284 / 893
7章 闘います、勝ち取るまでは
第284話 南食堂
しおりを挟む
お昼になった。みんなに心配してもらいながら、量重視という南の食堂に行ってみることに。
わたしは保健室に行っていたところのノートをジョセフィンから書き写させてもらうオーケーを取り付けた。緑草が魔力の多い人に寄生することも先生は話したようだ。わたしもメーゼを処方すると青緑の手が肌色に戻った様子を話した。見た目は〝ニラ〟なのに、シダ系や菌類みたいに胞子を飛ばすとは。前世とは似て非なる世界とわかっていても、固定概念みたいのが邪魔をして時々すっごく変とその思いに囚われてしまう。
食堂につき、わたしたちはすぐに怖気づいた。
上級生の体の大きな人たちばかりというところもだが、テーブルの上のお皿を見て、とても食べられる量ではないと思えたからだ。
「ふたりでひとつだね」
今から他の食堂に移動する選択肢はないようだ。
5人だからどうしようかと思ったけど、わたしともふさまが分け合えば問題ないかと、食堂に入った。
女子が来るのは珍しいらしく、注目される。
「いち姫!」
フォンタナ家のシモーネだ。
「シモーネ」
「ここ、量が半端じゃないぞ。いち姫に完食は無理だ」
「もふさまいるから平気」
そう言うと、シモーネはもふさまに視線を落とした。屈み込んでもふさまをわしゃわしゃする。
「ああ、そっか。お遣いさまを中に住まわせてるんだってな、お前、すごいな」
力任せに撫でることが多いフォンタナ一族の中でシモーネは繊細な心遣いができる人だ。だからもふさまも触られるのを嫌がらない。ケラはこの頃力が強くなってきたので、もふさまは避けるようになってきた。
「いち、ひめ?」
レニータにゆっくりと呟かれ、顔が赤くなったのではないかと思う。
「フォンタナ家では女の子が生まれにくいみたいで、わたし、貴重なの」
恥ずかしさでわけのわからない説明とは言いがたいものだったが、その話はしないでというわたしの信号に気づいてか、それ以上突っ込まれなかった。
シモーネは丁寧に食堂の使い方を教えてくれた。食堂によって仕様が違うので大変ありがたい。付き添ってくれたので、大きい人たちに挟まれていたけど萎縮せず食事を頼むことができ、ふたりでひとつを食べるのだとも伝えられたので、1年生の女の子だから特別だと食器をもうひとセット用意してもらうことができた。
テーブルも席取りをしてくれて、食べる時になると「ごゆっくり」と去っていった。
シモーネが去ると遠慮なく視線が突き刺さったが、彼は一目置かれる存在であるようで、わたしたちとシモーネが知った仲だと印象付けられたからか、遠巻きに見られるだけだった。わたしは、それを狙ってシモーネが一緒にいてくれたのだと気づき、心の中で感謝した。
ふたりでひとつでも多い。大きなお皿にてんこ盛りだ。おいしいけど3人でひと皿でいいぐらいかもしれない。味付けが濃い。パンで中和し、あと引くおいしさでおかずを口にの無限ループだ。
多い、おいしいといいながら、話題にのぼったのは偽アダムのことだった。かっこいいけど得体の知れない感じがするというのがみんなの共通する意見だ。
もふさまは自分の分の特盛りをリュックの中に差し入れ、わたしと分けっこしたものを食べた。わたしが食べ終わる前に、もふさまは完食していた。
「小さいけど、いっぱい食べられるのね」
レニータたちはもふさまが特盛りプラスわたしと分け合った分も食べたんだと思っているから驚いている。
「ねー、リディア、再戦はどうするの? 魔法戦はナシ?」
「男子寮も巻き込むとなると、難しいかもね」
でも、試験の総合点だけだと、どこか不安だ。
「総合点だけだと不安だよね?」
わたしと同じ考えだ。レニータの発言にみんなの視線が下を向く。
「みんなが家のお手伝いをしていた頃、あちらは先生がついて歴史やら成り立ちやら魔法のことを教えてもらってきただろうからね」
押し黙ってしまった。
「逆にいうと、みんなの方が市場での買い物は上手なんじゃないかな? 値切り方とか。工夫して何かを使うとかもね。だからね、魔法戦だとみんなのそういういいところが強みになるんじゃないかなって思ってたんだ」
「リディアが言うなら確かだね」
ジョセフィンが静かに言った。
掃除でも出来上がっている道具や高い洗剤を買えない代わりに、代用品や生活の知恵を駆使していた。そういう考え方は、魔法戦みたいので遺憾無く発揮できるだろうと思った。魔法戦の習い始めは一緒だから、スタート前からの差はないはずだし。何か魔法戦に代わるものを考えないと……。
午後の授業が始まる5分前の予鈴がなって、わたしたちは慌ただしく席を立った。
わたしは保健室に行っていたところのノートをジョセフィンから書き写させてもらうオーケーを取り付けた。緑草が魔力の多い人に寄生することも先生は話したようだ。わたしもメーゼを処方すると青緑の手が肌色に戻った様子を話した。見た目は〝ニラ〟なのに、シダ系や菌類みたいに胞子を飛ばすとは。前世とは似て非なる世界とわかっていても、固定概念みたいのが邪魔をして時々すっごく変とその思いに囚われてしまう。
食堂につき、わたしたちはすぐに怖気づいた。
上級生の体の大きな人たちばかりというところもだが、テーブルの上のお皿を見て、とても食べられる量ではないと思えたからだ。
「ふたりでひとつだね」
今から他の食堂に移動する選択肢はないようだ。
5人だからどうしようかと思ったけど、わたしともふさまが分け合えば問題ないかと、食堂に入った。
女子が来るのは珍しいらしく、注目される。
「いち姫!」
フォンタナ家のシモーネだ。
「シモーネ」
「ここ、量が半端じゃないぞ。いち姫に完食は無理だ」
「もふさまいるから平気」
そう言うと、シモーネはもふさまに視線を落とした。屈み込んでもふさまをわしゃわしゃする。
「ああ、そっか。お遣いさまを中に住まわせてるんだってな、お前、すごいな」
力任せに撫でることが多いフォンタナ一族の中でシモーネは繊細な心遣いができる人だ。だからもふさまも触られるのを嫌がらない。ケラはこの頃力が強くなってきたので、もふさまは避けるようになってきた。
「いち、ひめ?」
レニータにゆっくりと呟かれ、顔が赤くなったのではないかと思う。
「フォンタナ家では女の子が生まれにくいみたいで、わたし、貴重なの」
恥ずかしさでわけのわからない説明とは言いがたいものだったが、その話はしないでというわたしの信号に気づいてか、それ以上突っ込まれなかった。
シモーネは丁寧に食堂の使い方を教えてくれた。食堂によって仕様が違うので大変ありがたい。付き添ってくれたので、大きい人たちに挟まれていたけど萎縮せず食事を頼むことができ、ふたりでひとつを食べるのだとも伝えられたので、1年生の女の子だから特別だと食器をもうひとセット用意してもらうことができた。
テーブルも席取りをしてくれて、食べる時になると「ごゆっくり」と去っていった。
シモーネが去ると遠慮なく視線が突き刺さったが、彼は一目置かれる存在であるようで、わたしたちとシモーネが知った仲だと印象付けられたからか、遠巻きに見られるだけだった。わたしは、それを狙ってシモーネが一緒にいてくれたのだと気づき、心の中で感謝した。
ふたりでひとつでも多い。大きなお皿にてんこ盛りだ。おいしいけど3人でひと皿でいいぐらいかもしれない。味付けが濃い。パンで中和し、あと引くおいしさでおかずを口にの無限ループだ。
多い、おいしいといいながら、話題にのぼったのは偽アダムのことだった。かっこいいけど得体の知れない感じがするというのがみんなの共通する意見だ。
もふさまは自分の分の特盛りをリュックの中に差し入れ、わたしと分けっこしたものを食べた。わたしが食べ終わる前に、もふさまは完食していた。
「小さいけど、いっぱい食べられるのね」
レニータたちはもふさまが特盛りプラスわたしと分け合った分も食べたんだと思っているから驚いている。
「ねー、リディア、再戦はどうするの? 魔法戦はナシ?」
「男子寮も巻き込むとなると、難しいかもね」
でも、試験の総合点だけだと、どこか不安だ。
「総合点だけだと不安だよね?」
わたしと同じ考えだ。レニータの発言にみんなの視線が下を向く。
「みんなが家のお手伝いをしていた頃、あちらは先生がついて歴史やら成り立ちやら魔法のことを教えてもらってきただろうからね」
押し黙ってしまった。
「逆にいうと、みんなの方が市場での買い物は上手なんじゃないかな? 値切り方とか。工夫して何かを使うとかもね。だからね、魔法戦だとみんなのそういういいところが強みになるんじゃないかなって思ってたんだ」
「リディアが言うなら確かだね」
ジョセフィンが静かに言った。
掃除でも出来上がっている道具や高い洗剤を買えない代わりに、代用品や生活の知恵を駆使していた。そういう考え方は、魔法戦みたいので遺憾無く発揮できるだろうと思った。魔法戦の習い始めは一緒だから、スタート前からの差はないはずだし。何か魔法戦に代わるものを考えないと……。
午後の授業が始まる5分前の予鈴がなって、わたしたちは慌ただしく席を立った。
116
お気に入りに追加
1,312
あなたにおすすめの小説

