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6章 楽しい学園生活のハズ
第269話 総会前・寮長と決めたこと(前編)
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「今日の朝ごはん、リディアが手伝ったんでしょう? すっごくおいしかった!」
「うん、それにお腹がいっぱいになったよ」
それはよかったと笑いあう。
寮から学園へとみんなで向かいながら話していると、前方にガネット先輩をみつけた。
「ガネット先輩」
声を掛けると先輩がピクッとして立ち止まる。
周りの人たちに緊張が走ったように見えた。
「ミス・スコッティーから他の寮長に報告に行くように言われました。一緒に行っていただけますか?」
「あなた、ガネット自ら報告をしろと?」
確かに〝辞めさせられた〟話になっているのだから、ひどいとは自覚はしている。
「他の寮長をわたしは知りませんから」
ジャネット先輩の顔が怒りを含んで赤くなる。
「ジャネット、いいのよ。わかったわ。朝にする? それとも放課後?」
「それでは朝、このままご一緒させてもらってもいいですか?」
「そうね、嫌なことは早く終わらせないと」
事情を知っているレニータたちでさえ、顔がこわばっている。
ごめんと思いながらガネット先輩と歩き出した。
チラッと周りを見て、会話が聞こえる距離に誰もいないのを認めると、ガネット先輩は大きく息をついた。
「ごめんなさいね。あなたの評判を落としてしまったわ」
「もともとないので、気になさらないでください」
「みんな私たちが打ち合わせをしていたとは気づいてないわ」
「はい、大丈夫そうですね。ミス・スコッティーが怪しいです。盛んに報告という言葉を使います。ヤーガン令嬢をお嬢さまと言ってましたし」
「そうでしょうね。でも、寮の子の中にも繋がっている子がいるかもしれないから……再戦が決まるまでは気を抜かないで」
「ラジャー」
先輩がジロリとわたしに目を向ける。
「……ラジャーって何?」
「了解しましたって意味です」
「後で詳しく聞かせてほしいけど、ジャネットからおおよそのことは聞いたわ。うまくいったようね」
「はい。ガネット先輩が予想していた通りにことは運びました。先輩から用意しておいた方がいいことを教えてもらっていたのでスムーズに運びました。ありがとうございます」
「あなたより何回か多く似たようなことをやったことがあるから、予想がついただけよ」
それだけじゃないのに、さらっとそう言えちゃうところもガネット先輩のすごいところだ。
「最初はアベックスのヤーガン令嬢のところに行くわよ」
「はい」
「あなた、本当に度胸あるわね」
「わたしの場合、ご飯のこと限定で頑張れます。度胸は後からついてくるだけです」
「笑わせないで。ここで笑ったら、仲が良さそうに見えちゃうわ」
「すみません。でも何がおかしかったのかわかりません」
ガネット先輩は吹き出した。コホコホと喉を整え少し大きな声で周りに聞こえるように言った。
「あなた、面白すぎるわ」
硬い表情でいえば、それは侮蔑とも受け取れる。
「そうですか?」
だからすまして答える。
「先輩はなぜわたしたちに力を貸してくれたんですか?」
「いい案だと思ったからよ。私には考えつかない案だし、みんなの気持ちを変えることはできないと思った。けれど、微妙な位置にいる貴族のシュタインさんなら突破口を開けると思った。みんなのためになると思ったし。一応、寮長だったから、後輩のすることは応援するわ」
ガネット先輩は再び声を小さくした。
「あなただから任せられるわ」
「光栄です」
わたしたちは前だけを見つめて、5年A組に向かい歩き出した。
初めて言葉を交わした時に、寮則が頭に入っていて、頭の回転が早い人なのはわかっていた。でもそれだけじゃなくて、寮のことを深く考え、寮生たちのために心を砕いていたことを深く知ることになった。
週の始め、夕方にリニータたちがわたしの部屋を訪れた。アオたちに話しかけているのを聞かれて、イタイ子認定された時だ。あの時彼女たちはおにぎりパーティーに参加した先輩たちが、総会を開く申請に賛同すると言ってくれたと教えに来てくれたのだ。
わたしたちは善は急げとガネット寮長の部屋をノックした。
寮長は申請書に目を走らせて、部屋の中に入れてくれた。
どこまで話すかはわたしの自由だといい。総会で何を話し、どう進めて行くつもりなのかを聞かれた。
わたしは願いが通るまで何度でも挑むつもりだったので、反対されても構わないと思い、素直に思っていた流れを説明した。
寮長は時々わたしの説明不足なところを聞き返しながら最後まで話を聞いた。
「とても上手に話はまとまっていると思うわ。わかりやすいし、論理的ね。でもそれだと反発心しか起こらないわ」
「反発心ですか?」
レニータが尋ねる。
「今やっていることを廃止して新しくする、と言うことはある意味反対意見よね? その意見がどんなに素晴らしいものでも、反対されると人って自分を否定されているような気になって辛くなってしまうの。自分が辛くならないように、心を守ろうとして反対意見には反対したくなる」
その心の動きはわかる。
「じゃあ、どうしたら?」
ダリアが尋ねる。
「大人になったら、合理的に論理的に詰めるのがいいけれど、まだ子供のわたしたちは感情に訴えれば感情で返ってきてやりやすいと思うわ」
感情か……。
