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6章 楽しい学園生活のハズ
第262話 機嫌をなおして
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「ちょっとリディア大丈夫? 顔が青いのを通り越して白いよ」
身振りで大丈夫と伝えたものの、しゃべることはできない。
『保健室とやらまで運ぶか?』
平気と心の中で言いながら、もふさまの体を撫でる。
週末、光曜日の1、2コマはぶっ通しでダンスの授業だ。
A組と合同なだけでなく、男女混合だ。
D組はダンスが初めての子が多いので、D組だけで組んでやっているのだが。
みんな初めてではあるものの、なんであんだけステップを踏んで息切れしてないの? ダンスなんて1曲踊ったら、500メートルを全力疾走した以上の体感だと思うんだけど! というわけで絶賛へバリ中なわたしだ。
「リディアは貴族だから夜会とか行くんだよね、そんなんで大丈夫なの?」
「……踊ら……ず……切り抜……ける……」
みんな苦笑している。
「シュタイン嬢は体力ないんだね。魔法戦も苦労しそう」
わたしのパートナーだったニコラスが言うと、女の子たちが揃ってこちらを見た。
まずい、魔法戦で足を引っ張ると思われる。
でも何を言えばいいのか見当がつかないし、息が整うにはまだ時間がかかりそうなので、そのままになった。
復活できないままこの日の授業は終わり放課後になった。今日はクラブ活動のない日だ。リニータたちはお好み焼きをマスターしているので、道具と小麦粉を渡してある。一緒に森の恵みをゲットしたところ、すぐに彼女たちは目敏く食べられるものを見つけていた。元々お家の手伝いはしていたようだから、家事関係においても勘がいい。道具さえあれば今日は乗り切れると思う。
彼女たちには伝えてないけど、休息日の明日はサプライズでお昼に、おにぎりパーティーでも開こうかと思っている。森の中でね。
みんなとバイバイをして廊下に出れば、兄さまが迎えに来てくれていた。
「リディー」
わたしに呼びかけ、そして〝お遣いさま〟と、もふさまに礼を尽くす。
門まで出ると馬車が待っていて、アラ兄とロビ兄とも合流した。
「リーまたほっぺがへこんでるよ」
ロビ兄が馬車の中でわたしの両頬を包み込む。
「今日はダンスの授業があったの」
そう言うだけでアラ兄もロビ兄も察してくれた。
「リーは体力がないからな」
「一緒に朝練したのにね」
残念そうにアラ兄が言う。
そう、これでも昔より体力はついたのだ。一緒に朝練をして地道に走る距離や基礎訓練を増やした。けれど増やせば熱が出たりなんだりするいたちごっこで、体がキャパオーバーなのを如実に訴えてくる。だからほんのちょっとずつ、鍛錬の量を増やしはしたが……結局のところ一般よりだいぶ劣る体力だ。
「ただいま!」
ドアを開けた途端、レオが飛んできて顔に張り付いた。
子犬サイズでも顔はすっぽり覆われる。驚き息ができないでいると、戒めがなくなった。もふさまがレオを口で咥えて剥がし、放り投げてくれたみたいだ。
ふー。驚いた。
『主人さま、ひどい、投げた!』
『馬鹿者が! リディアを苦しめてどうする? 息ができないでいたのだぞ? 人族の中でもリディアは赤子ぐらいに弱いと言ってあるだろう? 気をつけろ!』
と叱りつけてもふさまはドヤ顔でわたしを見た。
「……もふさま、ありがと」
けど、赤子ぐらいに弱いってのはどうなんだろう。同年代の子が難なくこなせるダンスの授業もついていけないのだから、劣っているのは確かだけど。
うーーーん、これじゃあ年末の魔法戦で勝負できることになってもまずいか。体力ってどうしたらつけることができるんだろう?
「お帰りなさいでち。父さまから聞いたけど、もふさまが急に飛び出して行って帰らないから、気を揉んでいたでち」
あ、そうか。もふさまはわたしの気配がなくなって駆けつけてくれた。それからずっと一緒にいてくれたから、アオたちにすると急にいなくなって音沙汰がない状態だったんだ。父さまから理由は聞いただろうけど、そりゃ気を揉むね。
アオを抱き上げる。
「ごめんね、アクシデントがあったんだ。おやつ食べながら話すから」
「お帰りなさいませ」
アルノルトがそう言って、アオを抱っこするのに足元においていた鞄を持ってくれる。
「ただいま!」
あれ、足りないと思っていると廊下の壁に同化するようにアリ・クイ、ベアがいる。
「ただいま」
声をかける。
『『お帰り』』
『お帰りなさい』
ジト目で見られている。
「そんな隅でどうしたの?」
『リーは主人さましか好きじゃないんだ。だから置いてけぼりなんだ』
す、拗ねてる?