転生した愛し子は幸せを知る
ひつ
ファンタジー
【連載再開】
長らくお待たせしました!休載状態でしたが今月より復帰できそうです(手術後でまだリハビリ中のため不定期になります)。これからもどうぞ宜しくお願いします(^^)
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。
次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!
転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。
結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。
第13回ファンタジー大賞 176位
第14回ファンタジー大賞 76位
第15回ファンタジー大賞 70位
ありがとうございます(●´ω`●)

農民の少年は混沌竜と契約しました
アルセクト
ファンタジー
極々普通で特にこれといった長所もない少年は、魔法の存在する世界に住む小さな国の小さな村の小さな家の農家の跡取りとして過ごしていた
少年は15の者が皆行う『従魔召喚の儀』で生活に便利な虹亀を願ったはずがなんの間違えか世界最強の生物『竜』、更にその頂点である『混沌竜』が召喚された
これはそんな極々普通の少年と最強の生物である混沌竜が送るノンビリハチャメチャな物語

(短編)いずれ追放される悪役令嬢に生まれ変わったけど、原作補正を頼りに生きます。
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約破棄からの追放される悪役令嬢に生まれ変わったと気づいて、シャーロットは王妃様の前で屁をこいた。なのに王子の婚約者になってしまう。どうやら強固な強制力が働いていて、どうあがいてもヒロインをいじめ、王子に婚約を破棄され追放……あれ、待てよ? だったら、私、その日まで不死身なのでは?

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。


婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる