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6章 楽しい学園生活のハズ
第222話 まさかのtake2
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この部屋は魔法が使えない。
このドアを蹴破るしかない?
5年もここに通うのに、ドアを力づくで破壊した女生徒って記憶に残るね。
それはなんかとても嫌なんだけど……。
でも、そもそも入園できなければ、その心配も始まらないのだし。
フォンタナ一族仕込みの蹴りを披露しようじゃありませんか。
ふーっと息を整えて、体を捻ってドアに回し蹴りを入れる。
足を回した勢いとわたしの体重により作用が働いたドアはそれなりにいい音を出したけれど、負傷したのはわたしの足だった。
うーー、ドアの奴め。
そうだ、木刀で、いや、ナイフで。木刀もナイフもなんで持ち込んだということになるか。収納箱持ちなのもバレることになるし。キョロキョロすると、おお、椅子がある。いい物があるじゃないですか。
足で蹴ったりしないで最初から椅子を投げればよかった。パニックを起こすとよく考えないで行動してしまうのは悪い癖だ。
よし、椅子を。歩こうとするとズキっと痛みが走った。
え? 嘘でしょ(本日2回目)!
これはまさか、とてもベタな、蹴りで目的を果たせなかったうえに、足を痛めたとかそういうのじゃないよね? そんなのただの粗忽者じゃん。だめ、そんなのがバレたら一人歩きさせてもらえなくなる! 10歳を過ぎてから少しずつ解禁されてきたのに! ん? ここは学園。学園内でひとりなのは当たり前だ。落ち着こう、落ち着け、リディア。
うん、気のせいだ。痛くない。ちょっと硬いものにあたって神経がバグっただけ。
この部屋から出たら、トイレででも、そっと治癒すればいい。
なんで今日はこんなにうまくいかないことだらけなのだろう?
ふと思えば、すぐに答えが導き出された。
あ。そっか、わたしいつも誰かと一緒なんだ。もふさまたちもいなくてひとりきりって本当に稀なことだ。わたしはいつも誰かに助けてもらってたんだね。
……………………。
助けてもらえるのはありがたいことだけれど、ダメだ、わたしひとりじゃ何もできない子になっちゃう! 幸いまだ11歳。軌道修正、いける! とんだ不器用でも、失敗も何度か繰り返せばできるようになっているものだ、きっと!
心を落ち着けて、静かに姿勢を正す。椅子を取るべく歩いてみる。あ、本当に神経がバグっていただけみたい。大丈夫、痛くない、歩ける。
積み上げられていた椅子を持ち上げるようにして引っ張る。椅子の足が横の椅子に引っかかっていたみたいで、音を立てて椅子が雪崩れ落ちた。この音を聞きつけて誰か来てくれないかしら。
ちょっと待ったが誰も来てくれないので、ドアにこの椅子を投げつけることにする。椅子を持ち上げてドアに叩きつけるようにしてみたが、下の方に当たるだけだ。ドアに傷もついていない。結構、力一杯投げたんだけど。
うーむ。
「誰かいるのか?」
くぐもった声がする。
わたしはドアを叩いた。
「中にいます。開けてください。閉じ込められました」
何度か叩くと
「わかった、少し離れていろ」
と声がする。後ろに下がると、バリっと音を立ててドアが開く。
蹴破ったような体勢でいたのはロサ殿下だった。
制服姿は初めて見た。3か月ぶりかな? 去年の終わりにご挨拶したのが最後だったと思う。14歳の男の子の成長は著しい。
明るい金髪は自ら発光しているように輝いていて、神秘的な紫の瞳は捕らえられると引き込まれそうになるほど引力がある。王族なのであまり見てはいけないのだが、目が離せなくなる何かがある。
兄さまほどではないけれど、背丈もかなり伸びた? かっこいいに拍車がかかっている。さすが王子さまだ。
ロサはわたしを見ると、自分の膝上に手をついて大きく息をついた。
「なぜ、こんなところにいる?」
「試験会場はここだって連れてこられて、ドアが開かなくなったの」
ロサはもう一度息を吐いた。
「詳しくは後からだ。試験はもう始まっている。行くぞ」
と手を引っ張られた。
「うっ」
「どうした?」
「え? なんでもない」
首を横に振る。
「足か?」
ロサがわたしの前でしゃがみ込む。そして靴下をさげて
「赤くなってるぞ」
とわたしを見上げた。
「あ、悪い」
うかつに女子の足を触り、さらに靴下まで下げたことに気づいたのか、顔を赤くする。
「保健室に行こう」
「大丈夫。試験会場に連れて行ってくれない? 遅刻してるの」
「それは聞けない」
え?
