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9章 夏休みとシアター
第393話 コンサートとメッセージ(中編)
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「リディーの想い人は?」
「そりゃ兄さまだよ」
母さまのいかっていた肩が落ち着いて、頬に置かれた手が取れる。
そうして視界が広くなる。
皆さま、いらしたんだった!!!!!!!!!!!
皆さまいるなかで、兄さまを好きだと公言してしまった!
小っ恥ずかしい!!!!!!!!!!!!!!!
「あら、初々しい」
「いいですわねぇ」
「気持ちが若くなるようですわぁ」
「やっぱり、姉さま、おじさまと進展あったのね? 怪しいと思ってたのよ!」
とエリンが抱きついてくる。
「まぁ、進展、ですのぉ? エリン、怪しいってどんなふうに怪しかったんです?」
「おじさまはずっと前から姉さまに過保護だし独占欲が強かったけど、今まではそれを隠そうとしているふうだったの。それがこの頃、ことあるごとに、姉さまを野放しにするのは危険だから閉じ込めておきたいっていうのよ」
「あらあらあらあらあらあらあらあら」
「フランツはリディアのことがかわいくて、そして心配で堪らないのね」
「いえ、洒落になってないです」
「どういうこと?」
わたしは兄さまが閉じ込めると言ってるのは半分本気だと思っていることをぶちまけていた。そして父さまもこの頃そういうようなことを言い出しているのだと。
「まぁ!」
驚いたように皆さまは目を合わせている。
「兄さまは特に、なんでもひとりでやろうとするから」
家族会議の時少しは打ち明けてくれるようにはなっているけれど、blackへの細かい指示のことは言わないし。
「そうやってカッコつけて(事実かっこいいけど)、わたしを置いてけぼりにしようとするから嫌なんです」
「……まるで、今の歌の歌詞のようですわね」
キートン夫人が言うと、みんななんとなく黙り込んだ。
そうだね、あの物語は、兄さまがわたしには知らさないでなんでもやってしまうその不安を閉じ込めてできたものなのかもしれない。
「そうねぇ、その思いをお歌で伝えるといいかもしれないわね」
おばあさまが言った。
「……コンサート」
キートン夫人が呟かれる。
皆さまが顔を合わせる。?
「いくつかの楽曲を披露しましょうか。そのお歌を紛れ込ませましょうね」
え? 何を言ってるの?
「人前で楽器を奏でるなんていつぶりかしら?」
「宿のホールを借りましょう。誰でも聴きにこられるように」
「前に聞いた前奏曲でしたっけ? あれも素敵ですわ。リディア、もう一度弾いてくれる?」
あれよあれよという間に話は盛り上がり、なぜか3日後、カトレアの宿のホールを借りて、音楽コンサートをすることになっていた。
わたしはハープで参加することが決まり、弾き語りもありだ。
な、なんでーーーーーー。
人前でやるなんてできないと言ったんだけど、せいぜいくるのは親戚ぐらいよと宥められ、エリンはクジャク夫人とピアノの連弾をすることになり張り切り出した。おばあさまとライラックさまはフルートに似た楽器を演奏。キートン夫人はチェロ? 弦楽器だ。母さまは鉄琴を借りることにしたようだ。
納得してはいなかったが、音が合わさると深みが出て、なんだかとても素敵だった。もふさまの尻尾が拍子をとるように左右にパタンパタンと床を打つ。
皆さま楽譜もないのに耳コピーでクリアだ。
わたしの出した主音に、皆さまがアレンジを加えながら新しい曲になっていく。
気づいた時には数時間が経っていた。
「すっかり夢中になってしまいましたわ」
「音楽も、やはりいいわね」
「ええ。ここ何年も川底の石のようにただ流れてくる水にさらされているだけでしたのに。そう、世の中にはこんなに夢中になれたり、楽しいこともいっぱいありましたのね」
皆さまの頬に赤みがさしていた。楽しんでいるのは本当みたいだ。
わたしも人前の演奏は緊張するし、恥ずかしいけれど、音を合わせるのは楽しいし、皆さまが嬉しそうなのが嬉しい。
見に来るのも親戚だしね。と、わたしたちは2日間しっかりと練習をした。
