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7章 闘います、勝ち取るまでは
第296話 即席音楽隊
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先生たちが入ってきた。お嬢さん先生以外も音楽担当の先生だった。
ただ教室に入ってきただけなのに、先生たちの〝本気度〟をわたしたちは感じた。外国の人を歓待するわけだから、学園の面子がかかっており、意気込みを無理もないと思う反面、非常に厄介そうだと思ってしまう。
先生が最初に口にしたのは「時間がない」だった。
練習時間を確保するために、その他の決めることなどは素早くと言い含められる。曲や踊りを決めるのは先生だと言った。
踊り? 演奏じゃなくて?
頭の中は疑問でいっぱいだったが、質問ができる雰囲気ではない。
わたしたち即席音楽隊が演奏するのは2曲。それをひと月でマスターし、仕上げないとならないらしい。
ひとつは騎乗剣舞のバックミュージックとなり、その時は楽器を持ち演奏しながら歩いたり踊ったりするという。なぜ、無駄に難易度をあげる?
もうひとつは、普通に演奏するそうだけど。
動きながら演奏するには持ち運べる楽器は決まってくる。曲で違う楽器を受け持ってもらうかもしれないと先生が話した。
歓待の宴?では、音楽隊から2曲、音楽クラブが他に2曲を演奏するそうだ。
それから声楽クラブからは独唱。ヤーガン嬢が歌うんだって。伴奏するのはアイボリー令嬢だそうだ。
先輩の一人が手をあげた。
楽器は誰が決めるのかというもので、先生たちは目を合わせている。
先生たちがある程度決めているそうで、希望があれば変更するってことだった。変更云々は生徒たちの反応で今付け足したことのようにみえた。
楽器が運ばれてきた。騎乗剣舞パレード?の時に使う楽器と、もう一曲で使う楽器。
踊らない曲の時に足される楽器はピアノと、ハープとバイオリンのようだ。嫌な予感がする。
先生たちは時間もないので、習ったことのある楽器を受け持ってもらうつもりだと言った。ああ、それで授業の時に習ったことがある楽器を質問していたのか。
わたしはベルリラっぽい楽器に目が釘付けだった。縦型の鉄琴だ。習ったことないけど、あれならやってみたいな。重たそうだけど。
その他にもクラリネットに似たもの、フルートに似たもの、トロンボーンっぽいやつ、ホルンっぽいやつ、ドラム、シンバルなどがあった。
ハープはわたしにお願いしたいと先生が言った時に、待ったがかかった。A組の1年生がハープをやりたいと言った。セローリア公爵令嬢だそうだ。
再戦が決まり、アベックス女子寮の方々から、わたしは目の敵にされている。ま、無理のない感情だと思っている。A組に友達もいた。だから、条件を少なからず悪いとは思っている。
でも、わたしはドーン寮のメンバーであり、仮でも寮長であり……ううん、わたしもA組にいたら公爵令嬢のいうことにただ頷いていたかもしれない。間違っていると言えないのは仕方ないと、同じようにD組に酷いことをしたと思う。わたしは今、D組にいて開き直るような状況だったから、ご飯のために盛り上がって反発したけれど。
でも、やっぱりね、もし反対意見だったのなら声をあげるべきで、何か行動を起こすべきだったのだ。だから、悪いけど、D組に下した数々のことはヤーガン令嬢だけがしたことではなく、同罪となりA組みんなで〝したこと〟なんだと思う。
処遇が嫌だったらガムシャラに頑張って勝てばいいだけのこと。1年生は去年いなかったのだから完全にとばっちりだけど、1年生の魔法戦を結果に入れることで、いい具合に気持ちを昇華できるのではないかと思う。魔法戦でD組を打ち負かせばいいだけなんだから。
そんな気持ちがあるからという理由ではないけれど、わたしはハープが弾けますって言えるほど弾けるわけではないので、違う楽器で全然いい。でも木管楽器も金管楽器もやったことがないから、やれるとしたら打楽器だ。
先生たちはセローリア嬢にいろいろ言ってみたが、ハープしかやらないと言い出し始めたので、彼女がハープの奏者に決定した。次々と決まっていき、わたしは結局……カスタ(カスタネット)とスズになった。リズム感が良くないので不安はあるが、やったことのない楽器をマスターするより気が楽だ。
早速楽譜が配られた。そして打楽器は打楽器でまとまり、練習を始めるように言われる。
「シュタイン嬢のは軽くていいね」
「オスカーさまのは重たそうですね」
彼はシンバルだった。お互いの楽譜に目を走らせる。シンバル、わたしより出番がある。頑張れ!
わたしは曲の始めで早く打ち鳴らすのと、中盤にスズでリズムを取るだけだ。
もふさまは練習になると耳をパタンと閉じるようにしている。うるさいみたいだ。聴覚がいいだけに、いろんな音が好き勝手にかき鳴らされ、雑音でしかなかったら辛いだろう。
「もふさま、わたしここで練習しているだけだから、避難してていいよ」
こっそり伝えると、迷いを見せたものの、タタっと走って外へと出て行った。
スズを小さく鳴らしたり、大きくしていったり、楽譜通りにやっていると、いい音を響かせていると、先生に褒められた。けれど、カスタに関しては、音が重たすぎる、もっと軽やかに素早くと注意を受けた。打楽器も難しい。
ただ教室に入ってきただけなのに、先生たちの〝本気度〟をわたしたちは感じた。外国の人を歓待するわけだから、学園の面子がかかっており、意気込みを無理もないと思う反面、非常に厄介そうだと思ってしまう。
先生が最初に口にしたのは「時間がない」だった。
練習時間を確保するために、その他の決めることなどは素早くと言い含められる。曲や踊りを決めるのは先生だと言った。
踊り? 演奏じゃなくて?
