プラス的 異世界の過ごし方

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10章 準備が大切、何事も

第417話 学園祭の意図(前編)

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 放課後、クラブを休んだ。

 今日は学園祭のクラスの出し物である劇の、初の練習日だ。
 物語の台本は渡してある。休み時間などを利用して、キャスティングも決めた。
 ほとんどの役がダブルキャスト。上演数が多いので交互にこなしていく予定だ。

 劇に出演しない時は裏方にまわったりもする。ほとんどの子が表舞台と裏舞台のどちらも経験することになる。音響と舞台効果を担ってくれる、アマディスとアイデラは裏舞台は固定だけど。
 あ、アイデラは劇にも出演する。出演しながらも魔法は使えるとのことだ。
 立候補でイシュメルと一緒に王さまと王妃さま役をやりたがったが、イシュメルが拒否した。仕方なくオスカーが王さま役となった。アイデラと同等にやりあえる男子はイシュメル、オスカー、アダムぐらいだからだ。

 アダムはいつ体調が悪くなるかわからないから劇には出ないと言った。そして裏方を勝ち取った。
 わたしも裏方が良かったけど、ダンジョンのお助け妖精をやることになった。理由は一番チビだからだ。夏休み前まではダリアの方が小さかった。夏休みでわたしも背が伸びたのにダリアはもっと伸びていて、抜かされてしまった。クラスで一番背が低くなってしまった。そんなわけで、チビのわたしとダリアは妖精役になった。ダンジョンに入ってから手柄を立てさせ褒美をもらうまでわりと長い出演なので、一番めんどい役だと思っていた。はぁ。それなのにそれも背が低いという理由でやる羽目になるなんて!
 ちっ。

 机を後ろに下げスペースを作り、台本通り読み合わせるか?となったが、体験型の劇だ。体験者側がいないとやりにくいことに気づいた。
 練習といってもどうやって練習すれば?と疑問が持ち上がった時、ラエリンが言い出した。薄い水色の髪を耳にかける。首を傾げるとサラサラの髪がこぼれた。それに目を奪われる。

「あのさ、目標を決めない?」

「目標?」

 学園祭実行委員のスコットにラエリンは頷く。

「さっき、魔法戦の授業で試合をしたんだけど……」

 ラエリンは魔法戦の試合のことを話して、戦略や指針がある方がきっとうまくいくと力説した。

「指針か……」

「劇に指針ってなんだよ? 無事に終えられればよくない?」

 チャドが首を傾げた。お調子者なところがある彼は、どんな発言をしている時も笑っているように見える。

「……無事に終えるだと、ちょっと違う気がする」

 ジニーが静かに言った。本が好きでいつも物静かだからか、たまにする発言が重たく聞こえる。

「うん、それだとA組の作戦と同じで。なんて言っていいかわからないけど。劇が成功するようにやるのは当然だけど、その先に何かある方がいいっていうか。あー何言ってるんだろう。これじゃぁ、わからないよね?」

 ライラが暗めの赤毛を抱えている。

「劇という出し物限定ではなく、私たち全員の目標ってことよね? さっきの魔法戦で言えば〝勝つこと〟だった」

 ジョセフィンが言葉を足して、ライラの肩を叩く。ライラが頷いた。

「そう、それ! もっと大きな目標がある方が、それを目指す方がいいと思うの」

「その大きな目標ってなに?」

 チャドがピンポイントで尋ねると静けさが舞い降りた。


 
「……けどさ、D組だもん。人が見にきてくれるか、わからないよね」

 おどおどしながらのベンの一言にさらにみんな撃沈する。

「そうだな、誰も来てくれなかったら……」

 リンジーが悲壮な声をあげた。

「来てくれなかったら、引っ張ってくればいいのよ」

 アイデラが無茶なことを言っている。
 ああ、脱線だ。
 
「ちょっと待って。人が見に来てくれるかは、また別問題だわ。今は学園祭でクラスの出し物の劇を私たちがどう思ってやるのかを考えましょ」

 もうひとりの学園祭実行委員のレニータが話を戻した。

「劇をどう思うって……クラスで何か出し物をするのが決まりだからでしょ?」

 マリンが口を尖らせる。

「クラブでの学園祭参加は、日頃の成果を見てもらうって意味があるね……けど、クラスの出し物ってなんだろう? クラスのも日頃の成果?」

 大きな体を揺らして、リキが腕を組んだ。寄りかかっていた後ろに寄せた机がギシッと音をたてる。

「そもそも学園祭って何なんだよ? 先輩たちはクラブ費用を集めるって盛り上がっているけど」

 文化委員のヒックが頭を掻いた。
 そーなの?と思いつつ、寮の出し物で寄附金をゲットするつもりなので、そういうものかもと納得する。

「学園祭ってお祭りでしょ? 日頃、頑張って学んでいるから、この日は羽目を外して楽しんでいい、ご褒美のお祭り!」

 クラリベルが自信を持っていう。
 まあ、学園祭の日は授業ないもんね。お休みというご褒美もある。

「家族が来てくれて会える日でもある、褒美だな」

「毎年大盛況だから、見てみたいって父ちゃんが言ってた」

 メルビンが家族のことを持ち出せば、ローリンも嬉しそうに頷いた。
 あ、そっか。わたしの場合、兄妹は学園に通っているから会えるし、週末も家に帰っている。さらにハウスさんのスキルのおかげで、領地にいる父さまたちにも会えたりしている。だからあまり離れて暮らしている意識はない。けれどみんなは違うもんね。

「うーーん、やっぱり日頃俺たちがどうしているかを見せる場なんじゃん? 馴染んでいるかとか、どう過ごしているかとか」

 ニコラスがみんなを見渡して言った。
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