「みんなのこと大好きだよ。ギュッとさせてくれなくて淋しいな」
本心を言えば、お互い顔を合わせ、わたしのところにぴょんと跳んできた。子猫サイズの3匹をギュッと抱きしめる。サラッとした毛はもふさまともまた違う感触だ。
頬擦りもしちゃう。
「着替えてからおやつを作るよ」
『おやつ?』
『何のおやつ?』
「お腹にたまるのがいいな」
アリたちの上にレオが乗ってくる。
『さっきはごめんね。嫌わないで』
「嫌いになったりしないよ」
抱きしめるには盛りだくさんすぎて難しいのでレオの額にチュッと口を寄せる。するとアオも飛び乗って来た。
おでこを突き出してくるので、おでこにチュッだ。そして……全員にすることになった。
着替えてからエプロンをつけて、おやつを作ることにする。
これから作るご飯のこともまとめて考えておこう。
明日の昼はおにぎりパーティーだ。おにぎりと具沢山の豚汁もどきでいいでしょ。
お米でお腹がいっぱいになるだろうから、その夜は軽めにホットサンドとロビ兄たち用にお肉を焼いて、サラダとスープ。
明日の夜が軽めなら今日の夜は……ガッツリお肉の煮込みにしようかな。お魚のポワレも食べたい。チーズたっぷりのマカロニグラタン。ポテトサラダ。
夜も重た目だけど、今もしっかりしたおやつが食べたいな。
お腹にたまるような……お砂糖たっぷりかけたドーナツ! そうしよう!
収納ポケットからパン生地を取り出す。5ミリぐらいの厚さに伸ばして、大小のコップでドーナツ型に型抜きする。代わる代わるもふもふ軍団がおやつ作りのチェックをしにくる。火を使うから近づかないようにねと言えば、レオは廊下に出て部屋を覗き込み、他の子は注意した時は離れるけれど、だんだん近寄ってくる。3回ほど「もっと離れて」と言うことになった。
油で揚げて熱々のところにすりつぶした砂糖をまぶし、ホットミルクティーと一緒にいただいた。みんなで食べたまあるいドーナツはとってもおいしかった。
聖樹さまの話をすると、みんなの好奇心を刺激してしまったみたいだ。なぜかわからないが散々羨ましがられた。
身振りで大丈夫と伝えたものの、しゃべることはできない。
『保健室とやらまで運ぶか?』
平気と心の中で言いながら、もふさまの体を撫でる。
週末、光曜日の1、2コマはぶっ通しでダンスの授業だ。
A組と合同なだけでなく、男女混合だ。
D組はダンスが初めての子が多いので、D組だけで組んでやっているのだが。
みんな初めてではあるものの、なんであんだけステップを踏んで息切れしてないの? ダンスなんて1曲踊ったら、500メートルを全力疾走した以上の体感だと思うんだけど! というわけで絶賛へバリ中なわたしだ。
「リディアは貴族だから夜会とか行くんだよね、そんなんで大丈夫なの?」
「……踊ら……ず……切り抜……ける……」
みんな苦笑している。
「シュタイン嬢は体力ないんだね。魔法戦も苦労しそう」
わたしのパートナーだったニコラスが言うと、女の子たちが揃ってこちらを見た。
まずい、魔法戦で足を引っ張ると思われる。
でも何を言えばいいのか見当がつかないし、息が整うにはまだ時間がかかりそうなので、そのままになった。
復活できないままこの日の授業は終わり放課後になった。今日はクラブ活動のない日だ。リニータたちはお好み焼きをマスターしているので、道具と小麦粉を渡してある。一緒に森の恵みをゲットしたところ、すぐに彼女たちは目敏く食べられるものを見つけていた。元々お家の手伝いはしていたようだから、家事関係においても勘がいい。道具さえあれば今日は乗り切れると思う。
彼女たちには伝えてないけど、休息日の明日はサプライズでお昼に、おにぎりパーティーでも開こうかと思っている。森の中でね。
みんなとバイバイをして廊下に出れば、兄さまが迎えに来てくれていた。
「リディー」
わたしに呼びかけ、そして〝お遣いさま〟と、もふさまに礼を尽くす。
門まで出ると馬車が待っていて、アラ兄とロビ兄とも合流した。
「リーまたほっぺがへこんでるよ」
ロビ兄が馬車の中でわたしの両頬を包み込む。
「今日はダンスの授業があったの」
そう言うだけでアラ兄もロビ兄も察してくれた。
「リーは体力がないからな」
「一緒に朝練したのにね」
残念そうにアラ兄が言う。
そう、これでも昔より体力はついたのだ。一緒に朝練をして地道に走る距離や基礎訓練を増やした。けれど増やせば熱が出たりなんだりするいたちごっこで、体がキャパオーバーなのを如実に訴えてくる。だからほんのちょっとずつ、鍛錬の量を増やしはしたが……結局のところ一般よりだいぶ劣る体力だ。
「ただいま!」
ドアを開けた途端、レオが飛んできて顔に張り付いた。
子犬サイズでも顔はすっぽり覆われる。驚き息ができないでいると、戒めがなくなった。もふさまがレオを口で咥えて剥がし、放り投げてくれたみたいだ。
ふー。驚いた。
『主人さま、ひどい、投げた!』
『馬鹿者が! リディアを苦しめてどうする? 息ができないでいたのだぞ? 人族の中でもリディアは赤子ぐらいに弱いと言ってあるだろう? 気をつけろ!』
と叱りつけてもふさまはドヤ顔でわたしを見た。
「……もふさま、ありがと」
けど、赤子ぐらいに弱いってのはどうなんだろう。同年代の子が難なくこなせるダンスの授業もついていけないのだから、劣っているのは確かだけど。
うーーーん、これじゃあ年末の魔法戦で勝負できることになってもまずいか。体力ってどうしたらつけることができるんだろう?
