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7章 闘います、勝ち取るまでは
第297話 リハーサルまで
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最初の1週間で各自のパートをマスターするよう言われ勤しんだ。音楽室に入り練習が始まると、もふさまはこっそりと避難する。打楽器担当の先生はイソシン先生で、パート練習最後の日に気分を変え屋上で音を合わせてみようと言い出した。
いつも音が氾濫するところで一室に籠もってやっている。だから先生からの開放感ある提案はとても素敵に思えた。
屋上から学園を見下ろす。緑が生き生きとしていた。日差しが強く、緑が眩しく感じる。ふと足元にも小さな雑草が花を咲かせていることに気づいた。土もないのに、たくましい。
シュタイン領の森も生命の息吹で溢れ、眩しいのだろうなと思いを馳せる。川にも行きたいな。日差しの強い時は足を水につけるととっても気持ちがいいのだ。
先生が手を叩いて、練習を始めるぞと言った。現実にひきもどされる。
まずはパレードの曲だ。
打楽器の中でメロディーラインを奏でるのはベルリラだ。
夢の世界に誘ってくれそうな甘い音が響く。
「ベルリラ、やりたかったのかい?」
オスカーがこそっと言ってきた。
「お、音がきれいだから」
羨ましそうに見ていたのかと恥ずかしくなる。
「そんな顔もするんだね」
何が言いたいわけ?と尋ねようとしたがカスタの出番だ。ここはもうひたすら拍子をとる。さらに早めていき、フィニッシュとばかりにシンバルが鳴る。
曲は中盤へと移行した。次はスズだ。出番はもう少し先だ。
え? ギャラリー? 音がしたから気になったようで生徒が何人かずつの塊で屋上へとあがってきた。なんか、すっごく見られている。居心地が悪い。
「当日はもっと人目があるぞ」
イソシン先生が言った。確かにそうだ。
うわっ。この視線にも慣れないとなんだ。
週末になり家に帰ればロビ兄が傷だらけだった。新しいパフォーマンスを編み出しているそうで、その練習でできた傷らしい。あんなに運動神経が良いロビ兄でさえ練習に練習を重ねて頑張るんだと思うと、わたしも努力をしなくちゃなと思えた。
次の週からは音合わせが始まった。主音が入ってくると俄然、曲らしくなってくる。先生たちの勢いに押されてというのもあるけれど、やはり何かが形になっていくところは感動がある。音がまとまりだすと、演習場で歩きながら演奏する練習が始まる。演奏しながら歩くのはなかなか難易度が高かった。いつもは先生の指揮に合わせていたが、行進しながらだと耳だけが頼りになる。そしてその耳だけが頼りの指針は打楽器のリズムになるのだ。ドラムっていうか、大太鼓と小太鼓部隊が重要になってくる。
歓待の宴の流れはこうだ。
音をかき鳴らしながらわたしたちが入場、そしてお客様に向かって弧を描くようにして並ぶ。半円となったら、正面の真ん中にあたる人から左右に分かれ横の列を作っていく。
円の後ろには騎乗剣舞部隊がいて、剣舞を披露する。剣舞部隊が隊列を変える時も音楽隊が演奏しながら動いてお客さまからの視線を遮るカーテンのような役目をして、また用意ができたら左右に分かれる。そして今度はアクロバットな剣技となり、フィニッシュを決める。
音楽隊の二曲目を披露。
ヤーガン令嬢の独唱。
音楽クラブの曲という編成になるそうだ。
カスタとスズを担当するのは4人なのだが、わたしは4年生のゴチ・マーイン先輩と組んでいる。体が大きいけれど、繊細な音を響かせる。わたしは2曲ともカスタとスズだけど、マーイン先輩はもう一つの曲はピアノを弾かれる。
スズのパートでは手首を叩き音を鳴らす時はそれでいいが、振る時は何かパフォーマンスをするように言われ、手を上にあげ下におろしていくようにしながらスズを振ることを4人で決めた。その時反対の手は腰に当ててとか、注文が増えてくる。苦労はあったが、剣舞と合わせてみたときに、その思いは吹っ飛んだ。ロビ兄たちが本当にかっこよかったのだ。そして自分もその一部になれたようで、すっごく気持ちがいい!