ロサは制服のジャケットを脱いでわたしに被せた。そしてそのまま抱え込む。
「ちょっと、ロサ」
「いいから黙ってろ」
ロサが包んだわたしを担ぎ上げてスタスタ歩いていく。
「で、殿下!?」
「怪我をしている」
うう、人に見られたようだ。ジャケットに包まれているので、わたしからは見えないんだけどね。
そうしてしばらく歩き、ドアを開ける音がして
「急患です」
「……殿下?」
のんびりとした声がする。
「受験生だ。手早く頼む」
下ろされたのはベッドの上みたいだ。座らせてもらったお尻の下はふわんとした敷布団のような感触がある。被されていたジャケットが取られる。
わたしを覗き込んだのは、青い髪を長く伸ばした男性だった。
ロサが教えてくれる。
「養護教員だ。神官でもある」
先生は椅子を持ってきて、ベッドの前においた。
「失礼しますね」
そう言ってわたしの怪我した方の足を椅子に乗せる。
よくこっちの足ってわかったな。わたしの心の声が聞こえたかのように
「生き物は悪いところを庇うものなのですよ」
と親しみやすい笑顔をくれた。
足首に手をやると、そこから温かい光が漏れてくる。じんわり光が行き渡ると、ジクジクした痛みがなくなっていた。
「痛く……ない。あ、ありがとうございます」
頭を下げると、どういたしましてと気さくに微笑む。
「会場に案内する」
あ、そうだテスト!
部屋の時計をみると、後20分しかない。
わたしは鞄を持って、もう一度お礼を言ってロサについて行く。
「こっちだ」
廊下を歩き、階段を上がり、また廊下を歩き左に折れる。
さっぱりどこにいるかわからないんだけど!
「ここだ」
ロサは振り返ってそういうと、ドアをノックした。
教員らしき人が出てくる。
「受験生です」
ロサが言えば
「え、あと15分ですが」
「受けさせてください」
とわたしの肩を押した。
「承知いたしました」
先生が頷いて、わたしを中へと促す。
「頑張れ」
ロサが小さい声でいう。わたしは頷く。
お礼言ってないやと思いながら、わたしは一番後ろの空いている席についた。鞄から筆記具を取り出すと、テスト用紙が配られた。
お礼を言って、名前を書く。
とにかく、やるだけやろう。
一問目から目を通し、回答を記していく。斜め読みして、とにかく答えを!
23問解いたところで鐘がなった。ペンを置く。回答用紙が集められた。
次は魔力を測るそうで会場を移動するアナウンスがあった。
筆記具をしまい、鞄を持って、廊下に並ぶ。ゾロゾロと人の波に乗り、歩いて行く。
わたしの後ろにいた子が隣に並ぶ。
視線を感じたのでわたしも見た。水色の髪の美人だった。12歳にしてしっかりした造形美。
「あなた、目立つのがお好きなの?」
はい?
「大事な入学試験に遅れてくるなんて、学園を軽く見ているとしか思えないわ。あなたは学園とこの学園に入りたくて努力している全ての人を見下したのよ」
いきなりの先制攻撃にわたしはぽかんと口を開けた。
「ユリアさま、何か理由があったかもしれないですよ。それを決めつけて糾弾するだけなのはよくありません」
水色美人はユリアさまというみたいだ。擁護してくれたのは赤い髪をした活発そうな少女だった。
「その髪の色、シュタイン令嬢ではありませんか?」
髪の色でわかったの? 現代は写真が出回るわけではないから、髪と瞳の色であたりをつけるものだけれど、同年代で、もうその能力が培われているのね。すごいと思いながら頷く。
「はい、リディア・シュタインです」
答えれば、周りの人たちが一斉にわたしを見た。
え?