頭の中は疑問でいっぱいだったが、質問ができる雰囲気ではない。
わたしたち即席音楽隊が演奏するのは2曲。それをひと月でマスターし、仕上げないとならないらしい。
ひとつは騎乗剣舞のバックミュージックとなり、その時は楽器を持ち演奏しながら歩いたり踊ったりするという。なぜ、無駄に難易度をあげる?
もうひとつは、普通に演奏するそうだけど。
動きながら演奏するには持ち運べる楽器は決まってくる。曲で違う楽器を受け持ってもらうかもしれないと先生が話した。
歓待の宴?では、音楽隊から2曲、音楽クラブが他に2曲を演奏するそうだ。
それから声楽クラブからは独唱。ヤーガン嬢が歌うんだって。伴奏するのはアイボリー令嬢だそうだ。
先輩の一人が手をあげた。
楽器は誰が決めるのかというもので、先生たちは目を合わせている。
先生たちがある程度決めているそうで、希望があれば変更するってことだった。変更云々は生徒たちの反応で今付け足したことのようにみえた。
楽器が運ばれてきた。騎乗剣舞パレード?の時に使う楽器と、もう一曲で使う楽器。
踊らない曲の時に足される楽器はピアノと、ハープとバイオリンのようだ。嫌な予感がする。
先生たちは時間もないので、習ったことのある楽器を受け持ってもらうつもりだと言った。ああ、それで授業の時に習ったことがある楽器を質問していたのか。
わたしはベルリラっぽい楽器に目が釘付けだった。縦型の鉄琴だ。習ったことないけど、あれならやってみたいな。重たそうだけど。
その他にもクラリネットに似たもの、フルートに似たもの、トロンボーンっぽいやつ、ホルンっぽいやつ、ドラム、シンバルなどがあった。
ハープはわたしにお願いしたいと先生が言った時に、待ったがかかった。A組の1年生がハープをやりたいと言った。セローリア公爵令嬢だそうだ。
再戦が決まり、アベックス女子寮の方々から、わたしは目の敵にされている。ま、無理のない感情だと思っている。A組に友達もいた。だから、条件を少なからず悪いとは思っている。
でも、わたしはドーン寮のメンバーであり、仮でも寮長であり……ううん、わたしもA組にいたら公爵令嬢のいうことにただ頷いていたかもしれない。間違っていると言えないのは仕方ないと、同じようにD組に酷いことをしたと思う。わたしは今、D組にいて開き直るような状況だったから、ご飯のために盛り上がって反発したけれど。
でも、やっぱりね、もし反対意見だったのなら声をあげるべきで、何か行動を起こすべきだったのだ。だから、悪いけど、D組に下した数々のことはヤーガン令嬢だけがしたことではなく、同罪となりA組みんなで〝したこと〟なんだと思う。
処遇が嫌だったらガムシャラに頑張って勝てばいいだけのこと。1年生は去年いなかったのだから完全にとばっちりだけど、1年生の魔法戦を結果に入れることで、いい具合に気持ちを昇華できるのではないかと思う。魔法戦でD組を打ち負かせばいいだけなんだから。
そんな気持ちがあるからという理由ではないけれど、わたしはハープが弾けますって言えるほど弾けるわけではないので、違う楽器で全然いい。でも木管楽器も金管楽器もやったことがないから、やれるとしたら打楽器だ。
先生たちはセローリア嬢にいろいろ言ってみたが、ハープしかやらないと言い出し始めたので、彼女がハープの奏者に決定した。次々と決まっていき、わたしは結局……カスタ(カスタネット)とスズになった。リズム感が良くないので不安はあるが、やったことのない楽器をマスターするより気が楽だ。
早速楽譜が配られた。そして打楽器は打楽器でまとまり、練習を始めるように言われる。
「シュタイン嬢のは軽くていいね」
「オスカーさまのは重たそうですね」
彼はシンバルだった。お互いの楽譜に目を走らせる。シンバル、わたしより出番がある。頑張れ!
わたしは曲の始めで早く打ち鳴らすのと、中盤にスズでリズムを取るだけだ。
もふさまは練習になると耳をパタンと閉じるようにしている。うるさいみたいだ。聴覚がいいだけに、いろんな音が好き勝手にかき鳴らされ、雑音でしかなかったら辛いだろう。
「もふさま、わたしここで練習しているだけだから、避難してていいよ」
こっそり伝えると、迷いを見せたものの、タタっと走って外へと出て行った。
スズを小さく鳴らしたり、大きくしていったり、楽譜通りにやっていると、いい音を響かせていると、先生に褒められた。けれど、カスタに関しては、音が重たすぎる、もっと軽やかに素早くと注意を受けた。打楽器も難しい。
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