実際の歓待する講堂での練習へと移り変わり、調整もされていく。
歓待が終われば、すぐに初めてのテスト、中間試験がある。授業の方もテストに向けてのラストスパートで、ハードな毎日が続いた。
でも大変だったのは音楽隊だけではなかった。
音楽隊にはスカーフが配られた。これは手芸クラブが用意したらしい。学園の保安に関しても、風紀委員などが駆り出され、それぞれなんらかの役目を背負わされていた。
前日のリハーサルに持ち込めた日は、感無量だった。先生たちも、明日がゴールだというのに、すでに涙を浮かべている。プレッシャーも半端なかったのだろう。
通しで見ることができたので、ヤーガン令嬢の独唱を聞くこともできた。透き通るような歌声で聴くものを魅了する。声であんなにいろんな表現をすることができるんだと感動した。
音楽クラブの演奏はさすがで、即席音楽隊は悔しさと共に、身の引き締まる思いだった。
このリハーサルは生徒なら誰でも見てよかったので、多くの人が詰めかけた。なかでも剣舞は大人気でその日のうちにファンクラブができたほどだ。ロビ兄も通るだけで女の子たちの黄色い声があがった。お嬢さまでも、ミーハーになる時はなるんだと、新鮮な驚きだ。でも、うん、マジでロビ兄かっこよかったもん。舞いだからしなやかはしなやかなどこまでも剣の踊りなんだけど、最後に突き出すところとかがキレッキレだったからね。
明日やってくる視察団体は、世界子供教育支援団体で、世界的規模で子供の教育を考えたり支援している団体だそうだ。ユオブリアの学園は歴史が古いし、視察の申し入れはずっと前からあったらしい。滞在は3日で、後の2日では授業を好きに見て回るそうだ。
いつも音が氾濫するところで一室に籠もってやっている。だから先生からの開放感ある提案はとても素敵に思えた。
屋上から学園を見下ろす。緑が生き生きとしていた。日差しが強く、緑が眩しく感じる。ふと足元にも小さな雑草が花を咲かせていることに気づいた。土もないのに、たくましい。
シュタイン領の森も生命の息吹で溢れ、眩しいのだろうなと思いを馳せる。川にも行きたいな。日差しの強い時は足を水につけるととっても気持ちがいいのだ。
先生が手を叩いて、練習を始めるぞと言った。現実にひきもどされる。
まずはパレードの曲だ。
打楽器の中でメロディーラインを奏でるのはベルリラだ。
夢の世界に誘ってくれそうな甘い音が響く。
「ベルリラ、やりたかったのかい?」
オスカーがこそっと言ってきた。
「お、音がきれいだから」
羨ましそうに見ていたのかと恥ずかしくなる。
「そんな顔もするんだね」
何が言いたいわけ?と尋ねようとしたがカスタの出番だ。ここはもうひたすら拍子をとる。さらに早めていき、フィニッシュとばかりにシンバルが鳴る。
曲は中盤へと移行した。次はスズだ。出番はもう少し先だ。
え? ギャラリー? 音がしたから気になったようで生徒が何人かずつの塊で屋上へとあがってきた。なんか、すっごく見られている。居心地が悪い。
「当日はもっと人目があるぞ」
イソシン先生が言った。確かにそうだ。
うわっ。この視線にも慣れないとなんだ。
週末になり家に帰ればロビ兄が傷だらけだった。新しいパフォーマンスを編み出しているそうで、その練習でできた傷らしい。あんなに運動神経が良いロビ兄でさえ練習に練習を重ねて頑張るんだと思うと、わたしも努力をしなくちゃなと思えた。