「それから、あなたの案を通したいなら一番の壁は私となる」
「え?」
「私が寮長では再戦は無理だわ」
「どうしてですか?」
「アベックス寮長は私がお嫌いだから、私が寮長だと足を引っ張ることになると思うの」
「うん、それにお腹がいっぱいになったよ」
それはよかったと笑いあう。
寮から学園へとみんなで向かいながら話していると、前方にガネット先輩をみつけた。
「ガネット先輩」
声を掛けると先輩がピクッとして立ち止まる。
周りの人たちに緊張が走ったように見えた。
「ミス・スコッティーから他の寮長に報告に行くように言われました。一緒に行っていただけますか?」
「あなた、ガネット自ら報告をしろと?」
確かに〝辞めさせられた〟話になっているのだから、ひどいとは自覚はしている。
「他の寮長をわたしは知りませんから」
ジャネット先輩の顔が怒りを含んで赤くなる。
「ジャネット、いいのよ。わかったわ。朝にする? それとも放課後?」
「それでは朝、このままご一緒させてもらってもいいですか?」
「そうね、嫌なことは早く終わらせないと」
事情を知っているレニータたちでさえ、顔がこわばっている。
ごめんと思いながらガネット先輩と歩き出した。
チラッと周りを見て、会話が聞こえる距離に誰もいないのを認めると、ガネット先輩は大きく息をついた。
「ごめんなさいね。あなたの評判を落としてしまったわ」
「もともとないので、気になさらないでください」
「みんな私たちが打ち合わせをしていたとは気づいてないわ」
「はい、大丈夫そうですね。ミス・スコッティーが怪しいです。盛んに報告という言葉を使います。ヤーガン令嬢をお嬢さまと言ってましたし」
「そうでしょうね。でも、寮の子の中にも繋がっている子がいるかもしれないから……再戦が決まるまでは気を抜かないで」
「ラジャー」
先輩がジロリとわたしに目を向ける。
「……ラジャーって何?」
「了解しましたって意味です」
「後で詳しく聞かせてほしいけど、ジャネットからおおよそのことは聞いたわ。うまくいったようね」
「はい。ガネット先輩が予想していた通りにことは運びました。先輩から用意しておいた方がいいことを教えてもらっていたのでスムーズに運びました。ありがとうございます」
「あなたより何回か多く似たようなことをやったことがあるから、予想がついただけよ」
それだけじゃないのに、さらっとそう言えちゃうところもガネット先輩のすごいところだ。
「最初はアベックスのヤーガン令嬢のところに行くわよ」
「はい」
「あなた、本当に度胸あるわね」
「わたしの場合、ご飯のこと限定で頑張れます。度胸は後からついてくるだけです」
「笑わせないで。ここで笑ったら、仲が良さそうに見えちゃうわ」
「すみません。でも何がおかしかったのかわかりません」
ガネット先輩は吹き出した。コホコホと喉を整え少し大きな声で周りに聞こえるように言った。
「あなた、面白すぎるわ」
硬い表情でいえば、それは侮蔑とも受け取れる。
「そうですか?」
だからすまして答える。
「先輩はなぜわたしたちに力を貸してくれたんですか?」
「いい案だと思ったからよ。私には考えつかない案だし、みんなの気持ちを変えることはできないと思った。けれど、微妙な位置にいる貴族のシュタインさんなら突破口を開けると思った。みんなのためになると思ったし。一応、寮長だったから、後輩のすることは応援するわ」
ガネット先輩は再び声を小さくした。
「あなただから任せられるわ」
「光栄です」
わたしたちは前だけを見つめて、5年A組に向かい歩き出した。
初めて言葉を交わした時に、寮則が頭に入っていて、頭の回転が早い人なのはわかっていた。でもそれだけじゃなくて、寮のことを深く考え、寮生たちのために心を砕いていたことを深く知ることになった。
週の始め、夕方にリニータたちがわたしの部屋を訪れた。アオたちに話しかけているのを聞かれて、イタイ子認定された時だ。あの時彼女たちはおにぎりパーティーに参加した先輩たちが、総会を開く申請に賛同すると言ってくれたと教えに来てくれたのだ。
わたしたちは善は急げとガネット寮長の部屋をノックした。
寮長は申請書に目を走らせて、部屋の中に入れてくれた。
どこまで話すかはわたしの自由だといい。総会で何を話し、どう進めて行くつもりなのかを聞かれた。
わたしは願いが通るまで何度でも挑むつもりだったので、反対されても構わないと思い、素直に思っていた流れを説明した。
寮長は時々わたしの説明不足なところを聞き返しながら最後まで話を聞いた。
「とても上手に話はまとまっていると思うわ。わかりやすいし、論理的ね。でもそれだと反発心しか起こらないわ」
「反発心ですか?」
レニータが尋ねる。
「今やっていることを廃止して新しくする、と言うことはある意味反対意見よね? その意見がどんなに素晴らしいものでも、反対されると人って自分を否定されているような気になって辛くなってしまうの。自分が辛くならないように、心を守ろうとして反対意見には反対したくなる」
その心の動きはわかる。
「じゃあ、どうしたら?」
ダリアが尋ねる。
「大人になったら、合理的に論理的に詰めるのがいいけれど、まだ子供のわたしたちは感情に訴えれば感情で返ってきてやりやすいと思うわ」
感情か……。
「それから、あなたの案を通したいなら一番の壁は私となる」
「え?」
「私が寮長では再戦は無理だわ」
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