プラス的 異世界の過ごし方

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8章 そうしてわたしは恋を知る

第333話 夏休み前⑦レベルアップ

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 最後のひとつを埋め込んだ時、壁の中で魔法陣が青い線で浮かびあがる。
 兄さまがわたしを庇うように抱きかかえ、もふさまが壁を睨みつけた。

 浮きあがった魔法陣はそのまま天へと登っていく。そして細い青い線が水平に伸びた。別の方向から伸びてきた青い線が繋がる。
 あ。

 わたしの中に翠色の風が起こった。見えているわけでないのに、なぜかわかる。
 それが青くなり、黄色くなり、黒くなり白くなり赤くなった。
 お腹の下の方がほかっと暖かくなる。
 な、なに?


 え?
 頭の中に某ゲームのファンファーレが鳴り響く。
 これは……。

『レベルアップしました』

 タボさんのアナウンスが心なしか嬉しそうに聞こえる。

 ステータスボードを呼び出せば、レベルが23! 17だったのが一気に6もアップ? どういうこと?

 唐突に目の前に顔のない騎士たちが現れた。白いマントをつけて浮いている。学園の魔法で作られた警備兵だ。
 兄さまがわたしを庇い、もふさまが前にでる。

 転移?
 ヒンデルマン先生?

「シュタインに、お遣いさま?」

 ヒンデルマン先生の眉間にシワがよる。

「高い魔力が感知されたのでここに来た」

「聖樹さまに頼まれて魔法陣を……」

 言っているうちに急激に気持ち悪くなる。

「リ、リディー?」

 わたしを抱える兄さまの手に力が入る。

「ま、りょく酔い……」

 だから心配しないでと最後まで言えず、わたしは意識を手放した。




 目を覚ますと王都にある屋敷のわたしの部屋だった。

 起きるともふもふみんなが顔に張り付いてきて、息ができなくて死にかけた。
 もふさまが教えてくれた。3日間眠っていたらしい。
 魔力酔いと伝えたこともあり、メリヤス先生からもそう診断されたようだ。

 兄さまがわたしはお遣いさまから聖樹さまの要望で魔法陣を配置することを頼まれ、し終えると、魔法陣が浮かび上がり6つ全てが作動し始めたようだと話したそうだ。おそらくその魔法陣の影響を受けて、わたしが魔力酔いを起こしたのではないかと。
 わたしは高い魔力に耐性がないことになっているから、高い魔力が発動され、それで倒れたと納得されたようだ。

 魔法陣が作動して魔力感知に引っかかり、魔法警備隊と先生があの場に駆けつけたそうだ。

 最初にステータスボードを見た。

名前:リディア・シュタイン(11) 人族 
性別:女
レベル:23
職業:学生
HP:120/303
MP:38000/38541
力:56
敏捷性:21
知力:83
精神:95
攻撃:56
防御:32
回避:92
幸運:93
スキル:生活魔法(火A・水S・土SS・風S・光SS・無SS)
    自動地図作成(レベル15)
    探索(レベル8)
    仮想補佐(タボ・レベル32)
    隠蔽(レベル10)
    付与(レベル35)
    鑑定(レベル9)
    翻訳(レベル18)
    仮想補佐網・創造(ハウス・レベル222/フリンキー・レベル11)
    厨房の責任者
    村人の叡智
    言の葉師
    路地裏の歌姫
    照明の達人
    六花のマイスター
    開拓魂
    無知の知
    羅針盤
    星読みの巫女
    次元の道
    路傍の石
    当意即妙

ギフト:+
特記:サブハウス・サブルーム、サブサブハウス・サブサブルーム所有     

 レベルが6あがった以外はちょこちょこ数値が変わってるぐらいだ。
 あ、HP、MPがあがってる。魔力は莫大にあがった。これか、魔力酔い。



「お嬢さま、目を覚まされたんですね」

 アルノルトが心配そうに部屋に入ってきた。
 ヘリもデルもこの部屋には入れないようにして、父さまと母さまが代わる代わる来てくれていたそうだ。

 わたしは魔法陣が作動したら、わたしのレベルが6一気にあがった話をした。
 もふさまも、もふもふたちも驚いている。

 聖樹さまが心配しているとのことなので、もふさまが聖樹さまに説明してくると言った。ついでに兄さまたちのところにも行ってくれるというので、メモを書いた。魔力酔いをしていたことと、もう大丈夫だということを。


 父さまと母さまが来てくれたので、少しだけ甘えておく。
 学園でもいろいろすることがあるので戻ろうかと思ったが、行っても午後からの授業を受けるだけで週末に突入となるので、来週から学園に行くように言われる。また授業休んじゃったよ。出席日数大丈夫なのかな?と不安になってくる。

 ちょうどよかったので学園祭の寮の出し物で使う道具の発注をかけることにした。寮の鉄板を使うことにして、そのほかの道具はウチにあるので貸し出すと言ったがそれは嘘だ。作って、学園祭で使ったあとウチで使えばいい。道具が先にあったか後にあったかなんて問題にならないはず。

 父さまに砂漠フェアの話をして、母さまと化粧水を売り出す最終確認をして過ごしているうちに、兄さまたちともふさまが帰ってきた。


 魔力酔いの原因となった証拠を見せるのに、ステータスボードを見せると驚かれた。レベルが上がるにつれてレベルアップは経験値が必要となるのか時間がかかるものだ。それにわたしがレベルが上がるのは本当に時間がかかった。レベル2に上がったのは6歳になってからだ。 HPも全然あがらなくてね。6歳になったときにちょっとだけ身長が一気に伸びたときがあって、 HPってもしかして身長基準なんてことないよね? なんて話したな、そう言えば。


 ヒンデルマン先生には兄さまがあらかた話しておいてくれたみたいだ。ただわたしからも一応話を聞くって言ってたって。わたしはもちろんと頷く。


 兄さまの横顔を見ながら考えた。夏休み前に兄さまとちゃんと話そうって。
 アダムの婚約者に慕っている人がいるって聞いた時から、胸がざわざわしている。逃げている事柄を突きつけられたようで。アダムは淡々と言っていたけれど、そうと気づいた時、何を思い、どう過ごしたのだろう?

 兄さまの恋をわたしは応援するつもりだけど。ちゃんとわたしから解放するつもりだけど。

 でもこの週末だけ、まだわたしだけの兄さまでいてもらっていいかな?
 仲良し家族でいてもいいかな?
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