おばさまたちは、そのまま夜会に行けるようなドレス。わたしとエリンは動きを妨げない、シンプルなワンピースにした。
会場を用意してくれたのは、男性陣の皆さまだ。そうして時間になり、席につき、ギャラリーの多さに驚いた。
親戚ぐらいって言ってたのに。
椅子も用意されていたが、それだと人が入りきらないからだろう、立ち見も多い。
夕方、仕事帰りに立ち寄ってくれた感じ。前の方にはミニーやカトレア、マールにヨムにチェリにと幼馴染たちが床に座って陣取っている。
わたしと目があうと、頑張ってと唇が動く。わたしは頷く。
ざわざわとする中、クジャクさまがみんなを見渡して、鍵盤に手をおいた。
ド、ドド、ド、ドド、ド、ドド、ド、ドド、ド、ドドとドの音で調子をとる。
リズムを取るごとに、ざわざわが小さくなっていく。
静かになったタイミングで、度肝を抜かれる早送りしたような曲。
「あ、星の歌!」
子供が声をあげる。その子の隣にいた多分その子のお母さんは焦ったように口を押さえたけど、エリンがピンポーンと聞こえる音をピアノの鍵盤を叩いて鳴らし、腕で大きなマルを作った。前世と同じ正解音に聞こえる。
休息日学校。休息日に教会では子供たちを対象とし神の教えを説いている。でもそれはおまけみたいなもので、文字や計算を教えてくれたり、昼にはパンを振る舞ってくれるので、それを目当てに通う子も多い。その学校ではクイズみたいなものが流行っていて、正解だとピンポンと口にしたり、マルを作って表し、不正解はブブーという音とバツ印で表すらしい。
クジャクさまとエリンてば、いつの間にこんなレクリエーションを考えていたのかしら。っていうか、人が来るのを見越していたのね。
ド、ドド、ド、ドド、ド、ドド、ド、ドド、ド、ドド。
次はなんの曲だろうと皆が耳を澄ませる。
調子をとった後に弾かれたのは今度はスロー。もどかしすぎる!
「ハランドの英雄!」
誰かが声をあげたが、エリンはブブーとピアノで鳴らし、大きなバッテンを手で作った。
「あ、黄色のラーゼ」
女性の声に今度はピンポン、ピンポン、ピンポーンと大正解を示した。
「そりゃ兄さまだよ」
母さまのいかっていた肩が落ち着いて、頬に置かれた手が取れる。
そうして視界が広くなる。
皆さま、いらしたんだった!!!!!!!!!!!
皆さまいるなかで、兄さまを好きだと公言してしまった!
小っ恥ずかしい!!!!!!!!!!!!!!!
「あら、初々しい」
「いいですわねぇ」
「気持ちが若くなるようですわぁ」
「やっぱり、姉さま、おじさまと進展あったのね? 怪しいと思ってたのよ!」
とエリンが抱きついてくる。
「まぁ、進展、ですのぉ? エリン、怪しいってどんなふうに怪しかったんです?」
「おじさまはずっと前から姉さまに過保護だし独占欲が強かったけど、今まではそれを隠そうとしているふうだったの。それがこの頃、ことあるごとに、姉さまを野放しにするのは危険だから閉じ込めておきたいっていうのよ」
「あらあらあらあらあらあらあらあら」
「フランツはリディアのことがかわいくて、そして心配で堪らないのね」
「いえ、洒落になってないです」
「どういうこと?」
わたしは兄さまが閉じ込めると言ってるのは半分本気だと思っていることをぶちまけていた。そして父さまもこの頃そういうようなことを言い出しているのだと。
「まぁ!」
驚いたように皆さまは目を合わせている。
「兄さまは特に、なんでもひとりでやろうとするから」
家族会議の時少しは打ち明けてくれるようにはなっているけれど、blackへの細かい指示のことは言わないし。
「そうやってカッコつけて(事実かっこいいけど)、わたしを置いてけぼりにしようとするから嫌なんです」
「……まるで、今の歌の歌詞のようですわね」
キートン夫人が言うと、みんななんとなく黙り込んだ。
そうだね、あの物語は、兄さまがわたしには知らさないでなんでもやってしまうその不安を閉じ込めてできたものなのかもしれない。
「そうねぇ、その思いをお歌で伝えるといいかもしれないわね」
おばあさまが言った。
「……コンサート」
キートン夫人が呟かれる。
皆さまが顔を合わせる。?
