284 / 894
7章 闘います、勝ち取るまでは
第284話 南食堂
しおりを挟む
お昼になった。みんなに心配してもらいながら、量重視という南の食堂に行ってみることに。
わたしは保健室に行っていたところのノートをジョセフィンから書き写させてもらうオーケーを取り付けた。緑草が魔力の多い人に寄生することも先生は話したようだ。わたしもメーゼを処方すると青緑の手が肌色に戻った様子を話した。見た目は〝ニラ〟なのに、シダ系や菌類みたいに胞子を飛ばすとは。前世とは似て非なる世界とわかっていても、固定概念みたいのが邪魔をして時々すっごく変とその思いに囚われてしまう。
食堂につき、わたしたちはすぐに怖気づいた。
上級生の体の大きな人たちばかりというところもだが、テーブルの上のお皿を見て、とても食べられる量ではないと思えたからだ。
「ふたりでひとつだね」
今から他の食堂に移動する選択肢はないようだ。
5人だからどうしようかと思ったけど、わたしともふさまが分け合えば問題ないかと、食堂に入った。
女子が来るのは珍しいらしく、注目される。
「いち姫!」
フォンタナ家のシモーネだ。
「シモーネ」
「ここ、量が半端じゃないぞ。いち姫に完食は無理だ」
「もふさまいるから平気」
そう言うと、シモーネはもふさまに視線を落とした。屈み込んでもふさまをわしゃわしゃする。
「ああ、そっか。お遣いさまを中に住まわせてるんだってな、お前、すごいな」
力任せに撫でることが多いフォンタナ一族の中でシモーネは繊細な心遣いができる人だ。だからもふさまも触られるのを嫌がらない。ケラはこの頃力が強くなってきたので、もふさまは避けるようになってきた。
「いち、ひめ?」
レニータにゆっくりと呟かれ、顔が赤くなったのではないかと思う。
「フォンタナ家では女の子が生まれにくいみたいで、わたし、貴重なの」
恥ずかしさでわけのわからない説明とは言いがたいものだったが、その話はしないでというわたしの信号に気づいてか、それ以上突っ込まれなかった。
シモーネは丁寧に食堂の使い方を教えてくれた。食堂によって仕様が違うので大変ありがたい。付き添ってくれたので、大きい人たちに挟まれていたけど萎縮せず食事を頼むことができ、ふたりでひとつを食べるのだとも伝えられたので、1年生の女の子だから特別だと食器をもうひとセット用意してもらうことができた。
テーブルも席取りをしてくれて、食べる時になると「ごゆっくり」と去っていった。
シモーネが去ると遠慮なく視線が突き刺さったが、彼は一目置かれる存在であるようで、わたしたちとシモーネが知った仲だと印象付けられたからか、遠巻きに見られるだけだった。わたしは、それを狙ってシモーネが一緒にいてくれたのだと気づき、心の中で感謝した。
ふたりでひとつでも多い。大きなお皿にてんこ盛りだ。おいしいけど3人でひと皿でいいぐらいかもしれない。味付けが濃い。パンで中和し、あと引くおいしさでおかずを口にの無限ループだ。
多い、おいしいといいながら、話題にのぼったのは偽アダムのことだった。かっこいいけど得体の知れない感じがするというのがみんなの共通する意見だ。
もふさまは自分の分の特盛りをリュックの中に差し入れ、わたしと分けっこしたものを食べた。わたしが食べ終わる前に、もふさまは完食していた。
「小さいけど、いっぱい食べられるのね」
レニータたちはもふさまが特盛りプラスわたしと分け合った分も食べたんだと思っているから驚いている。
「ねー、リディア、再戦はどうするの? 魔法戦はナシ?」
「男子寮も巻き込むとなると、難しいかもね」
でも、試験の総合点だけだと、どこか不安だ。
「総合点だけだと不安だよね?」
わたしと同じ考えだ。レニータの発言にみんなの視線が下を向く。
「みんなが家のお手伝いをしていた頃、あちらは先生がついて歴史やら成り立ちやら魔法のことを教えてもらってきただろうからね」
押し黙ってしまった。
「逆にいうと、みんなの方が市場での買い物は上手なんじゃないかな? 値切り方とか。工夫して何かを使うとかもね。だからね、魔法戦だとみんなのそういういいところが強みになるんじゃないかなって思ってたんだ」
「リディアが言うなら確かだね」
ジョセフィンが静かに言った。
掃除でも出来上がっている道具や高い洗剤を買えない代わりに、代用品や生活の知恵を駆使していた。そういう考え方は、魔法戦みたいので遺憾無く発揮できるだろうと思った。魔法戦の習い始めは一緒だから、スタート前からの差はないはずだし。何か魔法戦に代わるものを考えないと……。
午後の授業が始まる5分前の予鈴がなって、わたしたちは慌ただしく席を立った。
わたしは保健室に行っていたところのノートをジョセフィンから書き写させてもらうオーケーを取り付けた。緑草が魔力の多い人に寄生することも先生は話したようだ。わたしもメーゼを処方すると青緑の手が肌色に戻った様子を話した。見た目は〝ニラ〟なのに、シダ系や菌類みたいに胞子を飛ばすとは。前世とは似て非なる世界とわかっていても、固定概念みたいのが邪魔をして時々すっごく変とその思いに囚われてしまう。
食堂につき、わたしたちはすぐに怖気づいた。
上級生の体の大きな人たちばかりというところもだが、テーブルの上のお皿を見て、とても食べられる量ではないと思えたからだ。
「ふたりでひとつだね」
今から他の食堂に移動する選択肢はないようだ。
5人だからどうしようかと思ったけど、わたしともふさまが分け合えば問題ないかと、食堂に入った。
女子が来るのは珍しいらしく、注目される。
「いち姫!」
フォンタナ家のシモーネだ。
「シモーネ」
「ここ、量が半端じゃないぞ。いち姫に完食は無理だ」
「もふさまいるから平気」
そう言うと、シモーネはもふさまに視線を落とした。屈み込んでもふさまをわしゃわしゃする。
「ああ、そっか。お遣いさまを中に住まわせてるんだってな、お前、すごいな」
力任せに撫でることが多いフォンタナ一族の中でシモーネは繊細な心遣いができる人だ。だからもふさまも触られるのを嫌がらない。ケラはこの頃力が強くなってきたので、もふさまは避けるようになってきた。
「いち、ひめ?」
レニータにゆっくりと呟かれ、顔が赤くなったのではないかと思う。
「フォンタナ家では女の子が生まれにくいみたいで、わたし、貴重なの」
恥ずかしさでわけのわからない説明とは言いがたいものだったが、その話はしないでというわたしの信号に気づいてか、それ以上突っ込まれなかった。
シモーネは丁寧に食堂の使い方を教えてくれた。食堂によって仕様が違うので大変ありがたい。付き添ってくれたので、大きい人たちに挟まれていたけど萎縮せず食事を頼むことができ、ふたりでひとつを食べるのだとも伝えられたので、1年生の女の子だから特別だと食器をもうひとセット用意してもらうことができた。
テーブルも席取りをしてくれて、食べる時になると「ごゆっくり」と去っていった。
シモーネが去ると遠慮なく視線が突き刺さったが、彼は一目置かれる存在であるようで、わたしたちとシモーネが知った仲だと印象付けられたからか、遠巻きに見られるだけだった。わたしは、それを狙ってシモーネが一緒にいてくれたのだと気づき、心の中で感謝した。
ふたりでひとつでも多い。大きなお皿にてんこ盛りだ。おいしいけど3人でひと皿でいいぐらいかもしれない。味付けが濃い。パンで中和し、あと引くおいしさでおかずを口にの無限ループだ。
多い、おいしいといいながら、話題にのぼったのは偽アダムのことだった。かっこいいけど得体の知れない感じがするというのがみんなの共通する意見だ。
もふさまは自分の分の特盛りをリュックの中に差し入れ、わたしと分けっこしたものを食べた。わたしが食べ終わる前に、もふさまは完食していた。
「小さいけど、いっぱい食べられるのね」
レニータたちはもふさまが特盛りプラスわたしと分け合った分も食べたんだと思っているから驚いている。
「ねー、リディア、再戦はどうするの? 魔法戦はナシ?」
「男子寮も巻き込むとなると、難しいかもね」
でも、試験の総合点だけだと、どこか不安だ。
「総合点だけだと不安だよね?」
わたしと同じ考えだ。レニータの発言にみんなの視線が下を向く。
「みんなが家のお手伝いをしていた頃、あちらは先生がついて歴史やら成り立ちやら魔法のことを教えてもらってきただろうからね」
押し黙ってしまった。
「逆にいうと、みんなの方が市場での買い物は上手なんじゃないかな? 値切り方とか。工夫して何かを使うとかもね。だからね、魔法戦だとみんなのそういういいところが強みになるんじゃないかなって思ってたんだ」
「リディアが言うなら確かだね」
ジョセフィンが静かに言った。
掃除でも出来上がっている道具や高い洗剤を買えない代わりに、代用品や生活の知恵を駆使していた。そういう考え方は、魔法戦みたいので遺憾無く発揮できるだろうと思った。魔法戦の習い始めは一緒だから、スタート前からの差はないはずだし。何か魔法戦に代わるものを考えないと……。
午後の授業が始まる5分前の予鈴がなって、わたしたちは慌ただしく席を立った。
116
お気に入りに追加
1,311
あなたにおすすめの小説