このドアを蹴破るしかない?
5年もここに通うのに、ドアを力づくで破壊した女生徒って記憶に残るね。
それはなんかとても嫌なんだけど……。
でも、そもそも入園できなければ、その心配も始まらないのだし。
フォンタナ一族仕込みの蹴りを披露しようじゃありませんか。
ふーっと息を整えて、体を捻ってドアに回し蹴りを入れる。
足を回した勢いとわたしの体重により作用が働いたドアはそれなりにいい音を出したけれど、負傷したのはわたしの足だった。
うーー、ドアの奴め。
そうだ、木刀で、いや、ナイフで。木刀もナイフもなんで持ち込んだということになるか。収納箱持ちなのもバレることになるし。キョロキョロすると、おお、椅子がある。いい物があるじゃないですか。
足で蹴ったりしないで最初から椅子を投げればよかった。パニックを起こすとよく考えないで行動してしまうのは悪い癖だ。
よし、椅子を。歩こうとするとズキっと痛みが走った。
え? 嘘でしょ(本日2回目)!
これはまさか、とてもベタな、蹴りで目的を果たせなかったうえに、足を痛めたとかそういうのじゃないよね? そんなのただの粗忽者じゃん。だめ、そんなのがバレたら一人歩きさせてもらえなくなる! 10歳を過ぎてから少しずつ解禁されてきたのに! ん? ここは学園。学園内でひとりなのは当たり前だ。落ち着こう、落ち着け、リディア。
うん、気のせいだ。痛くない。ちょっと硬いものにあたって神経がバグっただけ。
この部屋から出たら、トイレででも、そっと治癒すればいい。
なんで今日はこんなにうまくいかないことだらけなのだろう?
ふと思えば、すぐに答えが導き出された。
あ。そっか、わたしいつも誰かと一緒なんだ。もふさまたちもいなくてひとりきりって本当に稀なことだ。わたしはいつも誰かに助けてもらってたんだね。
……………………。
助けてもらえるのはありがたいことだけれど、ダメだ、わたしひとりじゃ何もできない子になっちゃう! 幸いまだ11歳。軌道修正、いける! とんだ不器用でも、失敗も何度か繰り返せばできるようになっているものだ、きっと!
心を落ち着けて、静かに姿勢を正す。椅子を取るべく歩いてみる。あ、本当に神経がバグっていただけみたい。大丈夫、痛くない、歩ける。
積み上げられていた椅子を持ち上げるようにして引っ張る。椅子の足が横の椅子に引っかかっていたみたいで、音を立てて椅子が雪崩れ落ちた。この音を聞きつけて誰か来てくれないかしら。
ちょっと待ったが誰も来てくれないので、ドアにこの椅子を投げつけることにする。椅子を持ち上げてドアに叩きつけるようにしてみたが、下の方に当たるだけだ。ドアに傷もついていない。結構、力一杯投げたんだけど。
うーむ。
「誰かいるのか?」
くぐもった声がする。
わたしはドアを叩いた。
「中にいます。開けてください。閉じ込められました」
何度か叩くと
「わかった、少し離れていろ」
と声がする。後ろに下がると、バリっと音を立ててドアが開く。
蹴破ったような体勢でいたのはロサ殿下だった。
制服姿は初めて見た。3か月ぶりかな? 去年の終わりにご挨拶したのが最後だったと思う。14歳の男の子の成長は著しい。
明るい金髪は自ら発光しているように輝いていて、神秘的な紫の瞳は捕らえられると引き込まれそうになるほど引力がある。王族なのであまり見てはいけないのだが、目が離せなくなる何かがある。
兄さまほどではないけれど、背丈もかなり伸びた? かっこいいに拍車がかかっている。さすが王子さまだ。
ロサはわたしを見ると、自分の膝上に手をついて大きく息をついた。
「なぜ、こんなところにいる?」
「試験会場はここだって連れてこられて、ドアが開かなくなったの」
ロサはもう一度息を吐いた。
「詳しくは後からだ。試験はもう始まっている。行くぞ」
と手を引っ張られた。
「うっ」
「どうした?」
「え? なんでもない」
首を横に振る。
「足か?」
ロサがわたしの前でしゃがみ込む。そして靴下をさげて
「赤くなってるぞ」
とわたしを見上げた。
「あ、悪い」
うかつに女子の足を触り、さらに靴下まで下げたことに気づいたのか、顔を赤くする。
「保健室に行こう」
「大丈夫。試験会場に連れて行ってくれない? 遅刻してるの」
「それは聞けない」
え?
