プラス的 異世界の過ごし方

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9章 夏休みとシアター

第388話 家族間大会議⑤ジェネラル

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「リディアは何をもって信じたのだ?」

 おじいさまに尋ねられる。
 え?

「いくら嘘をつく利点がないからと言って、未来を見たと言われ、お前がそのまま信じたのは不思議に思える」

「それに、アイリス嬢はお嬢に忠告しにきたのですよね? 何を言いに? お嬢が聖女になる未来をみたとでもですか?」

「アイリス嬢がギフトを授かって初めて見たもの、それはわたしもみることができたの」

「未来を見たのか?」

「アイリス嬢の視点で、小さい頃から大きくなるまでをね。その未来では試練は訪れるけど、全て乗り越えて幸せになれたの。アイリス嬢が小さい時ウチに来たのを覚えている?」

 わたしは兄さまたちに問いかけた。

「ああ、兄さまに会いにきたって言ってたよな?」

 大人たちに向き直る。

「アイリス嬢は一人で家に来たの。そして兄さまとわたしとロビ兄の名前を正確に呼んだ。そしてわたしには、なんで火傷をしていないのかって、なんで大切にされているのかって言ったの。わたしはわたしが火傷を負っていて、大切にされていないと思っていたアイリス嬢が怖かった。映像を見て、その謎が解けた。
 アイリス嬢がその未来を見たときのわたしは……前世を思い出してないわたしなんだと思う」

 それぞれに考えているようだった。

「だからわたしは、家族とだけ接して外に出ようともしない、砦にいた頃と同じ、部屋に籠っているだけで、もふさまにも会えなかったんじゃないかと思う。……その見た未来では母さまが……母さまがあのまま命を落としてた」

 みんなが息を飲む。

「その未来では、母さまがいなくなり、シュタイン家は荒れたみたい。そしてわたしは火傷をしたことにして、家から出ないよう閉じこもったんだと思う」

「閉じこもった?」

 実際、映像で〝わたし〟を見たわけではない。兄さまの言葉だけでしかウチの様子は窺い知れないのだと話す。でも、火傷も嘘なんじゃないかと確信に近く思う。口実じゃないかと。部屋に籠もって何もしないわたしが火傷をするシチュエーションを思いつけない。だから、そういうことにして、大手を振って〝閉じこもる〟ようにしたんじゃないかとわたしは考えた。

「未来って一つのことが解決して、ああ、クリアできたと思っても、違うことに移行して同じようなことが起こるんですって。失敗をしてある人から無能だと言われる。失敗しないように気をつけてそこはクリアしても、その人から褒められたら、他の人から褒められて、いい気になるのは無能だからに他ならないって言われるとかね。だからアイリス嬢は心配したみたい。母さまが生きているから、その流れで火傷をするような何かは起こらなかったようだけど、それはいずれ形を変えて起こることだと。火傷を負ったり、わたしは家族から閉じ込められるようなことになるとね。だから、そう自覚するべきだと彼女は伝えに来たの」

「なるほどな。未来の映像をリディアも見て、未来のひとつだと思い、そしてレギーナの誰も知らない件を見せられたことで、本当に未来が見えていると思ったのだな?」

 そういうことになるかと、わたしは考えを咀嚼して頷いた。

「でもさー、それだと、例えばその5年後以降のことじゃなくても陛下に何かがあったら瘴気がばら撒かれるってこと?」

 ロビ兄が眉を八の字にしている。

「陛下の魔力がなくなるだけで傾くことはないだろう。恐らく戦いの中、地形の魔法陣も破壊されたんだ、きっと。……でもロビンの言うことは正しい。陛下の魔力は莫大らしいから、陛下に頼っている部分は多いだろうからな。けれどそれぞれだけに頼ることなく、封印する力をもっと分散させておかないと危険だな」

 おじいさまと父さまが頷きあった。
 静けさが舞い降り、父さまが息をついた。

「未来が見える、か……」

 低い声で言って、そして顔をあげる。

「実はみんなに話そうと思っていたんだが。エリンとノエルと話をしてわかったことがある。あの子たちのスキルだ。それにとんでもないものがあってだな……」

 父さまはふぅと息をついた。

「とんでもないスキル?」

 兄さまがおっかなびっくりに聞いた。

「ああ、エリンは未来視、ノエルは転移だ」

 ええっ。
 あの子たちってば魔力は高いし、規格外なだけじゃなく、そんな希少で利用価値のありそうなスキルを……。
 みんな同じことを考えたのか、頭か目を手で押さえていた。

「それって、バレたら囲われるか、保護されるレベルだよね?」

 思わず確かめると、父さまは頷いた。

「特に外国にはバレたくないな。それじゃなくてもふたりには外国から縁談が来ている。どの国にだっていい者悪い者はいるが、得体のしれない者にふたりが目をつけられたらと怖い」

 隠蔽をつけておいてよかった! 本当によかった。

「ふたりは危険性をわかっている?」

 兄さまが父さまに尋ねる。

「ああ、理解している。魔力が高いことへの懸念をずっと言ってきたからな。ふたりはまだスキルは安定していないようで、使いこなせるようになったらいうつもりだったそうだ」

 そうだったんだ。

「よかった。すごいスキルだって褒めてやらなきゃな」

 ロビ兄がピッカピカの笑顔で言った。
 そうだね。希少すぎて心配になっちゃったけど、どちらも素敵なスキルだ。おめでとうと言ってあげたい。

 ロビ兄の眉が急に下がる。
 ん?

「あのさー、おれたちも話があるんだ。今、していい?」

「……ああ、もちろんだ」

 重々しく父さまが頷き、でもそれは予感していたことのように見えた。

「おれたち、おれたちを産んだ母上のことで微かに覚えていることがあるんだ」

 双子から産みのお母さんのことを聞くのは、従兄妹だって知った時以来な気がする。

「父上のことを名前とそして時々ジェネラルって呼んでた。フォルガード語で〝将軍〟だよね?」

 その後をアラ兄が引き継いだ。

「ガゴチの初代将軍、ジェイ。その人がオレたちの血の繋がった父上なんじゃないかと思うんだ」

「誰に何を言われた?」

 父さまが鋭く尋ねる。

「確かジェットって母上は呼んでいて、傭兵だったって言ってた。不法滞在だから戸籍が作れなかったとも。小さい頃は何を言ってるのかは理解できてなかったけど。……リーが誘拐されて、ガゴチが関わったかもとわかり調べた。いろいろ付合が合うと思うんだ。クララが言った時は何を言ってるんだって思ったけど」

 ガゴチの初代将軍、ジェイ。生死のわからないカリスマの人。今でも彼をリーダーにと望む声は多い。そのジェイ将軍がアラ兄とロビ兄のお父さん?

「ニアに探している人と太刀筋が似ているって言われた。魔法の使い方とかも。それでニアはガゴチの人なんでしょ?」

 ふたりは確信しているようだ。

「それで、お前たちはどうしたいと思ったんだ?」

 父さまは低い声で聞いた。
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