プラス的 異世界の過ごし方

seo

文字の大きさ
上 下
381 / 926
9章 夏休みとシアター

第381話 完売御礼

しおりを挟む
「父さまも同じ考えだ」

 庭で騒いでいたからだろう、父さまが家から出てきた。

「エリン、ノエル、父さまと少し話をしよう。リディー、母さまが話したがっていたよ」

 わたしは「はい」と返事をした。

 エリンとノエルが父さまと家に入っていき、魔物の山を収納袋に戻した。
 母さまが話したがっているということだから、お風呂は後だ。兄さまたちにそう告げて部屋へと戻る。

 途中で、長く勤めてくれてメイド長になったシエンナが飲み物を聞いてくれた。わたしは食事を取るまで少し休むから飲み物はいらないと伝えた。

 部屋に入るともふもふ軍団がリュックから飛び出してくる。
 一通り、どんなに活躍したかを聞いた。みんな誇らしいみたいで胸をそらしてキラキラした瞳で言ってくる。歓声をあげれば頬を上気させている。得意気な様子はギュッと抱きしめたくなる。最後はもふさまの番だ。控え目に戦いの描写はなしで数だけ告げてくる。尻尾は左右に揺れている。
 もふさまの凄さは知っているけど、やっぱり凄いねーと感想をいえば尻尾が高速で動く。するとまたもふもふ軍団が自慢を始めたのでエンドレスだ。
 わたしは母さまが待ってるから、また後で聞くねと一時中断してもらった。

 サブサブハウスの仮想補佐であるドロシーに声をかける。

「ドロシー、母さまと連絡取れる? 時間が大丈夫だったらメインルームで話したいって伝えて」

『YES、マスター』

 ドロシーは17、18歳のお嬢さんふう設定だ。
 すぐに聞いてくれたみたいで、メインルームで落ち合うことになった。

「誰かきたら教えてね。ではメインルームに移動させて」

『YES、マスター』

 もふさまともふもふ軍団とメインルームに移動した。
 母さまはテーブルについていて、冷たいお茶もテーブルに整えられていた。

「母さま」

「リディー」

 母さまは立ち上がって、わたしを抱きしめた。

「母さま、どうしたの?」

「大成功よ!」

「え?」

「化粧水、午前中で完売してしまったわ」

「え、本当に?」

「ええ、問い合わせが止まなくて、ホリーさんが追加できませんかって連絡してきたの。リディーが在庫はたっぷりあると言っていたから、明日にならお届けできると思うって言っておいたわ」

「うん、追加は大丈夫。でも、1000個出したんだよ、初日から売れたの?」

 シュタイン領の人口は大体1300人。そのうち町の人口は900人。町の中でもアールの店がある店舗の多い町に住むのは700人ぐらいだ。ざっくりと半分が女性としても350人。そのうち化粧水を使う年齢の女性を半分よりは多めの65%とすると227人。全員が買ってくれるわけはないけど、200個売れたらすごいと思っていた。余っても収納袋に入れておいてその後少しずつ売っていけばいいし、最初は店を覆い尽くす勢いで今日は〝コレが推しです!〟て見ただけでわかるように、いっぱいの化粧水を並べることにした。志を大きく持つ意味でも初日に並べる総数を1000個と決めた。

「ホリーさんが前もって宣伝してくれていたみたいなの。それで近隣の町まで広まっていて、町の人なのに買えなかった方もいたようよ」

 みんな意外に新しもの好きだった。
 化粧水は1000ギルと高くもないけど安くもないし、未知のものだろうに。
 っていうか、女性の〝美〟に対する意識ってのはいつの時代も変わらず、世界を超えても共通みたいだ。

「母さま、美白化粧水を売り出すの、早めてもいいかもね。それから化粧品の開発を進めよう」

 こういうのは勢いが大事だ。

「そうね、リディーの〝ファンデーション〟あれ、よかったわ。化粧崩れもしなかったし、それでいて肌に負担も少ないようだわ」

 元々あったおしろいに鑑定をかけてそれらの成分を安全そしてさらに優秀なものに変えていった。油分を入れるのも〝おしろい〟との違い。決め手は鉱物の粉だった、鑑定では体に害がないものばかりだけど、ちょっと不安で安全性を確かめるのに実験をしていた関係で、なかなか進みが遅かった。基本ができたら、あとは色味を少しずつ変え、肌の色に合わせて選べるようにするつもりだ。
 ちなみにクレンジングは先に出来上がっている。

 口紅は、ダンジョンで見つけた植物がなんとも都合がよかった。
 名前は〝ベニバナ〟といった。葉っぱがもったりしている透明なジェルのようなもので覆われている。ベニバナは食べられる花だ。そのジェル状なものをもふもふ軍団が食べると、口が色づいて艶々になった。それでこれ、使えるのではと思ったのだ。ベニバナは赤い花が咲くんだけど、葉を覆うジェル状の液にその汁を混ぜるとほんのりピンクになった。汁の量を調整すれば、どぎつい赤からリップぐらいのほんのりピンクもできた。

 ファンデーションのように油分を加えない〝お粉〟には、貝の粉を混ぜてキラリとさせたり、植物や鉱物から取った色をつけた。これで絵心がある人が顔に美しいパーツの絵を描くと劇的に美しい顔になる。アイシャドウ、頬紅として活躍予定だ。
 色をのせるだけでも十分違うしね。

 でもまずみんなに化粧の基本となるスキンケアの概念を身につけてもらわないと!
 美容用品で確かな手応えを感じていた。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

転生した愛し子は幸せを知る

ひつ
ファンタジー
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢  宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。  次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!    転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。  結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。  第13回ファンタジー大賞 176位  第14回ファンタジー大賞 76位  第15回ファンタジー大賞 70位 ありがとうございます(●´ω`●)

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

お姉様に恋した、私の婚約者。5日間部屋に篭っていたら500年が経過していました。

ごろごろみかん。
恋愛
「……すまない。彼女が、私の【運命】なんだ」 ──フェリシアの婚約者の【運命】は、彼女ではなかった。 「あなたも知っている通り、彼女は病弱だ。彼女に王妃は務まらない。だから、フェリシア。あなたが、彼女を支えてあげて欲しいんだ。あなたは王妃として、あなたの姉……第二妃となる彼女を、助けてあげて欲しい」 婚約者にそう言われたフェリシアは── (え、絶対嫌なんですけど……?) その瞬間、前世の記憶を思い出した。 彼女は五日間、部屋に籠った。 そして、出した答えは、【婚約解消】。 やってられるか!と勘当覚悟で父に相談しに部屋を出た彼女は、愕然とする。 なぜなら、前世の記憶を取り戻した影響で魔力が暴走し、部屋の外では【五日間】ではなく【五百年】の時が経過していたからである。 フェリシアの第二の人生が始まる。 ☆新連載始めました!今作はできる限り感想返信頑張りますので、良ければください(私のモチベが上がります)よろしくお願いします!

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

処理中です...