プラス的 異世界の過ごし方

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8章 そうしてわたしは恋を知る

第337話 夏休み前⑪スキンケア

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 休息日の午前中には、マーヤさまがお父さんと一緒に改めて謝罪にきた。父さまに伝達魔法で謝罪をしたいと領地まで謝りに行く勢いだったのを、令嬢のせいではないのでと伝えたとは聞いていたが……。
 マーヤさまは昨日も泣いていたんだろうというのがわかる憔悴ぶりと目の腫れあがり方だ。

「リディアさま。ごめんなさい。私が失くした物を元にされたんですわ。私、私、どう償えばいいのか……」

 お父さんであるハバー男爵さまにも頭を下げられた。

「マーヤさま、ハバー男爵さま。わたしの考えが足りなかったのです。ですからご自分を責めないでください」

 使い勝手を聞きたくて軽い気持ちでこれから売り出していこうと思ったものを渡してしまった。こんな結果を招き、そしてそれが誰かを傷つけると思わなかった。

「それに」

「それに?」

「マッサージクリームは単独でも使っていけますけれど、スキンケアの一環なんです。何もやらないより効果はあっても、毎日ケアすることの方が大切なのです」

「すきんけあ、ですか?」

「ええ」

 わたしは説明した。
 現時点で設定しているスキンケアとは、肌の調子を整え、肌の状態を向上させることが目的だ。そのためには、汚れをとって洗いきれいな状態にして、乾燥しないよう保湿する。それらを助けるアイテムをこれから売り出していく予定だ。基本はそれ。
 肌はターンオーバーして生まれ変わっていくから、それが乱れないよう手助けするのに考えているのが美白シリーズだったり、マッサージものだったりする。いずれは化粧品を出し、それに合わせたクレンジングなども追加していくつもりだ。
 肌の代謝を促したり血流を良くするためのマッサージクリームは、付け足しのお助けアイテム。やらないよりやる方が結果は出るだろうけれど、それも他のお手入れ体系がわかっていないと効果が薄い。肌にとって栄養ある成分を吸い込みやすいようにするためのプラスアルファのメソッドだからだ。流れがわからずやっているのなら脅威はない。
 わたしはスキンケアの情報とともに売り込んでいく予定だ。肌は絶対に良きものに反応する。そして美を大切にする人には良きものは絶対にわかる。

 あとこれは言えないことだけれど。ホリーさんが言うことには、サンプルを元にして商品登録をしたのなら、そういうことをやりなれた商団で、恐らく専属の鑑定士がいて、材料を鑑定したのだろうということだった。マッサージクリームの素材はダンジョン産の物が入っていたと思う。そこら辺は似たものと変えるのか知らんけど。けれど鑑定しても魔力が込められたってことは出ないと思う。物にも〝魔素〟は必ず入っているから。
 もし鑑定で見えることがあっても魔素がいっぱい含まれているとかわかるだけで、それが効果が高まるとまでは気づけないんじゃないかな。もしわかっても製品に魔を注ぎ込んでみてできないのでガックリするだろう。素材自体は魔素を強めることができるけどね。ダンジョンのような魔素の高いところで育つ植物や、魔を多く持つ魔物からの素材を使うのが有効と気づくまでにはきっと時間がかかる。
 だから、マッサージクリームを単独で発売されても大した痛手ではないとわたしは思っている。登録されて、もう作れないからそこは悔しいけどさ。

 一代貴族と実績を認められるほどの偉業を成した大商人であるハバー男爵に褒められた。11歳にしていろいろなことに精通し、それを生かすことを知っていると。アルノルトが気をよくしている。もふさまや兄さまたちもだ。みんなわたしが褒められるの大好きだから。
 そう講釈をしていたら、マーヤさまも気持ちが少し上向きになってきたようだ。最後はなんとか笑顔を浮かべてくださった。ほっとした。




 午後はメロディー公爵令嬢とショッピングだ。
 曾おじいさまたちがくださった中でおとなしめのドレスに袖を通す。
 水色の涼しげな色のものだ。レースのゆったりした袖が肘下までを覆う。わたしに用意されるドレスはハイウエストなことが多い。これもそうだ。ハイウエストから広がりをみせるタイプ。暑いのにペチコートを履くやつだった。でも他のは色がキツ目で見た目が派手だからな。
 母さまに来てもらってドレスを着せてもらい、髪を結ってもらう。低めなところのツインテールにしてもらった。帽子をかぶるからだ。ムギーラという植物のツタを乾かしたもので編んでくれていて、出来上がりは麦わら帽子そのものだった。風を通すから涼しいし、いいね、これ。ハンナが編んでくれたそうだ。
 前にわたしがツタで籠を編んだんだけど、メモを見てそれを手本にやってくれたそうだ。アレが見本でこんな素敵な物が出来上がる意味わからないけど。うん、ハンナも凄い人だ! ムギーラ帽子は商品登録済みだ。まだ売り出さないけどね。

 兄さまたちが大興奮だ。ムギーラの帽子でツインテールがぺしゃんこになった。それを見てこういう垂れた耳の動物いるよね、かわいいーと。わたしも鏡で見て、垂れ耳に似ていると思った。かわいいとまでは自分を知っているだけに思えなかったけどね!

 身分の高い方からのお誘いなので、一緒に行けるのはもふさまのみだ。お遣いさまでもあるので、これはオッケーをもらってある。公爵家の護衛がいるから大丈夫だとは思うがと、みんなから心配される。それを聞いてもふさまはご機嫌斜めだ。絶対わたしから離れないから心配ないとプリプリしている。

 っていうか、普段こんなフリフリ広がっている服なんか着ないから、自分の幅がよめなくて何かに引っかけそうだ。今日は馬車にも乗るだろうし、お店の中を歩いたりもするし気をつけなくては。
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