしたら、ひとりにして差し上げます。着替えていてください。その間にお食事を用意しますから」
「食事は入りません」
アダムが用意する物はなるべく拒否したい。
すると女性はまたふふふと笑った。
「お嬢さまのほっぺが萎んだままだと、私が怒られてしまいます。私のためにお召し上がりくださいませ」
そう言い残して出ていった。
ほっぺのことでなんか言ってるのか、あいつは!
絶対一発殴ってやる。
きゅるるる。お腹が切ない音をたてた。そりゃそうだ。昨日の朝ごはんを最後に食事をとってないんだもの。
お腹をさすってから、ベッドから降りて、服を着替える。
紺を基調とした大人しめのワンピースだ。セーラーカラーの大きな白い襟はかわいい。
背中のボタンタイプだったので、ちょっと苦労したけど、どうにか自分で着替え、終わったところにまたノックの音がした。
「お嬢さま、食事をお持ちしました。入ってもよろしいですか?」
どうぞと促す。
トレーにのったお皿から湯気が立っている。
パンパンに膨れ上がったソーセージ。炒り卵。ふわふわパン。ポタージュ。サラダ。果物。それと色からしてオレンジジュースかな?
お腹がまた鳴った。
「さぁ、こちらに」
テーブルにセッティングしてくれたので、そこに座る。バッグを呼び出してもふさま用のお皿を出して分けようとするともふさまが言った。
『我は朝いちばんにもらったから大丈夫だ。それはリディアがひとりで食べろ』
「お嬢さまがいつ起きられるかわからなかったので、もふさまには先に召し上がっていただきました」
わたしはお礼を言った。
そして朝ごはんをいただく。スープはお芋のポタージュだ。優しい甘さが体中に染み渡っていく。今にも弾けそうなソーセージを一口いただいて、ふわふわパンと炒り卵を一緒に頬張る。おいしい。シャキシャキのサラダは塩のみの味つけだけど、ソーセージがパンチのある味だけに、こっちが薄味でも、もぐもぐいける。
ああ、食べ終わっちゃった。果物をいただき、そして最後にオレンジジュースを味わう。
ひと心地ついた。
「ご馳走さまでした」
「食べられない物がなくてよかったですわ。それでは、坊ちゃんがいらっしゃるまで私は外におりますので、ご用がおありの時はお呼びください」
そう小さなベルを渡された。
わたしはお礼を言った。
「もふさま、詳しく!」
『気持ちも落ち着いたようだな。我はあやつから話を聞いた。あいつが推測したことをな。それで我もリディアが眠って一晩過ごすのが一番いいように思えたのだ。だから起こさなかった』
「推測って?」
『奴が来たときに、説明するだろう。その時に〝知って〟いていいのか? 我と話せるのがバレるぞ?』
「もふさまはお遣いさまとしてアダムと話したんでしょ?」
アダムは〝お遣いさま〟がその気になれば会話が可能と思っているんだと思った。
『いいや、一方的にあいつが話したのみ。我が納得いかないとなれば行動に出ると踏んでいたようだ』
ああ、上級生に絡まれた時、もふさまは追い立てまくってくれたもんね。もふさまが悪いことと感じればあのように制裁されると思っていたってことか。それで事情を話し、もふさまの出方を見た、と。
「わかった。もふさまから聞いたとわかっちゃうとまずいってことだね。飲み込めた。でも気になるから、教えて」
『あやつは犯人の目的がわかる気がすると言った』
「犯人の目的?」
『それはフランツを追い詰めること』
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