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月
りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。
1話だいたい1500字くらいを想定してます。
1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。
更新は不定期。
完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。
恋愛とファンタジーの中間のような話です。
主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

転生した愛し子は幸せを知る
ひつ
ファンタジー
【連載再開】
長らくお待たせしました!休載状態でしたが今月より復帰できそうです(手術後でまだリハビリ中のため不定期になります)。これからもどうぞ宜しくお願いします(^^)
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。
次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!
転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。
結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。
第13回ファンタジー大賞 176位
第14回ファンタジー大賞 76位
第15回ファンタジー大賞 70位
ありがとうございます(●´ω`●)

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜
八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」
侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。
その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。
フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。
そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。
そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。
死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて……
※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。

転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)

余命3ヶ月を言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のセイラは、ずっと孤独の中生きてきた。自分に興味のない父や婚約者で王太子のロイド。
特に王宮での居場所はなく、教育係には嫌味を言われ、王宮使用人たちからは、心無い噂を流される始末。さらに婚約者のロイドの傍には、美しくて人当たりの良い侯爵令嬢のミーアがいた。
ロイドを愛していたセイラは、辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになるのを必死に耐えていたのだ。
毎日息苦しい生活を強いられているせいか、最近ずっと調子が悪い。でもそれはきっと、気のせいだろう、そう思っていたセイラだが、ある日吐血してしまう。
診察の結果、母と同じ不治の病に掛かっており、余命3ヶ月と宣言されてしまったのだ。
もう残りわずかしか生きられないのなら、愛するロイドを解放してあげよう。そして自分は、屋敷でひっそりと最期を迎えよう。そう考えていたセイラ。
一方セイラが余命宣告を受けた事を知ったロイドは…
※両想いなのにすれ違っていた2人が、幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いいたします。
他サイトでも同時投稿中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる