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9章 夏休みとシアター
第381話 完売御礼
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「父さまも同じ考えだ」
庭で騒いでいたからだろう、父さまが家から出てきた。
「エリン、ノエル、父さまと少し話をしよう。リディー、母さまが話したがっていたよ」
わたしは「はい」と返事をした。
エリンとノエルが父さまと家に入っていき、魔物の山を収納袋に戻した。
母さまが話したがっているということだから、お風呂は後だ。兄さまたちにそう告げて部屋へと戻る。
途中で、長く勤めてくれてメイド長になったシエンナが飲み物を聞いてくれた。わたしは食事を取るまで少し休むから飲み物はいらないと伝えた。
部屋に入るともふもふ軍団がリュックから飛び出してくる。
一通り、どんなに活躍したかを聞いた。みんな誇らしいみたいで胸をそらしてキラキラした瞳で言ってくる。歓声をあげれば頬を上気させている。得意気な様子はギュッと抱きしめたくなる。最後はもふさまの番だ。控え目に戦いの描写はなしで数だけ告げてくる。尻尾は左右に揺れている。
もふさまの凄さは知っているけど、やっぱり凄いねーと感想をいえば尻尾が高速で動く。するとまたもふもふ軍団が自慢を始めたのでエンドレスだ。
わたしは母さまが待ってるから、また後で聞くねと一時中断してもらった。
サブサブハウスの仮想補佐であるドロシーに声をかける。
「ドロシー、母さまと連絡取れる? 時間が大丈夫だったらメインルームで話したいって伝えて」
『YES、マスター』
ドロシーは17、18歳のお嬢さんふう設定だ。
すぐに聞いてくれたみたいで、メインルームで落ち合うことになった。
「誰かきたら教えてね。ではメインルームに移動させて」
『YES、マスター』
もふさまともふもふ軍団とメインルームに移動した。
母さまはテーブルについていて、冷たいお茶もテーブルに整えられていた。
「母さま」
「リディー」
母さまは立ち上がって、わたしを抱きしめた。
「母さま、どうしたの?」
「大成功よ!」
「え?」
「化粧水、午前中で完売してしまったわ」
「え、本当に?」
「ええ、問い合わせが止まなくて、ホリーさんが追加できませんかって連絡してきたの。リディーが在庫はたっぷりあると言っていたから、明日にならお届けできると思うって言っておいたわ」
「うん、追加は大丈夫。でも、1000個出したんだよ、初日から売れたの?」
シュタイン領の人口は大体1300人。そのうち町の人口は900人。町の中でもアールの店がある店舗の多い町に住むのは700人ぐらいだ。ざっくりと半分が女性としても350人。そのうち化粧水を使う年齢の女性を半分よりは多めの65%とすると227人。全員が買ってくれるわけはないけど、200個売れたらすごいと思っていた。余っても収納袋に入れておいてその後少しずつ売っていけばいいし、最初は店を覆い尽くす勢いで今日は〝コレが推しです!〟て見ただけでわかるように、いっぱいの化粧水を並べることにした。志を大きく持つ意味でも初日に並べる総数を1000個と決めた。
「ホリーさんが前もって宣伝してくれていたみたいなの。それで近隣の町まで広まっていて、町の人なのに買えなかった方もいたようよ」
みんな意外に新しもの好きだった。
化粧水は1000ギルと高くもないけど安くもないし、未知のものだろうに。
っていうか、女性の〝美〟に対する意識ってのはいつの時代も変わらず、世界を超えても共通みたいだ。
「母さま、美白化粧水を売り出すの、早めてもいいかもね。それから化粧品の開発を進めよう」
こういうのは勢いが大事だ。
「そうね、リディーの〝ファンデーション〟あれ、よかったわ。化粧崩れもしなかったし、それでいて肌に負担も少ないようだわ」
元々あったおしろいに鑑定をかけてそれらの成分を安全そしてさらに優秀なものに変えていった。油分を入れるのも〝おしろい〟との違い。決め手は鉱物の粉だった、鑑定では体に害がないものばかりだけど、ちょっと不安で安全性を確かめるのに実験をしていた関係で、なかなか進みが遅かった。基本ができたら、あとは色味を少しずつ変え、肌の色に合わせて選べるようにするつもりだ。
ちなみにクレンジングは先に出来上がっている。
口紅は、ダンジョンで見つけた植物がなんとも都合がよかった。
名前は〝ベニバナ〟といった。葉っぱがもったりしている透明なジェルのようなもので覆われている。ベニバナは食べられる花だ。そのジェル状なものをもふもふ軍団が食べると、口が色づいて艶々になった。それでこれ、使えるのではと思ったのだ。ベニバナは赤い花が咲くんだけど、葉を覆うジェル状の液にその汁を混ぜるとほんのりピンクになった。汁の量を調整すれば、どぎつい赤からリップぐらいのほんのりピンクもできた。
ファンデーションのように油分を加えない〝お粉〟には、貝の粉を混ぜてキラリとさせたり、植物や鉱物から取った色をつけた。これで絵心がある人が顔に美しいパーツの絵を描くと劇的に美しい顔になる。アイシャドウ、頬紅として活躍予定だ。
色をのせるだけでも十分違うしね。
でもまずみんなに化粧の基本となるスキンケアの概念を身につけてもらわないと!