「お帰りなさいでち。父さまから聞いたけど、もふさまが急に飛び出して行って帰らないから、気を揉んでいたでち」
あ、そうか。もふさまはわたしの気配がなくなって駆けつけてくれた。それからずっと一緒にいてくれたから、アオたちにすると急にいなくなって音沙汰がない状態だったんだ。父さまから理由は聞いただろうけど、そりゃ気を揉むね。
アオを抱き上げる。
「ごめんね、アクシデントがあったんだ。おやつ食べながら話すから」
「お帰りなさいませ」
アルノルトがそう言って、アオを抱っこするのに足元においていた鞄を持ってくれる。
「ただいま!」
あれ、足りないと思っていると廊下の壁に同化するようにアリ・クイ、ベアがいる。
「ただいま」
声をかける。
『『お帰り』』
『お帰りなさい』
ジト目で見られている。
「そんな隅でどうしたの?」
『リーは主人さましか好きじゃないんだ。だから置いてけぼりなんだ』
す、拗ねてる?
「みんなのこと大好きだよ。ギュッとさせてくれなくて淋しいな」
本心を言えば、お互い顔を合わせ、わたしのところにぴょんと跳んできた。子猫サイズの3匹をギュッと抱きしめる。サラッとした毛はもふさまともまた違う感触だ。
頬擦りもしちゃう。
「着替えてからおやつを作るよ」
『おやつ?』
『何のおやつ?』
「お腹にたまるのがいいな」
アリたちの上にレオが乗ってくる。
『さっきはごめんね。嫌わないで』
「嫌いになったりしないよ」
抱きしめるには盛りだくさんすぎて難しいのでレオの額にチュッと口を寄せる。するとアオも飛び乗って来た。
おでこを突き出してくるので、おでこにチュッだ。そして……全員にすることになった。
着替えてからエプロンをつけて、おやつを作ることにする。
これから作るご飯のこともまとめて考えておこう。
明日の昼はおにぎりパーティーだ。おにぎりと具沢山の豚汁もどきでいいでしょ。
お米でお腹がいっぱいになるだろうから、その夜は軽めにホットサンドとロビ兄たち用にお肉を焼いて、サラダとスープ。
明日の夜が軽めなら今日の夜は……ガッツリお肉の煮込みにしようかな。お魚のポワレも食べたい。チーズたっぷりのマカロニグラタン。ポテトサラダ。
夜も重た目だけど、今もしっかりしたおやつが食べたいな。
お腹にたまるような……お砂糖たっぷりかけたドーナツ! そうしよう!
収納ポケットからパン生地を取り出す。5ミリぐらいの厚さに伸ばして、大小のコップでドーナツ型に型抜きする。代わる代わるもふもふ軍団がおやつ作りのチェックをしにくる。火を使うから近づかないようにねと言えば、レオは廊下に出て部屋を覗き込み、他の子は注意した時は離れるけれど、だんだん近寄ってくる。3回ほど「もっと離れて」と言うことになった。
油で揚げて熱々のところにすりつぶした砂糖をまぶし、ホットミルクティーと一緒にいただいた。みんなで食べたまあるいドーナツはとってもおいしかった。
聖樹さまの話をすると、みんなの好奇心を刺激してしまったみたいだ。なぜかわからないが散々羨ましがられた。
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