ロサは制服のジャケットを脱いでわたしに被せた。そしてそのまま抱え込む。
「ちょっと、ロサ」
「いいから黙ってろ」
ロサが包んだわたしを担ぎ上げてスタスタ歩いていく。
「で、殿下!?」
「怪我をしている」
うう、人に見られたようだ。ジャケットに包まれているので、わたしからは見えないんだけどね。
そうしてしばらく歩き、ドアを開ける音がして
「急患です」
「……殿下?」
のんびりとした声がする。
「受験生だ。手早く頼む」
下ろされたのはベッドの上みたいだ。座らせてもらったお尻の下はふわんとした敷布団のような感触がある。被されていたジャケットが取られる。
わたしを覗き込んだのは、青い髪を長く伸ばした男性だった。
ロサが教えてくれる。
「養護教員だ。神官でもある」
先生は椅子を持ってきて、ベッドの前においた。
「失礼しますね」
そう言ってわたしの怪我した方の足を椅子に乗せる。
よくこっちの足ってわかったな。わたしの心の声が聞こえたかのように
「生き物は悪いところを庇うものなのですよ」
と親しみやすい笑顔をくれた。
足首に手をやると、そこから温かい光が漏れてくる。じんわり光が行き渡ると、ジクジクした痛みがなくなっていた。
「痛く……ない。あ、ありがとうございます」
頭を下げると、どういたしましてと気さくに微笑む。
「会場に案内する」
あ、そうだテスト!
部屋の時計をみると、後20分しかない。
わたしは鞄を持って、もう一度お礼を言ってロサについて行く。
「こっちだ」
廊下を歩き、階段を上がり、また廊下を歩き左に折れる。
さっぱりどこにいるかわからないんだけど!
「ここだ」
ロサは振り返ってそういうと、ドアをノックした。
教員らしき人が出てくる。
「受験生です」
ロサが言えば
「え、あと15分ですが」
「受けさせてください」
とわたしの肩を押した。
「承知いたしました」
先生が頷いて、わたしを中へと促す。
「頑張れ」
ロサが小さい声でいう。わたしは頷く。
お礼言ってないやと思いながら、わたしは一番後ろの空いている席についた。鞄から筆記具を取り出すと、テスト用紙が配られた。
お礼を言って、名前を書く。
とにかく、やるだけやろう。
一問目から目を通し、回答を記していく。斜め読みして、とにかく答えを!
23問解いたところで鐘がなった。ペンを置く。回答用紙が集められた。
次は魔力を測るそうで会場を移動するアナウンスがあった。
筆記具をしまい、鞄を持って、廊下に並ぶ。ゾロゾロと人の波に乗り、歩いて行く。
わたしの後ろにいた子が隣に並ぶ。
視線を感じたのでわたしも見た。水色の髪の美人だった。12歳にしてしっかりした造形美。
「あなた、目立つのがお好きなの?」
はい?
「大事な入学試験に遅れてくるなんて、学園を軽く見ているとしか思えないわ。あなたは学園とこの学園に入りたくて努力している全ての人を見下したのよ」
いきなりの先制攻撃にわたしはぽかんと口を開けた。
「ユリアさま、何か理由があったかもしれないですよ。それを決めつけて糾弾するだけなのはよくありません」
水色美人はユリアさまというみたいだ。擁護してくれたのは赤い髪をした活発そうな少女だった。
「その髪の色、シュタイン令嬢ではありませんか?」
髪の色でわかったの? 現代は写真が出回るわけではないから、髪と瞳の色であたりをつけるものだけれど、同年代で、もうその能力が培われているのね。すごいと思いながら頷く。
「はい、リディア・シュタインです」
答えれば、周りの人たちが一斉にわたしを見た。
え?
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