367 / 887
9章 夏休みとシアター
第367話 子供だけでお出かけ⑪応援部隊
しおりを挟む
ふと抱きこまれた。
ポリさんだ。
「ボス、まだ子供です。合法ならいきりたつことないじゃありませんか、許してあげてください」
そんなポリさんの顔をボスが叩いた。
!
「新人が俺に意見すんじゃねー。とりあえずポリも一緒に放り込んでおけ」
そう言い捨てて、周りのお客さんたちに謝っている。
ポリさんを見上げると大丈夫だというように微笑んだ。
手を引っ張られて連れて行かれそうになると、垂れ目のお金持ち風の人が止めた。
「この子も店に出すのか? 変わった趣向だな。私は新しいものに目がなくてねー」
とわたしに向かって手を伸ばしてきた。
払ってやろうと思ったとき、ムアッとした熱気が下の方からわきあがってきて、見えない何かに気を取られる。
手を伸ばした男がすごい勢いで飛ばされ、天井に打ちあたり、その勢いのまま地面に落ちた。兄さまが風を使ったんだ。風で吹っ飛ばした!
「な、お前、ウスロさまになんてことを!」
ボスと部下が吹っ飛んだ男に駆け寄る。白目を向いてる。
「リディー、行くよ」
兄さまに言われて、わたしはポリさんの手を強く握る。
「私は……」
「助けてくれてありがと。一緒に行こう」
部下に道を塞がれたけれど、もふさま、兄さまの敵じゃない。けれど部屋を出たところで、集まってきた部下たちに囲まれ、わたしたちは目を見合わせ、捕まることを選んだ。元々そのつもりだったしね。
〝応援〟が踏み込んできたとき、中にわたしたちがいれば捕まえてもらえるから。
『リディア、領主やアラン、ロビンが来たようだ。レオの気配もある。用心棒もな』
グッドタイミング! お店なのに牢屋があることに驚いたけど、そこに3人で入れられすぐに〝応援〟がやってきた。
周りがうるさくなった。
でも地下だもんな。父さまたち場所がわかるかな。
地下に牢屋があるって気づかなかったらどうしよう。
少し不安に思った時、もふさまが吠えた。
なるほど! 父さまたちはすぐにわかってくれるだろう。
解決だね。
しばらくすると、部屋の前で物音がした。見張りが倒されたようだ。
入ってきたのはニアだった。
「無事か?」
「ニア!」
見張りから取ったのだろう鍵で開けてくれた。
ニアはシャツを脱いで、ポリさんにかぶせる。
武装した人たちが入ってきた。
「部屋には敵無し。制圧」
統制の取れた様子で伝達していく。
「人質、保護!」
父さま、ロビ兄、アラ兄が入ってくる。
父さまに抱きかかえられる。ロビ兄とアラ兄は兄さまと健闘を称えグーにした手をコツンと合わせていた。
父さまは兄さまもギュッとして、ポリさんに軽く礼をした。
「リポロ氏の妹御ですか?」
ポリさんは驚いた様子ながら、頷いた。
「私はシュタイン領、領主のジュレミー・シュタインです。シュタイン領の問題に巻き込んだようで申し訳ありません。リポロ氏が心配しています。外にいます」
ロビ兄を引っ張ってレオは?と尋ねると、ポケットから顔を出した。
ほっとする。
外に出ていくときに暴れるボスが押さえつけられているのを見た。
「俺が何したっつーんですか? ウチは合法ですよ」
「貴族のご子息とご息女を監禁した罪だ」
「貴族の子を、何を馬鹿な……」
さまよう視線と目が合う。
「ま、まさかあいつらが?」
ゴンと騎士に頭を叩かれている。
「貴族さまに向かって失礼だぞ!」
「さ、いくぞ」
父さまにうんっと頷く。
「リディーはどうぶっ潰すつもりなんだ?」
父さまに尋ねられる。
「……あの時頭に血がのぼっていて怒りに任せて言ったの。だから方法とか考えてなかった」
父さまが歩みを止めて振り向いた。
「時間はかかるだろうが父さまのやり方でぶっ潰す。それでいいか?」
淡々と言っているけれど、父さまが心底怒りを抱えているのがわかった。それを表に出さないようにしていることも。
だけど我慢して、父さまは手順を踏んで法に則った罰を下す気なんだ。
「手伝う」
父さまは微かに笑って、わたしの頭を撫でる。
手伝う時に、物理的にちょっとばかし思いを込めてもいいよね?
「今からクレソン商会に乗り込むぞ」
店から出れば、リポロさんとポリさんが手を取って無事を確かめ合う再会シーンを見ることもできた。
父さまはわたしたちを襲ったゴロツキの頭を連れてきた。両手首は縄でぐるぐる巻きにされている。
「ゴロツキ以外の証拠は出てませんよね?」
兄さまが少し不安そうに言った。
不安になるのは最もだ。だって、ゴロツキに襲えって指示したでしょ?と言っても知らないと言われたらそれまでだもの。
「証拠はない。けど、派手にいくぞ」
父さまは知らしめるつもりなんだ。証拠がなかろうとやり返す姿勢を。
もう二度と誰かに、ウチがなめられないように。
ポリさんだ。
「ボス、まだ子供です。合法ならいきりたつことないじゃありませんか、許してあげてください」
そんなポリさんの顔をボスが叩いた。
!
「新人が俺に意見すんじゃねー。とりあえずポリも一緒に放り込んでおけ」
そう言い捨てて、周りのお客さんたちに謝っている。
ポリさんを見上げると大丈夫だというように微笑んだ。
手を引っ張られて連れて行かれそうになると、垂れ目のお金持ち風の人が止めた。
「この子も店に出すのか? 変わった趣向だな。私は新しいものに目がなくてねー」
とわたしに向かって手を伸ばしてきた。
払ってやろうと思ったとき、ムアッとした熱気が下の方からわきあがってきて、見えない何かに気を取られる。
手を伸ばした男がすごい勢いで飛ばされ、天井に打ちあたり、その勢いのまま地面に落ちた。兄さまが風を使ったんだ。風で吹っ飛ばした!
「な、お前、ウスロさまになんてことを!」
ボスと部下が吹っ飛んだ男に駆け寄る。白目を向いてる。
「リディー、行くよ」
兄さまに言われて、わたしはポリさんの手を強く握る。
「私は……」
「助けてくれてありがと。一緒に行こう」
