プラス的 異世界の過ごし方

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7章 闘います、勝ち取るまでは

第284話 南食堂

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 お昼になった。みんなに心配してもらいながら、量重視という南の食堂に行ってみることに。
 わたしは保健室に行っていたところのノートをジョセフィンから書き写させてもらうオーケーを取り付けた。緑草が魔力の多い人に寄生することも先生は話したようだ。わたしもメーゼを処方すると青緑の手が肌色に戻った様子を話した。見た目は〝ニラ〟なのに、シダ系や菌類みたいに胞子を飛ばすとは。前世とは似て非なる世界とわかっていても、固定概念みたいのが邪魔をして時々すっごく変とその思いに囚われてしまう。

 食堂につき、わたしたちはすぐに怖気づいた。
 上級生の体の大きな人たちばかりというところもだが、テーブルの上のお皿を見て、とても食べられる量ではないと思えたからだ。

「ふたりでひとつだね」

 今から他の食堂に移動する選択肢はないようだ。
 5人だからどうしようかと思ったけど、わたしともふさまが分け合えば問題ないかと、食堂に入った。
 女子が来るのは珍しいらしく、注目される。

「いち姫!」

 フォンタナ家のシモーネだ。

「シモーネ」

「ここ、量が半端じゃないぞ。いち姫に完食は無理だ」

「もふさまいるから平気」

 そう言うと、シモーネはもふさまに視線を落とした。屈み込んでもふさまをわしゃわしゃする。

「ああ、そっか。お遣いさまを中に住まわせてるんだってな、お前、すごいな」

 力任せに撫でることが多いフォンタナ一族の中でシモーネは繊細な心遣いができる人だ。だからもふさまも触られるのを嫌がらない。ケラはこの頃力が強くなってきたので、もふさまは避けるようになってきた。

「いち、ひめ?」

 レニータにゆっくりと呟かれ、顔が赤くなったのではないかと思う。

「フォンタナ家では女の子が生まれにくいみたいで、わたし、貴重なの」

 恥ずかしさでわけのわからない説明とは言いがたいものだったが、その話はしないでというわたしの信号に気づいてか、それ以上突っ込まれなかった。

 シモーネは丁寧に食堂の使い方を教えてくれた。食堂によって仕様が違うので大変ありがたい。付き添ってくれたので、大きい人たちに挟まれていたけど萎縮せず食事を頼むことができ、ふたりでひとつを食べるのだとも伝えられたので、1年生の女の子だから特別だと食器をもうひとセット用意してもらうことができた。
 テーブルも席取りをしてくれて、食べる時になると「ごゆっくり」と去っていった。

 シモーネが去ると遠慮なく視線が突き刺さったが、彼は一目置かれる存在であるようで、わたしたちとシモーネが知った仲だと印象付けられたからか、遠巻きに見られるだけだった。わたしは、それを狙ってシモーネが一緒にいてくれたのだと気づき、心の中で感謝した。

 ふたりでひとつでも多い。大きなお皿にてんこ盛りだ。おいしいけど3人でひと皿でいいぐらいかもしれない。味付けが濃い。パンで中和し、あと引くおいしさでおかずを口にの無限ループだ。
 多い、おいしいといいながら、話題にのぼったのは偽アダムのことだった。かっこいいけど得体の知れない感じがするというのがみんなの共通する意見だ。
 もふさまは自分の分の特盛りをリュックの中に差し入れ、わたしと分けっこしたものを食べた。わたしが食べ終わる前に、もふさまは完食していた。

「小さいけど、いっぱい食べられるのね」

 レニータたちはもふさまが特盛りプラスわたしと分け合った分も食べたんだと思っているから驚いている。

「ねー、リディア、再戦はどうするの? 魔法戦はナシ?」

「男子寮も巻き込むとなると、難しいかもね」

 でも、試験の総合点だけだと、どこか不安だ。

「総合点だけだと不安だよね?」

 わたしと同じ考えだ。レニータの発言にみんなの視線が下を向く。

「みんなが家のお手伝いをしていた頃、あちらは先生がついて歴史やら成り立ちやら魔法のことを教えてもらってきただろうからね」

 押し黙ってしまった。

「逆にいうと、みんなの方が市場での買い物は上手なんじゃないかな? 値切り方とか。工夫して何かを使うとかもね。だからね、魔法戦だとみんなのそういういいところが強みになるんじゃないかなって思ってたんだ」

「リディアが言うなら確かだね」

 ジョセフィンが静かに言った。

 掃除でも出来上がっている道具や高い洗剤を買えない代わりに、代用品や生活の知恵を駆使していた。そういう考え方は、魔法戦みたいので遺憾無く発揮できるだろうと思った。魔法戦の習い始めは一緒だから、スタート前からの差はないはずだし。何か魔法戦に代わるものを考えないと……。

 午後の授業が始まる5分前の予鈴がなって、わたしたちは慌ただしく席を立った。
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