プラス的 異世界の過ごし方

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10章 準備が大切、何事も

第396話 学園の見解

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 帰りのホームルームが終わり、西棟にある屋台食堂でお昼ご飯を食べた。
 お遣いさまへのスペシャルプレートは味の濃い肉の盛り合わせだった。もふさまはハフハフしながらおいしそうに食べていた。
 わたしも久しぶりに串焼きの定食を食べた。脂が滴るこのお肉の絵面も食欲をそそる。ちょっと脂が多くてしばらく胃のあたりがもったりするけれど、定期的に食べたくなるんだよね。
 みんなの楽しかった出来事を聞きながらランチタイムを過ごした。わたしも一緒に寮へ帰りたかったけれど、先生に呼ばれているので、〝後でね〟と言いあい別れた。

「ヒンデルマン先生」

 近くで呼びかけると、先生は顔をあげる。

「ああ、シュタイン来たか」

「はい。先生、何でしょう?」

「まあ、座れ」

 寄せてくれた椅子に腰掛ける。

「もう知っているとは思うが、学園から、フランツ・シュタイン・ランディラカに協力を求め、園内でメロディー公爵令嬢の護衛を受け持ってもらうことになった。シュタインはランディラカの婚約者だ。申し訳ないな」

「……生徒ではなく正式な護衛を雇うことはできないのですか?」

「……王族以外にそれは認められないんだ」

 その理由はいくつかあるという。学園は聖樹さまのテリトリーなので守りの対象をいたずらに増やしたくないこと。護衛で学園に入れるとなると、そこに違う目的の者が紛れ込む危険性もある。そしてひとりにそれを許すと、財政を見せびらかすためか、はたまた重要人物アピールなのか、家門マウントが起こることが予想され、下手をすると生徒数より護衛の方が多いという事態が起こりかねないと懸念しているようだ。……それは〝理解〟できるけれど。

「でもわたし、もしそれでランディラカさまが傷ついたら、学園の判断を許せないと思います」

 前髪の隙間から見える青い瞳を見ていうと、先生は少し息を飲む。

「そうだな。本当にそうだよな……。特例措置にして護衛をつけれられるよう動いてみる。公爵家が生徒の護衛を望んでいるから難しいかもしれないが、もう一度話し合ってみよう」

 メロディー家が言い出したの? 生徒の護衛って? 狙われていて、生徒の〝護衛〟で、それで本当に安心できるわけ? やっぱり兄さまを引きずり込みたいがためにそう言い出したんじゃないかって気がしてしまう。

「休みの間、お遣いさまが現れたことはあったか?」

 いいえ、と言いかけて、口をつぐむ。わたしは膝に乗ってきたもふさまの頭を撫でた。

「実は、家のことで馬車が襲撃されまして、その時守っていただきました」

 先生の口元が微妙な動きを見せた。

「もしかして、学園以外でお遣いさまが現れたら不味いとかですか?」

「あ、いや、それによりお前は守られたのだろう?」

 わたしはうんうん頷く。

「それならよかったじゃないか。シュタインが無事でよかった。聖樹さまも安心されたことだろう。先生はシュタインが危険な目に遭ったと聞いて驚いたんだ」

 あー、そっか。無事だったし、今までも常に何かしらあったので別段気にかからなくなっていた。
 先生に尋ねられるままに話していて、いつの間にか、クレソン商会のことまで話していた。

「そんな恐ろしい目に遭ったのか……」

 言葉をなくしている。〝恐ろしい目〟と言われ、温度差を感じる。
 確かにケインの足を見た時や家族が血を流しているところを見た時は取り乱したが、光魔法で治すことができたし、そこまで恐ろしかったとは記憶されていなかった。今までもわりと酷い目にあったことがあるからか、ボーダーラインが低くなっているのかもしれない。

「本当に無事でよかった」

 そう笑ってくれたのだけど、その時顔をあげいつも鬱陶しくかかっている前髪が後ろに払われたので、先生の顔をしっかり見ることができた。先生、マジでイケメン!

「それから、冬に正式に決まった時にご家族に連絡するが、来年度ガゴチ国の将軍のご子息が留学してくる可能性が高い。聖女候補誘拐の黒幕はガゴチじゃないかと思われるが、恐らくはっきりした証拠が出てこないだろう。そしてどんな目的かはわからないが、その留学を学園は受け入れることになる。
 実際に被害にあったカートライトとシュタインには先に伝えておく。留学は本当にただ学びにくるだけかもしれないし、他に目的があるかもしれない。けれど、学園とすると留学希望者はしっかりした理由がないと断ることはできない。試験は受けてもらうが、留学を希望し推薦を取れるくらいだから試験も問題ないだろう。
 学園は平等を謳うゆえに、もちろんお前たちに気を配るつもりではあるが……。魔法士長に学園の状態を見てもらった。聖樹さまからも申告があったが、今までより強固な護りになっている。けれど全てにおいて絶対ということはない。危険があるかもしれない……ご家族とよく相談するように」

 ユオブリアの学園は教育界において世界のモデルケースにするべきと言われるほど良いものとされ、注目されているらしい。ユオブリアといえば?の質問に〝学園〟が挙げられるほどだ。学びの質が高く、平等で、そして開けたものであり、理想的な教育機関であると名が通っている。何年もの間、海外から視察をしたいと申し出があったそうだし。皮肉なことだが、それゆえに何かしそうと疑わしいだけでは留学拒否できないらしい。

「……その相談とは、学園を辞めるかどうかについて、ですか?」

 先生は一瞬辛そうな顔をして、それからすぐにいつもの気怠そうなどうにでも取れる表情になった。

「何があるかわからない。学園側は責任を負えない。ただ注意を呼びかけるしかできない」

「……父に告げるんですか?」

 先生は頷いた。
 何それ、なんかそんなこと父さまに言われたら、退園まっしぐらな気がするんだけど。

「アイリスさまは? アイリスさまはお辞めになるんですか?」

「カートライトのご家族は退園を望んでいるようだ。本人は学園に通いたいと言っている」

 わたしはほっと息をついた。
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