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6章 楽しい学園生活のハズ
第223話 試験
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「似てない」
「普通だ」
「大してかわいくない」
おい、おい、おい、おい。坊ちゃん、嬢ちゃん。
そういう評価は聞こえないところでやってくれ。
今世の容姿のクオリティーに満足しているけれど、家族と比べられたら、そりゃ月とスッポンだ。わたしも年頃だからね、聞こえてくると、傷にはなるのよね。失礼しちゃう。
「ブライ兄と従兄弟よ。聞いたそのままですわ」
砕けた口調で笑いかけてくる。見事な赤毛はブライのとこの血筋か。
「まぁ、ブライさまの! 朝はジェイさまにお会いしましたわ。縁がありますね」
「エリー・ヘイウッドよ。エリーと呼んで欲しいわ」
「リディアと呼んでください」
水色の子そっちのけで話してしまったからか、ユリアさまは怒った。
「な、なんですの! 人を無視して。あなた、遅刻してきた理由がありますの?」
わたしは答える。
「あります」
ユリア嬢は少し驚いたようだ。
「なんですの?」
「申し上げられません」
令嬢はさらに怒った。勢いよくわたしに背を向けて歩いて行った。
「お臍を曲げてしまいましたわね」
エリーが気持ち残念そうに言ったけれど、そうなるだろうと予想していた感じだ。
でもさ、はっきりしたことがわかってないのにうかつに話せないじゃん? 貴族社会は何が作用するかわからないからね。こんな不特定多数が耳にするところで確かではないことを話すことはできない。
連れていかれたのは広い講堂のようなところだ。中は8つのブースというか塊に分かれていて、並んでいる人がひとり前に行けばそこに補充されていくようだ。魔力を調べているのだろう。
ユリア嬢ともエリーとも違うブースに並ばせられる。
わたしの番になれば、5歳の時に教会で調べてもらったような水晶玉が机の上に鎮座していた。
「リディア・シュタインです」
と名乗れば、頷かれて、水晶玉に手をかざすように言われる。
水晶玉の真ん中で水色と緑色の色が浮かんで消えた。
鼻の下でくるんとしたヒゲを蓄えた先生は、属性でも書き留めているのだろう。
すぐに終わり、次は魔法の試験ですと言われた。
Cのブースだったので、そのままCの部屋に行くように案内係の先輩に言われる。制服を着ているからお手伝い要員だね。
前の子たちも緊張した面持ちで入っていくが、2、3分で出てきてほっとした表情を浮かべている。
わたしの番になった。
中には、おじいちゃん先生とおばあちゃん先生がいた。
「自分の属性を知っていますか?」
「はい、風と水です」
答えれば頷かれて、今度は魔法を使ったことがあるかを尋ねられた。あると答えると、一番やりやすい魔法を披露するよう言われた。
わたしは水の球を作った。
「150なのはもったいないわねぇ」
おばあちゃん先生が言う。
「ん? 魔力を整えましたか?」
おじちゃん先生に言われる。うわー、そんなのわかるんだ。
2年ぐらい前に魔力漏れをしているのは良くないと神殿行きか魔法士長のモットレイ侯爵のところで魔力を整えてもらった方がいいって散々言われて。3日とかで終わるならいいけどさ、少なくても3年かかるって言われてそれは嫌と思っていたら、もふさまが〝地下の主人さま〟を紹介してくれたのだ。
もふさまと同じ護り手で、地下を受け持たれているそうだ。1番の古株で魔力も多く、物知りだという。黒い大きな亀に見えた。地下の主人さまにしてもわたしの魔力を完全に塞ぐのは難しいと言われた。わたしの魔力はわたしの〝体〟イコール〝器〟には余るものらしく、排出していないと体が壊れるそうだ。ただ、体には問題のないようにある程度は塞ぎ、人ぐらいからなら魔力が漏れているのがわからないようにすることはできるというので、お願いした。報酬はご飯のおもてなしがいいと言われて、交渉は成立した。
今も魔力は少々漏れているが、人にはわからないはずだ。
ある日突然、魔力が少し増えたのだということにしてモットレイ侯爵さまに見ていただき、魔力漏れしなくなっているとお墨付きをもらった。メカニズム自体がよくわかっていないこともあり、体との折り合いがつくと魔力が勝手に整うこともあるようなので、わたしもそうなのだろうと結論づけられた。
「小さい頃は魔力が漏れていました。それがある日魔力が上がり、診てもらったところ魔力が漏れていないとわかりました」
「そうでしたか。外からいじったようにも見えるが……」
このおじいちゃんやるねと思いながら、わたしはよくわからないを装っておいた。
魔法のテストはそれでおしまいだった。
〝何〟をテストしたんだろう? 魔法を使ったことがあるかどうか?