次の週からは音合わせが始まった。主音が入ってくると俄然、曲らしくなってくる。先生たちの勢いに押されてというのもあるけれど、やはり何かが形になっていくところは感動がある。音がまとまりだすと、演習場で歩きながら演奏する練習が始まる。演奏しながら歩くのはなかなか難易度が高かった。いつもは先生の指揮に合わせていたが、行進しながらだと耳だけが頼りになる。そしてその耳だけが頼りの指針は打楽器のリズムになるのだ。ドラムっていうか、大太鼓と小太鼓部隊が重要になってくる。
歓待の宴の流れはこうだ。
音をかき鳴らしながらわたしたちが入場、そしてお客様に向かって弧を描くようにして並ぶ。半円となったら、正面の真ん中にあたる人から左右に分かれ横の列を作っていく。
円の後ろには騎乗剣舞部隊がいて、剣舞を披露する。剣舞部隊が隊列を変える時も音楽隊が演奏しながら動いてお客さまからの視線を遮るカーテンのような役目をして、また用意ができたら左右に分かれる。そして今度はアクロバットな剣技となり、フィニッシュを決める。
音楽隊の二曲目を披露。
ヤーガン令嬢の独唱。
音楽クラブの曲という編成になるそうだ。
カスタとスズを担当するのは4人なのだが、わたしは4年生のゴチ・マーイン先輩と組んでいる。体が大きいけれど、繊細な音を響かせる。わたしは2曲ともカスタとスズだけど、マーイン先輩はもう一つの曲はピアノを弾かれる。
スズのパートでは手首を叩き音を鳴らす時はそれでいいが、振る時は何かパフォーマンスをするように言われ、手を上にあげ下におろしていくようにしながらスズを振ることを4人で決めた。その時反対の手は腰に当ててとか、注文が増えてくる。苦労はあったが、剣舞と合わせてみたときに、その思いは吹っ飛んだ。ロビ兄たちが本当にかっこよかったのだ。そして自分もその一部になれたようで、すっごく気持ちがいい!
実際の歓待する講堂での練習へと移り変わり、調整もされていく。
歓待が終われば、すぐに初めてのテスト、中間試験がある。授業の方もテストに向けてのラストスパートで、ハードな毎日が続いた。
でも大変だったのは音楽隊だけではなかった。
音楽隊にはスカーフが配られた。これは手芸クラブが用意したらしい。学園の保安に関しても、風紀委員などが駆り出され、それぞれなんらかの役目を背負わされていた。
前日のリハーサルに持ち込めた日は、感無量だった。先生たちも、明日がゴールだというのに、すでに涙を浮かべている。プレッシャーも半端なかったのだろう。
通しで見ることができたので、ヤーガン令嬢の独唱を聞くこともできた。透き通るような歌声で聴くものを魅了する。声であんなにいろんな表現をすることができるんだと感動した。
音楽クラブの演奏はさすがで、即席音楽隊は悔しさと共に、身の引き締まる思いだった。
このリハーサルは生徒なら誰でも見てよかったので、多くの人が詰めかけた。なかでも剣舞は大人気でその日のうちにファンクラブができたほどだ。ロビ兄も通るだけで女の子たちの黄色い声があがった。お嬢さまでも、ミーハーになる時はなるんだと、新鮮な驚きだ。でも、うん、マジでロビ兄かっこよかったもん。舞いだからしなやかはしなやかなどこまでも剣の踊りなんだけど、最後に突き出すところとかがキレッキレだったからね。
明日やってくる視察団体は、世界子供教育支援団体で、世界的規模で子供の教育を考えたり支援している団体だそうだ。ユオブリアの学園は歴史が古いし、視察の申し入れはずっと前からあったらしい。滞在は3日で、後の2日では授業を好きに見て回るそうだ。
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