プラス的 異世界の過ごし方

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6章 楽しい学園生活のハズ

第265話 ドーン女子寮の総会①再戦しよう、そうしよう

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 マリンとアイデラ以外の1年生で15票。おにぎりパーティーに参加してくれた先輩のうち2人から賛同を得られて、ドーン寮の総会を申請することができた。
 真ん中の土曜日の夕飯の後、食堂でそのまま開かれることになった。

 当日、兄さまたちと昼食をとり養えた英気は、初の委員会で根こそぎ持っていかれた。委員会の仕事と言うより顔ぶれと雰囲気にかな。
 3年C組の副委員長はピンク髪のアイリス嬢だったのである。アイリス嬢はやたらわたしに好意を持っているかのように接してくるが、聖女候補信者の方々はわたしを目の敵にしてくる。そして恐らく、兄さまのファンからはとって食われるんじゃないかという視線を向けられ、AからC組の委員長と副委員長の貴族の方々は貴族でありながらD組となったわたしへの嘲りを隠さず、ものすごく居心地の悪い空間となった。
 わたしを嫌っているイシュメルでさえ「お前、何やったんだよ。何するとあんな大勢に敵意向けられるんだよ?」と話しかけてきたほどである。ちなみに返事は「知らんがな」だ。どうしてかは予想がつくけど、ホント知らんよまったく。
 もふさまがちょっと顔を上げてジロリと視線を向ければ、みんなそっぽをむいたけどね。ふう。
 ダメージを受けまくりだが、そんなことを言ってる場合ではない。やっと寮の総会を開くところまで、漕ぎつけたのだ。毎日の活力となるご飯をしっかりいただけるよう、頑張らなくては!


 規則に則りということで〝寮生ではない〟ミス・スコッティーには遠慮してもらった。ヤーガン令嬢がおにぎりパーティーを知っていたのは、誰かから情報が伝えられたのではないかと思ったからだ。ミス・スコッティーがパーティーをしたことを知り得たかはわからないけど、平民の子が貴族に話しに行くとは思えず。……脅されて情報提供しているかもしれないけどね。
 それに階段の手すりが直ってないんだよね。単に修理業者がまだ来ていないのかもしれないけれど。彼女に芽生えた不信感は募るばかりだ。


 ガネット寮長がパンパンと2回手を叩いた。

「これより、ドーン女子寮、総会を始めます。申請者代表、リディア・シュタインさん、挨拶と申請理由を述べてください」

 わたしは立ち上がる。

「1年生のリディア・シュタインです。わたしは寮の食事に不満がありました。同じドーン寮でも男子寮の食事はきちんとしているし、入園時の説明にあったように各自の部屋の掃除、簡単な洗濯以外は業者がやってくれています。ではなぜ女子寮だけがそんなことになっているのかと思い、調べました。
 わたしの調べたところによると、去年アベックス寮から喧嘩を売られ、止むを得ず年末の試験の総合点で勝負をすることになり、負けたのでアベックス寮長の願い事を聞くことになった。その願いごととは学園に平民がいることが許せないから退学してほしいということであったため、それ以外のことに変えてほしいと願い出た。すると社会貢献である寄付をすれば、平民でも学園にいてもいいと言われ、寄付をしないといけなくなった。そこでドーン寮では寄付金を捻出するのに、人件費、食費を削るなどとした」

「あなた、糾弾したいの?」

 テーブルをバンと叩いて上級生が立ち上がる。

「ジャネット、発言は手を挙げてからにして。それからまだシュタインさんの発言の途中よ」

 寮長に視線で続きをと促される。

「糾弾したいわけではありません。わたしは何があったのかを調べてわたしがそう解釈しているのだと述べています。違っていたら、教えてください。わたしは寄付自体は悪いことだと思いません。ただそれを、食費削って捻出するのはよくないと思います」

「あんたは貴族だからお金が有り余っているかもしれないけれど、家は学園に通わせてもらうだけで精一杯なの」

「リズ、彼女の話を最後まで聞きましょう」

 ガネット寮長が噛み付いてきそうな勢いで立ち上がった女の子を宥めた。

「何かを削って寄付金を捻出する以外の方法を提案したいのと……、寄付自体はいいことと思いますが強制されて寄付するのは違うと思うし……」

 理由はいくつも思いついた。けど……。噛み付いてきそうな先輩たちの声を聞いていたら……。

「いろいろ思うことはあるのですが、喧嘩を吹っかけられて負けたままなのは悔しいし、思い知らせてやるために再戦したいです。その2つに賛同していただきたくて、総会を開く申請をしました」

 みんな、ぽかんとしている。ガネット寮長さえも。
 再戦の理由はいっぱい考えたんだけど、詰まるところ、わたしはヤーガン令嬢に一泡吹かせてやりたいと思っているみたいだ。言い訳のような理由を述べるつもりだったけれど、途中で思い直してわたしの気持ちを率直に伝えることにした。飾りのない言葉を先輩たちはわたしにぶつけてきた。わたしもそうありたいと思えたからだ。

「悔しいってあんた、そんな理由で挑んで負けて、今度こそ退学しろってことになったらどう責任取るのよ?」

「最初に願い事を決めるようにします」

 再戦しよう、そうしようと決まるとは思っていなかったけれど、やはり反発心が強い。

「それにあなた、貴族の中で一番点数が低かったのよね? それでよく再戦をしようなんて思えるわね」

「それはっ」

 確かに入園試験において貴族の中で一番点数が低かったからD組となったわけだから。グッと詰まるとガネット寮長が言った。

「しっかりと調べたようね、あなたの認識で合っているわ。再戦のことよりも、削るのではない寄付金の捻出方法が気になるわ」

 わたしは頷く。
 まず去年、勝負の結果が出てから1月から3月までに食費を抑え、人件費を削り、掃除業者も休息日だけ(それもひとり)とし、あらゆるもののレベルを落とし捻出した金額を告げた。3ヶ月でその金額、年末の試験まで9ヶ月あるから、つまりその3倍の金額を捻出できればいいのだと。
 金額を数字で提示すると沈黙が降りる。かなりな額だものね。

「一番削れたのが食費よ。それを他の何から出せるっていうのよ」

「秋に学園祭があります。これで儲ければいいんです」

「何で儲けるのよ?」

「みんなの得意なことを合わせて、これから考えます」

「得意なことって?」

「うーーん、わたしは料理やお菓子を作れます。そういうのを売るのもいいかなと思っています」

「それを作る材料費はどうするの?」

 寮長から指摘される。

「食費は削らず、平日の掃除はみんなで受け持ってやり、人件費はそのままにします。わたしは食事作りのお手伝いができると思います。それらを文化祭まで貯めれば、十分な材料費になると思います」

「貴族のお嬢さまが食事を作ったり、掃除ができるの?」

 誰かが小声で告げる。

「この間のおにぎり、シュタインさんが作ったって」

 おにぎりパーティーをしておいてよかった。
 確かにわたしは入園試験で貴族の中で一番下だったからこのクラスにいる。1年生だし。一応、貴族のお嬢さんだったりするのだから、いい印象はないだろう。でもおにぎりパーティーを開いたことで、おにぎりを作れることはみんな知ることになったし、わたしが全くの夢物語の提案をしているわけではないとわかるはずだ。
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