「いくつかの楽曲を披露しましょうか。そのお歌を紛れ込ませましょうね」
え? 何を言ってるの?
「人前で楽器を奏でるなんていつぶりかしら?」
「宿のホールを借りましょう。誰でも聴きにこられるように」
「前に聞いた前奏曲でしたっけ? あれも素敵ですわ。リディア、もう一度弾いてくれる?」
あれよあれよという間に話は盛り上がり、なぜか3日後、カトレアの宿のホールを借りて、音楽コンサートをすることになっていた。
わたしはハープで参加することが決まり、弾き語りもありだ。
な、なんでーーーーーー。
人前でやるなんてできないと言ったんだけど、せいぜいくるのは親戚ぐらいよと宥められ、エリンはクジャク夫人とピアノの連弾をすることになり張り切り出した。おばあさまとライラックさまはフルートに似た楽器を演奏。キートン夫人はチェロ? 弦楽器だ。母さまは鉄琴を借りることにしたようだ。
納得してはいなかったが、音が合わさると深みが出て、なんだかとても素敵だった。もふさまの尻尾が拍子をとるように左右にパタンパタンと床を打つ。
皆さま楽譜もないのに耳コピーでクリアだ。
わたしの出した主音に、皆さまがアレンジを加えながら新しい曲になっていく。
気づいた時には数時間が経っていた。
「すっかり夢中になってしまいましたわ」
「音楽も、やはりいいわね」
「ええ。ここ何年も川底の石のようにただ流れてくる水にさらされているだけでしたのに。そう、世の中にはこんなに夢中になれたり、楽しいこともいっぱいありましたのね」
皆さまの頬に赤みがさしていた。楽しんでいるのは本当みたいだ。
わたしも人前の演奏は緊張するし、恥ずかしいけれど、音を合わせるのは楽しいし、皆さまが嬉しそうなのが嬉しい。
見に来るのも親戚だしね。と、わたしたちは2日間しっかりと練習をした。
おばさまたちは、そのまま夜会に行けるようなドレス。わたしとエリンは動きを妨げない、シンプルなワンピースにした。
会場を用意してくれたのは、男性陣の皆さまだ。そうして時間になり、席につき、ギャラリーの多さに驚いた。
親戚ぐらいって言ってたのに。
椅子も用意されていたが、それだと人が入りきらないからだろう、立ち見も多い。
夕方、仕事帰りに立ち寄ってくれた感じ。前の方にはミニーやカトレア、マールにヨムにチェリにと幼馴染たちが床に座って陣取っている。
わたしと目があうと、頑張ってと唇が動く。わたしは頷く。
ざわざわとする中、クジャクさまがみんなを見渡して、鍵盤に手をおいた。
ド、ドド、ド、ドド、ド、ドド、ド、ドド、ド、ドドとドの音で調子をとる。
リズムを取るごとに、ざわざわが小さくなっていく。
静かになったタイミングで、度肝を抜かれる早送りしたような曲。
「あ、星の歌!」
子供が声をあげる。その子の隣にいた多分その子のお母さんは焦ったように口を押さえたけど、エリンがピンポーンと聞こえる音をピアノの鍵盤を叩いて鳴らし、腕で大きなマルを作った。前世と同じ正解音に聞こえる。
休息日学校。休息日に教会では子供たちを対象とし神の教えを説いている。でもそれはおまけみたいなもので、文字や計算を教えてくれたり、昼にはパンを振る舞ってくれるので、それを目当てに通う子も多い。その学校ではクイズみたいなものが流行っていて、正解だとピンポンと口にしたり、マルを作って表し、不正解はブブーという音とバツ印で表すらしい。
クジャクさまとエリンてば、いつの間にこんなレクリエーションを考えていたのかしら。っていうか、人が来るのを見越していたのね。
ド、ドド、ド、ドド、ド、ドド、ド、ドド、ド、ドド。
次はなんの曲だろうと皆が耳を澄ませる。
調子をとった後に弾かれたのは今度はスロー。もどかしすぎる!
「ハランドの英雄!」
誰かが声をあげたが、エリンはブブーとピアノで鳴らし、大きなバッテンを手で作った。
「あ、黄色のラーゼ」
女性の声に今度はピンポン、ピンポン、ピンポーンと大正解を示した。
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