最初の常識問題の筆記試験も、バラエティーにとんでいた。宰相の名前を問われたかと思えば、計算問題が入り、次には大陸の成り立ちの意見を求められた。魔法の理解度を?と思えるような問題があり眉をひそめれば、ダンジョンについての設問もあった。これで何が見えてくるんだろうと不思議だった。意味はあるんだろうけど、さっぱりわからないや。
次は面接だと言われた。入ったのとは違うドアから出て、真っ直ぐ進むように言われた。
椅子が並んでいて、ひとりそこに腰掛けていた。
案内役の先輩に椅子に座るよう言われて、隣に腰掛ける。
中から子供が出てきて、座っていた子が中に案内される。
わたしは椅子を移動した。
待つってやだな。いろんなこと考えちゃう。
……わたしのテストを邪魔したい人がいるんだよね。
魔法のテストが終わった子が来て、隣に座る。
もうそろそろかと思っているとドアが開き、前の子が出てきた。ほっとした顔をしている。中に入るように言われた。
わたしの番だ。
「普通だ」
「大してかわいくない」
おい、おい、おい、おい。坊ちゃん、嬢ちゃん。
そういう評価は聞こえないところでやってくれ。
今世の容姿のクオリティーに満足しているけれど、家族と比べられたら、そりゃ月とスッポンだ。わたしも年頃だからね、聞こえてくると、傷にはなるのよね。失礼しちゃう。
「ブライ兄と従兄弟よ。聞いたそのままですわ」
砕けた口調で笑いかけてくる。見事な赤毛はブライのとこの血筋か。
「まぁ、ブライさまの! 朝はジェイさまにお会いしましたわ。縁がありますね」
「エリー・ヘイウッドよ。エリーと呼んで欲しいわ」
「リディアと呼んでください」
水色の子そっちのけで話してしまったからか、ユリアさまは怒った。
「な、なんですの! 人を無視して。あなた、遅刻してきた理由がありますの?」
わたしは答える。
「あります」
ユリア嬢は少し驚いたようだ。
「なんですの?」
「申し上げられません」
令嬢はさらに怒った。勢いよくわたしに背を向けて歩いて行った。
「お臍を曲げてしまいましたわね」
エリーが気持ち残念そうに言ったけれど、そうなるだろうと予想していた感じだ。
でもさ、はっきりしたことがわかってないのにうかつに話せないじゃん? 貴族社会は何が作用するかわからないからね。こんな不特定多数が耳にするところで確かではないことを話すことはできない。
連れていかれたのは広い講堂のようなところだ。中は8つのブースというか塊に分かれていて、並んでいる人がひとり前に行けばそこに補充されていくようだ。魔力を調べているのだろう。
ユリア嬢ともエリーとも違うブースに並ばせられる。
わたしの番になれば、5歳の時に教会で調べてもらったような水晶玉が机の上に鎮座していた。
「リディア・シュタインです」
と名乗れば、頷かれて、水晶玉に手をかざすように言われる。
水晶玉の真ん中で水色と緑色の色が浮かんで消えた。
鼻の下でくるんとしたヒゲを蓄えた先生は、属性でも書き留めているのだろう。
すぐに終わり、次は魔法の試験ですと言われた。
Cのブースだったので、そのままCの部屋に行くように案内係の先輩に言われる。制服を着ているからお手伝い要員だね。
前の子たちも緊張した面持ちで入っていくが、2、3分で出てきてほっとした表情を浮かべている。
わたしの番になった。
中には、おじいちゃん先生とおばあちゃん先生がいた。
「自分の属性を知っていますか?」
「はい、風と水です」
答えれば頷かれて、今度は魔法を使ったことがあるかを尋ねられた。あると答えると、一番やりやすい魔法を披露するよう言われた。
わたしは水の球を作った。
「150なのはもったいないわねぇ」
おばあちゃん先生が言う。
「ん? 魔力を整えましたか?」
おじちゃん先生に言われる。うわー、そんなのわかるんだ。
2年ぐらい前に魔力漏れをしているのは良くないと神殿行きか魔法士長のモットレイ侯爵のところで魔力を整えてもらった方がいいって散々言われて。3日とかで終わるならいいけどさ、少なくても3年かかるって言われてそれは嫌と思っていたら、もふさまが〝地下の主人さま〟を紹介してくれたのだ。
もふさまと同じ護り手で、地下を受け持たれているそうだ。1番の古株で魔力も多く、物知りだという。黒い大きな亀に見えた。地下の主人さまにしてもわたしの魔力を完全に塞ぐのは難しいと言われた。わたしの魔力はわたしの〝体〟イコール〝器〟には余るものらしく、排出していないと体が壊れるそうだ。ただ、体には問題のないようにある程度は塞ぎ、人ぐらいからなら魔力が漏れているのがわからないようにすることはできるというので、お願いした。報酬はご飯のおもてなしがいいと言われて、交渉は成立した。
今も魔力は少々漏れているが、人にはわからないはずだ。
ある日突然、魔力が少し増えたのだということにしてモットレイ侯爵さまに見ていただき、魔力漏れしなくなっているとお墨付きをもらった。メカニズム自体がよくわかっていないこともあり、体との折り合いがつくと魔力が勝手に整うこともあるようなので、わたしもそうなのだろうと結論づけられた。
「小さい頃は魔力が漏れていました。それがある日魔力が上がり、診てもらったところ魔力が漏れていないとわかりました」
「そうでしたか。外からいじったようにも見えるが……」
このおじいちゃんやるねと思いながら、わたしはよくわからないを装っておいた。
魔法のテストはそれでおしまいだった。
〝何〟をテストしたんだろう? 魔法を使ったことがあるかどうか?
最初の常識問題の筆記試験も、バラエティーにとんでいた。宰相の名前を問われたかと思えば、計算問題が入り、次には大陸の成り立ちの意見を求められた。魔法の理解度を?と思えるような問題があり眉をひそめれば、ダンジョンについての設問もあった。これで何が見えてくるんだろうと不思議だった。意味はあるんだろうけど、さっぱりわからないや。
次は面接だと言われた。入ったのとは違うドアから出て、真っ直ぐ進むように言われた。
椅子が並んでいて、ひとりそこに腰掛けていた。
案内役の先輩に椅子に座るよう言われて、隣に腰掛ける。
中から子供が出てきて、座っていた子が中に案内される。
わたしは椅子を移動した。
待つってやだな。いろんなこと考えちゃう。
……わたしのテストを邪魔したい人がいるんだよね。
魔法のテストが終わった子が来て、隣に座る。
もうそろそろかと思っているとドアが開き、前の子が出てきた。ほっとした顔をしている。中に入るように言われた。
わたしの番だ。
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