美容用品で確かな手応えを感じていた。
庭で騒いでいたからだろう、父さまが家から出てきた。
「エリン、ノエル、父さまと少し話をしよう。リディー、母さまが話したがっていたよ」
わたしは「はい」と返事をした。
エリンとノエルが父さまと家に入っていき、魔物の山を収納袋に戻した。
母さまが話したがっているということだから、お風呂は後だ。兄さまたちにそう告げて部屋へと戻る。
途中で、長く勤めてくれてメイド長になったシエンナが飲み物を聞いてくれた。わたしは食事を取るまで少し休むから飲み物はいらないと伝えた。
部屋に入るともふもふ軍団がリュックから飛び出してくる。
一通り、どんなに活躍したかを聞いた。みんな誇らしいみたいで胸をそらしてキラキラした瞳で言ってくる。歓声をあげれば頬を上気させている。得意気な様子はギュッと抱きしめたくなる。最後はもふさまの番だ。控え目に戦いの描写はなしで数だけ告げてくる。尻尾は左右に揺れている。
もふさまの凄さは知っているけど、やっぱり凄いねーと感想をいえば尻尾が高速で動く。するとまたもふもふ軍団が自慢を始めたのでエンドレスだ。
わたしは母さまが待ってるから、また後で聞くねと一時中断してもらった。
サブサブハウスの仮想補佐であるドロシーに声をかける。
「ドロシー、母さまと連絡取れる? 時間が大丈夫だったらメインルームで話したいって伝えて」
『YES、マスター』
ドロシーは17、18歳のお嬢さんふう設定だ。
すぐに聞いてくれたみたいで、メインルームで落ち合うことになった。
「誰かきたら教えてね。ではメインルームに移動させて」
『YES、マスター』
もふさまともふもふ軍団とメインルームに移動した。
母さまはテーブルについていて、冷たいお茶もテーブルに整えられていた。
「母さま」
「リディー」
母さまは立ち上がって、わたしを抱きしめた。
「母さま、どうしたの?」
「大成功よ!」
「え?」
「化粧水、午前中で完売してしまったわ」
「え、本当に?」
「ええ、問い合わせが止まなくて、ホリーさんが追加できませんかって連絡してきたの。リディーが在庫はたっぷりあると言っていたから、明日にならお届けできると思うって言っておいたわ」
「うん、追加は大丈夫。でも、1000個出したんだよ、初日から売れたの?」
シュタイン領の人口は大体1300人。そのうち町の人口は900人。町の中でもアールの店がある店舗の多い町に住むのは700人ぐらいだ。ざっくりと半分が女性としても350人。そのうち化粧水を使う年齢の女性を半分よりは多めの65%とすると227人。全員が買ってくれるわけはないけど、200個売れたらすごいと思っていた。余っても収納袋に入れておいてその後少しずつ売っていけばいいし、最初は店を覆い尽くす勢いで今日は〝コレが推しです!〟て見ただけでわかるように、いっぱいの化粧水を並べることにした。志を大きく持つ意味でも初日に並べる総数を1000個と決めた。
「ホリーさんが前もって宣伝してくれていたみたいなの。それで近隣の町まで広まっていて、町の人なのに買えなかった方もいたようよ」
みんな意外に新しもの好きだった。
化粧水は1000ギルと高くもないけど安くもないし、未知のものだろうに。
っていうか、女性の〝美〟に対する意識ってのはいつの時代も変わらず、世界を超えても共通みたいだ。
「母さま、美白化粧水を売り出すの、早めてもいいかもね。それから化粧品の開発を進めよう」
こういうのは勢いが大事だ。
「そうね、リディーの〝ファンデーション〟あれ、よかったわ。化粧崩れもしなかったし、それでいて肌に負担も少ないようだわ」
元々あったおしろいに鑑定をかけてそれらの成分を安全そしてさらに優秀なものに変えていった。油分を入れるのも〝おしろい〟との違い。決め手は鉱物の粉だった、鑑定では体に害がないものばかりだけど、ちょっと不安で安全性を確かめるのに実験をしていた関係で、なかなか進みが遅かった。基本ができたら、あとは色味を少しずつ変え、肌の色に合わせて選べるようにするつもりだ。
ちなみにクレンジングは先に出来上がっている。
口紅は、ダンジョンで見つけた植物がなんとも都合がよかった。
名前は〝ベニバナ〟といった。葉っぱがもったりしている透明なジェルのようなもので覆われている。ベニバナは食べられる花だ。そのジェル状なものをもふもふ軍団が食べると、口が色づいて艶々になった。それでこれ、使えるのではと思ったのだ。ベニバナは赤い花が咲くんだけど、葉を覆うジェル状の液にその汁を混ぜるとほんのりピンクになった。汁の量を調整すれば、どぎつい赤からリップぐらいのほんのりピンクもできた。
ファンデーションのように油分を加えない〝お粉〟には、貝の粉を混ぜてキラリとさせたり、植物や鉱物から取った色をつけた。これで絵心がある人が顔に美しいパーツの絵を描くと劇的に美しい顔になる。アイシャドウ、頬紅として活躍予定だ。
色をのせるだけでも十分違うしね。
でもまずみんなに化粧の基本となるスキンケアの概念を身につけてもらわないと!
美容用品で確かな手応えを感じていた。
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