プラス的 異世界の過ごし方

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8章 そうしてわたしは恋を知る

第322話 公爵家での食事会

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 お客さまがいらっしゃるのはお昼だけど、朝から来て欲しいと言われた時に、察するべきだった。

 呑気にお手伝いが必要なのかなと思ってしまったけれど、メイドの少ないウチじゃあるまいし、公爵家に子供のお手伝いなんか必要があるわけない。
 公爵家にての食事会なので、持っている中で一番上等なドレスを着ていったのだが、挨拶もそこそこにわたしだけ別室に案内された。

 部屋の隅には子供用のドレスが何枚かかかっていた。どれも半端なく上等なものだとわかる。アクセサリーもふんだんにあってテーブルに並んでいた。おばあさま、ひいおばあさまたちが、意見の出し合いをし、やはり、どれも着てみてどれが1番いいか決めようとおっしゃる。刺繍やレースの手がこみすぎていて、繊細なものばかり。どっかにひっかけたら一巻の終わりだ。

 ベースが薄い水色のもの、薄い翠色のもの、真っ青なものと、真っ赤なもの。そして真っ白のドレス。光沢のある生地は自ら光輝いているように見えた。
 着終えてはなんてかわいらしいのかしらと大絶賛。翠のと白いのが候補に残り、最後には白のドレスになった。
 胸の上まではノースリーブの総レースで、そこからハイウエストまでが光沢ある白い生地になっていてキュッと締め、下のスカートは布をふんだんに使って広がりを見せる。膝下部も総レースで透け感のある仕上がりだ。背中は割と空いていて、レースの大きなリボンが結ばれている。

 髪はレースのリボンを一緒にゆるく編み込んで片方に流す。そして所々白い生花を挟み込んだ。みんな年上だから、わたしもちょっとお姉さんぽく仕上げてくれたみたいだ。耳には兄さまたちの瞳のような透き通った青い宝石のついたイヤリングをした。公爵家のメイドさんたちのメイクの腕もさすがで、変に大人っぽくはせずに、けれど、かわいく見えるようにお化粧もしてもらって、鏡の中のわたしは、自画自賛だけど、なかなかかわいらしい令嬢になっていた。おばあさまたちも満足げに頷いている。男性陣にお披露目に行けば、手放しで褒めてくれた。
 兄さまたちもグレードアップした服に着替えていて、気品ある格好ですっごくかっこよかった。



 ゲルダひいおばあさまのお兄さんにあたるクジャク公爵さまは、ヤーガン家ともセローリア家とも親交があったみたいで、親しげに歓待している。公爵さまはうちの妹の曾孫の助けになってくれてありがとうと令嬢たちに話しかけた。
 セローリア令嬢は顔を赤くしながら、何もしていませんわといい、ヤーガン嬢は当然のことをしたまでで褒められるようなことではないと言い切った。

 父さまが進み出て、それでも早くに拐われたとわかったことで、進展がありました、ありがとうございますとふたりに頭を下げた。わたしも礼を尽くすと、兄さまたちも、みーんな令嬢たちに礼を尽くしたので、令嬢や保護者の慌てること。



 ひと段落した所で、食事になった。
 気になったのがセローリア令嬢の視線。もしかして、アラ兄にラブなのか? そしてアラ兄もまんざらじゃないのか?
 話は多岐に渡ったけれど学園の話になり、ふたりの保護者はわたしのことを褒め称えた。1年生で寮長になったのは凄いことだとか。わたしの試験結果のことも知っていて、なんか褒められた。それにハープの腕前も確かと聞きましたと。
 え、それどこ情報? それは間違ってる。

「才能あるご息女で羨ましい。ウチの娘は、本当に何もできなくて」

 わたしを褒めるためかそう言われて、居心地悪く感じる。
 セローリア嬢も、寮でもみんなヤーガンさまを頼っていると口添えした。
 こんなきれいな容姿で、頭も良くて、多くの人から慕われている令嬢なのに、何が不満なんだといいたくなるぐらい、ヤーガン嬢に対して素っ気なかった。

「ヤーガンさまの独唱は素晴らしかったです。とてもきれいな声で、ずっと聞いていたくなる歌声でした。セローリア嬢も、短期間でいっぱい練習をして見事にハープを弾きこなされていました」

 わたしがいうと、ヤーガン公爵さまは、お愛想に笑い、セローリア公爵さまは優しく令嬢を見つめて、令嬢ははにかんだ。

「もし、できたら、ヤーガンご令嬢の歌を聞いてみたいものだね」

 ウッド侯爵さまの呟きにより、わたしとセローリア嬢はハープの演奏を、ヤーガン嬢は歌を歌うことになってしまった。
 まずい、クジャク公爵家、ハープ持ってるのか。
 最初にセローリア嬢がハープをかきならした。夕食会で弾くはずだった曲だ。とてもきれいな調べで、音がとても伸びていて聞いていると気持ちがいい。
 でもちょっと、この後に弾くのは差がありすぎて嫌なんですけどと思った。
 わたしは前奏曲を披露する。もふさまの尻尾が揺れているから、ヨシとする。
 そしてヤーガン嬢のアカペラにみんなが酔いしれた。

 アンコールと言われて、ヤーガン嬢はわたしにハープでさっきの曲を弾いてくれないかと言った。わたしは頷いて、前奏曲を弾いた。
 ヤーガン嬢はその音色に重ねて「る」と「ら」で歌った。
 たった2文字なのに、とても美しい〝歌〟となった。こういう人を才能があるっていうんだよね、うん。おじいさまたちも大絶賛だ。

 あの綺麗な歌声を聞いたのに、ヤーガン公爵さまだけが、腑に落ちてないっていうか、こういうところで手放しに娘を褒めるのはきまり悪くてというわけではなく、本当にそう大したことじゃないと思っているように感じられる。
 ヤーガン令嬢にはお兄さまとお姉さまがいるようで、彼らはとても優秀らしい。それこそここにはいない彼らを手放しに褒めるのを聞いて眉が寄った。ヤーガン令嬢も無意識っぽいけど胃のあたりを押さえていた。
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