部下に道を塞がれたけれど、もふさま、兄さまの敵じゃない。けれど部屋を出たところで、集まってきた部下たちに囲まれ、わたしたちは目を見合わせ、捕まることを選んだ。元々そのつもりだったしね。
〝応援〟が踏み込んできたとき、中にわたしたちがいれば捕まえてもらえるから。
『リディア、領主やアラン、ロビンが来たようだ。レオの気配もある。用心棒もな』
グッドタイミング! お店なのに牢屋があることに驚いたけど、そこに3人で入れられすぐに〝応援〟がやってきた。
周りがうるさくなった。
でも地下だもんな。父さまたち場所がわかるかな。
地下に牢屋があるって気づかなかったらどうしよう。
少し不安に思った時、もふさまが吠えた。
なるほど! 父さまたちはすぐにわかってくれるだろう。
解決だね。
しばらくすると、部屋の前で物音がした。見張りが倒されたようだ。
入ってきたのはニアだった。
「無事か?」
「ニア!」
見張りから取ったのだろう鍵で開けてくれた。
ニアはシャツを脱いで、ポリさんにかぶせる。
武装した人たちが入ってきた。
「部屋には敵無し。制圧」
統制の取れた様子で伝達していく。
「人質、保護!」
父さま、ロビ兄、アラ兄が入ってくる。
父さまに抱きかかえられる。ロビ兄とアラ兄は兄さまと健闘を称えグーにした手をコツンと合わせていた。
父さまは兄さまもギュッとして、ポリさんに軽く礼をした。
「リポロ氏の妹御ですか?」
ポリさんは驚いた様子ながら、頷いた。
「私はシュタイン領、領主のジュレミー・シュタインです。シュタイン領の問題に巻き込んだようで申し訳ありません。リポロ氏が心配しています。外にいます」
ロビ兄を引っ張ってレオは?と尋ねると、ポケットから顔を出した。
ほっとする。
外に出ていくときに暴れるボスが押さえつけられているのを見た。
「俺が何したっつーんですか? ウチは合法ですよ」
「貴族のご子息とご息女を監禁した罪だ」
「貴族の子を、何を馬鹿な……」
さまよう視線と目が合う。
「ま、まさかあいつらが?」
ゴンと騎士に頭を叩かれている。
「貴族さまに向かって失礼だぞ!」
「さ、いくぞ」
父さまにうんっと頷く。
「リディーはどうぶっ潰すつもりなんだ?」
父さまに尋ねられる。
「……あの時頭に血がのぼっていて怒りに任せて言ったの。だから方法とか考えてなかった」
父さまが歩みを止めて振り向いた。
「時間はかかるだろうが父さまのやり方でぶっ潰す。それでいいか?」
淡々と言っているけれど、父さまが心底怒りを抱えているのがわかった。それを表に出さないようにしていることも。
だけど我慢して、父さまは手順を踏んで法に則った罰を下す気なんだ。
「手伝う」
父さまは微かに笑って、わたしの頭を撫でる。
手伝う時に、物理的にちょっとばかし思いを込めてもいいよね?
「今からクレソン商会に乗り込むぞ」
店から出れば、リポロさんとポリさんが手を取って無事を確かめ合う再会シーンを見ることもできた。
父さまはわたしたちを襲ったゴロツキの頭を連れてきた。両手首は縄でぐるぐる巻きにされている。
「ゴロツキ以外の証拠は出てませんよね?」
兄さまが少し不安そうに言った。
不安になるのは最もだ。だって、ゴロツキに襲えって指示したでしょ?と言っても知らないと言われたらそれまでだもの。
「証拠はない。けど、派手にいくぞ」
父さまは知らしめるつもりなんだ。証拠がなかろうとやり返す姿勢を。
もう二度と誰かに、ウチがなめられないように。
109
お気に入りに追加
1,301
あなたにおすすめの小説
ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双
さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。
ある者は聖騎士の剣と盾、
ある者は聖女のローブ、
それぞれのスマホからアイテムが出現する。
そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。
ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか…
if分岐の続編として、
「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

誰も残らなかった物語
悠十
恋愛
アリシアはこの国の王太子の婚約者である。
しかし、彼との間には愛は無く、将来この国を共に治める同士であった。
そんなある日、王太子は愛する人を見付けた。
アリシアはそれを支援するために奔走するが、上手くいかず、とうとう冤罪を掛けられた。
「嗚呼、可哀そうに……」
彼女の最後の呟きは、誰に向けてのものだったのか。
その呟きは、誰に聞かれる事も無く、断頭台の露へと消えた。

転生した愛し子は幸せを知る
ひつ
ファンタジー
【連載再開】
長らくお待たせしました!休載状態でしたが今月より復帰できそうです(手術後でまだリハビリ中のため不定期になります)。これからもどうぞ宜しくお願いします(^^)
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。
次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!
転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。
結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。
第13回ファンタジー大賞 176位
第14回ファンタジー大賞 76位
第15回ファンタジー大賞 70位
ありがとうございます(●´ω`●)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。


オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる